「静かな退職」とは?「静かな退職」が広がりつつある背景、防止策まで解説!

「静かな退職」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか?それはどのような状態でしょうか?社員が挨拶もなく、静かに退職してしまうことではありません。本記事では、日本でも広がりつつある「静かな退職」について解説していきます。

目次

静かな退職とは?

「静かな退職」とは、仕事を続けているものの、最低限の業務しか行わず、積極的な貢献を控える状態を指します。実際に退職するわけではないものの、精神的には職場から距離を置いているような状態です。表面的にはこれまでと変わらず働いているように見えても、実際にはモチベーションが著しく低下し、昇進や新プロジェクトへの積極的な参加を避ける従業員が増えている状況を示しています。

「静かな退職」という言葉は、2022年に米国のキャリアコーチ、Bryan Creely氏の解説動画をきっかけに広く知られるようになった言葉と言われています。日本でも、特に若い世代を中心にこの考え方に共感を示す人が増え、認知度が高まっています。

静かな退職が拡がる背景

「静かな退職」という言葉が共感を呼んでいる背景には、現代の価値観の変化が大きく関係しています。高度成長期の日本社会では、長時間の残業や急な転勤も積極的に引き受け、業務外の時間や休日も仕事に費やして出世や昇給を目指し、定年を迎えるまで1社に勤めることが1つのモデルケースとされていました。

しかし、今では自身のキャリアステージに合わせて転職することが一般的となり、自分らしい生き方やワークライフバランスを重視する人が増加しています。さらに、長期的な景気の低迷やコロナ禍によるリモートワークの普及、FIREの流行などの外部要因により、「仕事(会社)にフルコミットするだけが人生ではない」と感じる人が増えてきました。

静かな退職を防ぐために

静かな退職が増加すると、企業にとっては深刻な問題となり得ます。従業員が最低限の業務しか行わなくなることで生産性が低下するだけでなく、新しいアイディアを提案したり挑戦したりする意欲的な社員が減少し、組織全体の活力が失われるリスクもあります。

静かな退職を防ぐためには、企業側が従業員のモチベーションを維持し、職場環境を整えることが不可欠です。そのために、以下のような施策が有効です。

コミュニケーションの強化


コミュニケーション量を増やすことは「静かな退職」対策として有効です。コロナ禍には全世界の多くの労働者がフルリモートワークを余儀なくされましたが、社員同士のコミュニケーションが減ることで、業務生産性は低下するということが各業界で発覚する結果となりました。リモートワークに適しているとされていた米国テック企業ですら、職場コミュニケーションの大切さを知り、リモートワークに制限をかけ始めました。

また職場にいるだけではコミュニケーションが発生しないことも踏まえ、上司と部下の間では強制的に定期ミーティングを設け、従業員の不安や不満を早期に把握し、適切に対処することが重要です。従業員が自分の意見や希望を表明できる環境を整えることで、静かな退職を未然に防ぐことができます。

キャリアの成長機会の提供

静かな退職が起こる理由の一つに、キャリアの行き詰まり感があります。従業員が自己成長やキャリアアップを感じられるような研修や異動の機会を提供することで、やる気を引き出すことができます。

「静かな退職」を選んでいる社員であっても、自分自身の成長に対してはモチベーションが高いことはあります。各社員のキャリアパスを一緒に考え、現実的な目標を設定するサポートを行いましょう。企業側が社員のスキルや興味に応じた成長機会を提供することで、社員が「自分が大切にされている」と感じ、積極的に業務に取り組む姿勢が生まれます。

適切なワークライフバランスの確保

過度な労働時間やプレッシャーは、従業員の燃え尽き症候群を引き起こし、静かな退職の原因となることがあります。慢性的に人手不足で残業が常態化しているような職場であれば、業務量や分担を見直し、柔軟な働き方の導入など、従業員が健康的な働き方を維持できる環境作りが必要です。

報酬や評価制度の見直し

「静かな退職」を選ぶ人のほとんどが、入社前からそのような働き方を選んでいたわけではなく、就業後に「努力しても評価されない」「自分の提案が一切通らない」と感じる出来事に遭って、モチベーションを低下させています。透明性のある評価制度や、公正な報酬体系を導入することで、従業員が努力に対して適切な報酬を得られると感じられるようにすることが重要です。

「静かな退職」を選ぶ従業員への理解

一方で、「静かな退職」を選ぶ従業員に対しては、その背景にある個々の状況や価値観に理解を示すことも重要です。彼らの価値観を否定するのではなく、個別の事情に適切に対応することで、企業としてもより良い職場環境を提供することが可能になります。

現代の多様な働き方を考慮し、従業員一人ひとりの価値観や生活スタイルに寄り添いながら、長期的に安心して働ける環境を提供することが、企業にとっても持続的な成長につながるでしょう。

最後に

「静かな退職」は、パフォーマンスが悪い従業員個人の責任として片づけるべきものではなく、現代の働き方や企業の在り方に対する一つの警鐘とも言えます。従業員がやる気を持って働ける環境を整えることは、企業の持続的な成長に不可欠です。

従業員の声に耳を傾け、彼らが充実感を持って働ける職場環境を提供することで、静かな退職を未然に防ぎ、組織全体の活力を高めることができるでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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