
2025年12月、自民党と国民民主党は、所得税がかかり始める「年収の壁」を178万円に引き上げることで合意しました。これにより、2026年には1人当たり約3万〜6万円の減税となる見通しが示され、年収の壁を巡る議論は新たな局面を迎えています。
一方で、制度の中身は年々複雑化しており、「178万円の壁」という言葉だけを捉えてしまうと、実態を誤解しかねません。本記事では、過去の「103万円の壁」からの流れを整理しつつ、今回の合意内容のポイント、残された課題、そして30〜40代の転職希望者がどう受け止めるべきかを解説します。
年収の壁の原点──103万円の壁が生んだ構造的問

年収の壁とは、一定の年収を超えることで税金や社会保険料の負担が発生・増加する境界線の総称です。中でも象徴的だったのが「103万円の壁」です。103万円を超えると、本人に所得税が課されるだけでなく、配偶者控除の適用外となるケースが生じ、世帯全体の手取りが減る可能性がありました。その結果、働く意欲があっても年収を抑える「働き控え」が常態化し、
- 労働力不足
- キャリア形成の分断
といった副作用を長年にわたり生んできました。この構造的問題について国民民主党が「103万円の壁」の打破(基礎控除の引き上げ)を主要な政策とし、2024年10月の衆議院議員選挙に向けた公約としたことで世間より多くの注目が集まるようになりました。

178万円の壁とは何か──2025年12月合意の中身

今回の合意の核心は、所得税の課税最低ラインを178万円まで引き上げる点にあります。これにより、2026年は1人当たり約3万〜6万円の減税となる見通しが示されています。制度の仕組みは以下の通りです。
- 基礎控除と給与所得控除を、消費者物価指数(CPI)の伸びに連動させて引き上げ
- 見直しは2年ごとに実施
- 2024年から2025年にかけてCPIが約6%上昇したため、2026年は壁が約8万円引き上げ
- 年収665万円以下の層には特例として、基礎控除額を5万〜32万円上乗せし、低所得層と中間層の控除水準をそろえる仕組みを導入
国民民主党による試算では納税者の約8割で手取り増が見込まれるとされています。
- 年収200万円以下: 約2万7千円
- 年収400万円: 約2万8千円
- 年収600万円: 約5万6千円
- 年収800万円: 約3万8千円
なぜ「年収の壁」は複雑化するのか

今回の改正で壁は引き上げられましたが、制度はむしろ分かりにくくなっています。その理由は、「178万円の壁」を維持することを目的に、
- 物価上昇分は上乗せ
- 特例の上乗せ分は将来的に縮小
といった調整弁を重ねているためです。
さらに、年収665万円を超えると控除額が変化する仕組みも加わり、単純に「壁が上がった」とは言えない設計になっています。加えて、働き控えの大きな要因である社会保険料が発生する「130万円の壁」は依然として残されています。結果として、税制面では就業を後押ししつつも、社会保険制度がブレーキをかける構図は解消されていません。
転職市場・30〜40代への影響をどう考えるか

一見すると、年収の壁はパート・アルバイト層向けの論点に見えます。しかし、30〜40代の転職希望者にとっても無関係ではありません。まず、世帯収入設計の自由度が高まることで、
- 配偶者の就業調整を前提としない転職
- 年収アップを前提としたキャリア再設計
が選択しやすくなります。
次に、企業側も「壁」を前提とした短時間労働モデルから、役割・成果ベースの雇用設計へ移行する可能性があります。これはミドル層にとって、職務範囲の拡張や報酬交渉の余地が広がることを意味します。
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最後に
178万円の壁への引き上げは労働人口の減少などの問題の解決など複数の論点においては前進といえるでしょう。しかし、以下のような課題も残ります。
- 130万円の壁は残る
- 約6,500億円の税収減をどう打開するか
制度改正は、待っていれば自動的に恩恵をもたらすものではありません。変化を前提に、自身の働き方・キャリアをどう設計するかが、これまで以上に問われます。年収の壁は、キャリアの制約ではなく、再設計のきっかけです。制度の変化を正しく理解し、次の一手につなげていきましょう。

