退職手続きで必要な書類を解説!転職で内定が出た後にすること

転職活動が無事にひと段落すると、今度は今勤めている会社の退職手続きを進める必要があります。当たり前ですが、会社を辞める旨を伝えれば即退職できるというわけではなく、円滑に退職手続きを進めるためにも退職の際にはどのような書類が必要なのか、どのような流れで手続きを進めるのか等を把握しておく必要があります。

特に退職が初めての方は、手続き関連にわかりにくいと感じることや疑問に感じることが多いもの。今回解説する内容を参考にしながら、退職手続きを進めてみてください。

目次

退職手続きで必要な対応

退職手続きを行うにあたり、具体的にどのような対応が求められるのでしょうか。スムーズに退職手続きを済ませるためにも、必要な対応について以下を参考にしながら、あらかじめ頭に入れておきましょう。

必要書類の提出・受取

退職手続きでは、まずは必要書類の提出(返却)・受取を行います。実際に必要となる書類は以下の通りです。

会社を退職する際に提出・受取する書類一覧

【提出書類】

①退職願/退職届
退職の意思・理由を書面に残してくもの。会社によって求められる書式・提出方法が異なります。直属の上司か総務人事に確認しましょう。

②健康保険被保険者証
社会保険組合に郵送する場合、会社の担当者に返却する場合などがありますので総務・人事部などに手続きを確認しましょう。

③業務上で所有していた資料・名刺等
資料や名刺を誰に引き継げばいいか、廃棄処分して問題ないかどうかなど、勝手に判断せずに上長に確認してから対処しましょう。

④引き継ぎ資料
これまで自分の行っていた業務を誰かが引き継ぐことになる場合には、なるべく詳細かつ具体的にまとめた引き継ぎ資料を作成しておくことが重要です。引き継ぎ先や引き継ぎ範囲・内容などを上司に確認し、余裕をもって提出できるように進めるようにしましょう。後任となる担当者が自分の退職後にきちんと業務を継続できるよう、分かりやすいマニュアルのような形で作成することがおすすめです。

【受取書類】

①年金手帳(基礎年金番号通知書)
年金手帳とは公的年金制度の加入者の情報(基礎年金番号など)が記されたものです。転職先企業に提出を求められますので、年金手帳が会社で保管されている場合は返却を求めましょう。紛失した場合は、現住所の市区役所または住所地を管轄する年金事務所に確認してください。(※ちなみに年金手帳については2022年以降から新規発行は廃止されており、2022年4月以降に紛失した場合は年金手帳に代わり「基礎年金番号通知書」というものが再発行されます。)

②源泉徴収票
源泉徴収票とは、会社から直近の年度内に支払われた給与や賞与などの総支給額と、そこから差し引かれた所得税の金額が記載された書類です。年末調整をするために転職先企業から前職の源泉徴収票提出を求められることが多いです。最後の給与支払い日後、退職後1カ月以内に発行されます。退職後に郵送で送られることがあります。会社に届けていた住所から転居する場合は受け取りに注意しましょう。

③雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明する書類です。最初に入社した企業や事業主が加入手続きをして発行される書類なので、会社が保管している場合がありますので確認しておきましょう。もし会社に保管されておらず、手元にもない場合は最寄りのハローワークにて再発行をしましょう。転職先に提出を求められます。

④離職票(正式名称:雇用保険被保険者離職票)
離職票とは、雇用保険に加入していた従業員が退職してから再就職や起業するまでの間、失業給付の受給手続きを行うためにハローワークに提出を求められる書類です。失業給付を受ける予定のある方や、転職先が決まっていない方は会社に離職票の発行を求めてください。離職票は会社とハローワーク両方の手続きを経て発行されるため、退職後2週間くらいで離職者に届きます。退職後すぐに再就職することや起業が決まっている場合には離職票は不要となります。

退職の際に受け取る書類については、それまで会社で書類を保管していたか否か、退職者後すぐ就業するか否かなど、その後どこに提出するかなど、状況に応じて適切な対応が求められます。離職票のように「自分から依頼しないと発行されない」種類の書類もありますので、対応もれに気をつけましょう。

また退職した後に受け取る書類が届かない場合など、退職後もやりとりが発生する可能性があるため、総務人事部など窓口となる部署の連絡先を念のため確認しておきましょう。

備品の返却

退職手続きの際には、以下のような備品の返却が求められます。

返却が必要な備品

・PC・携帯電話(スマートフォン)などのデバイス

・名刺 (自分の名刺・顧客の名刺)

・社員証やカードキー

・制服・作業着

・社費で購入したもの(書籍、文具など)

退職時に貸与PCに保存されているデータや、顧客との連絡ログなどの確認を受けることがありますので、貸与されたデバイスを私物化したり、会社の情報資産を持ち出したりすることは絶対にしないようにしましょう。特に顧客と交換した名刺のように仕事を通じて得た連絡先情報も会社に帰属します。

上記の他にも、会社から貸与されたものや、会社の経費で購入したものなどがあれば、会社に返却方法を確認したうえで、退職日までに正しい方法で返却しましょう。カードキーや手元に保管していたノベルティ等がきちんと返却されない場合、セキュリティインシデントや横領扱いになる可能性がありますので十分気をつけましょう。

公的手続き

退職手続きにおける「公的手続き」とは、健康保険や厚生年金保険などの手続きのことです。公的手続きとしては、主に以下が挙げられます。

公的手続き一覧
  • 失業保険の給付手続き
  • 健康保険の変更手続き
  • 年金の種別変更手続き
  • 税金の支払い手続き

公的手続きにおける必要書類や、提出期間、準備するものなどは人によって大きく異なります。それは退職時に転職先が決まっているかどうか、退職後に転居する場合、扶養家族がいる場合、健康保険を任意継続する場合など、その人の事情によって必要な手続きが変わってくるためです。

この手続きによって補助金の受け取り金額や健康保険の負担額が変わってくることになります。放置せず必ず対応するようにしましょう。どうしたらよいかよくわからない場合は、健康保険関連の場合は会社の総務や所属している健康保険組合、雇用保険(失業給付)関連はハローワーク、年金や税金関連の手続きは居住地の市役所や税務署などが窓口になっていますので、確認してみてください。

転職で内定が決まったときにすること・スケジュール

step:1

在職中に、転職活動の末に無事に内定が決まったら退職する前に済ませておかなければならないことが多いです。具体的に、どのような対応が必要となるのか、本項を参考にしてみてください。

退職交渉前:内定条件の確認・交渉

転職先から内定を貰うことができたら、入社日をすり合わせ、慎重に承諾・決定しましょう。入社日は退職前の期間も考慮しなければならないため、ゆとりのある日程を組むことが大切です。無理のないスケジュールで転職するのであれば、最終出社日まで1ヶ月以上の猶予は必要であると考えられます。

複数の内定を得た場合など、内定を辞退しなければならないケースもあるかもしれません。もし内定辞退をすることが決まったら、内定先企業(転職エージェント経由であれば転職エージェントへ)なるべく早めに連絡をすることが大切です。転職先企業が入社に向けた受け入れ準備をしている場合がありますし、他の採用活動を停止していることも考えられるからです。また内定承諾後の辞退については発生することがないように、承諾については慎重に決断しましょう。

退職1~2ヶ月前:退職意思の申し出、退職日交渉

内定先への入社日や有給休暇の残日数と照らし合わせ、退職希望日の1~2ヶ月前を目安に会社に退職の意思を伝えましょう。退職意思の申し出については、まずは直属の上司などしかるべき報告先へ退職の意思表示をするとともに、退職願・退職届もこの時期に提出します。

退職について了承が得られたら、退職日を調整しましょう。有給休暇が残っている場合、消化させてもらえないか交渉しましょう。会社側としても引き継ぎや業務の都合上、退職希望者の希望通りのスケジュールでの退職や休暇申請が受け入れが難しく、退職日交渉が難航することがあります。現職・内定先いずれの企業にも迷惑がかからないようにゆとりをもったスケジュールで進められるように調整しましょう。

また退職日とあわせて、退職することを社内外に共有する時期を上司と相談しましょう。勝手に挨拶に回ったり、引き継ぎを開始したりしないようにしましょう。

退職3週間~1ヶ月前:引き継ぎ

自分の業務を他の従業員が引き継ぐことになる場合には、退職日から1か月前を目安に引き継ぎを行いましょう。スムーズに引き継ぎができるよう、前もって引き継ぎ資料を準備しておくことがおすすめです。退職前は通常業務に加えて引き継ぎ・関係者への挨拶・送別会・次の転職に向けた準備などで忙しくなることが多い時期でもあり、十分に引き継ぎのための時間を確保できないこともあります。口頭で説明しなくても問題ない部分は、資料にまとめて後任の担当者に確認してもらうと効率的に引き継ぎを進めることができます。

退職2週間前:関係者への挨拶

最終出社日までに取引先や協業パートナーなど、社外の関係者へ挨拶回りをします。どのスケジュールでどこに挨拶するかは上司と相談し、必要に応じて上司や後任の従業員と一緒に足を運びましょう。自身が退職する旨と、これまでのお礼を伝えるとともに、後任する担当者の紹介を行います。

退職後に同業に転職する、あるいは独立・起業をする場合など、在職中に次の会社の営業行為をすることはご法度と置いている場合もありますので気をつけましょう。引き継ぎ後も顧客と会社が良好な関係を維持できるように配慮した立ち回りを意識してください。

退職日(最終出社日):社内挨拶や貸与品の返却、必要書類受取

退職日当日には、社内の従業員に対して挨拶をします。これまでのお礼や、お世話になったエピソード、後輩や部下への激励などの話題が適しているでしょう。他にも、退職日には会社からの貸与品を返却し、退職に関わる必要書類を受け取ります。貸与品の返却忘れは、会社とトラブルになりやすいだけではなく、最悪の場合は損害賠償請求にまで発展してしまうことがあるので、忘れずに返却しましょう。

退社後:離職票・源泉徴収票の受取・確認

前述のとおり、離職票・源泉徴収票は退職までに受け取るわけではなく、後日郵送・メール等で手元に届きます。書類が手元に届くまでの期間は会社によって差があるものの、離職票は退職から10日~2週間程度、源泉徴収票は1カ月以内に届くように手配されます。もし届かない・状況が分からない場合は会社の総務・人事部等に問い合わせましょう。

転職エージェントを活用して円満退職を

ここまで退職手続きについて解説してまいりましたが、手続きは「会社による」「その人の状況による」ということが多く、実際に自分が何をすべきか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

転職エージェントを利用している場合は、退職交渉の開始前からプロのキャリアアドバイザーに相談しましょう。キャリアアドバイザーが実務を通じてみてきた退職時トラブルの事例などをもとに、最適な対処法を教えてくれるなど大きな助けになるでしょう。

また、退職交渉に限らず、転職エージェントは現在の市場感や企業の詳細、面接対策など入社に至るまでサポートをしてくれます。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかどうかは、自身の転職活動を左右します。転職活動に悩み事がある人、不安がある人は転職エージェントを利用することで、それらを払拭することができるでしょう。

最後に

新卒で入社した会社に定年まで勤めあげていた一昔前とは異なり、現在は転職をする人が非常に増えています。転職のためには、まずは現在勤務している会社を退社する必要があるわけですが、その際には手続きや関連書類の提出・受取のため、さまざまな対応に追われることとなる点を覚えておかなければなりません。円滑な退職・転職を実現するためにも、今回ご紹介した内容をヒントにしながら、退職までのスケジュールを立てていきましょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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