転職活動で知っておきたい失業保険(失業手当)を解説

何等かの都合で急遽、退職を余儀なくされた際に、当然ながら当面の生活費に不安を覚えるでしょう。今回はそんな不測の事態に備えて知っておきたい「失業保険(失業手当)」について解説します。

目次

失業保険(失業手当)とは

失業保険(失業手当)とは公的保険制度の一種で、失業に際して手当金(正式には雇用保険の基本手当)を受給することができます。ただし、退職事由が会社都合か自己都合かにより、失業保険の適用は変わるので注意が必要となります。

失業保険とは、失業をした方が安定した生活を送ることができるよう、また早期に再就職ができるように支援することを目的として給付される手当になります。預貯金がない場合など、アルバイト等で生活費を得ながら転職活動に臨まなければならない、といったような事態を回避できるのがこの失業保険の制度であり、心にゆとりをもって転職活動に臨むためにも、条件を満たす方はぜひ活用されると良いでしょう。

失業手当の金額

失業手当の受給金額は、「離職前の6カ月間の給与の平均額」と毎月勤労統計に基づく計算式により算出され、失業手当の金額はおおよそ離職前の給与の50〜80%となります。給付率は固定の比率ではなく、離職前の給与水準が低かった方ほど給付率が高く設定される方式となっていますので、自分の年収の場合は失業手当がどの程度になるのかは、お住まいの地域にあるハローワークの窓口担当者に相談し、確認することをお勧めします。

失業手当の受給開始日

リストラ、会社倒産などの会社都合退職の場合には、退職翌日より失業手当の受給が可能となります。しかしながら、自己都合退職の場合は、失業手当の給付まで3カ月間の給付制限期間があり、退職から4か月後に失業手当の受給が可能となるので注意が必要です。

失業手当を受給できる日数

失業手当の給付日数は、離職日の年齢、雇用保険被保険者であった期間、離職理由などにより異なります。自己都合退職の場合、雇用保険加入期間1年以上で90日、10年以上で120日、20年以上で150日という設定となりますが、45~65歳で条件を満たす方の場合には最大で360日まで受給できる場合もあります。詳しくはハローワークの基本手当の所定給付日数に記載の項目をご参考ください。

尚、受給できる権利の有効期間は退職日翌日より1年間ですが、この期間中に病気・怪我・育児などの事由が発生した場合、失業手当受給延長手続きの上、最長4年間まで延長することができます。

失業保険(失業手当)を受給するために

ここまでは失業保険(失業手当)の概要についてご紹介してきました。こちらでは失業保険(失業手当)を受給するための条件、並びに失業保険(失業手当)受給に際して必要な手続きを解説していきます。

失業保険(失業手当)受給の条件

失業保険(失業手当)の受給条件は、失業状態(この制度においては就業はしていないが内定がある状態は、失業に該当しないので注意が必要です)にあることが前提です。失業とは「①就業しようとする意思があること」「②就職する能力があるにも関わらず、就業することができない。」この2つの状態を示します。そのため、本人に転職の意思がなかったり、怪我や基礎疾患により通院をしている、妊娠・出産などの場合は就業が難しいため、失業手当を受けることはできません。

また、大前提として「失業」をしている全員が失業手当を受給できるわけではなく、離職前の勤務先で雇用保険へ加入していたか、退職が自己都合か会社都合か等によって細かな条件が変わってきます。株式会社などの法人格の場合には社会保険は必須ではありますが、多様性を重視する今の時代においては働き方には様々な種類があります。自身が対象か不安な方は、住所地を管轄するハローワーク等で相談をしてみると良いでしょう。

失業保険(失業手当)受給のための手続き

確認後は書類を用意した後はハローワークにて「求職の申し込み」を行い、書類を提出し、「受給資格の決定」を受けます。失業保険は申請後直ぐに受給できるわけではなく、「受給資格の決定日(求職の申し込みと離職票を提出した日)」から7日間は待機期間のため、どの離職理由でも全ての人が受給することができない期間となっています。

7日間の待機後、ハローワークでの雇用保険受給説明会に出席すると、個別に「失業認定日」が設定されます。「失業認定日」とは、ハローワークに訪問することが求められる日のことを指し、4週間に1回のペースで設定されます。この失業認定日には、本人が必ずハローワークに行く必要があり、失業認定申告書に「仕事をしていないか」「求職活動をしたか」「すぐに働ける状態かどうか」等を記載したものを、受給資格者証を添えて提出し、失業状態の確認を受けます。

失業保険(失業手当)受給のスケジュール

ただし、上述の通り自己都合か会社都合の退職かによって1回目の失業認定日以降の受給スケジュールは異なってくるため、こちらもハローワークでの説明を通して把握する必要があります。

失業保険(失業手当)受給のスケジュール

①会社都合による退職の場合
7日間の待機期間満了後から給付対象。失業認定日から4週間ごとハローワークに訪問し失業認定日を受け、その間に失業保険の振り込みが行われる。

②自己都合による退職の場合
7日間の待期期間に加え、2カ月間の給付制限期間を経て失業保険給付対象となりますが、過去5年間で2回以上自己都合による退職をしている場合、3回目以降の給付制限期間は3カ月間になるため注意が必要です。

失業保険(失業手当)の受給対象外となるケース

応募した企業から内定を得ており、次の転職先が決まっている場合、失業保険は受給することができません。失業保険は前述の通り、「失業」の状態でなければいけないため、既に内定をもらっている場合は受け取りの対象外となります。このほか、次のようなケースも受給対象外のため注意が必要です。

失業保険の受給対象外

①自営業を開始した人、または自営業の開業準備に専念する人
 ※自営業か就職か迷っており、就職活動ができる人は対象となる場合もあります)
②税務署に開業届を提出した人
③会社の役員などに就任している人
 ※無収入の非常勤役員については対象となる場合もあり

転職先が決まっていない場合の失業保険(失業手当)

会社を退職して失業状態にある、または週20時間未満のアルバイト勤務者などは失業保険の受給が可能です。ただし、この際に受給に際して雇用保険の期間が影響しますので注意が必要です。

失業保険受給に関わる雇用保険

①自己都合による退職の場合
退職日の前の2年間に、雇用保険の被保険者期間が12カ月以上ある。

②会社都合による退職の場合
会社の倒産や業績悪化に伴う解雇など、やむを得ない事情により退職した場合、退職日の前の1年間に雇用保険の被保険者期間が6カ月以上ある。

なお、「被保険者期間」は1つの会社での在籍期間ではなく、複数の会社の在籍期間を合算することができるため、退職時には会社から「離職票」の交付を受けておくと良いでしょう。

離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」といいます。離職票は離職したことを公的に証明する文書であり、会社の情報、雇用保険加入期間、賃金支払状況、退職理由等が記載されているものになります(離職票の記載内容にしたがって、失業手当の受給資格の有無、受給期間が決定されます)。

また、離職票は失業保険(基本手当)の受給手続きに必要な書類の1つですが、もし転職先企業を短期間で辞めて、失業保険(基本手当)の受給手続きをする場合はその前の会社の離職票も提出することになります。そのような万が一の事態に備え、退職の際には離職票を必ず貰うようにして頂くことをお勧めします。

失業保険(失業手当)の受給中に転職が決まったら

ここまでは失業保険(失業手当)受給に際しての全体像について解説してきました。こちらでは失業保険(失業手当)の受給手続きをした後、失業保険(失業手当)の受給中、もしくは受給前など早期に次の転職先が決まった場合について解説をしていきます。

失業保険の受給を停止する手続きをする

失業保険の受給期間中に再就職先が決まった場合、新しい会社に入社する前日(土日をはさむ場合は金曜日)までにハローワークに行き、入社日までの失業期間の認定を受けます。これを「就職の申告」といいます。申告をするためには採用内定をもらった企業で「採用証明書」を記入頂く必要があるため、内定先の企業に事前に依頼しておきましょう。記入後、持参してハローワークに出向き、提出をすることで前回の認定日から出向いた日までの失業認定をしてもらうことができ、失業保険の基本手当をもらう手続きは終了となります。

受給停止の手続きは転職先に入社した後でも可能ですが、働き始めるとハローワークへ足を運ぶことが難しくなるため、入社前日までに済ませておくといいでしょう。

失業認定日までに就職先が決まった場合

こちらも失業保険(失業手当)の受給手続き後、失業認定日までに就職先が決まった場合も、上記同様、ハローワークで上記と同じ手続きを行います。

尚、失業保険(失業手当)の停止手続きを忘れてしまうと不正受給の扱いとなるリスクもあります。次の章では受給停止の対応が漏れてしまった場合のリスクについて解説していきます。

失業保険(失業手当)の受給停止は絶対に忘れないこと

受給停止の対応を忘れてしまい、そのまま失業保険(失業手当)の受給を続けてしまうと不正受給の扱いになってしまいかねません。不正受給の扱いとなった場合、以下のような事項が想定されますので注意しましょう。こちらの詳細は大阪労働局が公開しています「不正受給について(事例等)」のご案内も併せて参考にしてみてください。

不正受給扱いとなった場合のリスク

①不正の行為のあった日以降のすべての給付が受けられません。(支給停止)
②不正に受給した金額を、全額ただちに返還しなければなりません。(返還命令)
③不正の行為により受けた額の最大2倍の納付が命じられます。(納付命令)
④もし、返還や納付をしないときは、財産差押えなどの強制処分がなされます。
⑤特に悪質な場合は、刑事事件として告発(刑法の詐欺罪)されます。
 【例】 100万円を不正受給した場合
 (返還命令100万円+延滞金)+(納付命令200万円)=300万円+延滞金
 ※上記ご案内の通り、他の給付金に関しても支給停止となります。

失業保険(失業手当)以外に受給できる手当

前述の通り、再就職先が決定した場合、失業保険(雇用保険の基本手当)の給付は打ち切られますが、一定の条件を満たせば、「就業促進手当」を受給することができます。就業促進手当とは失業保険の所定給付日数を一定の日数以上残して就職した場合に支給される手当のことです。

失業保険を満額受給したいという気持ちから早期に就職先を決めることをためらってしまう等のケースを防ぐため、このような手当が設けられています。尚、就業促進手当には「再就職手当」「就業促進定着手当」「就業手当」「常用就職支度手当」の4つの種類があり、それぞれ解説していきます。

再就職手当

受給資格者が安定した職業に就職した場合に、一時金を支給する手当です。受給に際しては「所定給付日数の3分の1以上を残し、1年を超えて引き続き雇用されることが確実な雇用形態で再就職し、原則雇用保険に加入すること 」など複数の要件を満たすことが条件となります。尚、支給額は以下計算式により算出されます。

再就職手当算出式

支給残日数×給付率×基本手当日額(上限あり)

就業促進定着手当

就業促進定着手当は、前述の再就職手当の受給者が対象となる手当になります。引き続き、具体的には再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合に給付される手当となります。再就職手当を受給される方はこちらの手当についても併せて理解しておくと良いでしょう。

就業手当

就業手当は失業保険(失業手当)の受給対象者であり、再就職手当の支給対象とならない方が、常用雇用等以外(アルバイト・パート・日雇などの非正規雇用)で就業した場合に支給される手当になります。尚、こちらの手当は過去3年以内の就職にて受給実績がある場合には対象外となりますので注意が必要です。

常用就職支度手当

常用就職支度手当は就職困難な方が、正社員をはじめとした1年以上の雇用が見込める仕事に再就職したときに支給される手当です。こちらの手当も就業手当と同様に、過去3年以内の就職にて受給実績がある場合には対象外となりますので注意しましょう。

最後に

今回は「失業保険(失業手当)」について解説させて頂きました。今後不測の事態が起こった際に、失業保険の仕組みを知っておくことで、生活費などの不安を軽減することができるでしょう。また、「失業保険(失業手当)」を申請する際には細かな規則・ルールがあるため、失業した際や受給を検討している場合はハローワークなど専門の機関を頼ることをお勧めします。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA。


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