一昔前の「育児は女性が担うもの」といった風潮が根強かった時代を経て、近年の少子化対策・労働力不足のため、世論は「育児は夫婦が協力しておこなうもの」と徐々に変わりつつあります。特に注目されているのが「男性の育休」です。
かつて育休を取得する人のほとんどが女性であり、男性が育休を取得するケースは非常に珍しいものでした。しかし、2022年の法改正に伴い、育休を取得しやすい環境づくりが企業に対して義務化され、男性も育休を取得しやすくなりました。とはいえ、法改正からはまだ間もないことから、制度の概要についてはまだまだ知られていないことも少なくありません。本記事では、男性育休における制度の特徴や義務化の理由、取得するメリットなどについてご紹介していきます。
男性のための育休とは?
男性の育休とは、冒頭でも触れた通り男性が取得する育休(育児休業)のことです。2022年に「育児・介護休業法」が改正され、企業に対して男性育休の取得促進を義務化したり、男性が取得できる休業内容が変更されるなど、従来の制度から大きな変更がありました。
男性の育休は、女性の育休と同様に、休業中は一定の給付金が得ることができます。育休は女性が取得するイメージが強かったものの、この法改正によって男性も育休を取得しやすくなり、夫婦での子育てを後押しへとつながっています。
男性の育休の特徴
男性のとることのできる育休にはどのような特徴があるのでしょうか。一般的に認知されている育休制度と共通する部分もありますが、休業期間や、他の制度との併用などについて詳しく解説していきます。
夫婦ともに育児休業を取得すると期間延長が可能
通常の母親のみが取得する育休では出産予定日から子どもが満1歳になる前日まで取得できるのが特徴ですが、夫婦両方が育休を取得すると、子どもが1年2か月に達するまでの間、取得することが可能です。この2か月分のメリットが受けられる仕組みをパパママ育休プラス制度と言います。
ちなみに、育児休業は分割して取得することもできるため、「妻の育休と入れ違いに交互に休業したい」「重要な案件がひと段落するタイミングで休業したい」などの都合に合わせて柔軟に育休を取得できます。ただし育休の分割は最大2回までであるため、スケジュールや夫婦間の都合などと照らし合わせたうえで計画的に取得することが大切です。
配偶者が専業主婦であっても取得できる
新しい男性の育児休業取得制度の特徴の一つが、配偶者が専業主婦であっても取得できる点です。法改正以前は、配偶者が専業主婦である場合「配偶者が常に育児に専念できるはず」とされており、男性の育休申請を拒否されるケースがありました。しかし配偶者が専業主婦であっても取得できることから、企業は上記を理由に労働者の育休申請を断ることはできなくなり、育休取得のハードルが下がったと言えます。
産後パパ育休と併用できる
育児休業は産後パパ育休(出生児育児休業)とあわせて申請・取得することができます。産後パパ育休は、育児休業とは別の制度です。「男性版の産休」の位置づけで産婦である女性労働者以外の人を対象に、2022年に創設された新しい休業制度です。子どもが生まれてから8週間以内に限り、4週間まで休業できる制度のことです。この4週間の休業は最大2回まで分割することができるので、通常の育児休業で2回休業した場合、合計4回まで分割して休業することが可能です。
また労使協定を締結した場合に限り、男性側の合意した内容で休業中にスポットで就業することもできます。「休業中に就業する」というのは不思議な状況に思えますが、育休がとりにくい状況にある人が少しでも休業しやすくするために工夫された内容になっている制度です。
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企業に男性育休の取得促進が義務化された理由
もともと育休制度は存在していましたが、2022年の法改正で「男性育休」の取得がこれまで以上に促進されるよう企業に対して義務を設けることとなりました。男性育休の取得促進が義務化された理由としては、多くの人が育休を取りたいと思っているが職場の雰囲気的に取りにくいと感じている、特に男性はその傾向が顕著であることが分かりました。実際に取得率は厚生労働省「令和3年度雇用機会均等基本調査」によると、令和3年度の育休取得率は、女性85.1%に対し、男性は13.97%となっています。
もともと男性が育休を取得しない理由として「同僚が取得していなから育休を申請しにくい」「仕事を休むと迷惑になるから育休を取得することに躊躇する」「上司の理解が得られない」といった声がありました。こうした事態を打破するために法改正がおこなわれ、企業が従業員の育休取得促進をすることが義務化されました。
男性が育休を取得するメリット
男性育休を取得するにあたり、どのようなメリットがあるのかは多くの方が気になるところであると思います。ここからは、男性が育休を取得して、育児に参加するメリットを見ていきましょう。
配偶者の負担軽減につながる
男性育休を取得するメリットとして、まず挙げられるのが配偶者の負担軽減につながることです。これまでは母親が1人で子育てをする、いわゆる「ワンオペ育児」が深刻な問題となっていました。とくに出産間もない体調で1人で育児をすることは大きな負担です。個人差はあるものの、産後1年ほどまでは体調が安定しないことも多く、そのような中で子育てを担うのは心身にストレスを与えることにもなりかねません。
男性が育休を取得できれば、育児のサポートができるだけではなく、体調がすぐれない配偶者を支えることもできるでしょう。また、男性の積極的な育児参加は、夫婦間のコミュニケーション活性化も期待でき、ふたりの関係性を深められるといったメリットもあります。子育てを通して、良い家庭環境を築くことを目指せる点も男性育休を取得する大きな魅力と言えそうです。
子どもと過ごす時間を増やせる
男性が育休を取得することで、必然的に子どもと過ごす時間を増やすことができます。普段、外で働いていると、朝には自宅を出なければならず、帰宅も夜であるなど、子どもと触れあえる時間は限られてしまうものです。勤務時間によっては、ほとんど子どもが寝ている姿しか見たことがないといった男性もいるほどで、親子の触れ合い時間の少なさは深刻な問題と言えるのではないでしょうか。
生まれて間もない子どもは成長が早く、「首が座る」「座ることができるようになる」「ハイハイする」などは生まれて1年の間にやってくることが多く、貴重なシーンでもあります。あっという間に過ぎてしまう成長姿を目にしたいという男性にとって、育休の取得は大きな意味のあるものになると思います。
給付金を受給できる
育児休業中は180日間までであれば給与額の67%が給付金として雇用保険から支給されます。180日以降は、給与額の50%支給とやや下がってしまうものの、収入が途絶えてしまうことはありません。そのうえ、育児休業中は社会保険料の納付が免除されるといったメリットもあります。通常通り働いている時期と比べると収入はやや下がってしまうものの、最低限の生活基盤を給付金がフォローする制度設計になっています。
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最後に
本記事では、男性のための育休制度についてご紹介しました。かつて育休制度を取得するのは女性のみであるといった風潮があり、男性で取得している人は珍しいという時代がありました。しかし2022年の「育児・介護休業法」の改正の後押しにより、男性の育休取得が浸透しつつあります。日本国内の課題であった男性の育児参加率の低さは徐々に改善されてきています。将来的に子どもを持ちたいと考えている方、またそういう方と同じ職場で働いている方にとって、本記事が男性の育休についての理解を深めて頂くきっかけになれば幸いです。