ブランク(離職期間)がある場合の転職活動で気をつけること

転職についてよく言われることとして「ブランク(離職期間)が長いと転職に不利になる」というものがあります。確かに、人事担当者はブランクが長い場合にはその点に注目することが多いです。具体的には「ブランクがある=採用すべきではない」なのではなく、何か事情があってブランクが発生したのか、あるいはなかなか内定が得られない中でブランクが長くなってしまったのかのいずれであるかをまず確認されるケースが多いです。

特に後者のブランクの場合には、採用に慎重になる傾向があります。このような人事担当者の心理を踏まえ、不安要素を解消することができれば、ブランクが不利にはならないはずです。そこで今回は、ブランクのある方が転職するときに気をつけておきたいポイントをお伝えします。

目次

ブランク(離職期間)が長い方への企業の本音

転職活動をするにあたり、一般的にはブランク(離職期間)があると不利になると言われています。それは、転職希望者にブランクがあると、採用担当者心理としては「何かあるのではないか」と慎重になるためです。

どれくらいのブランクがあるとこのような懸念を持たれてしまうのかは、企業によってまちまちですので、一概に言うことはできません。しかし、何か特別な事情があるわけでもなく、半年くらいのブランクがあると人事担当者は「たくさんの会社にエントリーしているのに採用になっていない方」と解釈をするのが一般的です。

いくつもの会社で不採用になっている事実から、採用に際して何かリスクがあるのではないか、自社でも活躍してもらえる可能性が低いのではないかと懸念されるケースが多いです。具体的に人事担当者は転職希望者にブランクがあることにより、「スキル・経験の側面」「人物の側面」の2つの観点で懸念をもつ傾向にあります。

スキル・経験の側面

そのような懸念事項の一つにスキル・経験の側面での懸念があります。このような観点で転職活動が長引き、ブランクが発生してしまう場合、起因する要素としては自身のこれまでの経験、実績に関してうまくお伝えが出来ていないケースがあります。例えば実績が出せた要因が前職での人間関係やブランド力などに起因するような場合には、転職先で同じように成果を上げられるのかどうかに疑問符は残ります。

転職活動の際には、なぜ実績を上げることができたのかを構造的に説明し、再現性のあるスキルであることを面接の中でしっかりとお伝えすることを意識して臨むことができると、このような転職活動の長期化、ブランクの発生を回避できる可能性を高められるでしょう。

人物の側面

もう一つの観点は人物の側面になります。ご経験を十分重ねていますものの、ブランクが発生している場合には、人事担当者は組織に馴染みにくい人物面、あるいは転職に際して相場を越えた高望みした条件を希望されているのかなど人物面に対して懸念をもたれる傾向にあります。

また、ブランクの間に転職活動をしていない場合は、働く意欲が低いために転職活動をしていなかったのかもしれないと感じられてしまうケースもあり、熱意をもって仕事をしてくれるのか、すぐに退職してしまわないかといった心配があると思われるでしょう。転職活動を行っていない場合のすべてが悪い方向に働くわけではないですが、後述しますようにその際には妥当性のある理由を添えた上で転職活動に臨むのが良いでしょう。

このように人事担当者が考えてしまうので、ブランクがある転職活動は不利になりやすいと言われているのです。しかしながら、人事担当者が心配するポイントを解消できるならば、ブランクがあっても不利にならずに転職活動を進められるはずです。では、ブランクに対する懸念解消に向けて「ブランクの理由」と「ブランク理由の伝え方」という側面から、気をつけるべきポイントを見ていきましょう。

不利になりづらいブランクの理由

まずは、転職活動で不利になりにくい「ブランクの理由」からお伝えします。ブランクがある転職活動でも不利になりにくい理由には、「やむを得ない理由」と「スキルアップのための期間」の2つが挙げられます。

病気やケガの治療、家族の介護などによるブランク

ケガや病気で長期間の療養が必要だった場合や、家族の介護で身動きがとれなかった場合など、働くことができなかったために生じたブランクであれば、現在の状況・体調が業務に支障ないのであれば、基本的に転職に不利にはなりません。また、在職してきた企業が土日も休めないようなかなりの激務環境にあるような場合、退職後に少し時間を置いてから転職活動に臨むようなケースも少なくはありません。そのような場合も、十分に説明ができれば採用担当者から理解を得られる傾向にあります。

ただし、ブランク期間中に働いていなかったことでビジネス感覚が鈍っているかもしれないという懸念は残ります。病気やケガの治療に専念しているタイミングでは厳しいかもしれませんが、ある程度復帰の目途が見えた際には転職活動を行いながらも資格取得や業界知識の収集など働くことへの意欲を持っていることをブランクの背景と共に伝えることが大切です。

スキルアップによるブランク

資格取得や留学などで、スキルアップを目的としたブランクがある場合です。こちらは、内容と伝え方次第では、ブランクが不利に働くどころか、アピール材料にもできる理由です。資格取得の場合は、当然ながら弁護士、公認会計士、税理士など専門性の高い資格であるほど評価されやすいです。逆に働きながらでも取得できるのではないかと思われる資格を長期間のブランクで取得したと伝えても、アピール材料にすることは難しいです。

留学の場合は、どのような目的で留学し、それによって得られたスキルをはっきりと伝えられるようにしておきましょう。留学はしたものの、その理由や得たものが転職先の仕事と繋がりがないようであれば、こちらもあまりプラスには働きづらいといえるでしょう。

伝え方に気をつけるべきブランクの理由

では次に「ブランク理由の伝え方」について解説します。先に記載したような病気やケガ、スキルアップなどによるブランクでない場合には特に伝え方に気をつける必要があります。

ブランクがあることについて事実であったとしても「転職活動を長く続けているが、なかなか決まらない」とだけ伝えてしまうのは良くありません。人事担当者がそれだけを聞くと、先に記載したように、能力面、あるいは人物面で問題があるのかもしれないと感じられてしまいます。

具体的には転職先に対してどのようなことを求め、これまでの転職活動に臨んできた結果、今の状態があるのかについての経緯説明をできるように準備をしておくのが良いでしょう。例えば「これまで営業職の経験が主体であったものの、経理職へのキャリアチェンジを目指したが、なかなか未経験募集が少なく長期化した中、あらためて営業職でキャリアを再構築することを決断しました」といったようなイメージになります。

応募時には必ずブランクの理由を添える

このようなブランクの理由は、転職を希望する会社への「応募時」に伝えましょう。もしも履歴書や職務経歴書にブランクの理由を添えていなかったら、人事担当者は書面上の情報だけで判断せざるを得ないため、能力面や意欲面で不安を感じてしまいます。そのような状態ではなかなか書類選考通過に苦戦することでしょう。このような点を踏まえ、書類選考の段階から、ブランクがあることが不利になってしまわないように注意を払うようにしましょう。

ブランクのような「隠したい」と思ってしまうことは、逆に言えば、「人事担当者が知りたいこと」でもあります。ブランクの理由は、落とすために聞き出そうとしているのではなく、「ブランクがあるだけで不採用とすべきではなく、ちゃんとした理由があれば、採用すべき人材もいるはずだから」とも言えます。つまりはブランクの理由を伝えないことは、人事担当者に不安を感じさせるだけになってしまい、それこそ「不利」になってしまいかねません。

また、転職エージェントを利用する場合にも同様です。転職エージェントに登録し、担当者と最初に話をするときにはこれまでの経緯について正しく伝えるようにしましょう。親身な転職エージェントであれば、ブランクの理由をどのようにして伝えるべきかといった点まで含めて、適切なアドバイスをしてくれるはずです。

転職活動に苦戦しても経歴をごまかすのはNG

ブランクがあっても転職活動ができるだけ不利にならないようにするためには、ブランクの背景、理由を正直に話し、人事担当者に能力や人物の面で不安を感じさせないように自分をアピールすることが重要です。一方で、転職活動が長期化してしまう中、経歴を偽ってしまう人もいるようですが、このような経歴の詐称は絶対にいけません。

仮に経歴の詐称がばれないままに選考が進んだとしても、それですべてが解決とはなりません。海外で当たり前に導入をされていたリファレンスチェックの仕組みを導入する日本企業も増えたため、内定直前で経歴の詐称が白日の下に晒される形になることもあるでしょう(リファレンスチェックに関しては以下の記事をご参考ください)。

また、幸か不幸か採用に至った場合、その詐称した経歴に応じた期待をされていますが、成果などが伴わずに、厳しい立場に追いやられるリスクがあります。さらには詐称した経歴で入社したことが、ふとしたことから発覚することも十分にあり得ます。その場合は、「労働契約を締結するうえで虚偽の内容を伝えていた」ということになり、「不法行為」にあたります。過去には、職歴を偽っていたことを理由に懲戒解雇されたケースで、裁判所が懲戒解雇を有効とする判決を出したこともあります。同業者同士の情報交流があるニッチな業界、あるいはコミュニケーションが頻繁なベンチャー、スタートアップ企業などの場合、ブランクについての嘘が発覚してしまうこともあります。

このように、経歴を詐称して転職活動をすることには大きなリスクを伴います。発覚してしまう可能性やそのときのリスクを考えると、経歴の詐称は絶対にNGと言えるでしょう。以下にて経歴の詐称などに関連した参考記事を記載しますのでご参考ください。

次の転職先が決まってから退職するのが鉄則

ここまでブランクがあった場合の転職活動についてお話してきましたが、転職を考えるときは、極力ブランクができないように「次の転職先が決まってから退職するのが鉄則」であることを心がけてください。働きながら転職活動をするのは負担が大きくなってしまいますが、先に退職してから転職活動をすると、金銭的なプレッシャーも発生します。そうなると「早く働き口を見つけないと」という焦りから、「働けるならどこでもいい」と考えてしまい、自分の本意でない転職先に就職を決めてしまうケースも少なくありません。

しかしながら、転職先が決まっていない状態で退職せざるを得ない場合もあるでしょう。例えば、社内でのハラスメントが原因で病気になってしまった場合や、親族の介護が必要になった場合などが挙げられます。しかしこれらは、前述の通り、不利になりにくい「やむを得ない理由」です。正直にブランクの理由を話し、働くことへの意欲と能力を伝えれば、ブランクがあることだけを理由に不採用になる可能性は低くなるはずです。

最後に

ブランクがあると転職活動で不利になりやすいと言われますが、病気やケガなど止むを得ない理由やスキルアップのためのブランクであれば、必ずしも不利になるとは限りません。大切なのは、ブランクがあることで人事担当者が不安に感じる「能力面」と「人物面」について、しっかりと伝えることです。

ただ、どのように伝えれば、ブランクがあっても不利にならないのかわからないという方も少なくないでしょう。そんな時は、転職活動の進め方に長けた転職エージェントに相談してみましょう。信用できる転職エージェントであれば、親身になってどのようにブランクについて伝えるべきかを一緒に考えてくれるはずです。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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