転職活動を検討している方にとって不安なのが、ブラック企業と気づかずに求人に応募してしまうかもしれない、といったリスクではないでしょうか。現在Web上にはとても多くの求人サイトが存在し、悪質な企業の求人も紛れ込んでいる可能性はあります。
この記事ではブラック企業求人を見極める際のヒントとなる「求人票(求人情報)の見方」を解説します。どの項目を確認すればいいのか、どのようなポイントをチェックすべきなのかを確認しておきましょう。
求人票とは
求人票とは、採用を予定している企業が求職者向けに労働条件や募集内容を記載した書類のことです。求人票の明示および明示項目については職業安定法によって定められています。
求人票にはさまざまな項目があるため、「何を確認したらいいのかよくわからない」という方もいらっしゃるでしょう。また求人情報を掲載する媒体によって表記が異なるため、比較が難しいことも多いでしょう。あらかじめ応募前に確認すべき項目を把握しておきましょう。
まず前提として、求人票には以下項目の記載が必要とされています。また2024年4月から明示しなければならない労働条件が3点(下記⑭~⑯)が追加されます。(職業安定法施行規則改正の詳細は厚労省のHPをご参照ください)
①業務内容
②契約期間
③試用期間
④就業場所
⑤就業時間
⑥休憩時間
⑦休日
⑧時間外労働
⑨賃金
⑩加入保険
⑪受動喫煙防止措置
⑫募集している法人名
⑬雇用形態(派遣労働者として雇用する場合のみ必須)
2024年4月以降の追加明示
⑭従事すべき業務の変更の範囲
⑮就業場所の変更の範囲
⑯有期労働契約を更新する場合の基準
求人票で確認すべき項目
求人票にはさまざまな項目があるため、何をどう確認したらいいのかわかりにくいと思われることもあるでしょう。特に転職が初めての方の場合は、求人票の主な項目についても理解も浅い場合があるため、あらかじめ確認すべき項目を把握しておきましょう。
仕事内容(業務内容)
求人票には、募集職種の仕事内容が明記されています。仮に入社したら、どのような仕事を任されるのかをイメージするためにも必要な情報です。注意すべき点としては、同じ肩書・職種でも、企業ごとに仕事内容・業務範囲が異なる場合がよくあるということです。
例えば「A社でのシステムエンジニアの仕事内容はシステムの開発や実装がメイン」であるのに対し、「B社でのシステムエンジニアの仕事内容はクライアントからのヒアリングも含めた要件定義をメインとする」といった事例があります。仕事内容については面接で詳細を掘り下げて確認することが可能ですが、どういったことを確認するかを洗い出しておく必要があります。
給与
求人票には、入社後に想定されている給与が記載されています。基本的には、額面の金額で記載されているため、実際に支払われるのは記載額から各保険料が差し引かれた金額となります。そのため、仮に求人票に「月額給与25万円」と記載されていても、その額が丸々入金されるわけではないため注意してください。
ちなみに、実際に入金される手取り金額の目安は、額面のおおよそ80%程度です。社会保険料や年金、税金などは、合計すると額面の20%程度となることが多い傾向にあります。実際に支払われるおおよその金額をイメージしたいときには、額面金額×0.8円で計算してみましょう。
勤務形態(勤務地・勤務時間・休憩時間など)
勤務形態は、簡単に言うと「働き方」を指します。定時制やフレックスタイム制、リモートワークなど、近年はさまざまな勤務形態が浸透しつつあり、働き方の自由度が高まっています。一般的には、まだまだ固定定労働時間制のほうが多数を占めているものの、企業規模を問わずに変形型の労働時間制が徐々に増えてきています。働き方にこだわりたい方や、育児や介護などの事情により固定時間で働くことが難しい方は、柔軟に働ける環境が整った企業がおすすめです。勤務形態の項目を確認すれば、その企業が導入している勤務形態を把握できるのでよく確認しておきましょう。
社会保険(加入保険)
求人票に「社会保険完備」などの記載があります。この社会保険とは「厚生年金」「健康保険」「雇用保険」「労災保険」をまとめた総称であり、有期雇用や時短勤務であっても加入条件を満たしている場合、加入が必須です。加入条件を満たしているにもかかわらず加入していない・記載がない場合は、念のため問い合わせをするようにしましょう。
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転職に失敗しないための求人票のチェックポイント
転職するにあたって、ブラック企業への入社は避けたいのが本音でしょう。求人票には、ブラック企業をある程度見極められるポイントがあります。どのようなポイントをチェックすればいいのか、以下で解説していきます。
残業時間(時間外労働)が多過ぎないか
求人票には残業時間についての情報が記載されています。想定される残業時間が明記されていたり、所属する部署の平均残業時間が記載してあるなど、企業によって記載内容が異なるためよくチェックしておく必要があります。
特別な措置をとらない限り、法的に許容されている残業時間は月間45時間までです。月間40時間以上で記載されている場合は「かなり多い」と認識して、応募する場合にはその実態を確認したほうがいいでしょう。また求人票に記載されている残業時間が実態と合っていない事例もあります。実際に同じ職場の同僚がどのくらい働いているか面接時に確認が必要でしょう。
休日数が極端に少なくないか
ブラック企業を見極めるためのポイントとして、次に挙げられるのが休日数です。極端に休日数が少ない企業は、ブラック企業である可能性が高いため、応募は慎重に判断しなければなりません。労働基準法では、「(標準的な勤務形態であれば)週40時間かつ1日8時間以上は労働できない」と定められているため、最低でも休日日数は105日となります。また昨今は有給取得率も向上していることもあり、厚労省の実態調査では『労働者は平均して年間休日日数は115日程度取得できている』という実績が出ています。無理な働き方で体を壊すリスクもあるため、休日数が少なすぎる求人への応募は避けたほうがいいでしょう。
気をつけたい表現としては「週休2日制」と表現されている場合です。これは全ての週において週休2日とは限りません。「完全週休2日制」と書かれている求人票であれば、全ての週で週休2日であることが保障されますが、年間休日の日数を合わせて確認すると良いでしょう。また週の休みが土日であるのか、祝日が休みかどうかは会社次第です。求人票に記載がない場合は必ず確認しましょう。
休暇情報は明確であるか
休暇制度には法律で決めらている「法定休暇」と会社がルールを定める「法定外休暇」があります。例えば有給休暇は、法定休暇で、雇用日から半年後に一定の条件(期間中に8割以上出勤)を満たした社員に10日付与されると定められているので、特別に記載がなくても付与されるのが前提なので問題ありませんが、夏季休暇や年末年始休暇は法定外なので記載がない場合は、休暇の有無を確認したほうがいいでしょう。
給与額が適正か
求人票の給与額が適正かどうかも、注意すべきポイントです。どのような仕事であっても、「この業界のこの仕事の年収相場はこのくらい年収帯である」という給与相場があり、相場に対して低い場合も高い場合も、何か理由があると考えるべきでしょう。目当ての求人と類似の求人とを比較してみて、極端に給与に差がある場合にはその理由を確認しましょう。
また給与項目に「1ヶ月の給与15万円~50万円」などの提示される給与金額に幅がある場合は、注意が必要です。求職者としては、ついつい価格幅の中でも最高額に視線が向けてしまいがちです。しかし、企業側は入社した社員には価格幅の下限の給与で働かせることを前提としている可能性があります。また高額な給与で人を惹きつけて採用し、入社後は事前説明には無いハードワークを課されるような企業も一定数存在します。給与以外の情報収集も綿密にリサーチしたうえで応募するかどうかの判断することをおすすめします。
試用期間の期間・就業条件が悪くないか
試用期間(試雇)とは、本採用前に会社側が実際の勤務を通して判断するために設けられる期間のことです。得てして試用期間は本採用に比べて給与が低く抑えられている傾向があるため、その期間が不当に長期ではないか、試用期間の長さ・給与・解雇要件に問題はないか事前に確認しましょう。
求人票に記載してはならないNG表現の記載がないか
「求人票には記載してはいけないNG表現を記載しているかどうか」も見るべきポイントの1つです。例えば「主婦歓迎」「営業マン」などの性別を限定する表現、応募者の住所や国籍を限定する表現もNGです。また一部例外はありますが、理由の明示なく年齢を制限する表現も原則禁止とされています。採用活動においてこのような法令遵守の意識が低い会社は避けておくほうが無難でしょう。
転職エージェントを有効活用してリスクを最小限に
もし「求人票で気になることがあるが問い合わせしにくい」など、転職活動に際して不安がある場合には転職エージェントを利用することをおすすめします。転職エージェントは多くの求人票、内定通知書、雇用契約書などに触れているため、違和感のある条件の記載などがあった場合には事前に企業側に問い合わせをして、解説をしてくれることでしょう。
転職エージェントは国内に数万社あり、経理や法務をはじめとした管理系職種に強みを有する転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。
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最後に
求人票は転職先を決める際に大事な情報源の一つです。そして、ブラック企業を見極めるためのヒントが隠れていることも多いので、転職で失敗しないためにも、しっかりと確認しておくべき部分でしょう。とはいえ、怪しいと感じた記載があっても、必ずしもブラック企業であるとは限らないため、さまざまな求人票を比較しながら、自分で判断する必要があります。今回ご紹介した内容を参考にしながら、安心して応募できる求人票を探し、転職活動を進めてみてはいかがでしょうか。