転職活動で押さえておくべきブラック企業の見分け方

転職活動で押さえておくべきことはたくさんありますが、最も重要なことの一つとして挙げられるのがブラック企業の見分け方でしょう。こちらの記事ではブラック企業はどのような特徴がある企業か、合わせて転職活動で意図せずブラック企業に転職してしまわないための注意点を解説していきます。

目次

ブラック企業に分類される企業の特徴

こちらではブラック企業とはどのような企業を指すのか解説していきます。ただし、「ブラック企業」に厳密な定義はなく、例えば長時間労働が常態化している職場がすべてブラック企業に該当する訳ではありません。一例を挙げるとすれば、多くのコンサルティングファームの長時間労働、ハードワークが課せられることがまだまだ多いです。しかしながら、コンサルティングファームを志す方はその分、短期間での成長を目指す、あるいは将来起業したいなどという思いからこのような労働環境を理解して就業されています。

また、ある上司の叱責を「怒号」と受け取る方もいれば、「厳しい指導」と受け取る方もいます。働く方のこれまでのバックグラウンド(例えば学生時代に体育会で厳しい指導を受ける環境に身を置いていた等)によってブラック企業と感じるかどうかは異なります。そのような前提の上、以下に挙げるブラック企業の特徴を参考にして貰えると幸いです。

ブラック企業の特徴

・パワハラをはじめとしたハラスメント行為の横行
・サービス残業の常態化
・長時間労働の常態化(恒常的に80時間以上の残業が発生するのは違法)
・休日日数が少ない(年間休日が100日に満たない)
・有給休暇が取れない
・売上未達成の場合に商品を自腹で購入しなければならない
・給与水準が異常に低い
・世間的に非常識なルールの強要(特定の宗教などへの加入等)
・退職を申し出ても受理しない

自分の今の職場で当てはまる項目はあるでしょうか。こちらではブラック企業の特徴について概要を記載しましたが次の章ではブラック企業の特徴として代表的な事項について詳細に解説していきます。

注意すべきブラック企業の特徴

ここからは特に注意が必要なブラック企業の特徴を詳しく解説していきます。

ハラスメント行為の横行

パワハラ、セクハラなどのハラスメント行為は職場だけではなく、社会的に無くそうという動きがある中、一時の感情での発言などであればまだしも、恒常的にこのようなハラスメント行為が発生するのはブラック企業の特徴といえるでしょう。以下に代表的なハラスメントの一例を挙げさせて頂きますのでご参考ください。

代表的なハラスメント例

パワーハラスメント
マタニティハラスメント
モラルハラスメント
セクシャルハラスメント
ジェンダーハラスメント
アルコールハラスメント
レイシャル(人種)ハラスメント

以前より取り上げられるハラスメント行為の代表格ともいえるパワーハラスメント、セクシャルハラスメントの他、この数年でダイバーシティ推進に向けて社会的に取り組みが進む中での「ジェンダー」「レイシャル」「マタニティ」などの言葉が最近では用いられることが増えました。今後、このようなハラスメント排除の考え方は厳しいものになることが見込まれつつ、また時代の変化にキャッチアップしておかなければ無意識に自分が加害者側になりかねない点も気を付けておくべきポイントといえるでしょう。

80時間以上の残業

季節的に受注が集中する形での一過性の長時間労働、あるいは長時間労働改善に向けた取り組みなどを行っている場合を除き、長時間労働が当たり前とされる環境にある企業であればブラック企業といえるでしょう。定量的な指標としては「月に80時間以上の残業」が常態化している労働環境は健全な環境とは言い難く、ブラック企業と認定されてもおかしくありません。

このような残業代を考える際に一つの基準として認識しておくと良いのが2014年に施行された「過労死等防止対策推進法」になります。過労死は「過労死等」という言葉にて厚労省により、以下にて表記されています。

「過労死等」とは

「過労死等」とは、業務における過重な負荷による脳・心臓疾患や業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡やこれらの疾患のことです。

長時間労働により、過労死の引き金となる脳・心臓疾患との関連性が強いという医学的知見の下、過労死に繋がりうる労働時間を「過労死ライン」とされています。具体的には「発症前1ヶ月間に概ね100時間」又は「発症前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって1ヶ月あたり概ね80時間」が厚生労働省の定めた行政認定基準とされています。転職などで企業を検討する際には、このような労働環境に対して正しい理解がある企業かどうかを見極めるようにしましょう。

商品を自腹で購入しなければならない

月の売上目標に到達しない際に自社のサービス、商品を自腹で購入することを強要される企業もまたブラック企業といえるでしょう。営業気質の強く、またアパレルのようなB2C商材を取り扱う企業などでこのような風習が横行していることがあり、当然ながら生活費が圧迫されるため、基本給がそこまで高い水準でない賃金形態の場合には生活が困窮するような事態に陥る可能性もあり得ます。

最低賃金条件を満たしていない

最低賃金とは労働基準法で定められる労働者が働く際に受けるべき最低限の賃金を指す制度です。労働者が適切な賃金を受けて生活できるように保障するための政府や労働組合によって設定されるもので、都道府県ごとに設定されており、満たしていないことは法令違反となります。

アルバイト・パートタイムなどの場合、最低賃金の時給を割っていると明白ですが、月給での支給の場合、最低賃金を満たしていないことに気づかないことも珍しくありません。給与が著しく低いと感じた場合には月給と労働時間を照らし合わせ、最低賃金を割っていないか確認をしてみると良いでしょう。

世間的に非常識なルールがある

職務と関係のない特定の宗教団体に強制的に入会させられるなど世間的に非常識といえるルールがある企業もブラック企業といえるでしょう。経営は大変なことも多く、経営者が特定の宗教を信仰しているということは珍しいことではないのですが、それを全社員に強制するというのは異質といえるでしょう。尚、憲法にて「特定の宗教を信じる自由」が定められており、このような強制的な宗教への加入は当然ながら認められません。

その他にも退職届を出しても後任の採用ができるまで退職は認められないなど、世間的に非常識なルールが設定されている企業は、理不尽なことが当たり前とされる会社風土である可能性が高く、転職活動の際には、出来る限り、回避していくことを目指すのが望ましいでしょう。

ブラック企業を見極めるために

ここまでブラック企業の特徴、その詳細について解説をしてきました。ここからは転職活動でこのようなブラック企業に間違って入社してしまわないよう、ブラック企業を見極める際に注意すべきポイントについてご紹介していきます。

給与水準が相場と比べて大きく乖離している

相場よりも極端に給与が低い・高い求人はブラック企業である可能性があります。極端に給与が低い求人は当然ながら生活困窮に陥るリスクも孕んでいるため無理にエントリーする必要はないでしょう。しかしながら、給与は低くとも専門職としての第一歩を踏み出したいなどの事情などがあるようであれば、数年後に別の職場環境でキャリアアップを目指す前提の上、選択することも一つです。

また、同じ業界の中で異常に給与が高く設定されている場合にもブラック企業である可能性は否めません。同じ業界の他社と比較して給与水準が異常に高い場合には、何等かの理由が必ずあります。それが儲けの仕組みをうまく構築されてのことであれば良いのですが、家にほとんど帰れないほど出張が多い、残業代の支払いはなされているもののとにかく長時間労働が常態化している、もしくは退職率が高すぎるが故に人を集めるために高い給与設定にしているなど給与水準が高い理由があるはずです。転職活動の際にはそのあたりの事情を捉え、自分の中で許容できる事項なのであれば選考を進めていくと良いでしょう。

1年以上募集を続けている

転職サイトなどで1年中、募集を続けている求人も要注意です。例えば従業員数万名の会社の営業職などであれば募集枠も多いため、年中募集をしていてもおかしくはありませんが、中堅・中小企業でずっと募集を継続している企業の場合には、定着せずに、募集をし続けている可能性があります。

勿論、退職が偶然続いている場合もありますし、例えばPCスキルが足らずで前任者は退職したが自分は得意分野であるといったように、これまでの退職者の退職理由が自分に当てはまらないのであれば転職先として検討の余地はあるでしょう。転職活動の際には面接の中でこのような事情を確認し、その上で自分に合った職場環境かどうかを判断していくことが大切です。

口コミサイトの評判

職場の雰囲気を知るためには、その企業に知人が勤めている場合には知人に実態を聞く、あるいは職場見学などを行うなどというアプローチが良いでしょう。しかしながら、当然都合よく知人が勤務しているということはそうそうないでしょうし、転職活動の中ではリモート勤務の導入も進む中で職場見学などはしづらいという問題も近年では見受けられます。

そのような時、参考になるのが企業の口コミサイトです。代表的なサービスとしては「ONE CAREER PLUS」「OpenWork」「転職会議」「ライトハウス」などが挙げられます。年収、福利厚生、残業時間、評価制度など項目ごとに評価する形で総合評価で点数化している仕様のサービスが多く、特に自分の気になる項目について参考にされると良いでしょう。

しかしながら、このような口コミサイトに投稿される方は過去に在籍していた方、あるいはその企業を退職したいと考えている方(現職もしくは前職の口コミを記入することで他社の口コミを閲覧できる仕様の口コミサイトなどがある)などが中心のため、比較的ネガティブな内容が多くなりがちです。口コミサイトを活用する際にはそのような前提条件を理解の上、参考にすると良いでしょう。

選考が圧迫面接

面接の形式が圧迫面接のような企業の場合、パワーハラスメント気質な会社風土の可能性があります。前述の通り、パワーハラスメントをはじめハラスメント行為に関しては年々厳しく非難される時代にあり、面接の場においても面接官という立場を利用した高圧的な態度での面接というのは許容しがたいといえるでしょう。

そのような時代にも関わらず、圧迫面接が当たり前のようになされているような企業の場合、社内でもハラスメント行為が当たり前に発生している可能性がありますので注意が必要です。勿論、会社全体ではそのような問題はなく、たまたま担当の面接官がそのような気質の方である可能性もありますので、複数回の選考を踏まえて最終的に企業風土を見極めることが大切になります。

一発面接、即日内定の選考フロー

選考フローが一発面接の企業は、一見すると選考フローが短く、早く転職先を決めたい方にとっては魅力的にうつる部分もあるかもしれません。しかしながら、日雇いアルバイトなどの採用であればまだしも、正社員雇用の採用において、企業は応募者の見極めを慎重に行うのが一般的です。

そのような中、一発面接、更にはその当日に内定提示をされるような企業は人材難の問題が極めて深刻なものである可能性が高いです。例えばグループで組織再編をした中で止む無く、一時的に人員が足りないなど何か明確な事情がある場合でない限りは、このような選考プロセスの企業はブラック企業ではないかと警戒しながら選考に臨むと良いでしょう。

内定取り消し(企業都合)の経緯がある

過去に企業都合での内定取り消しをしているような企業にも要注意です。特に新卒採用の内定取り消しはニュースになることが多く、経緯をリサーチすることができるでしょう。業績不振や不祥事など、不測の事態があったとしても、採用活動に計画性がない企業は、ブラック企業である可能性があります。

転職エージェントを味方につける

これまでは自力でブラック企業を見分ける手法について解説していきましたが、転職市場の動向に明るい転職エージェントを味方につけるというのも意図せずブラック企業に入社してしまうことを回避するために有効です。

転職エージェントは転職市場、特に求職者の動きに関して第一線で触れるため、どの企業からの退職者が多いか、またその理由は何かといった一次情報に精通しています。このような情報を得るためにも信頼できる転職エージェントに味方になって貰えるよう、丁寧にコミュニケーションをとっていくと良いでしょう。

意図せずブラック企業に入社してしまった時に考えるべきこと

しかしながら、口コミサイトの情報などを活用しながら慎重に転職活動を行ったとしても、意図せずにブラック企業に入社してしまうという可能性もゼロではありません。ではブラック企業に入社してしまった場合には何を考えるべきでしょうか。

結論としては即刻、転職に向けて転職活動を開始することが良いでしょう。ブラック企業の中で心身をすり減らし、過労で体調を崩す、もしくは心身症などを患ってしまうと、その後のキャリアの選択肢にも影響が出てきてしまいかねません。ブラック企業に転職してしまった場合には、割り切って環境を変えることに目を向けるようにしましょう。

在職期間が短かい場合には、応募先企業に定着懸念を持たれてしまうかもしれないと気になる方もいるかと思いますが、転職理由を正しく伝えることができればそのような懸念は打開できるでしょう。このようなブラック企業に入社してしまったケースに関わらずではありますが、転職理由を伝える際には、できる限り、自分が置かれている環境、状況を詳細に面接官に伝えることが大切です。

「社風に合わない」「ハラスメント行為を受けている」という転職理由だけを伝えた場合、面接官は応募者がどのような環境におかれているのか、自社の職場環境に合うのかどうか判断は難しいです。このような面接官との認識の相違を無くすためにも、自分が置かれている環境、状況について詳細に伝えることが大切です。

例えば前述の場合でいえば、「売上未達の場合に、商品を購入しなければならない企業文化が自分の価値観と合わない」「上司より『●●』『▲▲』という言葉と共に罵声を毎日浴びている」などの事実と併せて転職理由を伝えると良いでしょう。

その他にも例えば「過酷な労働環境で長期就業が難しい」という転職理由であれば、「残業時間が毎月100時間を超えるような職場環境であり、またそのような体制を是正する方針がない」など定量的な数字や今後の見通しなどと共に伝える形などが良いかと思います。

また、いずれの転職理由において、結果として解決していなくても、まずは自分で考え行動を起こしたことを伝えなければ、否定や批判をしているだけだと受け止められる可能性があります。転職理由を伝える際にはその点も注意して伝えるようにしましょう。

最後に

今回の記事ではブラック企業の特徴、見分け方などについて解説をしました。意図せずブラック企業に入社してしまった場合、まじめな方ほど途中で仕事を投げ出すことを嫌がり、体調を崩すまで無理をしてしまうケースが見受けられます。ブラック企業に入社してしまった場合には、割り切って転職をしていく方向に舵を切りなおすと良いでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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