士業の在り方に変革を起こすことが、未来を変える第一歩
北條公認会計士・税理士事務所 代表 北條明宏氏

プロフィール

北條公認会計士・税理士事務所 代表 北條明宏(ほうじょうあきひろ)

京都府出身。関西外国語大学卒業後、アコム株式会社で5年間勤務。同社退職後、公認会計士を取得し、2008年に有限責任監査法人トーマツに入所し、銀行、信金、ノンバンク、リース会社など大手を含む金融機関に対する監査業務に従事。2015年より日本最大のベンチャー企業支援会社「トーマツベンチャーサポート」のメンバーに参画し、ベンチャー企業の経営管理体制の構築に関するコンサルティング業務に従事。2016年にトーマツグループを退職し、2017年より吹奏楽に関するベンチャー企業「BLAST-Hub(ブラスタブ)」を起業。現在は北條公認会計士・税理士事務所にてエクイティファイナンスを中心とした経営支援の他、株式会社HACARUS、株式会社坂ノ途中、あっと株式会社、tryangle株式会社などの複数のベンチャー企業の社外役員を務める。

北條公認会計士・税理士事務所

トーマツグループ在籍時より関西のベンチャー支援に携わってこられ、また自身もスタートアップの起業家として挑戦をされた上で、支援家として活動される北條氏に、ベンチャーの魅力、支援家としてのビジョンなどを語っていただきました。

目次

消費者金融業界から一念発起し、公認会計士へ

岩崎 学生時代はどのようなことを考え、最初のキャリア選択をされたのでしょうか。

北條 中学校から大学まで吹奏楽部に所属していて、勉強より何より部活第一の学生生活を送っていたんです。そんな部活第一の学生だったころもあり、新卒の就職活動ではあまり深く考えずに、早く内定を貰ったアコム株式会社に入社することになりました。

当時は消費者金融業界は非常に勢いのある業界で、新卒同期が300人もいるような環境でした。アコムでは、営業や債権回収の業務を担当していたのですが、当時の私はこの仕事がお客様にとってプラスになっているように思えなかったというのが本音でした。

銀行などの場合は貸付けした資金を元手に何かチャレンジをという方が多いと思いますが、消費者金融にお越しのお客様は多くの場合が目先の浪費のためであり、お貸ししたものの、返済の目途が立たずに首が回らなくなるような場面に度々遭遇していたのが実態でした。お客様のためにならないと思っても、営業目標達成のためには貸していかなければならないジレンマに毎日のように苛まれていたのを今でも覚えています。

岩崎 そんな日々の中でどのようなことを思い、公認会計士への道へ転換されたのですか。

北條 消費者金融から別の道へ模索していた際に、簿記を学び始めたんです。簿記の勉強はやってみたら面白くて、さらに会計の専門性を身に着け、税理士を目指そうと会計専門学校の門を叩きました。

その専門学校の先生に将来のことを相談した際に、広範囲な分野でアドバイザーの役割を担える公認会計士の仕事について教えて貰い、自分には公認会計士の方が自分の性分に合っているかなと思って方向転換をしました。そして会社を退職し、1年後に公認会計士試験に合格することができました。そして2008年にご縁のあった有限監査法人トーマツに入所することになったんです。

ベンチャー起業家の熱量に触れ、人生を決断

岩崎 トーマツ社では入社当初どのようなことをされていたのですか。

北條 トーマツでは、最初に関西で勤務した後、2年間東京に異動し、金融業界を中心にした監査やコンサルティング業務を担当していました。その後、関西に戻り、監査業務と兼務する形でトーマツベンチャーサポートというベンチャー支援事業を行うグループ会社にも籍を置くことになりました。

この経緯を説明すると、公認会計士を目指した頃から漠然と独立したい思いがあったんです。そして自分が独立する際には経営者と膝を突き合わせながら仕事をしたいと考えていた中、ベンチャーは自分に合っているのではと思い、手挙げして兼務することになりました。

岩崎 ここで初めてベンチャー企業と対峙して仕事をすることになったのですね。

北條 今思えばこのベンチャー支援の経験が、自分にとっては大きな転機になったように思います。大企業の支援をすることも勿論、意義はあるのですが、それ以上にベンチャー経営者と話をすることが自分にとっては本当に楽しい時間でした。世の中に新しい価値を生み出そうチャレンジする起業家は魅力的ですし、そんな起業家の方と二人三脚で事業を形にしていくのは本当に面白かったです。

ただ、ベンチャー起業家の支援をしていく中で、自分の中で違和感が芽生えてきたんです。ベンチャー支援の立場にあるものの、自分は起業経験はありません。そんな中、当事者意識をもってアドバイスや提案をさせて貰うようにはしていましたが、会社員の立場しか知らない当時の自分では、起業家の視座・視点を本当の意味で理解することははなかなか難しいと感じる瞬間がありました。また、対峙する起業家に日々刺激を頂く中で、自分自身もチャレンジをしてみたいという気持ちも徐々に徐々に強くなっていきました。

そうした思いを抱えた中、2016年末でトーマツを退職することにしたんです。

ベンチャー起業家のリアルを知る支援家へ

岩崎 トーマツ社を退職した後、どんなことをなさっていたのですか。

北條 トーマツ退職後は、世の中に新しい価値を生み出すチャレンジ、起業家としての喜びや苦しさを自分自身も体感したいと思い、株式会社 BLAST-Hub(ブラスタブ)というベンチャーを起業しました。具体的には吹奏楽やクラシックのプロ演奏家にとって新たな収入源となるサービス「Concert Box」というビジネスプランでベンチャー起業家として本気で奔走していましたね。

そしてBLAST-Hubと並行する形で北條公認会計士・税理士事務所も設立し、外部CFOとしてベンチャー企業のエクイティファイナンス支援、事業計画策定などのベンチャー支援を行いながら、支援家としての視座、視点を上げることにも取り組んできました。

結果的には起業をして2年経った頃にBLAST-Hubの事業には区切りをつけ、会計事務所の事業に絞る形で今に至るのですが、ベンチャーを立ち上げた経験のある社外CFOはなかなかいない中、ありがたいことに当時以上に多くのベンチャー起業家の方とご一緒させて頂いています。

岩崎 北條さんは支援家としてベンチャー起業家の方とどのような形で関わっておられるのでしょうか。

北條 私が携わらせて貰うことで多いのは、シード期からシリーズA、Bフェーズぐらいまでのファイナンスになります。関西のベンチャー起業家の中にはまだまだこの辺りのフェーズにおけるファイアンスの知識、考え方などに疎い方が多く、その部分を支えられたらという形で支援をさせて貰っています。

例えば初めてのファイナンスでまだ事業計画なども存在しないうようなフェーズの場合、起業家の頭の中にある抽象度の高いビジョンを具体化し、事業計画に落とし込んでいきます。その事業計画をVCなど投資家と共通言語で会話できるものにまでブラッシュアップしていき、またVCとの交渉の場にご一緒させて頂き、それぞれの趣旨や意向を翻訳しながら資金調達の支援も行ったりもします。

いずれにしてもですが、一番手喜びを感じるのは、やはり資金調達ができた瞬間ですね。ベンチャー起業家のビジョンを一緒に形にしていき、そのアウトップットを第三者に評価頂けたこと、またそこで得た資金でビジョンの実現に向けて大きく前進していく手応えを持てるあの瞬間はとても嬉しいです。

士業の在り方に変革を起こすことが、未来を変える第一歩

岩崎 北條さんが感じるベンチャーマーケットの課題、今後取り組んでいきたいことについてお聞かせください。

北條 関西のベンチャーマーケットは、例えばリードVCに簡単に会うことが難しいかったりと、まだまだ調達環境が東京と比べると良いものとは言えないのが実態です。私としてはそのような環境にある大きな要因の一つに起業家のファイナンスに関する知識不足があると思っているのですが、もう少し深く突っ込むのならば、起業家の経営を支える多くの税理士、会計事務所の在り方に目を向けるべきではないかと考えています。

私にご相談を頂く起業家の方の多くが、顧問税理士の先生に不満を抱えてお越し頂くのですが、当然ながら、そもそもファイナンスにまで明るい税理士の方はほとんどいません。それが当たり前かとは思うのですが、そのような在り方を変え、ファイナンスをはじめとしたより深い経営支援をできる税理士の方が増えれば、社会は大きく変わると思いますし、関西のベンチャーマーケットは盛り上がっていくだろうなと感じています。

私としては税理士の方をはじめとした士業の方が、ファイアンスをはじめとした多面的なアプローチでの経営支援手法などを当たり前に行えるような形に変えていくことができないかと考えています。私の立場からすると商売敵は増えるかとは思いますが、それ以上にそのような金融の知見を持つ士業の方が増え、ベンチャー支援の裾野が広がっていくことが、未来を変えていくために大切だと感じています。

ベンチャー起業家の熱量に刺激を貰ってこの世界に飛び込んで今までやってきましたが、今後もベンチャー企業の役に立っていきたいと思いますし、それが未来を作ることに貢献できることかなと考えています。特に私は関西で生まれ育った人間ですし、ベンチャー企業を中心に関西が盛り上がると嬉しいですね。

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