40年ぶりの大改正──労働基準法は何を変え、企業と働き手に何を求めるのか

議論・整備が進められている「約40年ぶりの労働基準法改正」は、単なる法文の修正ではなく、日本の働き方そのものを見直すための大きな転換点といえます。少子高齢化による労働力不足、働き方の多様化、DXの進展など、社会構造が大きく変化する中で、従来の制度では現実に対応しきれなくなっていることが背景にあります。

本記事では、今回の改正の背景や主要なポイントを整理しつつ、企業・働き手それぞれがどのような視点で向き合うべきかを解説いたします。

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なぜ今「40年ぶりの改正」が行われるのか

今回の改正が注目される理由は、大きく分けて以下の3点に集約されます。

働き手の減少と人材流動化の進行

日本では生産年齢人口の減少が続いており、「人を増やすことで仕事量をこなす」という発想が成り立たなくなりつつあります。これまでであれば、繁忙期には残業で対応することが一般的でしたが、今後は一人ひとりの負荷を抑えつつ、生産性を高める仕組みが求められます。

例えば、同じ業務量でも属人的な作業を見直し、業務フローを標準化することで残業時間を大幅に削減できた企業も存在します。こうした取り組みを後押しする意味合いも、今回の改正には含まれています。

テクノロジーの進化による仕事の変化

AIやRPA、クラウドツールの普及により、場所や時間に縛られない働き方が一般化しました。一方で、現行の労働基準法は、オフィス勤務を前提とした設計が色濃く残っており、実態との乖離が生じています。

例えばテレワーク下での長時間労働やメンタル不調など、従来は想定されていなかった課題も顕在化しています。こうした変化に対応するため、制度の見直しが必要とされているのです。

長時間労働と国際比較の問題

日本の労働時間は、依然として国際的に見て長い水準にあります。過労死やメンタルヘルス不調が社会問題となる中で、長時間労働を前提とした雇用モデルの見直しは避けて通れません。

改正の主要ポイントと実務への影響

残業時間上限規制の厳格化

基本となる「月45時間・年360時間」という上限自体は変わりませんが、特別条項の運用がより厳しくなります。具体的には以下のような観点での厳格化を進める方針です。

残業時間上限規制の厳格化
  • 繁忙期であっても月100時間未満、複数月平均80時間以内が厳守
  • 特別条項を前提とした恒常的な長時間労働は認められにくくなる

上記については、例えば「決算期は毎年忙しいから」という理由だけで特別条項を使い続けることは、今後ますます難しくなるでしょう。業務量の平準化や人員計画の見直し、外注・DXの活用といった構造的な対策が今後ますます求められるといえます。

勤務間インターバル制度の位置づけ明確化

今回の法改正の議論においては、長時間労働の抑制に加え、勤務終了から次の勤務開始までの休息時間を確保する「勤務間インターバル制度」の重要性が強調されています。現時点では罰則付きの義務ではありませんが、労働時間等設定改善法に基づき、9時間以上(望ましくは11時間以上)の休息確保が企業の努力義務として示されています。例えば深夜残業後に始業時刻を繰り下げる運用など、健康確保を前提とした勤務設計が今後一層求められるでしょう。

雇用区分ごとの待遇差に対する説明責任

正社員と契約社員、パートタイム労働者などの間で待遇差を設ける場合、その理由を合理的に説明できることが重要になります。

例えば、「正社員には賞与があり、契約社員にはない」という場合でも、業務内容や責任範囲、期待成果の違いを具体的に説明できなければなりません。これまでの役割定義や評価基準が曖昧な企業ほど、制度の見直しを迫られる可能性があります。

副業・兼業を前提とした労働時間管理

副業・兼業を行う人材が増える中で、労働時間の通算管理や健康確保措置の考え方が整理されます。例えば、本業では問題がなくても、副業を含めると長時間労働に該当するケースもあります。企業は、従業員の申告を前提としつつ、過重労働にならない仕組みを整える必要があります。

メンタルヘルス・安全衛生の強化

テレワークの普及により、上司や同僚が不調に気づきにくい状況が増えています。そのような中、今回の改正ではメンタル不調の早期発見や、産業医・外部専門家の活用などがより重要視されます。例えば、定期的な1on1やオンライン面談を制度化することで、問題を早期に把握できる仕組みなどが求められるでしょう。


企業に求められる対応の方向性

今回の労働基準法改正において、企業に求められているのは、単なる法令遵守にとどまらず、「どのような姿勢で働き方の変化に向き合うのか」という経営スタンスそのものです。残業時間の上限や勤務間インターバルといった制度を形式的に整えるだけでは、実態としての長時間労働や現場の疲弊は解消されません。

例えば、残業削減を目的に一方的な制限を設けた結果、業務が個人に集中し、かえって生産性やモチベーションを下げてしまうケースも見られます。重要なのは、「なぜ忙しいのか」「どこに無駄や属人化があるのか」を丁寧に見直し、業務プロセスそのものを改善しようとする姿勢です。DXの活用や業務分担の再設計、人員配置の見直しなど、構造的な対応が欠かせません。

また、評価制度や役割定義を明確にし、成果や貢献度が正しく伝わる仕組みを整えることも重要です。働く時間ではなく、提供した価値で評価するという考え方を、制度と運用の両面から浸透させる必要があります。

加えて、メンタルヘルスや健康確保に対する向き合い方も、企業姿勢が問われる領域です。問題が起きてから対応するのではなく、定期的な面談や対話を通じて不調の兆しを早期に捉えようとする姿勢が、これからの企業には求められます。今回の改正は、働き方を制限するためのものではなく、人を大切にする経営へと舵を切る覚悟があるかどうかを問うものだといえるでしょう。


この改正を踏まえて、転職で考えるべきこと

今回の労働基準法改正は、転職を考える方にとっても重要な判断材料となります。注目すべきは、「規制が厳しくなるかどうか」ではなく、企業が変化をどう捉えているかです。

仕事の進め方そのものを見直しているか

残業を減らすために単に業務を押し付ける企業と、業務設計やプロセス改善に取り組む企業とでは、働きやすさに大きな差が生まれます。例えば、DX投資を進め、定型業務を自動化している企業は、法改正後も安定した働き方を実現しやすい傾向があります。

評価・役割が明確に言語化されているか

待遇差の説明責任が強まる中で、役割や期待値が曖昧な企業では、評価への不満が生じやすくなります。
転職時には、「どのような役割を期待されているのか」「評価は何を基準に行われるのか」を確認することが重要です。

多様な働き方をどう受け止めているか

副業や柔軟な働き方に対して、前向きな姿勢を持つ企業は、個人の成長を中長期的に支援する傾向があります。これからの転職では、条件面だけでなく、時代の変化に適応しようとする姿勢を重視することが、後悔のない選択につながります。

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最後に

今回の労働基準法改正は、単なる残業規制の強化ではなく、日本社会全体の働き方を見直すための重要な一歩です。企業には、制度対応だけでなく、組織や仕事の在り方そのものを再設計する姿勢が求められます。

一方で、働き手にとっても、自身の役割や価値を理解し、変化に適応していく姿勢が不可欠となります。この改正をきっかけに、企業と個人の双方がより健全で持続可能な関係を築いていくことが期待されます。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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