「もし突然、会社をクビ(解雇)になったら!?」転職に必要な手続きを解説!

「勤めていた会社からクビ(解雇)を宣告される」ことは多くの方にとって日常的なことではないかと思いますが、だからこそ突然そのようなことがあれば、対応に迷う方が大半なのではないでしょうか。日本は米国に比べて解雇の規制が厳しく、正社員であれば安定して働けると考える方は多いですが、予期せず突然クビ(解雇)になる事例は存在します。

万が一、会社をクビになったら、「何から手を付けたらいいのか分からない」「次の仕事探しはどうしたらいいのだろう」などさまざまな不安にも悩まされることでしょう。そこで今回の記事では会社をクビになることが判明した方(もしくは会社業績が思わしくなく、将来、解雇リスクがある方)へ向けて、必要な手続きを始め、クビが転職活動に影響するリスク、クビ後の転職活動を成功させるポイントについて解説していきます。

目次

クビ(解雇)とは

クビ(解雇)とは会社が一方的に労働契約を終了することを指しますが、解雇の理由・経緯により、いくつかの種類に分かれますのでそれぞれの言葉、その意味について以下にて解説します。

解雇の種類

・普通解雇
本人の能力不足や勤務態度の問題などが理由による解雇。懲戒処分には含まれない。

・整理解雇(リストラ)
企業が人員削減のために行う解雇のこと。 経営難・事業の縮小・災害による事業所閉鎖が理由になるケースが多い。

・懲戒解雇
就業規則などに記載された処罰対象に触れることを行った場合に該当する解雇。悪質な規律違反を行った従業員に対して、最も重い懲戒処分として行われる。どのような場合に懲戒解雇となるか就業規則に定められている。

・諭旨解雇
会社が従業員に退職を勧告し、従業員に退職届を提出させたうえで解雇する懲戒処分で、懲戒処分において懲戒解雇に次いで重い処分という扱いになることが多い。

なお、退職を促されて従業員側が自発的に退職届を出した場合や、有期雇用契約の期間満了して更新がない場合は解雇には含まれません。日系企業では解雇による訴訟トラブルを防ぐため、よほどのことがない限りは極力「クビ(解雇)」にならないよう措置がとられるのが一般的です。

もし会社をクビになったらどうしたら良いのか

万が一会社をクビになることが確定したら、どのような流れでどんな対応を進めていけばいいのでしょうか。会社を初めてクビになり、何から手を付けたらいいのか分からない……とお悩みの方は、ぜひ以下を参考にしてみてください。

クビ(解雇)理由に関して会社に確認する

日本では会社が従業員を簡単にクビ(解雇)にできないように、労働基準法で厳しく規制されています。もしクビを言い渡された場合は、正しい解雇理由であるのか、解雇の要件について就業規則で明示されているか、適切な解雇予告が行われたかどうかについて確認しましょう。そのためには解雇予告通知書や解雇理由証明書を発行請求・確認するとよいでしょう。これらの書類の発行は企業に義務付けられているわけではないため、口頭のみで済まされる場合もあります。

もしも自分のクビ(解雇)が不当解雇ではないかと疑われる場合には、弁護士や労働基準監督署へ相談しましょう。解雇理由は退職金や失業手当の受け取りにも影響します。

年金の手続きを行う

退職後、すぐに転職予定がない場合、これまで加入していた会社の年金から国民年金へと切り替えなければなりません。もしくは家族がいる場合は「自分が家族の扶養に入る」といった選択肢もあります。国民年金に加入する場合も、家族の扶養に入る場合も、退職翌日から14日以内に手続きをするよう定められているので、早めに手配をすることをおすすめします。ただし、退職後にすぐ再就職し厚生年金に加入することが決まっている場合には、年金の切り替え手続きは不要です。

健康保険の切り替えを行う

前項の年金同様に、すぐの転職予定がない場合は健康保険も切り替える必要があります。社会保険に加入していた場合は、退職したら「国民健康保険に加入」「家族の扶養に入る」「任意継続被保険者制度を利用」のいずれかの対応が必要です。

国民健康保険に加入するケースとしては、退職後すぐに社会保険に加入する予定がない場合です。転職先が決まっていない場合や、しばらく再就職する予定がない方が該当します。退職日の翌日から2週間以内に手続きを行いましょう。

家族の扶養に入る場合は、家族の勤務先にて手続きをしてもらう必要があります。退職日の翌日から5日以内に家族の勤務先に扶養に入る旨を伝えてもらい、加入手続きを依頼します。

任意継続被保険者制度とは、勤務していた会社の健康保険を退職後2年間まで延長して加入し続けられる制度のことです。退職日の翌日から20日以内を目安に、健康保険組合や住所地にある協会けんぽに連絡して、必要な手続きを済ませましょう。

受け取ることのできるお金を確認する

クビになってしまった場合、当然ながら収入が途絶えることになります。クビであっても退職後に受け取ることのできる手当がないか確認しましょう。雇用保険から支払われる失業手当は解雇による退職であっても支給されます(退職理由によって受け取りまでに待期期間が発生します)。

会社から支払われる退職金に関してはクビの理由によっては受け取ることができない場合もあります。また事情によって、解雇予告がなく、即日解雇となった場合は、会社から解雇予告手当が支給されることもあります。解雇予告手当の支給要件は、解雇日の30日前までに解雇予告がなかった場合です。労働基準法によって、会社は解雇日の30日前までに予告することが義務付けられているため、解雇予告された時期によっては、手当が支給されます。

クビになったら転職で不利になるのか

クビになってしまった場合、転職で不利になるのでは?転職先でバレてしまうのでは?といった点で不安になるものではないでしょうか。本項ではその点について解説していきます。

整理解雇(リストラ)は転職活動にあまり影響がない

整理解雇などクビになった理由が本人過失ではない場合は、転職活動にはほぼ影響はありません。たとえば、「企業の業績の問題から人員整理があった」「勤務先の倒産による即日解雇」などを理由に解雇となったのであれば、応募者本人が経営者・責任者でない限りは落ち度がないと判断されるため、採用シーンで不利になることはほとんどありません。

退職理由を聞かれた場合は、その理由を回答して問題ありません。ただし、退職理由が会社都合であっても転職回数が多くなることで転職活動が不利になることはあるので、全く影響がないわけではないのでその点は留意しておくと良いでしょう。

転職先に知られる可能性はある

クビになった事実が書類選考や面接では質問されない限りは応募先に知られてしまうことは少ないものの、知られる可能性はゼロではありません。例えばリファレンスチェックや入社書類手続きで発覚することがあります。解雇に関する内容が記載されている書類(退職証明書・離職票・雇用保険受給資格者証等)を応募先企業から提出を求められることがあれば、クビになったことが知られる可能性はあります。

また、リファレンスチェックのような制度がない場合にも、入社後に前職の知人などから話が広まることもあります。後々辻褄が合わなくなることがないよう、応募段階から情報開示の上、誠実に対応しておくことが好ましいでしょう。

解雇されていないと嘘をつくのはNG

解雇が転職で最も大きなリスクとなるのは、転職先に対して前職の懲戒処分としての解雇をされていないと嘘をついて、それが露呈した場合です。面接で解雇かどうか確認を受け、解雇ではないと説明していたのに、後から重大な不正による懲戒解雇による退職であったことが発覚すると、場合によっては経歴詐称として処分を受けることもあります。

懲戒解雇について転職先に知らせる義務はないので、聞かれない限り積極的に伝える必要はありませんが、説明を求められた際には正しく説明できるよう、事前に準備しておく必要があるでしょう。懲戒処分を受けたことが知られることで転職活動において不利になることは否めません。しかし虚偽の説明をしてしまい後から事実が発覚するほうがリスクが高いです。

クビになった後の転職活動を成功させるポイント

クビ(解雇)を言い渡されるのは、突然のことが多いです。そのようなときに備え、クビを言い渡された際に、何をすべきかについて認識の上、備えておくと良いでしょう。

転職活動を即開始する

クビ(解雇)の通告を受けた際にはモチベーションが低下してしまうこともあるかと思いますが、なるべく早く転職活動を開始しましょう。クビのように自発的ではない退職では、転職に向けた準備が十分にできないまま退職することになり、ブランク(離職期間)の長期化につながりやすいためです。そしてブランクが長引くことで応募先企業から「働く意欲が低い」と判断されて、その後の転職が更に不利になったり、定収入を途絶えることで経済的に困窮するなどの悪循環に陥ってしまう可能性があります。

クビ(解雇)について履歴書・職務経歴書に書く必要はない

履歴書や職務経歴書にクビ(解雇)について書く必要はありません。解雇や離職理由に関しては、詳細記載なければならないといったルールはなく、仮に懲戒解雇された場合でもそれを記載しなくても問題ありません。倒産や事業所閉鎖など明らかにやむを得ない事情による会社都合・整理解雇で退職でしている場合はそれを記載しても良いでしょう。

面接の対応について

面接では前職を辞めた理由を聞かれることが多いため、離職理由の答え方について事前に考えておく必要があります。どのような経緯で退職に至ったにせよ、前職を悪しざまに言うことなく説明することが大切です。

例えば自分の過失が原因でクビになった場合は、「前職では〇〇が理由で、過失をおかしてしまったが、その点については深く反省している。反省から学んだことを活かして、今後は御社に誠実に貢献したい」といったように他責にならないように反省を表現しつつ、前向きな内容にまとめることがおすすめです。

転職エージェントに相談する

「すぐに仕事が決まるか不安」「採用してもらえるか自信がない」といった方は転職エージェントの活用をおすすめします。転職エージェントは、転職希望者のさまざまな事情を考慮し、転職先を提案しています。例えばクビになって収入面の不安から急いで仕事を探されているのであれば、その事情に配慮した求人の紹介や転職のサポートが受けられるでしょう。

転職エージェントに相談する際には希望する条件についてもはっきり伝えておきましょう。前職の業界・業務経験を活かした転職をした方が条件が良くスムーズな転職が可能ですが、整理解雇などの事象を受け、その業界に対して不安を感じる場合には異業界への転職を検討したほうが良いこともあります。

また、解雇についての応募企業側へのどのように情報開示をするのかについても共有しておくと良いでしょう。給与や休日などの一般的な就業条件はもちろんのこと、事業の安定性や企業カルチャーなど、調べるのが難しい面の情報収集のサポートが受けられるのも転職エージェントを利用するメリットです。転職活動に不安を感じている方は、ぜひ転職エージェントの活用も視野に入れて、納得のできる仕事探しを始めていきましょう。

最後に

今回は、クビ(解雇)になった場合の必要な手続きや、転職活動へのリスク、転職を成功させるためのポイントなどについて解説しました。さまざまな理由により、勤務先をクビになる話は決して珍しいことではありません。

しかしながら、いざクビを告げられると慌ててしまううえに、何をしたらいいのか分からなくなってしまう方も多いものです。突然クビが決まった方や、解雇される可能性のある方は、今回ご紹介した手続きや転職活動のポイントを参考にしながら、後悔のないように行動していきましょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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