リストラとは?希望退職制度との違い、解雇条件などについて解説

生成AIの台頭などビジネスのスピードが加速する昨今において、新聞やニュースで「リストラ」という言葉を聞くことも珍しくなくなりました。「リストラ」という言葉は「解雇」と紐づけられがちですが、本来の言葉の意味としてはもう少し広義なものであり、また希望退職制度などともよく混合されがちです。本記事ではこのリストラという言葉の意味、希望退職制度の違いなどについて解説していきます。

目次

リストラとは

リストラとはリストラクチャリング(Restructuring 意味は組織再編)の略で、企業が直面する経済的困難や市場環境の変化に対応すべく、経営効率化やコスト削減のために行う組織や人員の再編成を行い、経営再建を目指すことを指します。

ニュースや新聞の見出し等のリストラという言葉は「解雇」の意味合いで使われることが多いですが、正しくは不採算部門の整理、事業の売却、人員の削減など多岐にわたる措置を含むことを認識しておきましょう。

リストラは業績不振など会社が危機に陥っている場合に実行されることが多いイメージですが、実際には業績が好調な企業で実施されることも意外と多いのです。好調な企業がリストラを実施する背景としては、業績が苦しくなってからのリストラを回避し、利益が出ている時にリストラすることで会社の財務状態を健全に維持したいという趣旨から実施されることになります。

人員整理をはじめとしたリストラは効率性・コスト削減を目指して実行するものにはなりますが、当然ながらそのリストラ自体にコストがかからない訳ではありません。リストラが実行されるタイミングが必ずしも業績不振のタイミングでないのはこのような事情もあることを理解しておくとよいでしょう。

リストラにおける人員削減と希望退職制度の違い

冒頭にも記載の通り、リストラ希望退職制度を混合される方も少なくはないのでではないでしょうか。こちらではリストラと希望退職制度の違いも交えた解説を行っていきます。

リストラの施策である人員削減

リストラの中でも特に注目されがちなのが人員削減であり、企業が経済的な理由から従業員数を減らすことを指します。業界やビジネスモデルにもよりますが、高騰する人件費が経営を逼迫させてしまっていることが多く、リストラの中でも最も多く使われる手法の一つが人員削減であり、リストラ=解雇というイメージが世間的に広まっているのではないでしょうか。しかしながら、リストラの施策の中にある人員削減の施策においては様々あり、リストラ=解雇という訳でありません。

解雇と希望退職制度

リストラにおける人員削減には、一般的に2つの方法があります。一つは希望退職制度、もう一つは解雇です。

希望退職制度は大前提として従業員が自発的に退職することを促す制度です。企業は希望退職制度を利用した退職希望者に対し、退職金の増額や再就職支援などのインセンティブを提供します。全員と円満退職で終えることは難しいかもしれませんが、解雇と比較した際に、希望退職制度は従業員との関係を比較的良好に保ちつつ、人員を削減することができるため、リストラで人員削減を行う際には多くの企業で第一に採用される施策といえるでしょう。

一方の解雇は、企業が一方的に従業員との雇用関係を終了させるリストラの施策です。リストラの際に解雇の施策を第一に採用する場合、例えば不祥事で一気に消費者離れが起こってしまう等、企業が経済的な側面において非常に深刻な局面を迎えていることが多いです。また、日本において解雇は労働基準法によって厳しく規制されており、正当な理由なく従業員を解雇することは法的に許されていない事情からもリストラの際に最初から解雇を行うのは企業としてもリスクとなるでしょう。

日本企業において解雇は容易ではない

日本の労働法では解雇は「客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であると認められる場合」にのみ許されます。具体的には、以下のような条件が考えられます。

日本において解雇が認められる場合
  • 経営状況の悪化による事業の縮小や撤退
  • 従業員の重大な職務違反や能力不足
  • 労働条件の合意が得られない場合

しかしながら、先述の通り、解雇は最後の手段とされ、企業の立場としてはまずは経営状況の改善や従業員の能力開発、配置転換など他の対策をとることが多いです。ただし、解雇が当たり前とされる外資系企業の場合、本社の通達で一方的な解雇などが行われることが珍しくありません。自身が勤める会社がどのような経営方針なのかにより、リストラにおける施策は変わりますので、過去に業績不振に陥った際にどのような施策をとったのかなどを参考にしてみるとよいでしょう。

転職市場価値を考えたキャリア形成を

これまで終身雇用は終わり、誰もが知る大手企業でもリストラを実行するニュースに触れるのが今の時代です。会社に依存して自身のキャリア形成を怠っていると、転職を余儀なくされる不測の事態に慌てふためくことになってしまいかねません。

このような事態においても、新たな選択肢が得られるように、社外の方よりお声がけ・スカウトを頂けるように、転職を前提にせずとも自身のキャリアの棚卸、あるいは社外とのネットワーク構築などに継続的に取り組んでいくことが大切といえるでしょう。

また、転職市場における自身の市場価値をはかるには転職エージェントに相談をしてみるのも良いでしょう。転職エージェントは企業の採用活動の変化などに触れるため、現在だけではなく、将来的にどのようなスキル・経験が評価されやすいといったアドバイスを貰うことも可能です。

まとめ

今回の記事ではリストラについて解説をさせて頂きました。リストラは企業が直面する様々な困難に対応するために行われる重要な措置ですが、特に人員削減に関しては解雇だけではなく、希望退職制度などの施策がとられることが多いのでまずはこのような制度についても理解をしておくことが大切といえるでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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