スタートアップが理解しておくべきスイングバイIPOについて解説!

近年、企業がIPO(新規株式上場)を目指す際の手法として「スイングバイIPO」が注目されています。しかしながら、スイングバイIPOという言葉に馴染みがない方も多いのではないでしょうか。本記事ではスイングバイIPOの概要、メリットなどについて解説します。

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IPOとは

IPOとは「Initial Public Offering」の略で、日本語では「新規株式上場」と訳されます。それまで未上場の状態であった会社の株式を、はじめて証券取引所に上場することを指す言葉です。通常、未上場会社の株式は創業者や増資に応じた一部の投資家にしか保有の機会が与えられず、その株式の売買についても会社(取締役会など)が認めた場合に限られ、誰でも自由に売買できるという状態にはありません。そのように未上場会社としてある意味クローズドな状況にあった会社が、IPOをすると状況が一変します。

IPOをした会社の株式は証券取引所で日々売買され、誰でも自由に取引することができるようになります。それにより広く資本を集めることが可能となり、より高い資金調達力を得て大きな事業に取り組むことができるようになります。一方、不特定多数の投資家が株主となり得る状況となるため、安心して取引ができるよう会社の財務状況や経営成績を常に公開することや、より厳格な企業統治、リスク管理等が求められるようになります。

スイングバイIPOとは

スイングバイIPOとは、スタートアップが大企業の有する経営リソースを活用して、最短距離でIPOを目指す成長モデルです。例えば株式の過半数以上を相乗効果の見込める大手企業に保有して貰い、大手の資金力・信用力・販売チャネルなどを活用して急速に成長させ、IPOを目指していくケースを指します。

ちなみにこの「スイングバイ」という言葉は「宇宙探査機が大きな惑星の重力を利用し加速する様子」を指し、スタートアップを宇宙探査機に見立てる形でスイングバイIPOという表現をされています。

スイングバイIPOの事例

具体的な事例としては、2024年3月に東証グロース市場へとIPOを果たした株式会社ソラコムがあげられるでしょう。株式会社ソラコムはIoT に特化した LTE/3G モバイルデータ通信、またそれにより顧客に安全にデータを送り届ける付加サービスを提供するプラットフォーム事業を展開するスタートアップ企業です。同社は2017年にKDDI株式会社に株式の過半を譲渡、経営体制・事業方針などは変えないものの、法的にはKDDI株式会社の子会社となりました。そして資本参画から7年後、同社としては設立10年目となる2024年にIPOを果たしています。

スイングバイIPOのメリット

スタートアップなどがIPOを目指す場合にはベンチャーキャピタルなどより出資を受け、資金調達をしながらIPOを目指していくプロセスを辿ることが多いのですが、このようなベンチャーキャピタルからの出資を受ける場合には、定められた期限の中で株式を売却しなければなりません(これをEXITといいます)。

しかしながら、市場環境の動向などによっては事業が想定通りにいかないことも多いにある中、スタートアップ側の納得のいくタイミングでEXITに運べないことも珍しくありません。そのような前提を踏まえるとこのような制約のない事業会社に出資を受ける形でのスイングバイIPOはスタートアップの視点から見ると大きなメリットといえるでしょう。

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最後に

今回はスイングバイIPOについて解説をさせて頂きました。スイングバイIPOはスタートアップが競合他社に勝ち抜いていくために有効な戦略の一つです。相乗効果の見込める大手企業の資本参画を通じ、企業価値の向上を図り、最短でのIPO実現することで、スタートアップは厳しい競争環境の中で躍進を遂げていくことができるでしょう。ぜひ今回の記事を参考にして頂き、成長に向けた施策の一手に役立てて頂けたらと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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