ベンチャー、スタートアップ企業に転職する前に!気になる年収事情と年収交渉のポイント

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ベンチャー、スタートアップ企業への転職を検討している方にとって、転職後の給料、給料・年収がどうなるのかは気になる点でしょう。いくらやりがいのある仕事でも給料、給料・年収が極端に低くなってしまうと、モチベーションも保ちづらいのが一般的かと思います。給料・年収は自身の生活水準に関わる要素なので、慎重に考えたいのは当然です。今回はベンチャー、スタートアップ企業に転職後の給料・年収の相場、また年収アップのコツなどについて解説していきます。

目次

ベンチャー、スタートアップ企業へ転職したら年収が低くなる?

自らの実力を試したい、挑戦的な企業に転職したいと考えている反面、ベンチャー、スタートアップ企業への転職の場合には「 給料・年収 が大幅に下がってしまうのでは?」と悩む方も多いのではないでしょうか。

ベンチャー、スタートアップ企業に限らず、転職の際に 給料・年収が下がる可能性はあります。しかし、すべてのケースで 給料・年収が下がる訳ではなく、ベンチャーでも事業フェーズによっては 給料、年収を含め待遇面の手厚い企業があるのも事実です。以下ではベンチャー、スタートアップ企業への転職における 給料・年収 の考え方、押さえておくべきポイントについて解説していきます。

給料・年収が低くなることはある

多くのベンチャー、スタートアップ企業では、大手企業に比べて資金力が低く、利益が出ても、事業への投資を優先される傾向にあります。ある程度、事業が軌道に乗ったフェーズの企業、あるいはベンチャーキャピタルから数億円規模の出資を受けている企業などは、ある程度人件費に還元もされていますが、設立初期のベンチャー、スタートアップ企業ではなかなか従業員の給料・年収に十分な還元ができないというのが実態です。

また、 会社の成長発展のために力を尽くしてくれる人たちへのインセンティブ的な報酬として、IPO(新規株式公開)を目指すベンチャーやスタートアップの中には、ストックオプション制度を導入している会社があります (詳細は後述)。2018年に上場を果たした株式会社メルカリでは、「35人がストックオプションで6億円以上の資産を得た」と話題になりました。

株式会社メルカリに限らず、ベンチャー、スタートアップ企業への転職の際には、 給料・年収が下がることが多い中、ストックオプション制度で将来的に大きなリターンを得られる形などがあることを認識の上、転職活動に臨むと良いでしょう。

場合によっては給料・年収が高くなることも

一方で、既存のメンバーでは対応できない専門的な業務を任せられる人材であれば、ベンチャー、スタートアップ企業への転職の場合でも、必ずしも給料・年収が下がるということはありません。例えば新規事業の立ち上げ、実績が豊富な人材、または圧倒的な営業実績を有する人材は、会社に早期での売上が期待されることもあり、給料・年収面をある程度担保されるケースもあります。このような人材は、ベンチャー、スタートアップ企業からすると喉から手が出るほど欲しい反面、大手企業やメガベンチャーなどと採用競合としてバッティングすることもあるため、少し背伸びをしてでも高い年収を提示することもあります。

また、初期の事業フェーズでは一人で何役もこなせる人材も重宝されるでしょう。例えば、管理部門であれば経理財務から人事総務にまで広い知見がある方、マーケティング部門であればweb広告運用からサイト制作まで知見があるような方であれば、経営者の立場としてはそれなりの 給料・年収を担保してでも採用を考えることは少なくないでしょう。

そしてベンチャー、スタートアップ企業の全てが資金力が無いという訳ではありません。ベンチャー、スタートアップ企業の多くはベンチャーキャピタルから複数回に渡り、資金調達をしながらIPOを目指していくケースが多いです。事業がある程度軌道に乗ってきているベンチャー、スタートアップ企業の場合、追加の資金調達を行う際にベンチャーキャピタルをはじめとした多くの投資家からの出資が集まりやすいです。

2021年6月にはクラウド人事労務ソフト「SmartHR」を展開する株式会社SmartHRが、投資家より156億円もの資金調達をされたことが話題になりました。将来性に期待のされるベンチャー、スタートアップ企業であればこのような巨額の資金調達を実現されるケースも珍しくなくなってきました。

ベンチャー、スタートアップ企業への転職を検討はしているものの、ご家庭事情などでなかなか 給料・年収が下げづらい場合もあるかと思います。そのような場合には、大型の資金調達を実現されているベンチャー、スタートアップ企業などを中心に見ながら転職活動を進められるのも良いかもしれません。

ベンチャー、スタートアップ企業との年収交渉のポイント

転職活動において、選考が進み、内定までお話が進んだものの、提示された給料・年収に納得がいかない、または生活を考えた際に現実的に受けることができないときに、内定後に企業と年収交渉の場をもつケースも多いです。転職活動において年収交渉で気を付けるべきポイントなど、以下の内容をご参考ください。

年収の相場を把握する

希望する 給料・年収があまりにも相場や応募企業の人事制度の基準からかけ離れていると、ベンチャー、スタートアップ企業に限らず、当然ながら予算が捻出できないため、採用を見送られてしまいます。このようなことを防ぐためにも、転職活動をする前に 給料・年収の相場を把握しておくのがおすすめです。

あくまで目安にはなりますが、メンバークラスであれば年収300~500万円程度、管理職クラスであれば500~800万円程度を想定しておきましょう。日経新聞によると、2019年の平均年収は720万円を超え、近年は上昇傾向にあります。(日経新聞, 2019年3月20日,「スタートアップ転職、年収720万超 上場企業越え」)
引用:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO42688030Q9A320C1MM8000/

しかしベンチャー、スタートアップ企業と一口に言っても、企業規模や成長性などが幅広い他、東京と大阪など地域でも水準は異なってきます。全てのベンチャー、スタートアップ企業で高水準となっているわけではないことを理解した上で、転職活動に臨むようにしましょう。

年収交渉のタイミングは面接の終盤に

給料・年収交渉自体は転職活動で珍しいことではありませんが、交渉のタイミング次第ではマイナスなイメージにつながることがあります。このようなイメージを持たれる可能性が高い前提として、ベンチャー、スタートアップ企業に勤める多くの方が、年収や福利厚生よりも自身の挑戦や世の中を変えることなどに重きをもって働いていることを理解しておきましょう。

勿論、現実的に生活をしていく上で 給料・年収面のお話を抜きには決断はできませんが、序盤から給料・年収のお話ばかりしてしまうと、採用担当者にあまりポジティブな印象にうつりませんので、年収交渉のタイミングは終盤にすることをおすすめします。

また、当然ながら年収交渉をするには、希望年収の妥当性や理由を示す必要があります。現職の 給料・年収やスキル、実績などの他、現実的にご家族の生活を守る上で維持しなければならない水準など具体的な根拠をもって、希望額をお伝えされると良いでしょう。

企業の事情も配慮し、建設的な会話を重ねていく

年収交渉はこちらの一方的な希望だけで話を進められるものではなく、相手の事情も踏まえ、お互いのことを慮りながら両者で建設的に進めていくことが大切です。そして時には企業側としては希望の給料・年収を提示したい気持ちはあるものの、懐事情で厳しい場合も当然あります。

最近では副業に対して寛容な考え方の企業も増えてきていますので、例えば事業が軌道に乗るまでは、副業を含めた総額で生計を立てていくことも選択肢の一つとしてあるでしょう。特に事業フェーズが早いベンチャー、スタートアップ企業では、副業を認めることで、現在の給料・年収がそれなりにある優秀な人材でも転職しやすい環境づくりに力を入れている企業が少なくありません。

ただし、このように副業を積極的に促す企業もあれば、本業に影響が出ない範囲に限った副業を可とする企業など、副業に対する考え方は企業それぞれです。そのような会社の考え方についても、転職活動を通じて理解をしながら年収交渉にのぞむことをおすすめします。

ベンチャー、スタートアップ企業に転職して年収アップを目指すなら

それでは 給料・年収アップを目指してベンチャー、スタートアップ企業に転職するなら、企業のどのような点に注目すれば良いのでしょうか。以下では転職活動の際に、どのような企業であれば比較的、年収アップが見込まれやすいかについて解説していきます。

大型の資金調達後などは人件費にある程度還元しやすくなる

ベンチャー、スタートアップ企業は、いつも資金に余裕が無いわけではありません。前述の通り、ベンチャーキャピタルから数億円規模の資金調達を実現できたタイミングなどは、ある程度、人件費に還元できる余力がでてきたりもします。また、初期フェーズで選考を受けている段階では、希望の 給料・年収に応えることができないという理由から破断になることがあったとしても、資金調達後にあらためてお声掛けがあるケースもあります。

給料・年収の条件が折り合わない場合でも、転職を余程急ぐ事情がないのであれば、定期的に企業とコンタクトを取り、受け入れ可能なタイミングであらためて面談をするのもベンチャー、スタートアップ企業への転職の考え方の一つとして持っておきましょう。

ストックオプションでリターンを得る

前述の通り、IPOを目指すベンチャー、スタートアップ企業ではストックオプション制度を導入することが多いです。ストックオプションとは、IPOを目指す企業の従業員や役員が、自社株を一定期間決められた価格で取得できる権利です。具体的には、比較的安価な株価で株式を取得し、IPOを実現した際、またはその後の継続的な成長により株価が上昇した際に売却することで、キャピタルゲインを得るものになります。

当然ながらベンチャー、スタートアップ企業で大企業と同等の報酬を準備できるケースは稀といえます。しかし、待遇で応えることができない補填分、または入社後の活躍に応じ、ストックオプションを付与する形をとるケースが多いです。

勿論、全ての企業が上場まで辿り着ける訳ではありませんが、IPOを実現できた際には大きなリターンを得ることが可能です。また、実際には上場後にキャピタルゲインを得る方もいれば、上場後も株式を保有し続け、会社の成長にコミットメントを持つモチベーションにする方も多くいます(より詳しくストックオプション制度を知りたい方は以下記事もご参照ください)。

メガベンチャーなどでスキル・経験を磨く

前述のような形で給与・年収を担保すべく転職活動で年収交渉に臨むものの、それ以前に自身のこれまで培ってきた経験・スキルがベンチャー、スタートアップ企業に評価されづらい場合もあります。そのような場合に無理に年収交渉を続けてもなかなかお話に折り合いをつけるのは難しいでしょう。

そのような時には、数年後にベンチャー、スタートアップ企業で活躍できる人材になることを目指すという前提でまだまだ良い意味で未整備な部分も多いメガベンチャーなど、ベンチャー、スタートアップ企業の就業環境に通ずる職場環境に身を置くという選択肢も一つでしょう。メガベンチャーなどの環境で実績を重ね、「ぜひ入社してほしい」とベンチャー、スタートアップ企業に思って貰える経験・スキルを身に着けられると年収交渉はずっとやりやすくなります。

これからの成長に期待のできる「勝てるベンチャー」と出会うために

ここまでは 給料・年収面について解説をしてきました。しかしながら、ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動を試みた経験のある方の中には、大手企業と比べて企業情報、求人情報を探すこと、また企業概要までは分かったとしてもビジネスモデルや事業優位性など詳細な情報収集が難しいと思った方も多いのではないでしょうか。

言うまでもなく、大手企業や上場企業のように公開情報が豊富な訳ではなく、財務情報やビジネスモデルなど実態が掴みづらいのがベンチャー、スタートアップ企業です。特に設立から間もないベンチャーの場合、HPなどwebサイトに十分な予算をかけることが難しく、最低限の情報のみ記載されているような企業も少なくありません。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は、まだ世の中にない最新技術などを駆使したビジネスを展開されている企業も多いため、HPの情報だけではなかなかビジネスの特徴や全体像などを掴みづらいというのも、転職者が情報収集に苦労する一つです。

ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動において企業情報、求人情報を探す過程で、上記のように様々な問題に直面する場合が多く、自分に合ったベンチャー、スタートアップ企業を探し、出会うことは非常に難易度が高いです。このように情報収集が容易ではないという前提の上ではありますが、その上で以下のような探し方をご紹介します。

積極的にPRをするベンチャーと戦略的にPRを控えるベンチャー

こちらでは今後、成長性に期待のかかるベンチャー、スタートアップ企業との出会いをつくるために参考になる方法についてい解説いたします。特に積極的にPRをするベンチャー、戦略的にPRを控えるベンチャーがありますのでそのような観点について以下ご紹介します。

積極的にPRをするベンチャー

ベンチャー、スタートアップ企業の求人情報の探し方、情報収集方法としては、まず「Wantedly」を活用されることをお勧めします。企業側の視点で見た際に、Wantedlyは比較的安価な料金で利用可能なビジネスSNSであり、多くのベンチャー、スタートアップ企業がWantedly上で情報を公開しています。そのため、転職活動の第一歩として利用するツールとしてはよいかと思います。

また、「注目すべきベンチャー●選」、「優良ベンチャー●選」、あるいは経営者にフォーカスをあてた特集など、様々なテーマでベンチャー、スタートアップ企業の情報をまとめたキュレーションサイト(まとめサイト)も存在します。Web上での情報収集においては、このようなWebサイトを参考に情報収集をされると良いでしょう。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は自社をPRする場として、行政などが主導するビジネスプランコンテストなどに出場することが多いです。ビジネスプランコンテストは経営者が自社のビジネスモデルの特徴、どのような市場成長性のあるマーケットで戦っているか、将来どのような展望を考えているかなど、具体的な内容を発表し、審査員が評価します。

ビジネスプランコンテストは一般公開しているものも多くありますが、コロナショック以降はYoutubeなどオンライン配信形式(LIVE配信のみ、あるいはYoutubeに残す場合など様々)をとるケースも増えました。そのため、仕事が忙しく、ベンチャー、スタートアップ企業を探すことになかなか時間を割けない方でも、このような場に参加しやすくなりました。

戦略的にPRを控えるベンチャー

ここまでベンチャー企業、あるいは経営者がどのような形で情報を発信しているかお話してきました。しかし、PRに積極的なベンチャー、スタートアップ企業ばかりではありません。認知度を上げることは企業の成長において重要なことではありますが、目立ちすぎることで「この市場は魅力的な市場だ」と、競合の参入を加速させてしまう可能性も高まります。こちらでは戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業について解説していきます。

ベンチャー、スタートアップ企業の成長において大きな脅威の一つが、大企業の参入です。資本力のある大手企業が参入する中、資金力や人材など経営資源の足りないベンチャーが太刀打ちするのは至難の業といっても過言ではありません。

そのような脅威に注意を払っている経営者は、自社HP含めwebサイト上での発信を控えている他、ビジネスプランコンテストのような表舞台には極力姿を現さず、水面下で静かにシェア獲得を推し進めるような戦略をとっていることが多いです。そして、ある程度シェアを獲得できた段階、あるいは大型の資金調達などが実現され、一気に競合各社を引き離したいという瞬間に、ようやく大々的に露出していきます。

転職エージェントを活用した水面下での採用活動

このような戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業は、自社の採用活動に関しても慎重です。例えば公に情報を露出する求人サイトではなく、転職エージェントなどを活用し、競合他社に動きが見えないよう、水面下で採用活動を進めるような採用施策をとる企業も多いです(特にCxOクラス、ミドルマネージャークラスの求人募集に際し、転職エージェントを活用するケースが多いです)。

また、このような戦略的にPRを控える企業の場合以外においても、多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに転職活動を進めても損はないでしょう。

上記の通り、経営者の考え方、市場や競合環境により経営方針は様々であり、必ずしも露出が多いから優良ベンチャーという訳ではありません。事業フェーズがそれなりに進んでいるにも関わらず露出が少ない企業の場合には、その背景についても調べてみる、または面接において経営者に直接確認してみるのも良いでしょう。

最後に

ベンチャー、スタートアップ企業への転職では企業の成長を左右するスキルや実績を有していれば、 給料・年収もある程度担保されやすく、またどの事業フェーズで入社するのかも大きく影響してきます。またIPOを目指すベンチャー、スタートアップ企業を転職先候補とする場合にはストックオプション制度などに関しても確認するようにしましょう。

転職エージェントと一緒に転職活動を進めることで、自身の経歴棚卸などを含めたサポート、年収交渉におけるお作法、注意点などに関して的確なアドバイスを貰えるでしょう。こちらの情報を踏まえて転職活動を有利に進めることに繋げてください。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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