転職市場におけるエンジニア需要は高いものの、エンジニア採用難が深刻なIT業界の事情、また政府が2018年より働き方改革の一環として副業解禁を推奨する発信があった中、副業でのエンジニア受け入れを進める企業が増えてきています。
また、2020年の新型コロナウィルス問題以降、リモートワークでの就業体系を導入する企業が一気に増えました。そのためこれまで要していた通勤時間などの時間を副業に充てることが可能になり、平日の夜などでもそれなりの稼働時間を確保しやすくなりました。
このような背景の中、副業を始めるエンジニアが増えてきていますが、副業をしてみたいけど何から始めて良いのかわからないという方も多いと思います。この記事ではエンジニアとして副業をしたい方が何から始めたら良いか等について解説していきます。
日本の副業規制の今
働き方改革の一環として、政府も副業を積極的に推進しています。2017年に閣議決定された「働き方改革実行計画」では、「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」と記されています。テレワークとともに、副業・兼業などを推進する姿勢が明確にされたこともあり、その翌年である2018年は「副業元年」とも言われています。
厚生労働省も2018年に「モデル就業規則」を改定し、その中で、副業を禁止する条項が、副業を可能とするものに変化しました。最新の令和3年4月版では、次のような条文になっています。
第68条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
ただし、無制限に副業を認めさせようとしているものではなく、情報漏洩リスクや労働に支障がある、企業の利益を害するなどの場合は、副業の禁止や制限が可能となっている点には注意してください。
また、モデル就業規則の改定と合わせて、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」も策定されました。これには、副業・兼業について企業と労働者がどのように対応すべきか、労働時間や健康の管理、秘密保持・競業避止義務などの観点からまとめられています。
エンジニアの副業のメリット
こちらではエンジニアが副業をするメリットについて解説していきます。
収入が上がる
真っ先に挙げられるのが収入面でのメリットです。他の職種と比較してエンジニアは需要が極めて高く、単価が高く設定されていることが多いです。しかしながら、自分のスキルと副業案件の相性などにより、稼げる金額が大きく変わってくることを認識しておく必要があります。
例えばスマホアプリの開発経験が豊富なエンジニアの場合、同じようにスマホアプリの開発案件であれば当然ながら即戦力性が高いため単価は上がります。一方、例えばスマホアプリの開発経験が豊富な方がブラウザの開発案件を担当するなど自分が経験したことのない(もしくは経験が浅い)分野での副業案件の場合には当然ながら単価はそこまで上がりづらいです。稼ぐための副業であれば前者の副業案件を中心に請けると良いですが、スキルアップなどを目的とした副業にしたい方の場合は後者のような副業案件を中心に請けていくと良いでしょう。
また、副業による報酬についても理解をしておく必要があります。エンジニアの副業の場合、報酬は成果物単位での支払いになる固定報酬型と作業時間に対して支払われる時間単価型の2つのパターンで設定されることが多いです。いずれにもメリット、デメリットがありますが、エンジニアとしてスキルの豊富な方の場合には、これまでのスキルを発揮して成果を得られる固定報酬型の案件を選ぶと効率的に稼げるケースが多いです。しかしながら、その反面で固定報酬型の場合は高いクオリティが求められる為、時間単価型よりも結果に責任が求められるので注意しましょう。
エンジニアとしての幅が広がる
エンジニアの方の中には本業でスキルアップの機会などが望めない環境で悶々として働いている方も多いと思います。エンジニアの方が抱えるジレンマの一つして挙げられることとしては、収入は上げたいものの、収入が高い仕事はプロダクトが出来上がっており、追加機能の実装などが中心になるといったものが多いという現実があるのではないでしょうか。エンジニアの職に就いたからには世の中にないプロダクトを生み出そうという思いを持ってはいるものの、そのようなプロダクト開発初期段階にあるフェーズの企業は当然ながらプロダクトが出来上がっているフェーズの企業よりも高待遇を提示するということは難しいです。例えばプロダクト開発初期段階にある企業に副業として採用してもらえれば、人手が足りない中、そのような機会に新たにチャレンジすることも可能です。
また、自分がこれまで携わったことのない言語、開発環境に挑戦するというのもスキルアップの手段の一つでしょう。ある程度出来上がっている組織で最新の言語を導入するのは障壁が高いですが、未来を見据えた組織づくりを進めるスタートアップ、エンジニアファーストの会社風土の企業では最新の言語などを導入していることが多いです。そのような環境に副業で身を置くことで本業で使わない技術にも触れることができ、スキルアップにも繋げることができるでしょう。ただし、新たな言語などの仕事にチャレンジする際には、その言語でのコーディングなどは、最低限行った上で臨むのが良いでしょう。
人脈が広がる
副業のメリットとして収入が増えること、スキルアップについて挙げてきましたが、社内では知り合えない新しい人脈など様々なことを得ることができる点も大きなメリットでしょう。当然ながらエンジニアとしてキャリアアップするためにはトレンドのキャッチアップなどは欠かせません。そのような中、最近ではどのような言語、開発環境を導入している企業が多いかなどの情報収集は必須といえる中、社外の方との接点を通じてそのような情報に触れることだけでも大きな価値があるといえるでしょう。
また、将来的に転職を考えている方は副業での繋がりなどのご縁から転職の選択肢が広がるといった可能性も見込める他、フリーランスとして活動して行くことを考えている方にとってもフリーランスとして独立した際に良い形で立ち上がるための基礎固めになるなど様々なメリットが見込めます。
エンジニアが副業する際に求められること
こちらではエンジニアが副業をしていく上で必要なスキル・経験について解説していきます。
エンジニアとしてのスキル・経験
エンジニアで副業する際に求められる最も大切なことは、これまでの本業でのスキルや経験が、副業先の求める要件に合致しているかどうかになります。そのためにも、これまでのエンジニアとしての実務経験やプロジェクト実績についてわかりやすく整理し、相手にアピールすることが最も重要となってきます。記載すべきこととしては、以下表に記載の内容を参考にしてみてください。
・開発言語(PHP、Ruby、javascript 等)
※使用経験のあるフレームワークも記載があると尚可
・PC、タブレット、スマホ(iOS、Android)などのデバイス別開発経験
・開発手法(ウォーターフォール、アジャイル、スクラム等)
・PM/PL経験
・開発したアプリケーションの事業領域(Fintech、SaaS 等)
・その他(アーキテクト設計 等)
自己管理能力
次に自己管理能力が挙げられます。エンジニアに限らず、副業は本業と同時並行でこなすため、いずれのパフォーマンスも高いものが出せるように時間管理などを行っていく必要があります。当然ながら副業は会社と違って、上司が指揮命令をしてくれる訳ではありませんし、失敗などを巻き取ってくれることもないので、個人で段取りを組みながら期待される成果物を形にしていかなければなりません。
副業をはじめるに際しては、普段よりそのような仕事の段取りをつける習慣を鍛えていくと良いでしょう。特にこのプロジェクトであればどの程度の時間を要するかなどを見立ていくことなどができるおうになれば、必然的に自己管理力も身に付き、本業と副業の両立において高いパフォーマンスが発揮しやすくなるかと思います。
コミュニケーション力
次に必要なスキルとしてはコミュニケーション力が挙げられます。エンジニア副業はリモートワークが中心となることが多いため、非対面でのコミュニケーションの中で関係を築いていく難しさがあるといえるでしょう。また、前述の自己管理能力とも紐づいてくるのですが、案件を打診する企業に対して難しい要望には、なぜ難しいかという理由を根拠と共に示し、建設的なコミュニケーションをとっていくことが大切です。
今後も仕事が欲しいからと企業に対して何でも「YES」と回答をして貰い、自分のキャパシティをこえる案件を引き受けてしまい、結果的に十分とは言い難い成果物を納品する形になっては、当然ながら企業側の立場では継続的に依頼をしていこうとはなりません。
上記観点よりエンジニア副業においてはコミュニケーション力も重要なスキル・経験の一つといえるでしょう。しかしながら、最初からすべての経験・スキルを有する人はそうそうにいないです。まずは本業の中で上記経験・スキルを身に着けていくことを意識して臨むことから始めると良いでしょう。
エンジニアの副業の始め方
エンジニアに関わらず、副業を始める際には必ず本業での就業規則の確認が必須になります。副業を推奨する企業もあれば、本業に支障が出ないようにするため、あるいは情報漏洩を防ぐためなどの理由により、副業禁止や同業他社での副業は禁止という企業もあります。
副業禁止の中で副業した場合、雇用契約違反となり、最悪の場合懲戒処分などの罰則が科されてしまう恐れがあり、就業規則違反をしてまで副業をするのはリスクがとても高いといえるでしょう。就業規則が禁止の企業でに在籍しつつも、どうしても副業をしたい場合には上司や人事部門などに許可してもらえないか一度相談してみましょう。
また、副業を開始する上でもう一つ大切なことは確定申告対応になります。副業で得た所得は本業と合算の上、確定申告、納税の必要があります。こちらを怠ると意図していなかったとしても脱税の扱いとなり、処分を受ける可能性もあるため、副業を開始する際には確定申告を忘れず対応するようにしましょう。
エンジニアの副業案件の探し方
エンジニアの副業はどのように探せば良いのか。初めての副業の場合、エンジニア案件を多く扱っているクラウドソーシングサービスの活用が一番始めやすいでしょう。具体的には依頼主となる企業側と個人とがWeb上のプラットフォームを通じて繋がり、仕事が受発注できる形になります。多くの案件を比較検討することができるため、案件の報酬の相場観を養うこともできます。単発案件で簡単なものから、長期案件で難しいものまで揃っているので多種多様の経験を積むことができます。
クラウドソーシングは総合型と特化型に分かれており、総合型クラウドソーシングサービスは、エンジニア案件に関わらず幅広い内容の仕事を請けることが可能なことが特徴です。例えばエンジニアの経験を生かしたコンサルティングのような仕事などの機会も得られるかもしれません。特化型クラウドソーシングサービスは特定の分野に特化している仕事になりますので、ある程度やりたい仕事が決まっている場合、希望に合う案件が見つけやすいので、ジャンル特化型もおすすめです。有名なクラウドソーシングサービスでは「ランサーズ」「クラウドワークス」「ココナラ」「ビザスク」などが挙げられます。
クラウドソーシング以外の副業案件の探し方としては、SNSの使用や企業への問い合わせ等があります。ただし、SNSを使う場合は自身のスキルなどについて自発的に発信し続け、自ら企業にアプローチをしなければならないため、副業初心者には難易度高いかもしれません。ただし、将来的にフリーランスなどまで見据える方の場合には足許の副業案件獲得にはクラウドソーシングサービスを利用しつつ、中長期を見据えたSNSなどでの発信活動、ブランディングを行っていくことをお勧めします。
まとめ
今回はエンジニアが副業を始める際に知っておくべきことをご紹介させて貰いました。副業に関する規制は今後ますます緩和されることが予想される中、これまで副業を考えたことがなかった方もまずは情報収集などから開始していくと良いでしょう。