無事に希望の企業からの内定を獲得し、いざ現職を退職しようとした際に有給を取得しようとするも、さまざまな障壁が発生することがあります。退職前に有給休暇を取得できないとき、どう対処すれば良いのか?本記事ではその悩ましい状況を解決するための対処法などについて解説いたします。
そもそも有給休暇とは?
ここまでは有給の取得しづらい背景・原因について解説してきましたが、ではそもそも有給休暇とは、どのような制度なのでしょうか。厚生労働省の共有事項をもとに基本知識をおさらいしていきましょう。
有給休暇とは
有給休暇(年次有給休暇)とは、一定期間(主に6カ月)勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
有給休暇は、労働者が仕事から離れてリフレッシュし、体調を整えることができるようにすることで、労働者の健康やワークライフバランスの維持ができるように取り入れられており、また、有給休暇を取得することで、労働者の日々のストレスや疲労の軽減、仕事へのモチベーションや生産性の向上に繋げることを目的としています。
有給休暇の付与基準
労働基準法では有給休暇の付与基準が明確に定められています。たとえば、継続して6ヶ月以上勤務し、所定労働日の8割以上出勤した労働者は、10日の有給休暇を取得する権利があります。さらに、勤務年数が長くなるにつれて、休暇の日数も増加し、最大で20日まで得られるようになるのです。しかし、有給休暇を取ろうとした際には、会社の業務の都合も考慮する必要があるため、希望する日に必ず取れるわけではないため、労働者と雇用主である企業との間でスムーズなコミュニケーションが重要となるのです。
2019年の労働基準法の改正
有給休暇は労働基準法で定められている労働者の権利ですが、日本は主要国と比較して有給休暇の取得率が低いことが課題となっていました。そこで、2019年4月の労働基準法の改正により、全ての企業において、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、年次有給休暇の日数のうち年5日の取得が義務づけられるようになり、企業も改正後は従業員に有給を年に5日消化するように推奨・管理を行っています。
有給取得しにくい雰囲気がある背景
労働法の改正により有給取得率を高めることが義務づけられたため、昨今は改善されつつありますが、かつては日系企業を中心に「休暇は周囲に迷惑がかかるので、よほどの事情がない限り取得するものではない」という価値観が蔓延していた時期もありました。20代~30代前半の若年層に比べ、35歳以上の世代の日本人の有給取得率が未だに低いのは、そういった以前の慣習による影響があるのだと思われます。是正されつつはありますが、休暇に関しては価値観のギャップが生まれやすい過渡期にあるというのは認識しておくと良いでしょう。
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有給休暇を取れない理由
ではまず、そもそも有給休暇を取得させて貰えない理由を考えていきましょう。有給を取得できない理由には勤務している会社の社風や上司の考え方、業務的な問題など様々な原因があげられるため、本項ではその理由を解説していきます。
有給休暇がとれない雰囲気がある
有給休暇を取得しようとする人の多くが「有給が取りづらい」と感じると明らかにしています。背景には、様々な要因があります。上司が休暇の取得を前向きにとらえない人であったり、慢性的に忙しい職場であったりすることなどが要因となることがあります。
特にもともと人員が不足している職場の場合、休暇や退職によって同僚・後任への業務負荷がかかってしまう申し訳なさから有給が取りづらく、休暇がとれないという問題が発生してしまいます。
業務上の理由から、有給をとるのが難しい
担当している業務が特殊で他の人には代行できない要素がある場合、有給を取得できないケースもあります。担当業務に必要な知識・スキルの伝達まで行わないといけないため、引き継ぎに時間がかかり、退職日まで通常業務を手伝わないといけないケースもあります。また、後任が着任するタイミングによって引継ぎ期間が決まるするため、有給取得がしづらいというケースもあります。
退職前に有給を消化してもいいのか
では、転職・退職が決まったら、たまっていた有給を消化してもいいのでしょうか。「退職間際に有給を取ることは礼儀に反する」や「退職前に有給を全て消化することはできない」といった誤解をしている方もいるため、改めて正しい対応について考えていきましょう。
退職前の有給取得は可能
有給休暇は退職が決まってからでも取得することができます。また、退職前に限らず、有給休暇の取得理由については何であれ制限をされるものではなく、上司や周囲に伝える義務もありません。退職時に取得できる有給日数については、付与されている有給日数の範囲であれば上限はありません。
退職前の有給消化の時期については要相談
有給休暇は労働者の権利だからといって、好き勝手に休むと会社の事業に支障が出てしまうこともあります。そのため、企業側も有給休暇の時期については、労働者と相談することができます。退職交渉を行った後に会社(上司)と退職日と最終出勤日、引き継ぎのスケジュールを話し合い、合意が取れたうえで有給休暇の申請・取得をしましょう。
有給の買取の制度があることも
会社によって異なりますが、「退職時に消化できなかった有給を会社が買い取る」という制度があることもあります。通常時の有給休暇の買取は認められていませんが、退職時や消化できずに期限切れとなる有給など、例外的に買い取りが許されるケースがあり、それができる会社もあります。就業規則等を確認してみましょう。
退職前の有給取得できないリスクへの対処法
ここまでは有給取得についての基礎知識について解説してきましたが、実は退職前の有給消化について、残日数の全てを消化できたという人は意外と多くありません。本項では有給休暇を消化するための対処法をご紹介していきます。
退職日・入社日を調整する
有給消化は最終出社日より前に済ませないといけないわけではないので、転職先への入社日が迫っていない場合は、先に引き継ぎなどを完了させて最終出社日後に有給をまとめて消化し、その後に契約上の退職日を迎えさせてもらうように退職日を調整しましょう。
転職先への入社日が差し迫っている場合、現在の勤務先が有給消化について問題なく取得させてもらえる状況だったとしても、転職先企業の都合で入社日が近い日程で設定されてしまい、有給を消化しきれないこともあります。転職活動していて入社日の確認を受けた際、現職の引き継ぎと休暇消化が可能なスケジュールですり合わせをしておくことをおすすめします。
予め有給休暇を一部消化しておく
長年同一企業に勤務していると、付与される有給休暇も増えていきます。有給休暇は付与から2年で失効するので溜める上限はありますが、あまりに多くの日数を残している状況では、全て消化するのが困難となる可能性が高くなります。転職活動を始める前に業務に支障がないタイミングで消化しておくのが良いでしょう。とはいえ、全て消化してしまうと転職活動中は面接で業務を休まなければならない日に困ることがあるかもしれませんので、数日間の有給は残して部分的に消化するのがおすすめです。
引き継ぎ計画を立てておく
入社日がさしせまっている場合、有休消化をしようとすると、引き継ぎの期間が十分に残っていないというケースがあります。予め引き継ぎがスムーズにように終えられるようにタスクの洗い出しや引き継ぎ資料の準備しておくなど、円満な退職を目指して手配をしておきましょう。
専門家に相談する
上述の通り、法的には有給申請は時期・理由を問わず認められるべきことですが、上司・会社によっては理不尽な理由から有給取得が認めてもらえないというケースも散見されます。そういった場合、社内の労務・人事窓口があればまずは相談し、それでも難しい場合は労働基準監督署や弁護士に相談するという方法もあります。ただし法的手段を用いるには手間や費用がかかることなので、現職の有給消化を諦め、円満退職を優先して、転職先の業務に集中するという選択肢もあるでしょう。
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最後に
本記事では有給休暇について解説しました。有給は労働者の権利のため、基本的には利用することが可能ですが、企業側の都合を考慮する必要もあります。特に退職に際して数日官有給を利用する場合は事前の確認・準備・相談が必要です。
スムーズに有給を取得するためには退職交渉をする前に事前に自分が保有している有給日数を確認の上、退職日を交渉することで円滑に調整しやすくなるため、退職交渉前から準備を進めておくことをおすすめします。