ボーナス前に退職を伝えると損?「ボーナス(賞与)支給」の点からみた転職のベストタイミング

「転職したいが次のボーナス(賞与)はほしい」「ボーナスをもらう前に退職を伝えるとボーナスはもらえなくなったりするのだろうか」など、ボーナスの時期と退職・転職のタイミングについて心配している方は多いのではないでしょうか。

これまで働いてきた会社のボーナス受け取り時期と、転職を希望する時期が重なっているのであれば、ボーナスを受け取ってから退職したいと考えるのは当然のことでしょう。本記事ではボーナス前に退職を伝える損になるのか、ボーナスの観点から見てどのようなタイミングで転職するのがベストなのかについて解説します。

目次

ボーナス(賞与)支給日前に退職を伝えるとボーナスはもらえないのか

もしボーナス支給日を前に退職の意思を伝えた場合、ちゃんとボーナスをもらえるのかどうかは多くのビジネスパーソンにとって最も気になる部分ではないでしょうか。どのタイミングで退職の意思を伝えればいいのかを判断するポイントにもなるので、ボーナス前に退職の意思を伝えても支給を受けられるのか、確認しておきましょう。

ボーナスは会社ごとのルールで支給されている

ボーナス(賞与)とは、月給とは別に支給される賃金のことです。夏・冬シーズンに1回ずつ支払われる会社が多いようですが、支給タイミング・回数は会社によって異なります。ボーナスについて労働基準法では支給義務についての定めがなく、法律上は支給しても支給しなくても構わないものとなっています。よって各企業の裁量によって定めることができます。

多くの企業では、就業規則・賃金規定などで自社のボーナス支給についてのルールをあらかじめ定めています。まずは所属している企業のボーナス支給規定を確認しましょう。ボーナス支給要件を満たしていれば、ボーナスを受け取ることができます。

ボーナス支給規定で定められていること

・ボーナス対象者の要件
例:4~9月に在籍していた正社員のみを冬のボーナス支給対象とする等

・ボーナス査定時期
ボーナス支給対象者に対して、いくらボーナスを支払うか査定する時期

・ボーナス支給時期
ボーナス支給のタイミング・回数

・ボーナス支給要件についての補足事項
例:会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合には支給しないこともある等

退職意思を伝えたことが査定に影響することも

ボーナス支給要件を満たしていたとしても、ボーナス査定の時期より前に退職の意思を伝えてしまうと、査定でボーナスが減額されるケースはあります。ボーナスの査定は本人の勤務状況や会社の経営状態が加味されて会社が金額を決定するため、退職の意思表示が理由で減額されたと思われる場合でも、査定に対して不服を申し立てることは困難です。ボーナスの在籍要件だけでなく、いつボーナスの査定がされているかを確認して、それより後に退職意向を表明するのが望ましいでしょう。

ボーナス(賞与)の点から見た転職のベストタイミング

確実にボーナスを受け取りたいのであれば、退職の意思を伝えるのは「ボーナス支給後」がおすすめです。上述の通り、ボーナス支給前に退職の意思を伝えると、就業規則の内容如何ではボーナスが減るリスクがあります。転職活動は現職の上司に気づかれないように内密に進めておき、ボーナスを支給日以降に退職の意思表明をするのがベストタイミングといえるでしょう。

しかしながら、次の転職先が必ずしもボーナスを貰ってから退職交渉に入りたい旨を了承してくれるとは限りません。欠員募集ですぐにでも後任者を採用したい募集などであれば、1日でも早く入社して欲しいというのが人事の心情ですので、現職、転職先のそれぞれの意向を汲んだ上で退職交渉の段取りを進めていく必要があります。

ボーナス面で損しない転職活動をするには

では実際にボーナス面で損しないように転職活動をするにはどのようにすればいいでしょうか。いくつか転職活動におけるコツをご紹介します。

求人応募のタイミングを図る

転職活動のフローは下図のような形で進めていくケースが多いです。企業によって異なりますが、選考は応募から内定まで1~2か月ぐらいが目安です。書類選考通過率は約30%と仮定して、複数社を併願しながら進めていくのが一般的です。

自己分析・職務経歴書作成・求人検索(企業・業界のリサーチ)については転職を思い立ったらすぐ着手して問題ありませんが、一度応募してしまうと応募先企業の都合に合わせてフェーズが進むことになります。ボーナス支給日を考えてタイミングをうまく合わせましょう。

転職エージェントを活用する

ボーナスの点で損をしない転職をするには綿密なスケジューリングが必須となります。転職活動をスムーズに進めるために、転職エージェントの活用をおすすめします。転職エージェントとの面談において「現職で●月末にはボーナスがもらえる予定につき、それを受け取ってから転職したい」と伝えておくと、それを考慮した転職活動サポートが受けられることでしょう。

転職エージェントは求人の紹介だけでなく、待遇面の交渉や入社日の調整など、さまざまなサポートをしてもらうことができます。例えば自分では聞きにくいボーナスなどの給与条件詳細についても、転職エージェントを通すことで詳しく確認することが可能です。また、収入を途絶えさせたくない場合など、効率的な転職活動を進めるためのアドバイスをもらえるため、何か不安がある人は払拭することができるでしょう。

時にはボーナスを諦めることになる覚悟も必要

どうしてもスケジュールに無理がある場合には、現職でボーナスを諦めることになる可能性についても考慮しておきましょう。ボーナスや安定収入を最優先で考えると、ボーナス支給後に退職を申し出るタイミングで数カ月後に転職先の入社が決まっているのがベストですが、転職活動は自分の期待通りに進められるとは限りません。

中途採用の求人は1名採用であることが多く、誰かが内定承諾したら求人は終了してしまいます。応募したい求人があるのに、ボーナスがもらえないかもしれないからと応募しないのは本末転倒です。また内定先の入社日についても先延ばしにするのは難しいケースが多いので期待するのはやめておきましょう。

退職についても申し出た直後にできるものではなく、引き継ぎや有休の消化も含めると、退職を申し出てから退職日までは1~2か月程度は要すると考えられます。どうしてもスケジュール調整が難しい場合には、現職のボーナスは諦めて転職先企業での就業開始を優先するようにしましょう。

ボーナスの支給後に円満退職するポイント

ボーナスがこれまでの仕事ぶりへの対価であると考えれば、ボーナス受け取ってから退職を申し出ることは悪いことではありません。ただ少しの工夫や配慮をすることでより円満に退職することができます。ボーナス支給後に円満退職するためにはどうしたらいいのか、詳しく解説します。

ボーナス支給直後に退職を申し出ることは避ける

ボーナスが支給された当日や翌日など、受け取った直後に退職を申し出るのは避けましょう。ボーナスを支給した直後に退職の意思を伝えることは、法的には問題もないものの、あまりに露骨なタイミングでの申し出に、上司から配慮に欠けてると思われてしまうかもしれません。

退職の意向を伝えた後にも、引き継ぎや退職日の調整において、現職の人とコミュニケーションが多く発生します。すでに転職先への入社日が迫っている場合はボーナス支給直後に退職を申し出ることになっても致し方ありませんが、なるべくそうならないよう転職先とのスケジュール調整は余裕を持って行うようにしましょう。

仕事の引継ぎは丁寧かつ余裕を持って

ボーナス支給後に円満に退職するためには、仕事の引継ぎや後任へのフォローは丁寧に行いましょう。あなたの退職にともなって引き継ぎや代理対応、後任の採用・育成など業務が誰かの負担になります。ボーナスや有休消化など自分の都合だけを優先していると、職場の人から心象を損ねかねません。後任の担当者に合わせたスケジュールで丁寧に引き継ぎをし、マニュアルとしていつでも見返せるように残しておくなど、丁寧な対応を心がけることが大切です。

転職が当たり前になった現在においては、以前一緒に働いていた同僚が同じ職場に転職したり、また取引先の関係になるということも珍しくありません。今まで以上に仕事に丁寧に臨み、良好な関係性で退職を迎えられるように努めましょう。

最後に

退職・転職を検討している方であれば、次のボーナスを受け取ってから辞めたいのは本音でしょう。とくに、ボーナスの支給日と、退職したい時期が近ければ尚のことです。ボーナスを受け取ってから会社を辞めることに何も問題はありませんが、円満に退職するために、退職の申し出をするタイミングを計ること、転職先の就業開始日を無理がないよう計画を立てることが大切です。

気持ちよく退職し、また新たな転職先で頑張るためにも、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしながら、納得できる退職の時期を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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