初めて面接官を担当する際、多くの方が「どのように面接を進めるべきか?」「人材を見極めるための適切な質問は何か?」「面接官が避けるべきNG質問は?」といった数多くの疑問を抱くかと思います。
この記事では、これらの疑問に答えながら、初めて面接官を務める際に押さえておきたいノウハウやポイントについて詳しく解説します。
面接官が担うべき2つの重要な役割
面接は企業の未来を左右する重要なプロセスであり、適切な進行と評価が求められます。面接官が担うべき「2つの役割」についてご紹介します。
人材の見極め
面接官の第一の役割は、応募者が自社にマッチした人材かどうかを判断することです。組織に合わない人材を採用してしまうと、企業の人間関係や業務効率に悪影響を及ぼし、組織にとって大きなマイナスとなってしまうことは言うまでもありません。面接官には限られた面接の時間の中で、応募者のスキルや実績を的確に把握し、自社に適した人材であるかどうかを慎重に見極めることが求められます。
応募者の意向醸成
採用面接は企業が応募者を評価する場であるだけでなく、応募者が企業を見極める場でもあります。人材不足が叫ばれ、売り手市場が進む中では、面接を通して企業の魅力、職場の雰囲気などをしっかりと伝え、応募者の意向を醸成をしていくことが重要です。
面接の基本的な流れ
それではオーソドックスな面接の流れを確認していきましょう。
挨拶と自己紹介
まずは丁寧な挨拶から始め、事前に履歴書・職務経歴書が提出されているケースであれば、応募者の氏名・住所などを確認し、個人情報に相違や変更がないか確認しましょう。続いて面接官が複数いる場合は、役職や年次に基づいて順番に自己紹介を行います。その後の質疑応答がスムーズにできるように面接官の職責を明確にするとよいでしょう。
またオンライン面接の場合、ネットワーク環境の接続における画像や音声の乱れがないか、冒頭に確認しておくようにしましょう。
アイスブレイク
アイスブレイクは、応募者の緊張をほぐし、その人となりを理解するのに効果的です。対面の面接では面接まで場所の移動時間や交通手段について、オンライン面接では普段使用しているオンラインツールについてなど、応募者が答えやすい話題が良いでしょう。アイスブレイクを通じて、面接官と応募者の間に共通の話題が見つかることもあり、双方にとって自然なコミュニケーションを形成することができます。
アイスブレイクは必須ではありません。時間的に制約がある多忙な候補者の場合は「早速、本題に入らせていただきます」など前置きをして、すぐ面接を開始して問題ありません。
企業・求人の説明
次に応募者に対し、会社概要や仕事内容を説明します。特に求人情報には記載していない情報を伝えることで、応募者の理解を深めましょう。
例えば創業の経緯や創業者の想い、沿革、事業内容、取扱商材やサービスの概要、今回の募集の背景、詳しい仕事内容、期待する役割などを説明します。このコミュニケーションの目的は、応募者に会社全体のイメージを掴んでもらうことであり、その後の質疑応答をスムーズに進めるための準備にもなります。
応募者への質問
応募者に対する質問は、事前に提出された履歴書や職務経歴書を基に行います。
また、履歴書や職務経歴書に記載されていない応募者の想いに触れることも大切です。書面に記載された実績や成果だけでなく、その時のエピソードに焦点を当ててコミュニケーションを図ることも重要です。
具体的な質問内容については、後述の質問例を参考にしてください。
逆質問(応募者からの質問)の対応
随時、応募者からの質問を受け付けます。応募者が気にしていることを察して、質問には丁寧に答えることが、応募者の志望度を高めるポイントです。
その上で重要なのは、これまでの応募者からの質問事例をデータとして蓄積しておくことです。これにより、応募者の傾向を統計的に分析・把握でき、市場感の理解につながります。さらに、それを基に採用ブランディングに活用したり、HPのQ&Aサイトに掲載することで、事前に相互理解促進する効果も期待できます。
また、今後同様の質問を別の応募者から受けた際に、どの面接官からも適切な回答を提供できるようになるため、回答事例をナレッジとしてまとめることをお勧めします。
事務連絡と面接の終了
面接の締めくくりに、面接のため時間を割いていただいた御礼を述べた後、選考結果の通知方法と日程について説明します。直接応募の場合は、企業から直接連絡がある旨を伝え、転職エージェント経由の応募者の場合は、転職エージェント経由での連絡となることを案内します。
併せて合否結果のスケジュール目安も伝えます。もし合格した場合はさらに面接があるかどうかなど、選考フローについて説明すると、応募者が就業開始までのイメージを持ちやすくなります。
面接での質問例
こちらでは面接官の質問例とその際のポイントについてご紹介します。
自己紹介
応募者の経歴を短時間で把握し、その後の質問につなげるために、自己紹介をしてもらいましょう。自己紹介では、経歴やスキルの一貫性に注目し、業界や職種との関連性を確認すると良いでしょう。
また、自己紹介をお願いした際に、まれに自己紹介だけで長時間話し続ける応募者がいます。ただ話が長いタイプの方もいれば、面接に慣れていないために緊張で長くなってしまう場合もあります。そのため、最初に「3分程度で自己紹介をお願いします」と伝えてから自己紹介をしてもらうことをお勧めします。
転職理由
転職理由を確認することで、応募者のキャリア志向や問題解決能力、前向きな姿勢を確認します。
他責思考やネガティブな理由がないか、また企業文化や仕事内容とのミスマッチを見極めることが重要です。近年では、複数回の転職を経験している応募者も増えているため、キャリアの変遷に一貫性があるかに注目することも大切です。
また、やむを得ず短期離職を経験した応募者もいるため、その背景にも触れながら、応募者の価値観や志向を正しく理解するために先入観を持たずにコミュニケーションを図ることが大切です。
志望動機
志望動機が具体的かつ現実的であるかをチェックし、応募者の適性を判断します。特に、応募者が企業についてしっかり研究しているか、企業の理念やビジョンに共感しているかを確認します。
現在、多くの企業が自社のHPだけでなく、さまざまなSNSを駆使して情報発信を行っています。創業者のインタビュー記事や取扱商材、サービスのニュースリリースなど、情報はあらゆる場所で入手できる時代です。応募者が事前にこれらの情報に触れているか、関心度の高さを確認することはもちろん、その情報から応募者が何を感じ、面接の場でどのように表現するかに注目することで、応募者への理解が深まるでしょう。
自己PR
応募者の強みやスキルが、具体的なエピソードを通じてどのように証明されているかに注目します。ポジションへの適合性やチームへの貢献度も確認します。
成果や実績がどのようなものであるか、可能な限り定量的に表現してもらうこと、またその成果や実績に至るプロセスで具体的にどのようなアクションを取ったかを確認することが重要です。
その目的は、応募者が転職後も成果を発揮できる再現性の高さを測るためです。成果が景況感やタイミングに左右されるものではなく、応募者の独自の創意工夫が含まれているほど、信頼性が高まります。したがって、定量的な成果と定性的な行動の双方を確認することが大切です。
企業選びの軸
応募先企業を選ぶ時の軸を質問することで、応募者の価値観やキャリアビジョンが企業の方向性に合っているかを見極めます。また、その基準が現実的で、長期的なコミットメントが期待できるかを確認します。
例えば、会社の経営者が掲げるMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)への共感や、これまで経験してきた業界や職域をさらに深められる環境がある点など、応募者のキャリアにおける思考の軸にも触れるコミュニケーションです。その軸が同社と一致しているかを確認するためにも、これは必須のコミュニケーションの一つといえます。
面接で避けるべきNG質問
面接官によっては、アイスブレイクのつもりで軽い気持ちで質問した内容が、就職差別などの観点からNGとされる場合があります。どのような質問をしてはいけないか、NG質問についてご紹介します。
以下にご紹介するNG質問はマナーとしてNGということではなく、法的に不正とされて労働局からの指導対象となります。全ての面接官に周知徹底するようにしましょう。
出身地・本籍地に関する質問
出身地・本籍地を尋ねることは、就職差別につながるリスクがあります。現在、ダイバーシティが進む中で、外国籍の方も対等に選考される文化が社会に根付いてきていますが、かつては国籍や本籍、出身地による就職差別が存在していたため、こうした質問がNGとされています。
・ あなたの本籍地はどこですか。
・ あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか。
・ 生まれてからずっと今の住所に住んでいるのですか。
家族構成や家族の職業・地位・資産に関する質問
こうした質問は、応募者の適性や能力ではなく、本人に責任のない要素で判断しようとするためNGとされています。これらの質問は、前近代的な差別意識によって就職の機会を奪われてきた人々を排除することにつながるだけでなく、本人の努力では解決できない要因を基準に採否を決めることで、予断や偏見が入り込むおそれがあります。
・あなたのお父さんは、どこの会社に勤めていますか。
・あなたの家の家業は何ですか。
・あなたの家族の職業を言ってください。
・あなたの家族の収入はどれくらいですか。
・あなたの両親は共働きですか。
・あなたの学費は誰が出しましたか。
・あなたの家庭はどんな雰囲気ですか。
・あなたは転校の経験がありますか。
思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関する質問
思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由や思想・信条の自由といった憲法で保障されている個人の自由権に属するものです。これを採用選考に持ち込むことは、基本的人権を侵害する行為であり、厳に慎むべきです。思想・信条や宗教について直接質問するだけでなく、形を変えた質問でこれらを把握しようとする企業もありますが、これは絶対に行うべきではありません。
・あなたの信条としている言葉は何ですか。
・ 学生運動をどう思いますか。
・あなたの家族で信仰する宗教は何ですか。
・あなたの家庭は、何党を支持していますか。
・労働組合をどう思いますか。
・尊敬する人物を言ってください。
・あなたは、どんな本を愛読していますか。
・学校外での加入団体を言ってください。
・あなたの家では、何新聞を読んでいますか。
男女雇用機会均等法に抵触する質問
性別を理由(または前提、背景)とした質問は、男女雇用機会均等法の趣旨に違反するNG質問です。また、男女共に同じ質問をしていても、一方の性については採用、不採用の判断に影響がなく、他方の性についてはその返答が採用、不採用の判断要素となるような場合は、採用において性別を理由として差別していることになります。
・今、お付き合いをしている彼氏(彼女)はいますか。
・結婚、出産の予定はありますか。
・結婚、出産後も働き続けようと思っていますか。
・当社は女性が少なく、また長く働き続けられる環境ではないが入社したいと思いますか。
最後に
初めて面接官を担当する方でも、この記事で紹介したポイントを押さえることで、効果的で質の高い面接が可能です。応募者の本質や強みを引き出し、さらに自社の魅力やビジョンをしっかり伝えることによって、応募者との相互理解が深まり、採用活動の成功率を高めることができます。面接は、企業の第一印象を伝える大切な場でもありますので、丁寧にコミュニケーションを図りながら、自信を持って面接に臨みましょう。