離職率を改善したい人事の方、必見!離職率低下を目指すときのポイントについて解説

高い離職率は、多くの企業にとって悩ましい課題です。離職率が高い状態が続くと、業務効率の低下や採用コストの増加、さらには社内の士気低下など、企業全体にさまざまな悪影響をもたらします。

本記事では、離職率の計算方法や改善に向けた具体的な施策を詳しく解説します。社員が安心して働ける環境を整えることで、企業の持続的な成長を実現するための一歩を踏み出しましょう。

目次

離職率とは

「離職率」とは、一定期間内において、退職した人数が全従業員数に占める割合を示す指標です。この指標は、企業の職場環境や働きやすさを評価するうえで重要な指標です。離職率が高い場合、その企業や組織内でなんらかの問題が起きている可能性があることを示唆しています。

離職率の計算方法

離職率の計算方法は厳密な決まりはありません。他社の離職率データを参考にする際には、その企業がどのような計算方法を採用しているかを確認することが重要です。離職率は通常、1年間の期間を基準に計算されますが、6か月や3年といった異なる期間で離職率を公表している企業もあります。多くの企業で採用されている一般的な離職率の計算式は、以下の通りです。

離職率の計算式

離職率 = 企業が定めた期間の離職者数 ÷ 起算日の在籍人数 × 100

                ※企業で定めた期間期間は1年間で定めることが多いです

例えば、ある企業で1年間に10人が退職し、基準となる在籍社員数が100人の場合、離職率は10%となります。この計算式で用いる「在籍社員数」については、厚生労働省のデータでは、雇用保険の加入対象者(1カ月未満の短期雇用者を除くすべての従業員)が基準となっていますが、正社員に限定して離職率を算出している企業もあるようです。

適正な離職率は企業毎によって異なる

厚労省公表のデータによると2023年の国内企業の平均離職率は15%とされています。これは、自社の組織コンディションを把握するための一つの参考値として考えると良いでしょう。しかし、離職率が15%を超えているからといって、必ずしも問題視する必要はありません。

例えば、スタートアップ企業では、離職者が多く発生しやすい傾向がありますが、これは企業の成長過程における特性とも言えます。創業期の混沌とした環境で活躍し、数年以内に退職や独立を視野に入れている人材と、安定的な職場で長期的に働きたい人材では、キャリアに対する価値観が大きく異なります。もし前者のような人材が企業にフィットしている場合、離職のリスクを考慮しつつも、積極的に採用を進めるケースが多いでしょう。したがって、離職率15%はあくまで目安であり、自社の規模や事業フェーズに応じて、適正な離職率目標を設定することが重要です。

離職率が高いことによる影響

それでは離職率が高いとどのような弊害が出る可能性があるのでしょうか。

採用・育成コストの増大

離職率が高い組織の場合、人材の採用・育成にかかるコストが増加することになります。求人広告の掲載費や採用担当者の労力、面接の調整など、採用活動には多くのリソースが割かれます。これに加えて、新たに採用された社員の教育やトレーニングにも時間がかかり、即戦力として活躍するまでにはさらにコストがかかります。離職が頻発すると、このサイクルが絶え間なく続き、経営資源を圧迫することになります。

社内の士気が下がる

社員の頻繁な離職は、社内の士気にも悪影響を与えます。優秀な社員が会社を去ることで、「この会社は長く働く場所ではない」といったネガティブなイメージが広がることがあります。また、残った社員は離職者の仕事を予期せぬタイミングで引き継ぐことになり、仕事に対するモチベーションが低下する恐れがあります。組織の一体感が失われ、チームワークにも影響が出ると、離職率はさらに悪循環を生み出します。

顧客満足度への影響

離職率が高い企業では、顧客との信頼関係構築においても問題が生じることがあります。長年培われた顧客との信頼関係が、担当者の離職によって途切れてしまうことがあるからです。頻繁に担当者が変わると顧客は不信感を覚え、サービスの品質や対応力に疑念を抱くようになります。顧客満足度の低下は、最終的には売上や企業の評判にも悪影響を与える可能性があります。

離職率改善のための施策

離職率を改善するためには、従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。以下に離職率を下げるための主な施策を紹介します。

従業員の声を聞く

従業員の意見や要望を定期的にヒアリングすることで、職場環境に対する不満や改善点を把握できます。従業員アンケート、1on1面談、HRサーベイシステムなどを活用の上、従業員の声に耳を傾け、迅速に対応することが離職率の低下につながります。

また、一度従業員の声を聞けば即座に解決できる訳ではなく、このような従業員の声を聞く取り組みは継続していくことが大切です。従業員の声を聞き、改善施策でどのように変化したかを繰り返し、組織全体が良いコンディションで運営できる状態を目指していくと良いでしょう。

コミュニケーション活性化の施策

離職理由を確認するアンケートを実施すると、多くの人が「職場の人間関係」において課題を抱えていることが分かります。職場の人間関係が希薄になり過ぎているようなら、社内の人間関係が深まるようなイベントを仕掛けてコミュニケーションの活性化を図りましょう。例えば人事担当者が仕掛けやすいイベントとしては内定者懇親会など、新入社員が入社するタイミングで既存社員を含めた関係構築を促すのが有効です。

人事評価制度の明確化

離職率を低減するためには、従業員が成長を実感できるように人事評価制度を明確にすることも重要です。昇進・昇給の基準がはっきりしていれば、従業員は何に注力するべきかが明確となり、モチベーションの向上につながるでしょう。従来の年功序列で評価する方法は分かりやすいものの、特に意欲的な若手社員にとっては退職リスクを高める要因となる可能性があり、見直しが必要かもしれません。

そのため、現行の人事制度については、従業員からのヒアリングを行い、自社の評価制度がどのように受け止められているのか実態を把握した上で、制度の企画・運用を進めていくことが求められます。

ワークライフバランスの改善

長時間労働や過剰な業務負担などは、従業員の疲労やストレスを引き起こし、ひいては離職の原因となり得ります。残業時間の削減に向けた施策を打っていくことは勿論、昨今の時代背景を踏まえ、フレックス制度をはじめとした柔軟な勤務時間、リモートワークが可能な就業環境の整備など、従業員が働きやすい体制を整えることで家庭との両立をしやすいよう支援していくことが大切です。

ハラスメントの防止・撲滅 

ハラスメントは社員の離職につながる深刻な問題ですが、その実態を把握することが難しいという課題があります。定期的に実態調査を実施し、ハラスメント防止に向けた日常的な啓蒙活動を行うことで、従業員のモチベーションを高め、健全な職場環境の維持に努めることが重要です。

メンタルヘルスのサポート

職場でのストレス管理やメンタルヘルスサポートを充実させることも、離職率改善に有効な手段です。専門家によるカウンセリングを導入したり、メンタルヘルスに関する情報を定期的に共有することで、企業が従業員の心の健康を大切にしている姿勢を示すことができます。これにより、従業員が安心して働ける環境を整え、長期的な定着率の向上につなげることが可能です。

転職エージェントをうまく活用して自社に合った人材の採用を

離職率の改善には、採用段階からの取り組みも重要です。企業文化やポジションに適した人材を採用することで、早期離職のリスクを低減できます。転職エージェントの活用を検討するのは離職を防止する上でも有効な手段です。

転職エージェントは、面接官や企業の人事担当者とは異なる第三者の視点で候補者と関わります。これにより、企業のニーズに合致した人材を客観的に紹介してくれるため、採用の質を高めることが可能です。また、エージェントは候補者との継続的なコミュニケーションをサポートし、企業の魅力を適切に伝える役割も果たします。これによって、求職者の満足度が向上し、採用後の定着率の向上にもつながります。

最後に

離職率の改善は、企業の成長や安定に不可欠な要素です。従業員が働きやすい環境を整え、キャリアパスを明確にし、適切な評価とフィードバックを行うことが離職率の低下につながります。また、転職エージェントを活用することで、自社に合った人材を採用し、定着率を高めることが可能です。

組織全体で離職率の改善に取り組むことで、従業員が長く働きたいと思える職場を実現し、企業としての競争力を強化することができるでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

目次