ベンチャー、スタートアップ企業の面接でよく聞かれる5つの質問と回答例

転職先を選ぶ際に、事業の将来性、やりがいなどを重視して、大企業や有名企業ではなく、ベンチャー、スタートアップ企業を候補に考える方も多いでしょう。そこで今回は、ベンチャー、スタートアップ企業の面接でよく聞かれる質問や、面接官に好印象を与える逆質問など、面接の攻略法を解説します。

目次

ベンチャーとは

「ベンチャー」あるいは近い意味合いで使用される「スタートアップ」という言葉に具体的な定義はありません。創業の浅い企業のことを指す場合もあれば、IT・Web系のビジネスなどにより、まだ世の中にない新しい価値を生み出そうとする企業を指す場合などもあります。

こちらの記事では主にIPO(新規株式公開)やM&AによるEXIT(イグジット)を目指す企業のことをベンチャー、スタートアップ企業と定義して解説いたします。このような企業は多くの場合、ベンチャーキャピタルなどより出資を受け、赤字を掘りながら急成長を目指す、所謂、Jカーブと呼ばれる成長曲線を描きながら事業を推進される企業が多いです。

また、関西をはじめ地方では事業承継をきっかけに、事業変革をされ、ベンチャー企業へと変化を遂げることも珍しくありません。例えば関西では先代では繊維を扱う事業を展開していたものの、代替わりのタイミングで繊維とテクノロジーを絡めたIoT事業へと移行し、IPOを目指す企業などがあり、アトツギベンチャーと称するケースもあります。

ベンチャー企業の面接でよくある5つの質問

まずは実際にベンチャー、スタートアップ企業でよく出される質問例、並びに質問の趣旨などについて解説をします。転職活動を進める上でどのような質問が多いかを理解しておくことも大切ですが、本質的には面接官がその質問を通じて何を知りたいと思っているのかを理解の上、面接に臨むと良いでしょう。

転職理由

最もよく聞かれる質問の一つは転職理由です。ベンチャー企業、あるいはそれ以外の企業に応募する際にも転職理由では、できる限り、自分が置かれている環境、状況を詳細に面接官に伝えることを意識して臨むことが大切です。例えば「やりたいと思っていることができないから」という転職理由だけを伝えた場合、当然ながら仕事は自分のやりたいことばかりができる訳ではない中、面接官はこの人を受け入れても大丈夫だろうかと懸念する可能性があります。このような面接官との認識の相違を無くすためにも、自分が置かれている環境、状況について詳細に伝えることが大切です。

例えば前述の場合でいえば、「年功序列風土が強く、35歳以上でマネジメントのポジションに就けている人が1人もいない環境である中、年齢を重ねるのを待つよりも、早く挑戦できる機会を得たい」などの事実と併せて転職理由を伝えると良いでしょう。

その他にも例えば「過酷な労働環境で長期就業が難しい」という転職理由であれば、「残業時間が毎月100時間を超えるような職場環境であり、またそのような体制を是正する方針がない」など定量的な数字や今後の見通しなどと共に伝える形などが良いかと思います。

志望動機

続いてよく聞かれる質問は「志望動機」になります。ベンチャー企業に限らず、面接を受ける際、志望理由は必ずといって良いほどよく聞かれる質問ですが、ベンチャー企業の面接官が見ている観点は大企業、有名企業と異なってきます。

ベンチャー企業は、当然ながら大手企業と比べて認知度が低く、また業界内での実績などもまだまだこれからという段階の企業が多いです。「若い会社で働きたい」「新しいサービスに携わりたい」という志望動機が悪い訳ではないのですが、業績が上がりづらかったり、急成長の中で組織が痛んで離職者が一時的に多くなる瞬間など、ハードな職場環境になる可能性が高いのもベンチャー企業の特徴と言えます。

人数が多い訳ではないベンチャー企業にとって人材の離脱はかなり影響が大きいです。終身雇用とは言わないものの、事業が安定軌道に乗るまでの期間は活躍して貰いたいというのが多くのベンチャー企業の本音であるのは言うまでもありません。そのため、軽い気持ちで臨んでいる応募者を受け入れる判断をするベンチャー企業は、当然ながら多くはありません。志望動機を考える際にはそのような前提を踏まえていく必要があります。

そのような前提の下、志望動機を考えていくに際して大切にしてほしいことは、自身のキャリアプランと応募先のベンチャー企業の目指すビジョンがリンクしているかどうかというポイントになります。例えば「IPOを実現したい」という志望動機を伝えても、寧ろIPOで資金調達をした後に大きな仕掛けをしていきたいと考えているベンチャーの場合、IPO後の一番勝負をかけたいときにこの応募者は辞めているかもしれないという懸念を持つでしょう。

そのような背景を踏まえ、志望動機を考える際には応募先のベンチャー企業の描くビジョンや成長戦略とキャリアプランがリンクしているかどうかをあらためて整理して臨むとよいでしょう。これは面接をクリアするテクニックというよりは、企業選びの基準にもなりますので是非ご参考ください。

また、一方で大手企業と比べ情報量が少ないことも、ベンチャー企業へ転職する壁の一つといえます。事前準備で理解をしきれなかったことを素直に伝えた上で、面接の場で確認したいことを伺い、面接の最後にあらためてどの部分に魅力を感じたのかなどを伝えるというケースもあります。情報量が少ない企業であるにも関わらず、あまりに具体的な志望動機は逆効果に働くこともありますので、企業が公開している情報量に応じ、臨機応変に対応していくことが大切です。

自己PR

3つ目は自己PRです。自己PRは「自己PRをお聞かせください」あるいは「これまでの成果・実績を聞かせてください」という表現で質問をされるケースも多いです。このようなベンチャー企業での自己PRに関する質問は、入社後にどれくらいの成果を上げられるか、業務に対する能力を確認されたい趣旨であることが多いです。

看板やブランド力が無い、また「成果の出る仕組み」も未整備な場合が多いベンチャー企業では、自ら考え行動し、事業を形にできる人材が求められます。これまで大企業で働いていた場合、会社の看板や商品・サービスの魅力といった大企業ならではの「成果の出る仕組み」に依存してしまい、具体的な成果を上げる工夫にそこまで重点的に取りくめていなかった方もおられるかと思います。

このようなベンチャー企業で問われる自己PRで大切なことは「再現性」です。自己PRのゴールは、応募先であるベンチャー企業に活躍イメージをもって貰えるかどうかであり、企業が抱える課題や現場のことをイメージして臨むことが大切です。いくらすごい実績を引っ提げて自己PRをしたとしても、それが例えば会社やブランドの看板に依存する要素が強いなど、ベンチャーで再現性の見込めないものであれば人事の立場としては採用に躊躇するでしょう。

大手企業、老舗企業、有名ブランド企業など、看板のある企業に在籍している方は、「月に契約を●●件取った」「売上目標▲▲円を達成した」など、ただ実績をアピールと併せて、会社の看板に依存した仕事になっていないかなど気をつけて自己PRの棚卸をしてください。どのような課題に対して何を目的に行動し、成果につなげることができたのかを具体的に説明できるようにし、その取り組みが、会社の看板のない環境でも発揮できる「再現性」のある取り組みかどうかをしっかりアピールしていきましょう。

実務への抵抗感

このような実務に関する質問は、30~40代などのマネジメント経験のある方が、ベンチャー、スタートアップ企業に転職する際に聞かれやすい質問です。これまでマネジメント職についていた場合、部下やチームメンバーへの指示や教育育成など、マネジメント業務を中心に行う反面で実務から遠ざかっている方は多いです。

しかし、ベンチャー企業では、マネジメント職の立ち位置も大企業とは異なる場合が多いです。多くのベンチャー企業のマネジメント職は、人員が足りない中、プレイングマネジャーとして、自身も実務をこなしながら部下をマネジメントするという働き方をされています。そのため、面接では実務とマネジメントの両方の経験をアピールし、また実務に関しても前向きに考えているスタンスなどをアピールするのが良いでしょう。

キャリアプラン

ベンチャー、スタートアップ企業では、事業成長のために、与えられた仕事をこなすだけではなく、自分自身で考え行動する自走力が求められます。そのため自分のキャリアプランについて質問されるケースも非常に多くあります。その際に、例えば経理職であれば「会計スキルを磨いてIPO(新規株式公開)の実現に主体者の一人として関与したい、そのために短期では●●について力を入れて取り組んでいきたい」というように、具体的なありたい自分と、それに向けてどのような取り組みをしていきたいかを整理しておくことをおすすめします。

漠然とした「成長したい」「頑張ります」という意欲をアピールすることも大切です。しかし、自身のキャリアビジョン、その実現に向けて何が必要か自覚して取り組んでいきたいという具体的な目標を持っている求職者の方が、将来的に活躍できるイメージをもって貰いやすいでしょう。

ベンチャー、スタートアップ企業の面接官に好印象な逆質問

ベンチャー企業の面接では、面接官からの質問に答えるだけではなく、効果的な逆質問も用意しておくのがおすすめです。求職者に対して、質問を求める面接官は、面接を受けるにあたって事前に自社のことを調べているか、入社の意欲がどの程度あるかなどを見極めています。特に入社意欲の高い方の場合、入社後の働き方や現場の課題など、具体的な質問をすることがあります。そのような質問をすることで、面接官に自社で働くことを真剣に考えてくれているという、好印象を持ってもらえるからです。

そのような前提を踏まえ、質問する際は、ホームページや求人要項で公開されているような内容、休日、残業などの待遇面についての質問よりも、公開内容ではとらえ切れない踏み込んだ質問などが効果的でしょう。効果的な質問の一例として以下の内容が挙げられます。

逆質問例

・現在の事業や組織で課題に感じている部分はどのようなことでしょうか
・中長期でどのような事業展望を考えているのでしょうか
・このポジションに期待すること、解決したい課題は何なのでしょうか
・現場ではどのような問題があるのでしょうか
・入社までに勉強しておくべきことなどはあるでしょうか

また、質問が多ければ良いというものでもなく、ただ単に、気になることを問うような、意図の見えない質問をしてしまう場合は、逆効果になることもあります。特に意図のない質問をした際に、面接官より「その質問の意図は何でしょうか」と逆に問われ、あたふたしてしまうようなシーンも決して少なくありません。自分が入社する上で、どのような情報が必要であるかを事前に整理した上で、質問をすることをおすすめします。

面接を成功させるために

これまで挙げた内容を踏まえ、ベンチャー、スタートアップ企業の面接を受ける際に面接練習や事前対策をしていく大切さについてご理解いただけたのではないかと思います。こちらでは選考に進んでいく上で事前にやっておくべきこと、知っておくべきことなどについて解説していきます。

企業の研究を徹底的に行う

好きなことであれば何でも知りたくなる心理と同じように、本当に入社したい企業であれば多くのことが気になるはずです。企業側からしても、自社に興味をもっている応募者の存在は好意的に見えるものです。基本的なこととしては、入社を目指す企業のコーポレートサイトは隅々まで内容を確認するようにしましょう。事業内容、沿革などの会社の全体像を捉える内容の他、採用ページや人事ブログなど、どのような人材を求めているかという情報は特に、読み込んでおくことをおすすめします。

また、採用広報に力を入れている企業の場合、代表者や人事担当者がTwitterやnoteをはじめとしたSNSなどで、情報を発信していることもあります。コーポレートサイト情報と併せて、そのような発信情報もチエックすると良いかと思います。面接前の企業研究は、徹底して情報をリサーチすることで、具体的な志望理由などを固めることに役立つことはもちろん、効果的な質問を用意することにもつながります。ベンチャー、スタートアップ企業に限らず、面接の際には、徹底した企業研究で万全の対策をし、本番に臨むようにしましょう。

本番の面接に向けて練習を何度も行う

企業研究をした後は、実際の面接を想定した練習を行いましょう。知人や家族など身近な人などにお願いし、本番を想定した模擬面接を行うと良いかと思います。可能であれば録音や録画による面接対策も効果的です。録画を見返すと、自覚できていなかった細かな癖や、不適切な言い回しなどに気付くことができるでしょう。質問に結論から回答できているか、話が長くなっていないか、自信のある立ち振る舞いが出来ているかなどを客観的に捉え、改善につなげられると良いでしょう。

内定

内定が出た際に貰う内定通知書に書かれている待遇や働き方を理解しておくことも転職を成功させるために重要です。また、「ここは譲れない」とと思う内容と乖離がある場合は、このような背景などを確認の上、条件の摺合わせなどの交渉を行っていく方が好ましいでしょう。

例えば希望年収と提示年収に乖離が発生したことが何の要因によるものなのか、例えば保有資格などに起因するものであれば、入社後早々に資格取得が出来れば、そこまで時間を要さずにギャップを埋められるかもしれません。内定の際にはこのような進め方も配慮の上、丁寧にコミュニケーションをとり、内定承諾をするか否かの最終的な意思決定に役立てましょう。

退職交渉

転職を成功するためには退職交渉を円満に終わらせることが欠かせません。まずは退職交渉を円満に進める第一歩として、直属の上司に退職の意思を表明しましょう。そこで退職の意志が堅いこと、そしていつまでに退職したいと考えているのか伝え、退職手続きを進めていきましょう。

尚、退職交渉時には入社する企業名は必ず伏せてください。現職と転職先に思わぬところで取引関係があったり、先々に再び転職をした場合のリファレンスチェックのリスク等、転職先を公表することは多くのリスクを伴います。真摯な対応は必要ですが、後ろめたさから必要以上の情報を伝えてしまうことは避けましょう。

転職エージェント(人材紹介会社)の利用

それでも情報収集や面接対策などの準備に苦戦をするようであれば、自分が転職したいと思う業界、職種において転職支援に実績がある転職エージェント(人材紹介会社)を利用することも一つの選択肢です。転職エージェントを活用することで、転職先候補となる企業の良い側面だけでなく、抱えている課題などのネガティブ側面を正しく捉え、ミスマッチの回避に繋げられる可能性を高めることができます。転職活動は情報が生命線となりますので、その点を踏まえ、転職エージェントに限らず、情報収集になり得る手段があるのであれば積極的に活用していくと良いでしょう。

最後に

ベンチャー、スタートアップ企業へ転職を目指すのであれば、徹底した事前対策と効果的な質問が重要です。また、ベンチャー、スタートアップ企業は公開されている情報が少ないため、自力で情報収集や対策をするだけでなく、転職エージェントを利用して企業情報の収集や、面接のサポートを受けることもおすすめです。客観的なアドバイスを受けることで入念に準備することができ、理想とするベンチャー、スタートアップ企業への入社が実現できるでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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