ベンチャー企業やスタートアップ企業でよく使われる言葉は様々ありますが、その中で今回は「バーンレート」という言葉について解説します。ベンチャー、スタートアップ企業について調べていると、資金調達に関する話題を見かけることが多いと思いますが、それはベンチャー、スタートアップ企業の成長や事業継続にとって、資金をどれだけ使えるかというのが非常に重要だからです。
そのため、資金調達や資金管理に関連するスタートアップ用語というのは多くあり、バーンレートもその中の一つです。スタートアップ企業に関心をお持ちの皆様にはぜひ知っておいていただきたい言葉ですので、ぜひ参考にしていただければと思います。
バーンレートとは
バーンレート(Burn Rate)とは「資金燃焼率」を意味し、ある企業が1ヶ月間にどれだけの資金(現金)を使うかを表す言葉です。その言葉の通り、資金がどのくらい燃えていく(減っていく)かを表しています。
企業を運営するには人件費やオフィスの家賃などをはじめとした様々なコストがかかりますが、創業して間もないベンチャー、スタートアップ企業の場合などはそのコストを賄えるほどの十分な収入がなく、時間の経過とともに資金が減っていくような場合が少なくありません。そのような会社では、手元資金の残高と毎月の資金の減少額(バーンレート)を適切に管理・把握し、あと何か月で資金が足りなくなるのか、何か月以内に売上を立てなければならないのか、あるいは何か月以内に追加の資金調達をする必要があるのかというようなことを考える必要があります。バーンレートは、そうした管理を行う上で非常に重要なものということになります。
特にIT系の事業のようにプロダクトをリリースして売上を得られるようになるまでに長い期間と多額の開発資金を要するような企業の場合、バーンレートをいかに低く抑えるかが事業の成否を分けると言っても過言ではありません。バーンレートの管理は企業経営における重要な要素であり、ベンチャー、スタートアップ企業の経営者や経営企画担当者、財務担当者が自社の経営状況を把握するうえで非常に関心の高いものの一つです。
グロスバーンレートとネットバーンレート
バーンレートには、グロスバーンレートとネットバーンレートの2種類があります。言葉の意味が異なりますので、それぞれを区別して理解しておく必要があります。グロス(Gross)とは「総額」という意味で、グロスバーンレートとはある企業において1ヶ月の間に出ていく資金の総額を指します。
1ヶ月の間に生じるコストの総額と考えるとよいかと思いますが、実際には企業には収入もある場合が多いため、その収入によるプラスを差し引いたものが次に説明するネットバーンレートです。ネット(Net)は「純額」という意味で、1ヶ月の間に出ていく資金の総額であるグロスバーンレートから収入を差し引いたものがネットバーンレートです。1か月あたりの総コストがいくらなのかを表す場合はグロスバーンレートを使うことになりますが、バーンレートは資金の残高と減少額の関係を管理するために使うことが多いため、収入を差し引いた実質的な資金減少額を表すネットバーンレートを使う場面のほうが多いでしょう。
会話の中で単に「バーンレート」という言葉が使われる場合、それがグロスバーンレートのことなのかネットバーンレートのことなのかを誤らないよう注意する必要があります。
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バーンレートの計算方法
次にバーンレート(ネットバーンレート)の計算方法について説明します。バーンレートを知るためにはさほど複雑な計算は必要ではなく、1か月の間にかかった費用(実際に支払った金額)から、同じ1か月の収入を差し引くことで計算できます。ただし費用や収入の中にはその月だけで発生する特殊なものも含まれている場合がありますので、そうしたものは取り除いて計算したほうが翌月以降の参考にしやすい数値となります。
また、銀行などからの借入があってその返済をする必要がある場合は、その返済額についても資金が減ることになりますので、バーンレートの計算に含める必要があるでしょう。借入の返済は一定額を毎月行う場合と、満期時に一括で行う場合があります。どちらの場合も適切に管理しておかなければ思いがけない資金減少要因となってしまいますので、注意が必要です。
自社のバーンレートを知ることができれば、資金の残高と組み合わせることで次に説明するランウェイを計算することができるようになります。ランウェイは、いつまでにどのような手を打つべきかといった事業計画を考える上で非常に役立つものですので、ぜひ知っておいてください。
ランウェイとは
ランウェイとは企業の資金がなくなるまでの残り時間のことで、「資金の残高÷ネットバーンレート」で計算することができます。現状のネットバーンレートが継続した場合に、あと何か月で資金がなくなってしまうのかを表すのがランウェイです。
長いランウェイを確保できているということは、その企業は時間に余裕があるということですので、じっくりと腰を据えて事業に取り組むことができます。一方でランウェイが短い場合、そのままでは近いうちに資金が枯渇して事業を継続できなくなってしまいますから、資金調達を行う等によって資金の残高を増やすか、もしくはネットバーンレートを下げることでランウェイを伸ばす必要があります。
ネットバーンレートを下げるには、出ていくお金を減らすか、もしくは入ってくるお金を増やすかのどちらかしかありません。出ていくお金を減らすには、人員削減などによるコスト削減や、銀行に返済の猶予をお願いするなどの方法があります。また入ってくるお金を増やすには売上を増やす必要がありますが、これはプロダクトのリリースを早めたり、すぐに売上に繋がりやすい事業を新たに始めるなどのケースがあります。
ランウェイがどの程度あればよいのかについて完全な正解というものはありませんが、できれば12か月、あるいは18か月といった期間があるのが理想的でしょう。そのくらいのランウェイを確保できていればよほどの急変がない限り慌てて資金調達やコスト削減をしなければならない状況になることは考えにくく、腰を据えて事業拡大やプロダクトの開発に取り組むことができるのではないかと思います。
逆にランウェイが短い状態になると、企業にとっては選択肢の少ない状態になってしまいます。そうなると資金調達をするにしても投資家探しや交渉のための十分な時間がなく悪い条件を受け入れてでも資金調達を行わなければならなくなってしまったり、コストを下げるために人員を減らさざるを得なくなって従業員のモチベーションを下げてしまったり、といったことが起こり得ます。
そのような状況にならないよう、特に資金調達力の高くないベンチャー企業やスタートアップ企業にとってバーンレートをなるべく低く抑え、一定のランウェイを常に確保しておくことはとても重要なことだと言えるでしょう。
銀行や投資家などのような資金の出し手にとっても、十分なランウェイを確保し無理のない事業運営ができている企業には、安心して資金を出せるものです。その結果さらにランウェイを伸ばすことができるという好循環になりますし、そのような状況の方が資金調達の条件も良くなることが多いです。ベンチャー企業やスタートアップ企業にはぜひそのような経営状況を目指していただきたいものです。
資金調達計画を織り込んだ事業計画づくりを
ベンチャー企業やスタートアップ企業の場合、設立当初の限られた資金の中でプロダクト開発を始めます。そのプロダクトがリリースされて売上や利益がたつようになるまでの必要な資金を設立当初から確保できているケースというのは稀で、多くの場合、そのプロダクト開発が一定段階まで進んだ時点で次の資金調達をするというのを何度か繰り返すことが前提となっています。
そのため事業計画のなかでは、プロダクト開発がいつまでにどの程度進んでいれば次の資金調達をスムーズに行うことができるのか、それまでの各段階でのバーンレートはどれくらいなのか、次の資金調達までの必要な期間を超えるランウェイは確保されているのかというようなことに常に確認できるようにしておく必要があります。ベンチャー企業やスタートアップ企業を設立して事業に取り組もうとする際には、こうしたプロダクト開発のスケジュールを資金調達計画も織り込む形で作っておき、状況が変わるたびに修正を繰り返すことで、常に計画に無理がないことを確認したり、無理が生じた場合にもそれをいち早く把握して軌道修正を行うといったことが可能となります。
ベンチャー企業やスタートアップ企業は魅力的なプロダクトの開発に取り組むことが多く、その事業を始めるときにはプロダクトそのもののことだけに意識が向きがちです。プロダクトの開発に情熱を持って取り組むのは素晴らしいことですが、そのために必要な資金が確保できなければ、どれだけ素晴らしいプロダクトであっても開発を継続することはできません。素晴らしいプロダクトだからこそ、開発途中での資金枯渇を起こさないよう、適切な事業計画を作成し、適切なバーンレート管理をしてほしいと思います。
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最後に
今回は、「スタートアップでよく使われるバーンレートについて解説!」というテーマで、バーンレートという言葉の意味、ベンチャー、スタートアップ企業におけるバーンレートの重要性について解説させていただきました。バーンレートはベンチャー企業やスタートアップ企業が事業を継続できるかどうかを決定づけるものであり、そうした企業で働く方々にはぜひ関心を持っていただきたいと考えております。ぜひこの記事をきっかけに、今回ご紹介したバーンレートのようにベンチャー、スタートアップ企業において日常的に使われている様々な言葉について知っていただければと思います。