残業したくない!転職前に考えておきたい残業のメリット・デメリットについて

「定時を過ぎても会社に残って黙々と残業をする日々に疑問を感じている」そのような方が少なくありません。残業が常態化している職場に勤めている方の場合、自分だけ先に帰宅するわけにもいかず、周囲の様子を見ながら仕方なく残業をしている方も多いのではないでしょうか。

近年は残業を減らすための取り組みを行う企業が増えており、国としても働き方改革などに伴い残業の規制や時間外労働の割増賃金率の改正が行われるようになりました。とはいえ、まだまだ残業ありきの働き方となっている会社もあり、ワークライフバランスを重視して働きたい方としては、不満のある働き方となっているのではないでしょうか。こちらの記事ではそもそもなぜ残業が起こるのか、残業をするメリット・デメリットなどを幅広くご紹介していきます。

目次

残業とは

残業とは、既定の終業時刻を過ぎても働いていることを指します。会社員であれば、労働基準法によって、法定労働時間として「1日に8時間、1週間に40時間まで」という上限が設けられています。この法定労働時間に基づいて各企業の所定労働時間(規則で定められた労働時間)が決められており、1日の勤務時間を8時間と設定されていることが多いです。しかしながら、仕事が所定労働時間内に終了できなかったり、イレギュラーな対応に追われて勤務時間を過ぎて労働することになったりすることもあるでしょう。この所定労働時間以降の勤務が残業となります。

尚、企業によっては所定労働時間を1日6時間や7時間に設定していることがあります。その場合は1日8時間未満の残業は「法定内残業」として会社に割増賃金の支払いの義務は発生しません。その場合は残業をしても、通常の給与(1時間当たりの賃金額×就業した時間分)として支払われ、残業時に加算される25%は適用されませんので注意しましょう。では次に「法定外残業」の残業手当について確認していきましょう。

残業手当(時間外手当)とは?計算方法や割増率について

残業手当とは、法定労働時間を超えて働いた場合に支払われる割増賃金のことです。法定労働時間の目安としては、1日8時間以上、もしくは1週間に40時間以上となります。残業の場合、通常時からの割増率は通常25%ですが、午後10時から翌日午前5時の間に働いた場合は、さらに深夜割増として25%が加算され、計50%の割増率となります(深夜手当)。

残業する時間帯によって割増率が異なるので、残業代を計算する際には覚えておきましょう。なお、時間外手当という表現をする場合がありますが「時間外手当=残業手当」の意味合いとなりますため、計算方法や割増率は残業手当と同様です。ちなみに月の残業時間が60時間を超えると、超えた部分からの割増率が50%となります。さらに深夜割増も加味することができるため割増率は最大で75%となります。以下にて残業の時間帯、残業時間などによる、残業代の計算方法を記載します。

残業代の計算方法

①時間外労働(法定労働時間を超えた場合)
1時間あたりの賃金額×125%(1時間当たりの割増率)×残業時間

②深夜労働(午後10時から午前5時までに労働した場合)
1時間あたりの賃金額×150%(1時間あたりの割増率)×深夜帯の残業時間

③時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)
1時間あたりの賃金額×150%(1時間あたりの割増率)×60時間以上おこなった残業時間

④時間外労働(1ヵ月60時間を超えた場合)+深夜労働
1時間あたりの賃金額×175%(1時間あたりの割増率)×60時間以上おこなった深夜帯の残業時間

※1時間当たりの賃金額は月給÷1か月の勤務日数÷1日の所定労働時間で算出できます

2023年4月1日からの割増賃金率に関する法改正

これまでは残業代の計算方法などについて解説しましたが、合わせて押さえておきたいのが2023年4月1日から割増賃金率に関する法改正です。2010年4月の労働基準法改正時は、法定外残業が60時間を超えた場合に大手企業における割増賃金率は50%以上になる設定となりました。しかしながら、中小企業は25%以上のままで一定の猶予期間が設けられる形として運用されていました(大手企業、中小企業の区分については中小企業庁の「中小企業・小規模事業者の定義」も併せてご参考ください)。

この残業代の在り方について、2019年に「働き方改革関連法」の施行により、2023年4月1日からは中小企業においても大企業と同じく、月60時間以上の残業に対して50%以上の割増賃金を支払うことが決定となりました。そのため、同日以降の残業代にて上記が適用されていない場合には違法扱いとなります。残業が60時間を超過した月は給与明細を確認してみましょう。

残業代未払いは違法

労働基準法第37条では、労働者が法定労働時間を超えての労働、深夜労働、休日勤務による労働を行った場合には残業代を支払う義務があると定めており、たとえ会社と従業員とで合意がとれていたとしても、残業代の未払いは法律違反となりますので注意が必要です。

このような残業代の未払いが起こり得る要因として挙げられることの一つにサービス残業の常態化があります。サービス残業とは所定労働時間を超えて残業しているにもかかわらず賃金の支払われない残業のことで、高度経済成長期の日本ではサービス残業が当たり前という慣習が横行していました。しかしながら、前述の通り、サービス残業は企業が強制する場合も、自発的に行う場合も違法となりますので直ちに止めるべきでしょう。

尚、労働基準法では残業代の未払い分については3年間は有効としています。したがって過去3年にわたる未払い分に関しては遡って請求することが可能です。しかしながら、労働者より企業にそのような申し出をするのはとても勇気のいることでしょう。このような申し出をする前には、まずは労働基準監督署、弁護士の先生などに相談をされるとよいでしょう。

残業したくないのに残業が起こる理由

残業したくないにも関わらず、なぜ残業をせざるを得ない状況に陥ってしまうのでしょうか。こちらからは、残業が発生してしまう理由として考えられるものをピックアップして解説していきます。

人員が不足している

注文やお問い合わせが急増している、離職・休職が発生した等、様々な理由で業務量に対して人員が不足してしまうことがあります。このような場合にすぐに即戦力となる人員を採用し、業務分担することができるのが理想ですが、なんらかの事情で人員確保や業務分担ができない場合、その繁忙期がずっと続くわけではない場合は既存社員の残業による補填で急をしのぐことがあります。

人員不足が明確であるにも関わらず、人材採用や外注の活用など残業時間の低減に関する施策が検討もなされていない職場環境の場合、今後も改善は見込みづらいかもしれません。

古い慣習による残業

体育会系の風土が強い職場環境においては、上司より先に帰ることが許されない、あるいは残業をしていることが評価になるような慣習が残っている場合があります。そのような職場では「周囲が残業しているのに自分だけ帰宅しにくい」「残業しないことで自分の評価が下がりそうで不安」といった心理が働きやすく、自分の仕事は終えており、残業する必要がないにも関わらず、残業せざるを得ないような状況に陥ってしまいます。

イレギュラーが発生しやすい業務環境

定時直前に新たな仕事を任されることで、残業することになってしまう事例は珍しくありません。定時までに仕事を終わらせようと業務を進めていても、定時になる直前に顧客からのクレームや注文が入り至急の対応が迫られたり、「これやっておいて」と納期の短い仕事を上司から割り振られることがあります。

断ることができれば残業せずに済むものの、依頼する側との関係性や依頼を受ける側の性格、職場の雰囲気などによっては断ることが難しいのも事実。結果的に、新たに振られた仕事を残業してこなすこととなってしまいます。

仕事に慣れていない

仕事に慣れていないことも、残業が起こる理由の一つとして挙げられます。その仕事を始めたばかりであったり、新たなことにチャレンジしている段階であったりすると、定時までに必要な業務が終わらないことになってしまいます。しかし、この場合は仕事に慣れ、要領よくこなせるようになるにつれて、残業は減っていくため、今は成長段階と捉えて業務に慣れることを優先してもいいでしょう。

勤務形態の問題

その会社の導入している勤務形態が要因で、労働時間と残業時間との境界が曖昧になってしまうケースも挙げられます。例えばフレックスタイム制度やシフト勤務制を導入している会社では従業員それぞれの定時が異なるため、会社が「毎日決まった時間にPCを一斉にログアウトする」のような残業制限施策をとりにくく、残業が発生しやすいとも言えるでしょう。

また、みなし残業制度(固定残業時間制度)を導入している会社では、残業しなくても一定の残業分の給与が得られる等の利点がある一方、勤怠管理などが雑多になり、超過分を支給されないというケースもあるので注意が必要です(例えば40時間の固定残業時間制の場合、40時間を超過した場合には超過分を支払わなければ違法となります)。

「残業したくない」それでもやるメリットは?

一方で残業をするメリットについても考えてみましょう。まずは「収入を稼げること」です。基本給に割増計算の残業代が追加されるのは、残業してもいいから多く稼ぎたいと思っている方にとっては魅力的なことです。また、深夜の勤務や残業時間が60時間を超える場合など、残業の時間帯や多さによってはさらに高い割増率となるので、さらなる収入アップを期待できます。

「成果(スキル)を上げやすい」ことも残業をするメリットに挙げられるでしょう。長時間働くことで、より多くの業務をこなすことができます。非効率的な取り組み方であったり、スキル不足であっても、十分な時間をかけることで、仕事量で仕事の質をカバーできることもあります。転職して間もない時期や未経験の業務に抜擢された時など、自分の担当業務に不慣れな時期は集中的に残業して、成果やスキルを早期に上げるというのも1つの方法でしょう。

残業したくない人が残業するデメリット

残業したくない方が、無理に残業をするデメリットは非常に多いです。まず懸念されるのは健康被害でしょう。残業時間が多くなると一時的に体が疲れるだけでなく、精神的なストレスを癒すこともできず、心身ともに健康に不調をきたすリスクが高まります。

また、業務時間外に勉強してスキルアップをしたいと考えている方であれば、勉強にかけられる時間も減ってしまうことから、自己成長チャンスを逃すことにもなりかねません。育児期間中の方であれば、家族と十分な時間を過ごすことができず、家族に寂しさや負担を与える可能性もあります。

残業をしたくないのに残業が多いとお悩みの方は、効率的に業務ができるような工夫をしてみたり、上司や人事部など、しかるべき会社の相談窓口に相談してみたり、異動を検討するのもいいでしょう。残業が続いている状態では心身ともに疲弊しており、異動のように大きな変化が許容できないこともあります。健康上の問題がある場合は医師に相談し、休職することも選択肢の一つです。

職場環境の改善が見込めない場合には転職も視野に

職場環境の改善が見込めない場合には、無理をし過ぎず、転職を視野に入れることも大切です。しかしながら、初めての転職、または数年ぶりの転職活動になるような場合には今の自分の転職市場での価値がどのようなものか、どのような選択肢が持てそうかなど見えない部分が多いでしょう。

このように転職活動で不安が多い場合は、転職エージェントを利用した転職活動をお勧めします。転職エージェントは登録後に専任のキャリアアドバイザーがつき、転職活動をサポートしてくれる方法です。キャリアアドバイザーとの面談を通して自分の希望や志向性を伝えるだけでなく、現在の市場感や企業の詳細、面接対策など入社に至るまでサポートをしてくれます。また、客観的にアドバイスももらえるため、転職活動に悩み事がある人、不安がある人は利用することで、不安を払拭することができるでしょう。

最後に

今回の記事では、「残業したくない」とお悩みの方へ向けて、残業代の計算方法や残業が起こる理由、残業をするメリット・デメリットなどについてご紹介しました。残業はワークライフバランスに悪影響を与える存在であり、やりがいや自分らしさ、プライベートの充実化などを遠ざける原因です。

また、残業したくない方が残業の多い日々を過ごすのはストレスにもなりますので、早めに対策することをおすすめします。自分の工夫だけでは残業が減らせそうにないと判断されるなら、転職も視野に入れて、自分らしい働き方を探してみてください。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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