IPO(新規株式上場)における目論見書について解説!

IPO(新規株式上場)に関する話のなかで「目論見書(もくろみしょ)」という言葉を耳にされたことがある方もいらっしゃるかと思います。しかしながら、目論見書が何を目的に発行されるものであり、どのような内容が記述されているのかは意外とご存知ない方もおられるのではないでしょうか。今回はこの目論見書について解説させて頂きます。

目次

IPOとは

IPOとは「Initial Public Offering」の略で、日本語では「新規株式上場」と訳されます。それまで未上場の状態であった会社の株式を、はじめて証券取引所に上場することを指す言葉です。通常、未上場会社の株式は創業者や増資に応じた一部の投資家などにしか保有の機会が与えられず、その株式の売買についても会社(取締役会など)が認めた場合に限られるなど、誰でも自由に売買できるという状態にはありません。そのように未上場会社としてある意味クローズドな状況にあった会社が、IPOをすると状況が一変します。

IPOをした会社の株式は証券取引所で日々売買され、誰でも自由に取引することができるようになります。それにより広く資本を集めることが可能となり、より高い資金調達力を得て大きな事業に取り組むことができるようになります。一方、不特定多数の投資家が株主となり得る状況となるため、安心して取引ができるよう会社の財務状況や経営成績を常に公開することや、より厳格な企業統治、リスク管理等が求められるようになります。

IPOをした会社は上場会社となります。上場会社は資本市場から広く資金を集める社会の公器として、高い水準の社会的責任を果たすことが求められます。それは企業が成熟した存在になるために必要なプロセスであるとも言えますが、一方でその変化は企業やその中で働く方たちにとって負担のかかるものでことも認識しておくことが大切です。

目論見書とは

ここからは目論見書の使用使途、記載事項などについて解説していきます。

目論見書とは、企業がIPOに際して株式公開をする際に投資家の方に向けて発行する公式書類のことを指し、金融商品取引法に基づき、IPOの際には交付が原則として義務づけられています。目論見書は投資家の方の観点に基づき、今後目指す成長戦略や経営リスク、現在の財務状況などを詳細に記載の上、パブリックカンパニーとして透明性を確保するための非常に重要な資料になります。

目論見書に記載される内容を通じて、企業は株式市場と初めて本格的な対話を行うことになります。目論見書の内容が信頼性のある、納得のいくものであれば、投資家の方は投資判断を行うでしょう。逆に、目論見書の内容が不十分であったり、矛盾を孕んでいる場合には投資家の方の信頼を得ることは難しく、株式市場からの資金調達は難航するかもしれません。

このように目論見書は時価総額などに影響を与える要素の一つでもあり、上場後の株式市場からの資金調達にも影響を及ぼすものとなります。企業としてはIPO後の成長戦略を実現していくためにも、目論見書は気を抜けない事柄の一つといえるでしょう。

尚、目論見書は企業概要、市場・競合環境、ビジネスモデルをはじめとした事業概要、経営陣プロフィール、財務報告、投資家の方が懸念し得る経営リスクに係る事項など広範囲な情報を記載します。項目がすべて同じという訳ではありませんが、上場企業が開示する各種IR資料などと類似する部分も多いのでご参考頂けると良いかと思います。

最後に

今回はIPOの際に避けては通れない目論見書について解説しました。目論見書に触れる方は限られるかもしれませんが、IPOを目指す企業に在籍されている方などは今回の記事を参考にして頂き、どのような過程でIPO後の時価総額が決まっていくのかなどのイメージを掴んで頂ければと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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