
2025年4月1日に予定されている「育児・介護休業法等改正」について、多くの企業が注目しています。少子高齢化が進む中で、子育てや介護をする従業員が増えており、働きながら家庭のケアを担う人たちが安心して働ける環境を整えることは、企業の採用力という観点においても非常に重要になってきます。本記事では、今回の育児介護休業法の改正の目的や変更点について解説します。
育児・介護休業法改正とは

育児・介護休業法は近年たびたび改正を重ねている法律です。2015年まで男性の育休取得率は3%を切っていたのに対し、2022年度の法改正の影響もあって男性の育休取得率は30%を超える結果となりました。
現代の日本では少子高齢化が進む中、働く世代が育児や介護と両立してキャリアアップができるような環境の整備が急務です。こうした社会的な背景を踏まえ、今回育児・介護休業法がさらに改正され、より柔軟で現代のニーズに応じた制度が導入されることになりました。
2024年(令和6年)5月24日に、育児介護休業法等の改正が国会で可決・成立しました。一部を除き、2025年4月1日施行が予定されています。

今回の改正のポイント

2025年4月の育児・介護休業の法改正による主な変更は、以下の3点です。
- 子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための支援策の拡充
- 育児休業の取得状況に関する公表義務の拡大および次世代育成支援対策の推進と強化
- 介護離職を防ぐための仕事と介護の両立支援制度の強化
では具体的に何がどう変わるのか、要点を確認していきましょう。
子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
まず「残業免除」措置については、これまで子供が3歳になるまでとされてきましたが、小学校就学までに延長されました。「子の看護休暇」については、入園・入学式などの行事参加や学級閉鎖の対応など、看護以外の目的で取得可能となります。名称も「子の看護等休暇」と改められます。また3歳になるまでの子どもを育てる労働者については、テレワークでの就業を検討することを努力義務とされました。
また事業主には、3歳以上から小学校就学前の子どもを養育する労働者に対して、職場のニーズを考慮しながら柔軟な働き方を実現するための対応策を整備し、労働者が選択して利用できるようにすることが義務付けられています。柔軟な働き方を実現するための措置としては、以下のうち、事業主が選択して2つ以上の措置を講ずることが求められます。
・始業時刻等の変更
・テレワーク等(10日/月)
・保育施設の設置運営等
・新たな休暇の付与(10日/年)
・短時間勤務制度
また妊娠・出産に関する申し出があった際、事業主は労働者に対して、仕事と育児の両立に関する個別の意向を聴取し、その意向に配慮することが義務付けられます。
育児休業の取得状況の公表義務の拡大
育休取得状況の公表が義務付けられる事業所の範囲が拡大されます。従来は常時雇用労働者数が1,000人以上の企業が対象でしたが、法改正後は300人以上の企業も対象に含まれます。公表内容は、配偶者が出産した男性従業員について「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」のいずれか一方となります。
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
これは介護による離職防止のため、事業者に対して、労働者が仕事と介護の両立しやすい就業環境の整備が義務づけるという内容です。まず介護休暇の対象範囲が拡大されます。改正後は、就業開始間もない労働者であっても介護休暇を取得することができるようになります。また介護をしている労働者がテレワークを選択できるよう努める義務も追加されています。この他にも、介護休暇を積極的に利用してもらえるように、事業者に対して個別周知・意向確認・情報提供・研修等が義務化されています。

最後に
2025年4月の育児・介護休業法改正は、働きながら家庭のケアを担う人々をサポートする重要な法改正です。これを機に、企業は従業員が安心して働ける環境を提供するための体制を再構築する必要があります。従業員の育児や介護の負担を軽減しつつ、業務に専念できる環境を整えることは、企業の競争力向上と持続的成長につながります。企業と従業員の双方がメリットを享受できるよう、改正の内容を理解し、適切な対応を進めましょう。