30代がベンチャー転職で理解しておくべきメリット・デメリット

ベンチャー企業への転職と聞くと、20代をはじめとした若い世代の転職イメージをもつ人が多いのではないでしょうか。しかし、ビジネスのスピードが高まり、より競争環境が激化する中、マネジメント層をはじめとした即戦力性の高い人材の採用に積極な企業も増加してきている傾向にあります。

今回は、30代でベンチャー企業へ転職するに際し、どのようなことに気を付け、準備をしていくべきか解説していきます。これからベンチャー企業への転職に向けて転職活動をはじめる方、あるいは今現在、ベンチャー企業への転職活動に苦戦されている方はぜひ参考にして頂き、新たなチャレンジの機会を掴んでください。

目次

ベンチャー企業とは

「ベンチャー」「スタートアップ」という言葉に具体的な定義はありません。創業の浅い企業のことを指す場合もあれば、IT・Web系のビジネスなどにより、まだ世の中にない新しい価値を生み出そうとする企業を指す場合などもあります。

こちらの記事では主にIPO(新規株式公開)やM&AによるEXIT(イグジット)を目指す企業のことをベンチャー企業と定義してご紹介します。このようなベンチャー企業は多くの場合、ベンチャーキャピタルなどより出資を受け、赤字を掘りながら急成長を目指す、所謂、Jカーブと呼ばれる成長曲線を描きながら事業を推進される企業が多いです。

また、関西をはじめ地方では事業承継をきっかけに、事業変革をされ、ベンチャー企業へと変化を遂げることも珍しくありません。例えば関西では先代では繊維を扱う事業を展開していたものの、代替わりのタイミングで繊維とテクノロジーを絡めたIoT事業へと移行し、IPOを目指す企業などがあり、アトツギベンチャーと称するケースもあります。

30代でベンチャー企業に転職するメリット

こちらでは30代でベンチャー企業へ転職する際にどのようなメリットがあるか解説していきます。ベンチャー企業への転職を検討されている方は是非ご参考ください。

業務範囲

多くのベンチャー企業では、ルーティン業務をこなすだけではなく、自身の業務範囲を超えて様々な業務を行う必要があります。これは単純な人員不足であるが故にこのような働き方になる場合もあれば、外部環境の変化などを鑑みた新設部門立ち上げ等に伴う兼務体制によって業務範囲が拡大するといった場合もあります。このような兼務体制になりやすい背景に関して解説します。

ベンチャー企業の戦場は激戦であり、同じような新進気鋭のベンチャー企業が競合になる場合もあれば、大企業が新規事業で参入してくるような場合もあります。例えばそのような競合の動向を踏まえ、事業優位性確立のために当初のビジネスモデルの拡張、あるいは業務提携などの仕掛けに動くようなイメージです。このような場合に、専任者を早々に外部から迎え入れることはそうそう簡単ではなく、社内の人材が兼務しながらプロジェクトを運用することが多いです。

このように聞くと、ベンチャー企業で就業することは大変に思われるかもしれません。しかし、幅広い業務に関与することで、事業や会社の全体像を俯瞰した視点で仕事に臨むことが出来るため、自分の仕事が会社の成長にダイレクトに直結する手触り感などを持てるやりがいがあるでしょう。大企業では20代、30代のうちにこのような感覚で仕事をできる機会はそこまで多くないはずです。

昇進・昇格の機会

入社後に成果を上げれば早期に管理職についたり、事業責任者へ抜擢されたりなど、昇進・昇格機会があるのもベンチャー企業のメリットといえるでしょう。ベンチャー企業の場合、プレイヤーとして活躍する社員は20代が中心であることが多いです。実務経験だけでなく、後輩社員の育成経験などを有する30代の年代層には、それらをまとめた仕組み作りなどを期待されることが多くなります。そのため、入社後に早い段階で管理職に登用をされることも多いです。

ただ早期に管理職になれる可能性がある一方、年功序列文化のベンチャー企業はイメージされる通り、ほとんどありません。30代、40代だから管理職になれるというわけではなく、成果や周囲を牽引できるなどのリーダーシップを発揮することが前提となりますのでその点は認識しておきましょう。

大企業で上が詰まっている中、なかなかマネジメントポジションなどへの昇進機会が見込みづらい環境におられる30代にとっては、早期に昇進・昇格機会のあるベンチャー企業への転職はメリットが多いのではないでしょうか。

経営者視点

大手企業と比較してベンチャー企業では、CEO、CFO、CMOなど経営者と近い距離で仕事ができる環境の場合が多いです。このような環境下においては経営者が競合など外部環境に対してどのようなことを考え、経営判断を下しているかを身近で感じられる瞬間も多いでしょう。また、社長をはじめとした役員と共にプロジェクトを進めることも珍しくありません。

ビジネスパーソンとしてキャリアアップを目指す上で、会社や事業の未来を見据えた「決断をする力」は非常に重要な要素のひとつです。不確実性がますます高まる高いビジネスの世界で、どのような観点で物事を考え、何に時間や予算を投資するのか、このような意思決定を経営者の間近で感じられる環境は、大きな成長の糧になるかと思います。

ストックオプション

IPO(新規株式公開)を果たしたベンチャー、スタートアップ企業の経営者や従業員が、ストックオプションで多額の利益を得たという話を耳にすることもあるかと思います。2018年に上場を果たした株式会社メルカリでは、「35人がストックオプションで6億円以上の資産を得た」と話題になりました。ベンチャーへの転職に夢を与えるような内容に、ベンチャー企業へ転職することに興味を持った方もいるかもしれません。

ストックオプションとは、新株予約権の一種です。新株予約権は、「あらかじめ定めた条件で、将来に株式を購入できる権利」のことです。そのうち、主に社内の人材向けに発行されるものをストックオプションと言います。社内の役員や従業員向けに付与されるストックオプションでは、「あらかじめ決めた株価(行使価額)」で株式を購入できるため、将来、株価が上昇していれば、大きな利益が得られるように設計されています。

ベンチャー企業では、シード期やアーリー期は特に、給与が低い傾向にあります。大企業や大手コンサルからの転職者であっても、前職の給与から大幅に減少するケースがほとんどです。事業への多額の投資が必要で、まだ大きな利益が得られていない状態であれば、致し方ないとも言えるでしょう。それでも転職などで入社し、会社の成長発展のために力を尽くしてくれる人たちへのインセンティブ的な報酬として、IPOを目指すベンチャー企業の中には、ストックオプション制度を導入している会社があります。

30代でベンチャー企業に転職する際にデメリットに感じ得ること

多くの魅力があるベンチャー企業ですが、一方でデメリットと感じ得ることもあります。ベンチャー企業に転職をした際に、どのようなことがあるか事前に認識して、後悔しないようにしてください。

年収・待遇ダウン

これまで大企業に勤務されてきた場合、ベンチャー企業へ転職すると年収が下がる可能性があります。30代の転職の場合、子育てや家庭との両立なども考えなければならない方も多いかと思います。家庭との両立を度外視した無理のある転職をしても、当然ながら長続きしません。綺麗事抜きに年収は決断する上での大きな要素のひとつになるでしょう。

特に創業から間もないベンチャー企業の場合、最初から十分に利益を確保できる経営基盤を確立できている企業の方が少ないです。そのような中、業務量に対して年収をはじめとした待遇面が伴わないと感じる可能性もあります。また、メリットにも記載はしましたが早期にマネジメントポジションへ抜擢され、昇進・昇格する可能性はあります一方、事業が軌道に乗るまでは大企業の同じポジションと比べると、水準が低い場合が多いです。

ただし、IPO直前期など事業フェーズが進み、収益力がある程度担保できるようになったベンチャーであれば、人件費にも十分還元が出来る体制の場合が多く、役員でなくとも1,000万超の提示があることも、珍しくありません。

このようにベンチャー企業の転職は年収が下がる可能性が高いものの、事業フェーズによって変わります。このような点を踏まえ、どのような事業フェーズのベンチャー企業であれば長期的に頑張ることができそうか検討の上、転職活動に臨まれることをおすすめします。

事業の安定性

ベンチャー企業の展開するビジネスは、まだ世の中にない新しい価値の創造などを目指したものが多いです。その為、良いプロダクトだったとしても最初はなかなかマーケットに受け入れて貰えず、売上獲得に苦戦することがほとんどです。

今ではIPOを果たした企業でも、創業当初のビジネスモデルはうまくいっていなかったということもあります。その中で、ビジネス方針を転換(ピボット)し、当初のターゲット顧客を変更する、あるいはビジネスモデルをがらりと変えるなど、試行錯誤をしながら事業を形にしているケースも珍しくないのです。また、ある程度事業が軌道に乗ったとしても、大手企業の参入などが待ち構えています。事業の収益化、そして競合優位性の確立が実現できるまでは、なかなか安心はできないかと思います。

安定した生活を求める方は、ベンチャー企業への転職にはこのようなリスクがあることを理解しておく必要があります。転職活動を始める際に、その認識を家族と共有の上、ベンチャー企業への挑戦を決断してください。

カルチャーマッチ

従業員規模の小さいベンチャー企業では、経営者の考え方が職場環境に色濃く影響します。例えば、営業出身の経営者であれば、体育会系のような会社風土であったり、エンジニア出身の経営者であれば、モノづくりを第一にした組織の作り方をしていたりします。その他にも複数の起業経験がある連続起業家の場合には、創業当初より仕組み作りに力を入れているなど、経営者のバックグラウンドや考え方に組織は非常に影響を受けます。

自分がどのような企業文化、経営方針の環境であれば頑張れそうか自己認識を深め、その上でカルチャーマッチしそうな企業を選択されると良いかと思います。最近では代表の方がTwitter、note等でどのように会社経営を考えているか情報発信をしているケースも多いので、応募の前にはそのような情報も参考にすると良いでしょう。

30代でベンチャー企業への転職を成功させるポイント

ここまではベンチャー企業に転職するに際してのメリット、デメリットについて解説をしました。これらを踏まえつつ、こちらでは自分にあったベンチャー企業への転職を実現させるために準備すべきことを解説します。

キャリアプランの具体化

役職が上がる、年収が上がる、などキャリアアップの定義は人によって違います。転職した後に後悔しないためには、自分自身のキャリアプランを具体化し、そのありたい姿に近付ける可能性が高いベンチャー企業を選ぶ必要があります。

転職活動の際に限らず、キャリアプランが具体化できれば、その実現に向けて短期・中長期で何に取り組むべきかが明確になります。キャリアプランから逆算して目的意識をもって仕事に取り組むのと、漠然と目の前の仕事に向き合う働き方では、当然ながら成長スピードに差がつきます。このようにキャリアプランを明確化した上で転職が必要だと腹落ちした上で転職活動に臨むと、企業のどのような点を確認すべきかも具体化していきます。

例えば早期に役職を上げ、経営ポジションへ挑戦されたいのであれば、どのような評価基準でマネジメントポジションへの登用を決定しているのかを確認するのが良いでしょう。また、自分がそのようなポジションにチャレンジできる余地があるか、現在の経営体制、将来展望などについても理解をしておく必要があるでしょう。

ベンチャー企業に強い転職エージェントを利用

大企業と比べて公開情報が少ないのもベンチャー企業の特徴です。このようなベンチャー企業の情報収集や面接対策などの準備に苦戦をするようであれば、自分が転職したいと思う業界、職種において転職支援に実績がある転職エージェント(人材紹介会社)を利用することも一つの選択肢です。

転職エージェントを活用することで、転職先候補となる企業の良い側面だけでなく、抱えている課題などのネガティブ側面を正しく捉え、ミスマッチの回避に繋げられる可能性を高めることができます。転職活動は情報が生命線となりますので、その点を踏まえ、転職エージェントに限らず、情報収集になり得る手段があるのであれば積極的に活用していくと良いでしょう。

最後に

20代が挑戦するイメージが強いベンチャー、スタートアップ企業ですが、スキルや経験のある30代だからこそ、活躍できる可能性も大いにあります。しかしながら、30代の場合には家庭との両立に無理があるような転職は長続きしません。ベンチャー企業に限らず、転職にはメリット、デメリットは必ずある中、メリットだけでなく、デメリット面も正しく認識した上で決断することを大切にしましょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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