ベンチャー転職を成功させるための転職エージェントの選び方

国内でもユニコーンと呼ばれるベンチャー企業のIPO(新規株式公開)も台頭する中、次の時代を担うベンチャー企業での挑戦を志し、転職サイトなどの他、転職エージェントを活用しながら転職活動に臨む方は多いかと思います。

しかし、転職エージェント事業を展開する有料職業紹介免許を有する事業者は国内に数万社あり、また各社それぞれ専門分野や強みなどが異なっています。このように転職エージェントが多数存在する中、転職活動を円滑に進める上で、どの転職エージェントに相談するべきかと悩みを抱えている方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回はベンチャー企業への転職する際に利用する、自分に合った転職エージェントの選び方をご紹介します。

目次

転職エージェントとは

転職エージェントは人材採用を検討している法人企業と、転職を希望する求職者の双方の間に立つエージェントとしてマッチングのサポートを担う存在です。求職者の視点で見た際には、転職エージェントは転職活動支援のプロフェッショナルとして蓄積したノウハウを活かし、自分の希望にマッチする求人の紹介、実際の面接など選考の場でのアピールの仕方、退職交渉時に気をつけるべきことなど不安を抱える求職者にとって有益なアドバイスもしてくれます。

転職活動によほど慣れている人でなければ、転職サイトなどで自力で自分に合う求人を探して面接対策をして臨むよりも、効率的に転職活動を進められます。また、応募する企業の面接の傾向などを踏まえた対策をして臨むことで、転職成功の可能性が高まるでしょう。

一方、転職エージェント事業を展開する有料職業紹介事業者は大手から中小規模の事業者まで国内に数万社存在しており、法人企業と求職者で担当を分けている分業体制を敷いている転職エージェント、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェント、ベンチャーに特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。

基本的に転職エージェントへの登録は無料で行えるので、どちらかに絞らず複数登録し、求人情報に関して広く情報収集を行う形での転職活動をされる方も多いです。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。

総合型転職エージェントと特化型転職エージェント

転職エージェントには「総合型転職エージェント」と「特化型転職エージェント」の2種類があります。それぞれのメリットやデメリットを理解し、どちらの転職エージェントが自分に合っているか考えてみてください。

総合型転職エージェントとは

総合型転職エージェントとは、業界や職種、企業の規模に偏りがなく、幅広い求人を取り扱っている転職エージェントです。具体的には「リクルートエージェント」「doda」「マイナビ転職エージェント」などをはじめとした人材紹介業界大手に括られる企業規模の大きい転職エージェントが多いです。求人案件は業界大手の有名企業から中小企業、ベンチャー企業、エリアも北海道から九州エリアまで豊富に保有しています。

保有する求人の業界も製造業、サービス業、IT・WEB業界、建設不動産業界等まで幅広く扱います。勤務地に関しても首都圏、大阪、愛知、福岡など全国の求人案件を取り扱っています。多くの求人の中から希望する条件で転職先を探すことができるので、広く選択肢を考えて転職活動に臨む分には多くの情報に触れられるメリットがあるといえます。

しかしながら、総合型転職エージェントはさまざまな職種や業界を広く扱っているため、担当のコンサルタント(キャリアアドバイザー)が、特化型転職エージェントと比較した際に専門的な知識などに乏しいことがあるのがデメリットといえるでしょう。当然ながら、すべての業界を網羅的に理解するのは至難の業なので、総合型転職エージェントに依頼をする場合には、そのような事情も理解した上でやり取りをされるのが良いでしょう。

ただし、大手の総合型転職エージェントでもIT・Web業界、不動産業界など一部の職種・業界などに関しては、社内に専門チームを設置している場合もあります。専門性などを重視した転職サポートを希望する際には、登録の際に自分が希望する専門チームの有無を問い合わせてみてください。

また、大手の転職エージェントは一人あたりのコンサルタント(キャリアアドバイザー)が担当する求職者数が多く、一人で数十名、多い場合だと100名以上を担当する組織もあります。このような状況の中、すべての求職者の方にきめ細やかなサポートを行うのは物理的に困難であり、システムを利用したマッチングサポートなどを導入されているような体制を敷かれていることが多いです。

大手の総合型転職エージェントならではのこのような体制に、転職サポートの対応が事務的に感じられるなど、少し物足りなさを感じる場合もあるかもしれません。しかしながら、前述の通り、求人案件の幅広さなどのメリットも大きいため、転職エージェントに何を期待するかを明確にしつつ、特性を踏まえた上でご相談をするか判断されると良いでしょう。

特化型転職エージェントとは

特化型エージェントとは、特定の業種や職種、地域などに絞った求人案件を取り扱っている転職エージェントを指します。特化項目は転職エージェントによって様々であり、医療系やIT系などひとつの業界に特化していたり、大阪や京都などのエリア、第二新卒や管理職向けなどの職位、あるいは経営層など特定の求職者層に特化した転職エージェント事業を展開しています。

そのため、当該領域に関して専門的な知識を有しており、専門知識に基づいた転職支援を受けられることが特徴です。特定の業界・職種・エリアなどの動向を踏まえた転職先の提案、またその職種特有のキャリアステップを見据えた提案などが期待できます。

また、大手企業の求人だけでなく、ニッチに成長を続ける企業、あるいはその領域で成長性のあるベンチャー企業の案件を保有していることも多く、業界に精通している転職エージェントだからこそという求人を提案して貰える可能性もあります。目指す業界などが明確な方、専門的な知識や経験を活かして転職したい方などはこのような特化型転職エージェントの利用がおすすめです。

一方で特定の地域や業界ごとの求人がそろっていますが、保有している求人数が少ない傾向にあります。とはいえ、業界や職種を絞って転職活動を行うのであれば、デメリットと感じることは少ないでしょう。

「両面型転職エージェント」と「片面型転職エージェント」

転職エージェントはこれまで取り上げた「総合型転職エージェント」「特化型転職エージェント」といった扱う求人の種類だけでなく、転職エージェントとしての法人企業、求職者対応の仕組みによっても分けられます。こちらでは「片面型」「両面型」と呼ばれる転職エージェントのそれぞれの特徴、メリットとデメリットを紹介します。

片面型の転職エージェントとは

片面型の転職エージェントとは、求職者担当の「キャリアアドバイザー」と企業担当の「リクルーティングアドバイザー」の2つの部門にそれぞれ分かれて対応を行う転職エージェントのことを指します。

キャリアアドバイザーは、面談、求人紹介、その後の日程調整や面接対策といった求職者のサポートを行います。求職者は専任のキャリアアドバイザーに相談しながら転職活動を進めていきます。一方、リクルーティングアドバイザーは、求人獲得や求人票作成といった法人企業との交渉を行います。リクルーティングアドバイザーがヒアリングしてきた企業情報、求人情報をキャリアアドバイザーに伝え、連携をしながら転職サポートをしますが、求職者はリクルーティングアドバイザーと直接やり取りの機会を持たないことが一般的です。

キャリアアドバイザーは求職者の対応をメインに行っているため、求職者からの質問や相談に答えやすく、求職者は手厚いサポートが受けられます。リクルーティングアドバイザーは企業への営業活動に専念できる分、より多くの企業にアプローチできるため、おのずと両面型の転職エージェントより求人数が多く、求職者は転職先の選択幅が増えます。専任のキャリアアドバイザーより手厚いサービスを受けたい人や求人を多く紹介してもらいたい人は、片面型の転職エージェントがおすすめです。

しかし、片面型の転職エージェントのキャリアアドバイザーは、企業と直接やり取りをすることがないため、企業理解が不足している場合があります。もちろん担当者間で連携は行っていますが、両面型の転職エージェントと比べると求職者側に共有される企業情報は薄くなってしまいます。

両面型の転職エージェントとは

両面型の転職エージェントとは、求職者と企業の両方の対応を一人の同じ担当者が行うエージェントを指します。企業への訪問やヒアリングを行った担当者から、転職支援のサポートを受けられるため、企業理解が深く、社内の雰囲気や求めている人物像など細かな情報まできちんと共有してもらうことができます。

その他にも求職者と企業への対応を同じ担当者が行うため、意思疎通の齟齬が起きにくく、交渉がスムーズにいきやすい点もメリットといえます。より精度の高いマッチングを求める人は、両面型の転職エージェントがおすすめです。一方、両面型の転職エージェントでは、担当者自身が理解している企業を紹介される傾向にありるため、担当者によっては、紹介される企業に偏りが出る可能性があります。

ベンチャー転職を成功に導く転職エージェントの探し方

それではベンチャー、スタートアップ企業への転職を成功に導くためのエージェントの選び方とはどのようなものなのでしょうか。ベンチャー、スタートアップ企業では、目先での黒字化よりも、売上の増大、もしくは競合よりもシェアを獲得することを目指すため、広告費の先行投資などで赤字になることは珍しくありません。

そのような背景を知らずにそのようなマイナスな情報だけを見てしまうとベンチャー、スタートアップ企業の良い点が全然見えていないことになります。また、昨今のベンチャー企業のなかにはスタートアップと呼ばれ、ベンチャーキャピタルから資金調達をして、急成長をする企業があります。その過程で、大きな金額の赤字を決算で出すこともあります。本来赤字の企業に人は集まりにくいですが、成長が期待できる企業に早い段階で入社できれば将来的に大きな裁量が与えられる可能性が高いからです。このようにベンチャーやスタートアップ企業への転職においては、今後伸びていく企業をどう選ぶかは非常に重要です。

ベンチャー、スタートアップ企業に強い転職エージェントであればベンチャー業界の細かい動きも把握しており、最新の情報をもっていることが多いです。変化の激しいベンチャー業界において、最新の情報を仕入れたアドバイザーからアドバイスを受けられることは求職者にとって大きな武器となるでしょう。

また、ベンチャー転職の選び方で重要なことは、転職エージェント自体がベンチャー、スタートアップ企業と深くつながっているかということです。ベンチャー、スタートアップ企業は意思決定が早く、資金調達や新規事業開始の情報等、重要ポジションの採用動向など、様々な情報を早い段階で知ることができているかは企業を選ぶ上で非常に重要です。ベンチャー経営者とのネットワークをもっている転職エージェントを見つけるのもよいでしょう。

スカウトサイトを利用し、自分に合った転職エージェントを見つける

これまでそれぞれの転職エージェントの特徴について解説してきましたが、ビジネスパーソンの方には、仕事が多忙であり、なかなか転職活動に十分な時間を割けないという方も多いでしょう。このような多忙なビジネスパーソンは現職でのパフォーマンスを落とすことなく、効率的に情報収集を行う必要があります。こちらではこのようなビジネスパーソンの方が自分にあた転職エージェントと出会うためにスカウトサイトの利用について紹介します。

転職活動はこれまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つスカウトサイト、転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)」「エンミドルの転職」などが挙げられます。特にこのダイレクトリクルーティングと呼ばれる市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズ(現東証グロース市場)にも上場を果たしています。

これらスカウトサイト、転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。どのような企業、転職エージェントがこれまでの経験を評価してくれるのかという観点も含め、自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙なビジネスパーソンにとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

このようなスカウトサイト、転職プラットフォームに登録の際に、ベンチャー、スタートアップ企業を希望していること、またベンチャー、スタートアップの業界動向などどのようなことを転職エージェントに期待しているのかも記載をしておくと、自分の希望に合ったスカウトを貰える可能性が高まるでしょう。

転職エージェントとうまく付き合うために

ここまで転職エージェントの種類と特徴、スカウトサイトを活用して自分に合った転職エージェントの見つけ方などについて解説してきました。しかしながら、最も重要なのは自分に合った転職エージェントを見つけ、転職活動を有利に進めるために転職エージェントとどのように付き合っていくかどうかです。

自分に合った転職エージェントを見つけ、うまく付き合っていくためにも、まずは自分自身が転職エージェントに何を期待するかを明確にしておきましょう。例えば転職活動に慣れていない方であれば自己分析や経歴の棚卸などサポートが充実している転職エージェントを、あるいはその業界特有の専門知識など共通言語で会話ができることなど、人によりどのような転職エージェントが理想かは異なるでしょう。

また、転職エージェントの質は実際に対話し、サポートを受けてみないとなかなか見極めは難しいため、転職活動の序盤では転職エージェントは1社に絞らず、2~3社ほど登録することをお薦めします。後は転職活動の進展具合により、自分にとって相性の良いパートナーになり得るのはどの転職エージェントか見極め、密にコミュニケーションをとっていくと良いでしょう。

最後に

今回はベンチャー、スタートアップ企業に転職する際に、利用する転職エージェントの選び方について紹介しました。転職エージェントには、大きく分けて「総合型転職エージェント」と「特化型転職エージェント」の2種類があり、また「両面型」と「片面型」の仕組みの違いにより、メリットやデメリットも異なります。

まずはどんな転職エージェントが自分に合っているのかを整理し、その上で自分の目指す業界などに強い転職エージェントをパートナーとして活用し、転職活動に臨むことをおすすめします。転職活動を円滑に運ぶためには、このような転職エージェントの選び方も参考にしながら、自分の希望にあったベンチャー、スタートアップ企業への転職を成功させましょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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