SNSを活用した転職活動のポイントと注意点

スマートフォンの普及に伴い、Facebook、X(旧 Twitter)、LinkedInなどのSNSがビジネスシーンでも活用されることが一般的になりました。転職市場でもSNSを通じて転職の情報収集をする、あるいはSNSをきっかけに企業と接点を持ち、実際に転職をするということも珍しくなくなりました。

今回はこのようなSNSを活用した転職活動について解説します。うまく活用すれば転職活動を有利に進められる一方、SNS特有の注意しなければならないポイントもありますので、是非こちらの記事を参考の上、転職活動に役立ててください。

目次

SNSとは

SNSはSocial Networking Service(ソーシャルネットワーキングサービス)の略になります。名称の通り、Web上で、ユーザー同士が繋がれるプラットフォームを提供しているサービスの総称をいいます。代表的なSNSとしてはFacebook、X(旧 Twitter)、LinkedIn、Instagram、mixiなどが挙げられるでしょう。SNSはこの10年で増えましたが、テキストでのコミュニケーションに主体を置くSNS、画像でのコミュニケーションに主体を置くSNSなど、SNSごとにその特性は異なります。

また、SNSによっては数万名などに至るようなフォロワー数の多い影響力の強いユーザーをインフルエンサーと呼び、2010年代前半よりインフルエンサーを活用したプロモーションなどに力を入れる企業も徐々に増えてきました。近年ではこのようなプロモーションだけにとどまらず、転職活動などのシーンにおいてもこのようなSNSを活用した事例が台頭してきています。

転職活動とSNS

X(旧 Twitter)などのSNSを活用した採用広報を導入している企業が増えていく中、気軽に転職に関する情報収集などをしやすくなりました。SNSを使った転職では、転職サイトなどを通じての転職活動と比較すると、求職者と採用担当者の距離が近く、書類選考無しで面談に発展することなどが多くため、スピーディーに活動することができるといったメリットなどがあります。

特にIT・Web業界の経営者や人事担当者にはプレスリリースなどをSNSで積極的に情報発信をしていることも多く、リアルタイムな情報収集をすることができるツールとしての非常に有効といえるでしょう。またプレスリリースだけでなく、経営者個人のアカウントでは会社経営で大切にしていることなどを発信している経営者も多く、会社の企業文化などを中心とした企業理解に繋がる内容も多いです。

また、転職活動においてはPRに繋がる部分も多く、その一つがフォロワー数です。SNSでは炎上商法と呼ばれる手法もある中、フォロワー数が多いことが必ずしも素晴らしいという訳ではありませんが、フォロワー数が多いことは転職活動においてメリットになる可能性が高いです。尚、X(旧 Twitter)ではフォロワー数1,000名程度を一つの目安に考えて貰うと良いかと思います。

例えばベンチャー、スタートアップ企業などをはじめとする自社の認知度アップに向けて情報発信に力を入れている企業にとってはフォロワー数が数千人、数万人いるような影響力の高い方が社員になってくれることは非常にメリットに感じるでしょう。また、Web領域を中心にした広告代理店などマーケティング系企業の中には、このようなフォロワー数を、人を動かす仕掛けができるスキルの一つとして評価してくれる会社もあります。

SNSを活用した転職活動ではこのようなメリットがあります。しなしながら、SNSはFacebookやX(旧 Twitter)のように以前からあるもののの他、YOUTRUSTのように最近台頭してきたものまで様々です。数あるSNSの中でも、どのSNSが転職活動にとって有効なのかについて次の章で解説していきます。

転職活動で有効なSNS

こちらでは代表的なSNSの特性、転職活動においてどのような活用をしていくと良いかについて解説していきます。全部を使ってみることも悪いわけではないですが、自分がどのように転職活動を進めたいかを整理の上、軸となるSNSをどこに置くのか定めて運用していくことが良いでしょう。

X(旧 Twitter)

X(旧 Twitter)は2006年に米国で誕生したサービスであり、SNSの先駆け的な存在といえるでしょう。2021年9月の段階で日本国内のTwitterユーザーは5,300万名と言われており、日本人の半数近くが利用するメジャーなSNSの一つです。2022年にはテスラ社、スペースX社の創業者であるイーロン・マスク氏が440億ドル(約5.6兆円)の金額でM&Aを行ったことでも話題になりました。

X(旧 Twitter)の特徴・特性としては、何と言っても140文字以内で発信できる気軽さでしょう。Twitterが日本に上陸した当初は「□□なう」などという言葉が流行しましたように、日常の出来事などをつぶやく利用が多い印象のSNSでした。

しかしながら、インスタグラムのように日常の写真などを投稿するSNSにそのようなユーザーが軸足を移しつつある中、ビジネス情報の発信が占める比率が徐々に高まってきた傾向にあります。今では「Twitter採用」、「Twitter転職」という言葉も誕生するまでに、転職活動と密接なSNSになりました。

前述のように、経営者や人事担当者などがプレスリリース情報などを発信したりすることが多い中、転職活動の情報収集には役立つでしょう。さらには、X(旧 Twitter)上での経営者と社員、他ユーザーとのやり取りなどを通じ、企業風土などの理解に繋げられる点などはメリットとして大きいでしょう。ただし、大前提として転職に特化したSNSではないため、直接的に求人情報を探すことには不向きかもしれません。

実際にX(旧 Twitter)を活用して転職活動を有利に進めるためには、企業の目に留めて貰える仕掛けをしていくことが大切です。例えば自分のことを評価して貰える企業に見つけて貰えるように、プロフィール欄、あるいはツイートで、自分の経験、挑戦したいことなどを発信していくことなどが挙げられます。また、その際に#(ハッシュタグ)を利用しながら情報発信をするユーザーもいます。

その他のポイントとしてはX(旧 Twitter)は実名で運用しているユーザーも多い一方、アカウント名では実名を伏せることで勤務先に見つからないように転職活動に役立てているユーザーもいます。転職活動での使い方が固定されていないだけに、自分に合った使い方を見つけるまでは大変かもしれませんが、まずは他のユーザーがどのようなプロフィール、ツイートをしているかなどを参考にしながら色々と試してみると良いでしょう。

LinkedIn (リンクトイン)

LinkedInは2003年に米国で誕生したサービスで、グローバルで見た際には6億人ものユーザーが利用している世界最大級のビジネス特化型のSNSです。2016年にはマイクロソフトが262億ドル(約3兆円)という金額でLinkedInをM&Aしたことも話題になりました。

日本人ユーザーは280万人以上と言われており、X(旧 Twitter)などと比べるとまだまだ少ないのですが、今後ユーザー数が一挙に増加していく可能性が高いと言われています。X(旧 Twitter)とほぼ同時期に誕生したサービスにも関わらず、このようなユーザー数の差が表れた背景には日本の転職市場固有の問題があると言われています。

海外では転職を重ねてキャリアアップをしていくことは一般的であり、ビジネスパーソンはキャリアアップにつながる情報、オファーが届きやすい状態にしておきたい中、LinkedInの利用は順調に進んでいきました。一方、今でこそ日本でも転職が一般的になりましたが、ひと昔前までは転職活動をしていることが勤務先に明るみになってしまうことで重要な仕事のアサインが無くなったりということもあるような時代でした。

そのような中、実名で登録することが基本とされるLinkedInの利用をリスクに思うユーザーも少なからずいたのではないかと思います。しかしながら、転職、副業などが一般的にとなった今、日本のビジネスパーソンも自分にとって有益な情報、オファーを貰いやすい状態を築いていく手段の一つとしてLinkedInの利用が増えてきている傾向にあります。

LinkedInはFacebook、X(旧 Twitter)などと異なり、転職をはじめビジネスに特化している分、求人情報などに直接的にアクセスがしやすいです。また、企業のリクルーターや転職エージェントより具体的な求人情報のオファーが届く構造のサービスでもあり、本格的に転職活動で情報収集をしていく場合に利用するSNSとしては有効なツールの一つと言えるでしょう。

YOUTRUST(ユートラスト)

YOUTRUSTは他のSNSと比較すると最も歴史が浅いSNSです。YOUTRUSTは2017年に日本で誕生したSNSであり、2021年にはDeNAの創業者である南場智子氏が代表を務める株式会社デライト・ベンチャーズをリードインベスターとしてシリーズBラウンドで4.5億円を調達するなどスタートアップとして成長著しい企業でもあります。

YOUTRUSTでは、プラットフォームを通じて転職や副業の情報収集、マッチングが可能です。しかしながら、YOUTRSUT社は、YOUTRUSTを転職サービスではなく「キャリアSNS」という位置づけをしており、今すぐの転職や副業を考えていない、転職市場では潜在層とされていたユーザーにも利用を推奨を進めており、ユーザー数も急激に伸びています(2021年12月には10万ユーザーを突破したと発表がありました)。

このようにYOUTRUSTは現在も進化中のSNSでもあり、まだまだ追加機能などが実装されることも想定されます。特に他SNSと異なり、日本発のSNSであり、日本の転職市場を踏まえたサービスとして良い意味で形を変えていくことが期待できるでしょう。

SNSを活用した転職活動での注意点

日本ではIT・Web業界の企業こそ積極的にSNS採用を取り入れているものの、日本全体で見た際にはSNSでの採用活動を導入できている企業がまだまだ少ないので、自分が希望する企業からアプローチをなかなか貰えないことも珍しくありません。

このような前提を踏まえた場合、SNSだけで転職活動を進めると情報の網羅性を担保できない可能性が高いです。転職活動の動き出しでSNSを活用する分には良いのですが、本格的に転職活動を進める際には、転職サイトや転職エージェントなどと併用しながら臨むのが良いでしょう。

また、SNSで企業側と接点を持った際に、必ずしも自分の経験に合致する求人の募集が出ているとは限りません。時には詳細な勤務条件が不明瞭なままに選考が進んでしまう場合もありますので、企業側に働きかけ、自分から主体的に情報を取得しに動いていく必要があります。

そして最も大切なこととしては、自分の情報発信の内容です。他人に対する批判、不確かな情報の発信、他人のプライバシーにまつわる投稿、愚痴などネガティブな内容、公にしてはいけない情報などを投稿しないように気をつけましょう。このような発信を目の当たりにした場合、企業の採用担当者は当然ながら躊躇します。

SNSは情報発信の役立つツールである一方、炎上し、企業の評価を著しく落とすリスクも秘めています。そのような中、採用担当者は不特定多数の人が見るSNSでの情報の扱いに関するリテラシー、マナーがあるかなどの見極めは年々重視する傾向にありますので、自分には誰かを貶める意図、悪意がなかったとしても、そのような誤解を生みかねないような内容の発信が過去にないかなどについて精査の上、転職活動に臨むと良いでしょう。

最後に

今回は転職活動とSNSについて解説をしました。それぞれのSNSの特徴・特性を理解し、転職活動でどのSNSを活用しながら情報収集をしていくのかなどの方針を定めていくようにしましょう。

また、SNSを活用することで有利に転職活動を進められる一方、自身の発信が仇となってしまうリスクもあるので、SNSでの情報発信にはくれぐれも注意しましょう。今回の記事を参考にして頂き、転職活動に役立てて貰えると幸いです。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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