会社の成長を支える広報の仕事と必要なスキル

メディア対応なども行う広報の仕事は一見、華やかなイメージがあり、転職市場でも人気があります。しかしながら、華やかな仕事だけが広報の業務ではなく、社内外で地道な積み重ねを行う大変さもあります。

広報といえば大手メーカーの新商品発表など大企業が積極的に取り組んでいる印象があるかと思います。しかしながら、最近ではVCからの資金調達や行政や大企業との提携などに取り組むベンチャー・スタートアップ企業も積極的に広報活動に取り組んでいます。

そのような中、広報の転職先としては大企業からベンチャー、スタートアップ企業まで選択肢が増えているとも言えるでしょう。そこで今回は、会社の成長を支える重要な業務である広報の役割、広報に向いている人の特徴などについて解説します。広報の仕事を始めたばかりの方、広報の仕事で転職を検討されている方などは是非ご参考ください。

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広報とは

広報は転職市場でも人気のある職種の一つであり、大企業であっても少人数の組織で活動している部署でもあるため、広報部門へ転職するのは狭き門だと言うのは否めません。広報の力を必要としているのは大企業だけではなく、ベンチャー、スタートアップ企業も同様です。むしろ、ベンチャー企業のような、これから自社のブランド力を高めていきたいと考えている企業には広報に力を入れているところも珍しくなく、大企業の広報以上に重要で責任のある役割を担っているといってもよいでしょう。

そんな広報という仕事ですが、記者会見、メディア出演など華やかな仕事が目立ちますが、他にもさまざまな業務にあたっています。例えば社内外の関係者と良好な関係を構築するために、情報収集や情報発信を積極的に行っていくのが広報の役割です。それを通して、自社の認知度やブランド力向上につなげるほか、自社が行う営業活動や採用活動などにも良い影響を与えることが期待されています。広報の力でブランド力を高めることができれば、営業部門が商談を進めやすくなりますし、人事はより優秀な人材を採用できる可能性が高まるのです。

広報とPR、広報と広告の違い

ここで、広報についての理解を深めるため、似た言葉や混同しやすい言葉についても確認しておきましょう。こちらではよく広報と混合される「PR」と「広告」に関して広報との関係性と共に解説します。

PRとは

広報と似た意味の言葉で、「PR(Public Relation)」というものがあります。広報が「周囲に情報を知らせる発信」で、PRは「一方的な発信だけでなく双方向のコミュニケーションによる周囲との関係性構築」となり、広報はPRの一部と定義づけられます。

しかし、会社での広報部門・広報担当者は、一方的に情報を発信するだけではなく、周囲との関係性構築や情報収集も行うことが多いです。そのため広報活動に力を入れる企業では、広報・PR部門、広報・PR担当という名称の部門を設定することも珍しくありません。

広告とは

広報と混同しやすい言葉には、「広告」がありますが、広告は広報とは対極に位置するものといっても良いでしょう。具体的に広告は企業の商品・サービスなどをメディアにお金を支払って、自社が発信したい情報を告知してもらうものであり、具体的にはTVCM、新聞、Webサイト、看板などが挙げられます。広告の構造としては出稿する企業がスポンサーとなり、広告代理店に依頼をし、メディアにて情報発信する形になります。

それに対して、広報は自社が発信した情報に興味を持ったメディアが取り上げるというものであり、広報はメディアが掲載したいと考える情報を提供する構図であり、情報を取り上げてもらうためにお金を支払うことはありません。このように広告と広報では、誰が掲載する内容を決めるか、掲載にあたってお金が発生するか、といった点で異なります。ただし、広告と広報一切連動していない訳ではなく、広報活動で取り上げて貰うタイミングと連動する形で広告に投資をするようなケースなども多いです。

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広報の仕事内容

こちらでは広報の具体的な仕事内容について解説します。広報の仕事は、どのような関係者とやり取りを行うかという視点で、「社外広報」と「社内広報」の2つに分けることができます。

社外広報

社外広報の主な仕事内容としては新聞社、出版社などのようなメディアとの関係構築、対応が挙げられます。具体的には各メディアが最近どのような情報に関心を寄せているかの理解、及び各メディアに合わせて取り上げて貰うための情報ソース提供、取材対応などが挙げられます。また有名企業の場合、新製品発表などの際には記者会見の設定、準備等の仕事が発生する可能性もあるでしょう。

B2C向けの商材・サービスなどを扱う企業の場合には、消費者向けイベント企画・運営、TwitterなどのSNS、あるいは自社メディアの運営といった仕事もあるでしょう。このような業務は広報担当者が単独で企画・運用するケースもあれば、企業によってはマーケティング部門と連携しながら進めていく体制を敷いていることも珍しくありません。

このような社外広報はメディアに取り上げて貰えるまでに苦労することは多いかと思いますが、商品・サービスの認知度向上に繋がる、事業成長に直結する仕事でもある中、やりがいを感じられる瞬間も多いでしょう。またその他にも最近では「採用広報」と呼ばれるリクルーティングに主眼を置いた広報活動などを広報担当者がミッションとして担当するケースも増えてきました。このような業務も社外広報の一つに含まれるでしょう。

社内広報

社内広報は、企業が自社の社員に対して行なう広報活動です。例えば社内報の発行、あるいはそれに代わる社内向けポータルサイトなどで情報発信をするために社内のさまざまな部署に取材を行うといった活動を行います。このような社内広報で取り上げる題材としては経営者からのメッセージ発信、新入社員の紹介、健康診断のような社内行事の告知などが挙げられるでしょう。

製品やサービスなどを対外的に知って貰うための社外広報と比較すると会社業績などへの相関関係は可視化しづらいものの、社内報で取り上げることによる社員のエンゲージメント向上、あるいは組織規模が拡大した際に情報流が悪くなる問題の解決など間接的に企業の成長に寄与するのは間違いありません。

このように社外広報、社内広報のいずれにおいても広報は非常に責任ある仕事であると同時に、事業や組織の成長に貢献できるやりがいのある仕事だと言えるのではないでしょうか。

広報活動の鍵となるメディアリレーション

広報活動の中でも、メディアリレーション(メディアとの関係構築)は広報担当者の差がでる重要な仕事です。社外広報がうまくいくかは、新聞社、雑誌社などをはじめとしたマスメディアと良好な関係性が構築できているかに左右されると言っても過言ではありません。

近年、マスメディアの影響力が落ちてきたと言われていますが、マスメディアが取り上げた情報を掲示板やブログなどに代表されるミドルメディア、SNSなどのソーシャルメディアが取り上げるという流れができており、マスメディアとの関係なしでの広報戦略は考えにくいでしょう。

各メディアには、情報を取り上げて欲しいと、連日何十件、何百件もの情報提供があると言われており、メディアがどのような情報を取り上げるかは、当然ながらそのメディアの判断によります。メディアに取り上げる価値があると感じて貰えないいけないため、どのようにすればメディアに取り上げてもらえるかを戦略的に考えなければならないのです。

そして取り上げて貰えたとしても、メディア側が企画する特集などによっては自社が取り上げて欲しい形で掲載してくれるとは限りません。取り上げられ方によっては自社の思惑と異なる方向へ話が進んでします可能性もあり、場合によってはマイナスイメージに繋がってしまうこともゼロではありません。

そのため、広報担当者は日頃からメディアの関係者や他社の広報担当者とコミュニケーションを取り、どのような情報をメディア(とその視聴者・読者)が求めているのかを情報収集していく必要があります。広報担当者はそのニーズに合わせた形で、自社にとってもプラスに働く情報を掲載してもらえるよう、臨機応変な対応が求められる難しさがあるといえるでしょう。

広報の転職で求められるスキル

このような役割が求められる広報ですが、広報に向いている人とはどのような能力を持っている人なのでしょうか。こちらでは広報で活躍するために必要なスキルなどについてご紹介します。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力と言っても、会話が上手だといったことではなく、社内外に向けて地道に良好な関係を構築し、それを維持し続けられるだけの力が必要です。前述の通り、広報の仕事は広報担当者単体で成果を上げられるものではなく、社内広報も社外広報も協力関係を得ながら進めていかなければなりません。これから広報へのキャリアチェンジを考えている、あるいは広報としてキャリアアップをしていきたい方はあらためて今の仕事で周囲を巻き込み仕事を進めていくような取り組みができているかなど棚卸してみると良いでしょう。

マーケティング視点

メディアや消費者に興味を持って貰うという点では、広報といえども、マーケティング視点が欠かせないです。当然ながら自社がアピールできる点を伝える一方的なコミュニケーションだけでは、相手の心には刺さりません。人々が求めているのはどのようなことかを考え、そこにマッチする形での情報発信、情報提供の手段を考えていく力が必要と言えるでしょう。

このような情報発信力をアピールする方法の一つとして、SNSでのフォロワー数で自己PRを行うということも一つでしょう。TwitterなどのSNSは企業アカウントで運用するケースが多いですが、最近では広報担当者が個人アカウントで運用するケースも一挙に増えてきており、会社名などに依存せず、個人としてユーザーの関心高い情報を発信できるスキルがあることをアピールできることに繋がるでしょう。また、広報活動と広告などマーケティング活動を連動させる形で認知拡大を狙うようなシーンも珍しくない中、どのような広告手法がトレンドなのかを押さえておくことも大切です。

情報収集力

広報担当者が情報を発信するためには、発信する情報を持っていなければなりません。しかしながら、新商品やサービスのリリース、業務提携などのような発信しやすい情報がいつも手元にあるとは限りません。

このような状況を打開できるよう、社内のさまざまな情報を集められるように色々な部門に顔を出し、社内での関係性を構築していく必要があります。例えば地方の工場での取り組みが、大手メディアに取り上げて貰えなくとも、その工場のある地域のメディアには刺さる可能性もあるでしょう。このような自社にとってプラスになる、発信する価値があるかもしれない情報を、常日頃から収集しつづけることが求められます。

リスクマネジメント力

これは、FacebookやTwitterをはじめとしたSNSの影響が大きくなった近年、非常に重要な能力だと言えます。SNSの普及により、会社やブランドの公式アカウントを作成し、より適切なターゲットに対して、直接情報やメッセージを届けることができるようになっています。

しかしその一方で、メディアなどを通して知ったことや個人的に見聞きしたことを、個人が気軽にSNSで発信できる環境でもあります。会社の不祥事やインフルエンサーの発信などを起点として、自社に対するネガティブな声が一気に大きくなる「炎上」が企業のレピュテーションリスク(評判を落とすリスク)に繋がってくることも踏まえ、情報発信をしていくことが必要となるでしょう。

広告の内容や経営者の発言などがきっかけで炎上した場合、それに対する会社側の公式発表が遅いと、どんどん炎上が広がり、自社のブランドイメージが大きく傷ついてしまう可能性があります。また、社外の思わぬところから炎上が発生した場合にも、必要に応じて、何かしらの発信を行って火消しをしなければならないこともあるでしょう。

こういった炎上などに対しても、広報のすばやく適切な対応が、自社のブランド力毀損を最小限にとどめることにつながります。この点については、社員のメディアリテラシーが問題になることもあります。周囲からのアクションがきっかけで炎上することは避けられない部分もありますが、自社の公式アカウントや社員のSNSが炎上のきっかけになってしまったというケースも後を絶ちません。

SNSでは自社の名前を出して個人で発信を行っている人も少なくありません。あくまで個人のアカウントであるため、その内容は会社の公式見解ではなく個人の感想という扱いで本人は情報発信をしているものの、その発信を目にする側からすると、会社のスタンスや管理体制に疑問を持たれても仕方ありません。

こういったケースに対しても、広報担当者が、すばやく適切な対応を取ることが求められます。また、そのような事態が起きることを未然に防ぐリスクマネジメントへの取り組み、例えばコンプライアンスに関する社内広報を行うなどといったことも必要でしょう。

広報の転職活動

広報の方の多くが社内外に奔走する多忙な環境の中、 なかなか転職活動に十分な時間を割けないという環境にあることも多いでしょう。 このような多忙な広報の方は現職でのパフォーマンスを落とすことなく、効率的に情報収集を行う必要があります。こちらでは広報の転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。

スカウトサイトを活用した転職活動

一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)」「エンミドルの転職」などが挙げられます。このような転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズにも上場を果たしています。

これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙な管理職の方にとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

転職エージェントを活用した転職活動

前述の様な転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。

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最後に

広報は、転職市場での人気も高く、転職するのは決して簡単ではありません。しかし、SNSの普及など、広報部門が果たす役割は大きくなっており、大企業だけでなく、ベンチャー、スタートアップ企業においても広報専任者を置いて広報戦略に取り組むところが増えています。広報への転職、キャリアアップを検討されている方はぜひこの記事を参考にしてみてください。


この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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