企業を評価する指標の一つに「CAGR」を用いられることが多いです。しかしながら、このCAGRを用いる背景、CAGRを用いる際の注意点などまで正しく理解されている方は必ずしも多くはないのではないでしょうか。今回はこのCAGRについて解説をしていきますので、スタートアップ企業など事業会社に所属する方、あるいは経営支援をされる方もそれぞれの観点でご参考頂けますと幸いです。
CAGRとは
CAGRは「Compound Average Growth Rate」の略で、日本語では「年平均成長率」と訳されます。CAGRは複数年にわたる成長率から1年あたりの幾何平均を求めるものになりますが、砕いた表現でいうと「一定期間でみた際に平均どの程度成長しているのか」を判断するものになります。
CAGRの計算式は以下になります。
(N年度の売上/初年度の売上)^{1/(N年-初年)}-1
CAGRは数値が大きいほど成長率が高いことを示します。しかしながら、同じCAGRが20%の数値だったとしてもそれが3年か5年かなどで大きく意味合いが違ってきます。当然ながら売上が大きくなればなるほど高い成長率を維持することは難しいです。そのような中、5年経過する中でCAGRが15%と3年でCAGRが15%の企業を比較する場合には、5年でCAGRが15%の企業の方が評価すべきといえるでしょう。
CAGRが利用されるシーン
CAGRが利用されるシーンは多くの場合、企業を評価・分析のシーンになります。例えばVC(ベンチャーキャピタル)や事業会社の投資部門担当者がスタートアップ企業などに投資を検討する際に企業を評価・分析する指標の一つとしてCAGRを用いるというイメージになります。
当たり前ですが、企業を評価・分析する際には、売上、利益、ビジネスモデル、経営チームなど複数の指標で総合的に見ていく形になり、あくまでその中の一つであり、CAGRが高いから必ずしも高い評価に繋がるとは限りません。例えばCAGRだけ見てとても高い数値を示していたからとしても、市場全体が広がりを見せている中、競合他社がより高いCAGRであった場合には必ずしも評価されるとは言えません。そのため、CAGRを利用した上で企業を評価・分析する場合には、同じ業界、あるいは類似するビジネスモデルの他社がどのような数値を示しているのかなども鑑みた上で判断をすると良いでしょう。
また、複数の事業でポートフォリオを組んでいる企業などでは、会計部門が経営陣に対してCAGRをはじめとした指標を用い、事業の選択と集中を判断するというケースもあります。このような場合にはCAGRをはじめとした定量指標だけでなく、そこで働く従業員なども鑑みた判断が必要となります。
このようにCAGR単体での評価・分析ではなく、どのようなシーンで用いるかにより、他にどの指標をとりながら判断を下すか変わってきます。また、重視すべき他の指標も業界やビジネスモデルなどにより異なり、例えばSaaSであれば「T2D3」と呼ばれる指標、ECプラットフォームビジネスであれば「GMV」などが用いられます。このような業界、ビジネスモデルにより重視する指標を理解しつつ、CAGR単体での数値だけで判断をしてしまうことにならないよう気を付けましょう。
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最後に
今回はスタートアップ企業などでよく用いられる「CAGR」について解説をしました。CAGRはよく用いられる指標ではあるものの、CAGR単体で企業を評価・分析してしまうことは、確からしい意思決定にならないリスクがあることを認識しておくと良いでしょう。CAGRを用いる場合には、併せて何の指標を重視すべきかも理解の上で分析指標を整理し、総合的に判断をしていくことをお勧めします。