世界屈指の商都「大阪」から世界を代表するスタートアップを
株式会社レスタス 代表取締役CEO 大脇 晋 氏

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転機になった「秀吉会」

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岩崎 創業から数年間はスタートアップというよりはスモールビジネス的な経営をされていたのですね。

大脇 そうです。設立5、6年目の頃は社員も少数で固定費も低い中、売上も伸びており、事業は極めて順調でした。当時は銀行からも低金利で貸して頂けましたし、キャッシュも潤沢にありました。年々売上が上がっていき、一見非常に好調です。ただ「何かがおかしい」という小さな違和感がずっとまとわりついていました。

そんなとき、経営者の友人から「秀吉会」という経営者コミュニティを紹介して頂きました。それまで出会った方は当時の経営状態を「すごいね」と褒めてくださったのですが、秀吉会には誰一人それを褒めてくれる経営者はいません。他の経営者の方の発表を聞いた時に、皆さんとても高い志があり、前向きで熱くてすごいなと圧倒されたのを覚えています。

秀吉会の経営者の熱量に触れる中で、自分には志やビジョンが無かったなと気づき、これから自分が社会に対してどうあるべきかをあらためて考えるようになりました。また僕が加入した後にも株式会社i-plugの中野さん、株式会社ポラリスの森さんなど関西で存在感のある経営者も秀吉会に参加されて、研鑽し合いながら刺激的な環境の中で毎日もがいていたように思います。

あるとき、私を「秀吉会の次代の理事」にというお話を先代の理事から頂きました。これだけ志の高い経営者の集まるコミュニティの理事になるのであれば、さらに視座を高く持ち、自分だけでなく周りの経営者にも良い影響を発揮できる存在になろうと心に決め、お話を受けることにしました。

岩崎 リクルート時代に経営者の方に色々と仰っていたお話がありましたが、秀吉会ではある意味逆の立場を経験されたわけですね。

大脇 リクルートの時に、たくさんの社長とビジョンや事業計画の話をしましたが、今振り返ると綺麗事を言い過ぎていたかなと思う部分は正直あります。社長に言いたいことを言っていましたが、いざ自分が起業してみると経営は簡単にできるものではないなと、気づかされました。また、志だけでは生きていけない現実も目の当たりにしました。

ただ秀吉会での出会いをきっかけに、自分自身も会社も変われたように思います。秀吉会ではそれぞれの経営者の成功と失敗を包み隠さずに共有することでお互いの成長に繋げていく、あるいはお互いの成長の為に必要だと思うことは厳しくともストレートに伝えるといった文化があります。そのため秀吉会では悔しい思いをすることも少なくありません。その経営者の人格が課題であると思われるようであれば人格も否定されるなど、半端ではない切磋琢磨があり、自分も言うからには言った分やらないといけないという責任感も生まれます。例えるなら障害物競走を30人横並びで走っている様な感覚でしょうか。

岩崎 秀吉会の経営者の方からの言葉で、記憶に残ることはありますか。

大脇 1番の転機は「大脇さんの会社は自分より優秀な人がいないということがリスクだ」と言われたことです。大脇商店で終わらせるのであればそれでもいいけれど、そうでなく掲げるビジョンを本気で実現するのであれば、各分野の優秀な人材を揃えない限りは成長できるはずがない、それで天下を取れるわけがないだろうと。この言葉がきっかけで、誰よりも強いチームを作る方針に舵を切り、会社の成長を牽引できる、ブレーンとなる優秀な人材の採用に力を入れていくようになりました。

資金調達後、RESEED社のM&A交渉に着手

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岩崎 昨年には総額10億円もの資金調達、更には今年2月にはRESEED社のM&Aのプレスリリースがありました。この一連の経緯についてお聞かせください。

大脇 RESEED(※)とのM&Aは、実は資金調達が決まった頃から構想にありました。以前よりオーダーメイドの紙袋市場への参入を見据えていた中、資金調達が決まった後にM&A、あるいは事業提携の可能性なども含めてRESEEDの親会社にあたるトーヨ社とのコンタクトをとりはじめます。それが昨年の7月頃になります。

RESEEDは2012年に創業したオーダーメイドの紙袋に特化したEC事業を展開するベンチャーでしたが、2018年に創業者がM&A(バイアウト)をし、愛媛本社のトーヨグループ傘下となっていました。コンタクトをとった当時のトーヨグループの中でのRESEEDは、業績は安定的に立ってはいたものの、今後の親会社との連携体制など見直しのタイミングにあったため、売却には前向きにご検討いただきました。

ただ、トーヨ社の立場としては急いでM&Aを進める必要性があったわけではありません。また創業70年以上あるトーヨ社の歴史の中で事業売却は初めての試みでもあった中、何度も足を運ばせていただき、交渉を繰り返しました。

※株式会社RESEEDはオーダーメイドの紙袋に特化したEC事業「レレカ」を展開するECベンチャーとして創業。2018年にペーパータオル、和紙等の機械漉き製紙事業を展開する株式会社トーヨ(愛媛県四国中央市)にM&A(バイアウト)し、トーヨ社の100%子会社としてトーヨグループに参画。

トーヨ社の資本参画により、二人三脚での成長を目指す

岩崎 トーヨ社とは今回のM&Aだけでなく、今後も継続して提携もされると伺いました。

大脇 今回のRESEEDのM&A交渉を通じ、最終的にはM&Aと併せてトーヨ社に株主として出資していただく形となりました。トーヨ社は創業70年をこえる四国では誰もが知る歴史ある会社であり、そのトーヨ社から出資をいただくことで、当然ながらレスタスの企業としての信頼も高まります。またトーヨグループは四国をはじめとする業界の繋がりをお持ちなので、レスタス単体では成立し得ない新たなビジネスの可能性も大いにあると考えています。

僕達のビジネスはメーカーさんとの信頼関係なしでは成り立ちません。昨年、出資と業務提携をしていただいたイムラ封筒社をはじめ、レスタスのプラットフォームに商品提供をいただいているメーカーさんとの信頼関係は、これまでの会社経営の中で最も大切にしてきたことの一つです。

ただの取引関係ではなく、トーヨ社はじめとするメーカーさん、それ以外にもレスタスと関わる各社さんと共に一緒に成長していきたい思いでいます。トーヨ社とのM&A締結の際にも「これからですね」と握手をさせて貰い、最終交渉を終えました。

RESEEDとのM&Aによる未来展望

岩崎 M&Aをされる過程で感じるRESEEDとの相乗効果、可能性についてお聞かせください。

大脇 レスタスとRESEEDは、事業は似ているのですがそれぞれの強みが違います。レスタスは顧客の問い合わせから受注処理までを自動化・IT化することでお客様が使いやすく、他社よりも安価に提供できる体制を構築してきました。一方でRESEEDは、営業体制においてECでの受発注だけでなく、電話での直接的なアプローチも大事にしています。具体的には電話で顧客のニーズを直接ヒアリングし、提案していくようなスタイルをとっている為、顧客単価はレスタスよりも比較的高い傾向にあります。それ以外にもお互いの強みやノウハウをシェアする、あるいは補完し合うことでこれまで以上に多くの顧客のニーズに応えられる組織にできればと思っています。

またレスタスはカレンダーや団扇など季節性が強い商材が多いのに対し、RESEEDの紙袋は多少依頼が増える時期はあるものの、基本的には通年商材で安定的に収益が立てられています。これは会社経営をしていく上で大きく、商材親和性も高いので、レスタスの顧客にRESEEDの紙袋を提供する体制などにも比較的展開しやすいのも、このM&Aでの大きなメリットの一つだと考えています。

そしてRESEEDとの統合を形にできるかどうかは、レスタスの未来にとっても非常に重要な位置づけになると考えています。日本を代表する多くの企業が成長戦略の手段にM&Aを掲げていますし、弊社もIPO後に更に成長速度を高めていく上で、M&Aを行っていくのは必然です。ただM&Aの多くのケースではPMI(M&A成立後の統合プロセス)がうまく進まないのが実態です。弊社にとってこのM&A、PMIを確実に成功させることが、IPO後の成長を分かつ大きな分岐点になるかと思っていますが、弊社には社内外にM&A、DD(M&A先の調査)等に長けた経営メンバーがいるため、ここまで比較的良い形で進められているように思います。

岩崎 M&Aの知見があるメンバーの存在が大きかったのですね。

大脇 多くのベンチャーでは管理部門は軽視されがちですが、弊社ではファイナンスをはじめ各分野に長けたメンバーに参画して貰っています。勿論、会社によって管理部門にどれだけの投資をするのかに正解はないとは思いますが、弊社の場合は管理部門の層が厚かったことで、不測の事態などにも臆することなく向き合える、それにより選択肢が広がり、機会をものにできているように感じています。

また秀吉会のメンバーから受けた言葉を糧に、強い経営チームをつくることに拘ってきたことが間違っていなかったなと感じていますし、このM&Aの経験が経営チームを更に強いものに押し上げてくれるように思います。そして自分自身にとってもこの1年はIPOに向けた社外折衝、資金調達、M&Aなど本当に躍動感があるものでした。これまでの人生において最も密度が濃い1年だったと感じています。

大阪のど真ん中に生まれた自分の宿命

岩崎 最後にレスタス社、あるいは関西のベンチャーマーケットに対して今後大脇さんが考えていることをお聞かせください。

大脇 世界中を見渡しても大阪は人口、産業、インフラなどが集積する極めて稀有な地方都市だと思っています。有名大学も多いですし、高度経済成長を支えた多くの歴史あるメーカー、地域に根付く金融機関の数々など、地方都市では世界的にずば抜けて大きな潜在的な力がある街ですが、僕が子供の頃を思い返すと日に日に勢いが無くなっているように感じていました。

この大阪の潜在的な力を引き出す、さらに今後の経済成長の鍵を握っているのは、僕はスタートアップだと思っています。たくさんの有力なスタートアップが出てくることで、これまで当たり前とされてきた色んな無駄や非効率が改善し、イノベーションが生まれ経済に活力が生まれます。次々とスタートアップが生まれてくる土壌を作ることが、経済成長を目指す上でこれまで以上に重要です。

勢いのある関西を取り戻す為にも世界を代表するようなスタートアップに自身がなる、そして世の中を変えるスタートアップが生まれるための素地となるカルチャーをつくっていくことが目標です。これは大阪という商売人の街のど真ん中に生まれ、関西の多くの方々に育てて貰った僕だからこそ背負うべき宿命だとも思っています。

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