総務が転職で有利になる6つの資格を解説!

総務は業務範囲が広く、また会社によって求められる役割も異なる為、いま既に総務の仕事に就かれている方でも、自身のキャリアについて具体的にイメージできている方ばかりではないでしょう。例えば将来的に総務部門のマネジメントや経営層を目指すか、何か専門性を身につけてスペシャリストになるのか、はたまたコンサルタントとして独立を目指すのか、それによって求められる知識や専門性も異なります。

総務として転職やキャリアアップを目指されている方に向けて、あらためて総務の役割について確認するとともに、総務としてキャリアアップや転職を考える上で役立つ資格について解説します。いま総務の仕事に就かれている方、将来の総務として活躍していくことを考えられている方は、キャリアパスを考える際にこちらの記事をぜひ参考にされてみてください。

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総務の役割とは

総務とは、組織や企業において、一般的な管理業務や事務業務を担当する部署や職務のことを指します。企業全体のスムーズな運営を支えるためのあらゆる業務を担当し、各部門のサポートを行うのが総務部門です。つまり総務部門は企業を運営するうえで必要なものすべてに関わっているということもでき、必然的にその業務範囲は非常に幅広いものとなります。このように企業によって総務部門の業務内容は異なりますが、一般的な総務の業務領域をいくつかご紹介します。

人事業務

人材採用のために必要な業務や人事制度の策定・運用、教育研修制度の企画や実施、給与計算や労務管理、労働条件や社会保険、福利厚生の管理など、企業の人材管理全般を担当します。新規採用や退職手続き、労働条件の変更、所得税や住民税に関する手続きなど、従業員の雇用に関わる業務もここに含まれます。企業により、総務が管掌する人事業務の範囲は異なりますが、給与計算や労務管理など労務領域の人事業務を総務が管掌する組織運営の仕方をされる企業が多いです。

近年では残業時間や有給休暇取得ルールの厳格化、ストレスチェックの実施義務化など企業に課せられるルールも増えており、それらを適法に実施することで従業員の就労環境や安全衛生を保つとともに、それらに関するリスクから企業を守る役割を果たすことも人事業務の重要なもののひとつです。

法務業務

契約書の作成・管理をはじめとした法的リスクに関する管理、企業のコンプライアンスの確保、知的財産権の保護など、法的な側面の管理業務を担当します。法的な規制や契約に関する知識が求められるとともに、場合によっては社外との折衝を行う役割を担い、係争や訴訟が発生した場合にはその対応も直接行うことになりますので、対人スキルや交渉能力など様々な能力が求められます。

株式事務

株主に関する管理や株主総会の企画運営などを担当します。特に上場企業など株主数が多く株主名簿の変動の多い会社や、スタートアップ企業などで複雑な資本政策(種類株式やストックオプションの発行など)を行っている会社などではこの株式事務が非常に重要となります。株式事務に関する業務を適切に行うには、会社法や金融商品取引法などの法律に関するものをはじめとした様々な知識が必要となります。

庶務業務

オフィスの運営や設備管理、備品の調達や管理、郵便物の処理、出張手続きのサポートなど、企業内の一般的な事務や庶務業務を担当します。企業規模により、拠点数が増えてオフィス管理業務が多くなったり、社員数が多くなるなどしてパソコンなどの備品調達・管理業務が多くなったりするとそれらを専門に担当する部署が置かれる場合もありますが、総務部門がひとまとめの業務として担当する場合も少なくありません。

社内コミュニケーション

社内の情報共有やコミュニケーションを促進するための業務を担当します。社内報の作成や社内イベントの企画・運営、社内規程の策定、業務に必要なコミュニケーションツールの導入や運営などを通じて、社員間のコミュニケーションを活性化させ、円滑な業務体制の構築に貢献します。新入社員が入社した時にスムーズに組織や業務に馴染むための役割も含みますので、人事業務の一部ということもできますが、いずれにせよ総務が担当する重要な業務の中のひとつです。

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総務にとっての資格とは

ご紹介しましたように総務の業務範囲は多岐にわたります。そのため、闇雲に資格を取得すれば良い訳ではなく、今の勤務先、転職を考えている場合には転職先候補となる企業の総務部門がどのような役割を担っており、またどのような専門性を有することで自身が仕事を優位的に進められるか整理の上、資格取得に向けた勉強をはじめると良いでしょう。

折角、新たに資格を取得したとしても同じ資格を保有する方が同じ部署に数名いるようであれば大きな仕事が回ってこないかもしれません。今の勤務先の中でキャリアアップを目指す方の場合には、同僚がそれぞれどのようなスキルセット、専門性を有するかある程度把握できると思いますので、まずは職場環境の全体像を理解しにいくことをお勧めします。

総務がキャリアアップ、転職で有利になる資格

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それでは、総務がキャリアアップや転職をするうえで有利になる資格とは、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。いくつかの具体例について解説いたします。

社会保険労務士

会保険労務士は社会保険労務士法に基づく国家資格です。労働に関する法令や労務管理、社会保険や年金などの専門家で、人事領域において最も難易度の高い資格の一つといえるでしょう(毎年4万名程度が受験し、合格率は6~7%)。その専門性は高く、社会保険労務士の資格を取得することで労働に関する法令や労務トラブルなどに関する幅広い知見を得ることができ、就業規則など社内規程の整備やトラブルに対する適切な対応などができるようになります。独立することもできる資格であり、企業への転職だけでなく独立も含めてキャリアアップの選択肢を増やすことができる、大変有益な資格だといえるでしょう。

人事総務検定

人事総務検定は、人事総務の実務や関連する法律知識の取得に役立つ資格です。試験には1級(課長レベル)、2級(主任レベル)、3級(担当者レベル)があり、3級から順に学習することで人事総務に関する幅広い知識を身につけることができます。社会保険労務士の学習範囲とも重複しているところが多いので、この資格から学習を開始してゆくゆくは社会保険労務士にチャレンジするというのも良いでしょう。

メンタルヘルス・マネジメント検定

メンタルヘルス・マネジメント検定は、働く人たちの心の健康管理(メンタルヘルス・マネジメント)に関する知識や対処方法について理解を深めるための試験です。近年、従業員のメンタルヘルスケアは企業にとってとても重要な課題となっており、この領域に取り組むことは社員が健康で持続可能な生活を送ることができるようになるだけでなく、会社にとっても離職率の低下や人的資源の活性化、ひいては生産性の向上などの効果が期待できるものとなっています。検定にはⅠ種、Ⅱ種、Ⅲ種があり、総務の仕事に就いている方には、ぜひ最も高度なⅠ種の取得を目指してほしいところです。また、従業員の働きやすい職場環境作りを実現するために、後述する衛生管理者も併せて取得すると、実務の上で多いに役立つでしょう。

衛生管理者

衛生管理者とは、従業員が安全に働ける環境を管理する能力を認定する国家資格です。労働安全衛生法により、50名以上の従業員が働いている事業場で設置が義務付けられており、その人数に達するタイミングで社内の誰かが慌てて資格取得に向けて学習を始めるという様子も見られます。

衛生管理者の業務には、事業場の定期巡視、衛生委員会の開催、関係する社内教育の実施などがあります。衛生管理者には第一種と第二種があり、第一種は第二種の範囲に加えて有害業務(建設業や製造業など危険度が高いとされる業務)に関するものが学習範囲に含まれます。第二種は特定の業種のみが対象となっており、第一種は全業種が対象となっているため、第一種のほうが汎用性は高いですが、自身の働く業種によってどちらを取得するか決められるとよいでしょう。

会社として準備が不十分だった場合、事業場の従業員数が50名を超えたけれども衛生管理者を置けていなかったり、一人しかいない衛生管理者が退職してしまったりして困るようなこともあります。資格保有者は一人でも多いほうが組織運営が円滑に運べるため、この資格の取得に取り組むことはどの会社でも歓迎されることでしょう。

個人情報保護士

個人情報保護士は個人情報保護士認定試験に合格することで取得できるもので、その名の通り、個人情報保護法やマイナンバーの取り扱いなど個人情報保護、併せてISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)などの情報管理体制に関する知見等を持っていることを証明できる資格です。

個人情報保護は社会の情報化に伴ってどんどん重要性を増していっており、どの企業にとっても避けては通れない時代であり、2014年にベネッセ社が3,504万件の個人情報漏洩で連日メディアで取り上げられる問題となったように、レピュテーションリスクにも繋がる課題といえるでしょう。このような時代背景の中、多くの個人情報を取り扱う企業にとって社内に個人情報保護士の有資格者がいてくれることは大変心強く、キャリアアップや転職を考える上で強みとなるでしょう。

マイナンバー実務検定

マイナンバー実務検定は、マイナンバー制度そのものの理解や適切な取扱いについての資格です。マイナンバー制度は始まってからまだ期間が短く、社会全体としてもマイナンバー制度の認知や活用は道半ばというものであり、十分な理解に至っている人材や会社はそう多くありません。

しかし、従業員を雇用する会社にとってマイナンバーの適切な管理は必須のものであり、一定の知識を持った人材が関わらなければ、会社にとってリスクを生じさせるものでもあります。マイナンバー検定は1~3級まであり、一定の専門性を示すには2級または1級の取得に取り組むのがよいでしょう。個人情報保護士と同様、社内にこの資格の保有者がいてくれることは企業にとって心強く感じて貰えるでしょう。

総務のキャリアパスについて

次に総務として経験を積んだ方が経るキャリアパスにはどのようなものがあるのか、その一例についていくつかご紹介したいと思います。

総務スペシャリスト

総務の実務担当者としてキャリアを積むという選択肢です。同じ会社の中で総務として仕事を続ける場合と総務担当者として転職を経て数社での経験を積む場合とで異なる点もありますが、いずれにせよ会社経営に必要なものを満たしてくれる貴重な人材として、多くの会社で重宝されることになる役割であると言えます。

また、総務の業務はその領域に応じて、経理財務や人事労務、法務、経営企画、情報システムなど周辺領域の理解が重要なものも多くあります。そうした他部署での業務を経験することもまた総務としての能力を大いに高めるものだと言えますから、総務としてだけではなくいくつかの部署を経験することも総務スペシャリストとしてキャリアを高めるうえでとても有益でしょう。

総務部長

総務としてキャリアを積み、総務部長のポジションに就くというキャリアパスです。一定規模の会社では総務部門の中に人事や労務、法務といった個別領域の担当者が置かれていることが多いため、それらの役割をとりまとめてマネジメントすることが総務部長の役割です。

総務部長を務めるにはそうした業務ひとつひとつに関する知識や経験に加え、それらの業務の間にあるつながりをよく理解している必要があります。そうした総務領域全体についての深い理解のある人材はどの会社にとっても必要なものですから、総務の仕事をされている方にとって目指すべきキャリアパスであると言えるでしょう。

管理部長

管理部長は、総務部長よりも更に広い範囲を統括する役割です。会社全体の管理事務を統括する役割であり、その意味で非常に経営者に近く、会社によっては取締役が管理部長を務めている場合もあります。総務領域に加えて経理財務や経営企画といった役割もその管掌範囲に含まれ、事業部門と連携して企業価値を高める役割を担います。

当然ながら総務やその周辺領域に関する深い業務理解や経験が求められ、また企業経営そのものに関する知識や理解も必要となります。会社を代表する一人として株主など様々なステークホルダーと関わる機会も多く、会社について知らないことがあってはならないようなポジションであると言えるでしょう。難易度の高いポジションですが、そもそも総務は会社全体に関わる役割ですから、総務として経験を積んだ方が管理部長となるのは自然なキャリアパスであるとも言えます。管理部長は経理財務部門出身の方が務めることも多いですが、総務出身者ならではの強みを発揮できる部分もありますから、総務として経験を積まれている方にはぜひ目指して頂きたいと思います。

もちろん、管理部長を務めるには総務だけでなく経理財務に関する理解も必要となりますから、簿記をはじめとした会計領域の知識を身につけるような努力をすることも大切です。キャリアアップを目指す方は、早い段階からこうしたことを意識されるとよいでしょう。

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最後に

今回は、総務がキャリアアップや転職を考える上で役に立つであろう情報を、資格を中心にご紹介させていただきました。総務はあらゆる企業にとって欠かすことのできない機能ですから、この領域で専門性を高めるとキャリアの選択肢は大幅に増えていきます。転職を考える上でも、自身の目指す姿が明確になっていることは大変重要です。ご自身の目指すキャリア像や働きたい会社、目指す人生をぜひ実現いただければと思っております。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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