ベンチャー、スタートアップ企業のカジュアル面談で準備すべきこと

ベンチャー、スタートアップ企業では面接を受ける前に、フランクに質問や意見交換をおこなうカジュアル面談が行われることが多いです。カジュアル面談では、「転職希望者と会社がお互いのことをよりよく知るため」の手段ですが、その中での選考要素もゼロではありません。

また、一般的にカジュアル面談が気楽に話をする場と説明されていても、企業側がどのような目的でカジュアル面談の場を設定するのかを理解すると、準備がとても大切だということがわかるでしょう。今回はカジュアル面談がどのようなものかを知り、どんな準備が必要なのか、またこのようなカジュアル面談の機会が多いベンチャー、スタートアップ企業をいかに効率的に探していくかについて解説します。

目次

カジュアル面談が設定されている背景

ベンチャー、スタートアップ企業では、採用面接に先立ってカジュアル面談が行われることが多いです。このようなカジュアル面談を設定される理由は大きく2点あります。

転職希望者との接点を多く持ちたい

1点目は 転職希望者との接点を多く持ち 、自社のビジネスをまずは知ってもらう機会をつくりたいという企業側の目的があります。ベンチャー、スタートアップ企業のビジネスは世の中に新たな価値を生み出すものが多い中、世の中で普及する一般的なビジネスと異なるビジネス構造であることも多く、一見するとどのようなビジネスなのか、最新技術がどのように活用されているのかなどが見えづらいという問題があります。そのような問題解決の側面により、カジュアルに場を設けられるというケースが多いです。

尚、以前はベンチャー、スタートアップ企業などでカジュアル面談を設定することが多くありましたが、人材難がさけばれる中、大手企業などでも例えば新規事業立ち上げ経験者、DX人材など転職市場において希少なキャリアの人材採用においてカジュアル面談の機会を設定する企業が増えてきました。

ミスマッチ、早期退職の回避

もう1点は採用後のミスマッチ、早期退職のリスクを減らすためと言えます。少人数のベンチャー、スタートアップ組織では1名のアンマッチが、社内全体に影響を及ぼしかねません。一方で大手企業と異なり、社内の情報などが十分に発信できている会社が少ないのも事実であり、転職希望者もなかなか社内の雰囲気や会社風土などが見えづらいという問題があります。そこで、カジュアル面談を行い、面接とは異なったラフな雰囲気で転職希望者と会社がお話をする場を設定し、お互いのことをよりよく知る機会を作っています。

また、カジュアル面談という建前ではあるものの、企業側の本音としては選考要素が全くないわけではありません。このような前提を理解しないまま、カジュアル面談だからと準備不足でのぞみ、折角の機会を次に繋げられないケースも決して少なくはありません。カジュアル面談という形での場においても、どのようなことを質問するかなど最低限の準備をしておくのが良いでしょう。

カジュアル面談の一般的な流れ、質問例

この項目では実際のカジュアル面談の流れ、またその中でどのような質問などがあるのかについて記載します。企業や募集ポジションにより、流れは変わりますが、カジュアル面談は一般的に次のような流れで進められます。

カジュアル面談の一般的な流れ

①自己紹介
②会社についての説明
③質疑応答を通じてお互いを知る

自己紹介

まずは、お互いに自己紹介をします。カジュアル面談は面接ではなく、まずはお互いについて理解を深めましょうという場でもあり、詳しい志望動機までは話さなくても構わないでしょう。ただし、どのような価値観を大切にしているかなどといった自分の考えはまとめて臨むことが好ましいです。

また、カジュアル面談に先立ち、このときに面談の担当者から、面接ではなくカジュアル面談を行う目的などについて説明されることもありますし、逆に自身からカジュアル面談を設定している趣旨などを問うてみても良いでしょう。なぜカジュアル面談を設定しているのかの趣旨を理解の上、企業の意図を汲んだコミュニケーションを心掛けていくことで後々の選考を良い形に繋げていくと良いかと思います。

会社説明

次に、会社についての説明がなされます。大企業と違って、どのような事業を行っているのか、社内の雰囲気がどのようなものなのかなど、転職希望者にとってみえづらいことをお話いただくことが多いです。また、一方的な説明ではなく、最初に疑問点や質問を受け付けて転職希望者が知りたいことにフォーカスして話が進められる場合もあります。会社説明会のようにただ聞いているだけにはならないようにするため、面談の準備として、会社についての情報収集もしておきましょう。

質疑応答

そして、カジュアル面談のメインである質疑応答に移ります。転職希望者と面談の担当者が質問しあって、お互いの理解を深めていきます。面談の担当者から聞かれる質問としてよくあるのは、「会社(応募企業)についてどのような印象をもっているか」「これまでの経歴やスキル」、「将来のキャリアプラン」です。

「会社(応募企業)についてどのような印象をもっているか」の質問は、転職希望者が自社のことをどのように思っているのか、どの程度理解いただいているのかを確認するための質問になります。このような質問をされることを想定し、その会社のことを事前に調べて、質問に答えられるようにしておきましょう。また、この場面では転職希望者側がどのような質問をするかも重要なのですが、それについては後で説明します。

「これまでの経歴やスキル」や「将来のキャリアプラン」については、会社が求めるスキルを持っていて、転職希望者が求める業務を任せられるかを確認しています。転職を考えるにあたり、最初に整理しておくべきもので、これまでのキャリアを棚卸しするなどしていることと思いますが、あらためて見直しておきましょう。実際に選考に進んだ場合や他社の面接でも必要なことですから、カジュアル面談を機にしっかりと準備しておいて損はありません。

最近はオンラインでカジュアル面談が実施されることも増えてきていますが、実際に会社を訪問してカジュアル面談が行われる場合は、このような質疑応答だけでなく、希望すれば社内を見学させてもらえることもあるでしょう。

選考要素はゼロではない

カジュアル面談に臨むとき、転職希望者が忘れてはならないことがあります。それは、カジュアル面談が、面接ではないと言っても、選考のひとつのステップであるということです。カジュアル面談が採用のミスマッチや早期退職を防ぐために行うものという目的から考えると、選考要素がゼロとは言い切れません。あまりにも準備をせずに、ただお話をしに行くつもりで訪問してしまうと選考に悪影響があるかもしれないため、事前の準備が大切です。

服装自由と言われている場合でも、あくまで仕事の延長線上です。企業のスタンスにもよりますが、あまりにもラフすぎる私服ではなく、オフィスカジュアルなどで訪問するのが望ましいです(Web・IT企業、ゲーム会社などは比較的、服装の自由度が高い傾向にあります)。またカジュアル面談の場では履歴書や職務経歴書を提出する必要がない場合が多いのですが、自分の意欲を見せるために書類を準備しておき、当日に提出しても構いません。

なお、「カジュアル面談=0次面接」というスタンスの会社もありますので注意してください。転職エージェントを通して申し込んでいる場合は、企業側のカジュアル面談設定の意図や、カジュアル面談がどの程度選考に影響するのかといった点を確認しておくのも良いでしょう。

カジュアル面談こそ問われる質問力

カジュアル面談ではお互いを知るために質問をし合いますが、ここでどのような質問をするかが非常に重要です。カジュアル面談は相互理解を深めることが目的ではありますが、企業側にどのような質問をするかで自身をアピールすることにも繋げられるためです。

例えば「残業はどの程度ありますか」などといった働き方に関する質問も勿論大切ではありますが、「なぜこのサービスをここまで成長させることができたのか」「現場ではどのような課題があるのか」「今後どのような成長戦略を描いているのか」など企業のコアコンピタンス(企業の有する根幹となる事業の強み)や現場のリアルを理解しようとする質問はビジネスリテラシーの高さや、応募企業への意向の高さなどをアピールすることに繋がります。

良い質問をするためには、企業研究が大切です。まずは会社についての基本情報を調べます。ホームページなどから、その会社の経営理念や沿革、経営者本人、主力の商品サービスといった内容です。また、会社が提供する商品・サービスに関するプレスリリースをチェックしておくのも効果的です。興味のある会社なのであれば、こういったことを調べるうちにいくつも質問したいことが出てくるのではないでしょうか。

ベンチャーやスタートアップ企業の多くは即戦力人材を求めているため、会社のビジネスモデルや業務内容を理解してくれている人に、より強い興味を持つでしょう。このような寧ろ積極的な質問を歓迎される企業は多く、会社の沿革やビジネスモデルなどを自分なりに理解した上で、事業に関する質問を準備しておくのが効果的です。

ただ、「このビジネスが本当に実現可能か」といったような質問は、会社の取り組みを批判しているかのような言い方に聞こえてしまうような場合もあります。事業も組織も未整備な状況が多く、それを何とかしようと奔走している組織も多い中、そのような相手への配慮をした質問の仕方をしていきましょう。

実際のこのようなカジュアル面談のシーンに臨む際に、事前に複数の質問を用意し、当日の会話の中で追加で深掘りの質問をされるような形でうまくいくケースが多いです。筋の良い質問はなかなか咄嗟に出にくいものですので、重ねてにはなりますが質問や企業研究などの事前準備をしっかりした上でカジュアル面談に臨むと良いかと思います。

カジュアル面談の後の選考フロー

カジュアル面談の次は、面接に進んでいきます。しかし、前述の通り、カジュアル面談には選考の要素もあるため、面接の連絡ではなく、選考に進めない旨の連絡がくることもありえますので、先に記載の通り、質問事項など事前準備をしっかり行った上でカジュアル面談にのぞみましょう。

なお、面接ではよりカジュアル面談より一歩踏み込んだ質問が多くなることが想定されます。例えばカジュアル面談の場では「営業で大手企業を担当していて、社内表彰もされたことがあります」というような内容で終えていたとしても、面接では「大手企業をどのように攻略したのか」「なぜ社内表彰を貰えるような実績が出せたのか」などのより具体的な質問が多くなるかと思います。

企業によりますが、カジュアル面談の場ではなぜ今の会社を選択したのか、今の会社でどんなことをしているのかなどキャリアの全体像をとらえる大枠での質問が多くなり、一方、面接では入社後に成果がどの程度期待できるのかに関して実績だけでなく、その取り組みなどまで深堀りした質問が多くなる傾向にあります。

カジュアル面談を終えて本格的な面接に進む際には、そのようなご質問が多くなることを踏まえ、これまでのご経歴の棚卸などをより具体的にされることをおすすめします。その他、面接における詳細に関しては以下の記事もあわせてご参考ください。

これからの成長に期待のできる「勝てるベンチャー」と出会うために

これまでカジュアル面談について解説をしてきましたが、それ以前にベンチャー、スタートアップ企業への転職活動を試みた経験のある方の中には、大手企業と比べて企業情報、求人情報を探すこと、また企業概要までは分かったとしてもビジネスモデルや事業優位性など詳細な情報収集が難しいと思った方も多いのではないでしょうか。

言うまでもなく、大手企業や上場企業のように公開情報が豊富な訳ではなく、財務情報やビジネスモデルなど実態が掴みづらいのがベンチャー、スタートアップ企業です。特に設立から間もないベンチャーの場合、HPなどwebサイトに十分な予算をかけることが難しく、最低限の情報のみ記載されているような企業も少なくありません。また、ベンチャー、スタートアップ企業は、まだ世の中にない最新技術などを駆使したビジネスを展開されている企業も多いため、HPの情報だけではなかなかビジネスの特徴や全体像などを掴みづらいというのも、転職者が情報収集に苦労する一つです。

ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動において企業情報、求人情報を探す過程で、上記のように様々な問題に直面する場合が多く、自分に合ったベンチャー、スタートアップ企業を探し、出会うことは非常に難易度が高いです。このように情報収集が容易ではないという前提の上ではありますが、その上で以下のような探し方をご紹介します。

積極的にPRをするベンチャーと戦略的にPRを控えるベンチャー

こちらでは今後、成長性に期待のかかるベンチャー、スタートアップ企業との出会いをつくるために参考になる方法についてい解説いたします。特に積極的にPRをするベンチャー、戦略的にPRを控えるベンチャーがありますのでそのような観点について以下ご紹介します。

積極的にPRをするベンチャー

ベンチャー、スタートアップ企業の求人情報の探し方、情報収集方法としては、まず「Wantedly」を活用されることをお勧めします。企業側の視点で見た際に、Wantedlyは比較的安価な料金で利用可能なビジネスSNSであり、多くのベンチャー、スタートアップ企業がWantedly上で情報を公開しています。そのため、転職活動の第一歩として利用するツールとしてはよいかと思います。

また、「注目すべきベンチャー●選」、「優良ベンチャー●選」、あるいは経営者にフォーカスをあてた特集など、様々なテーマでベンチャー、スタートアップ企業の情報をまとめたキュレーションサイト(まとめサイト)も存在します。Web上での情報収集においては、このようなWebサイトを参考に情報収集をされると良いでしょう。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は自社をPRする場として、行政などが主導するビジネスプランコンテストなどに出場することが多いです。ビジネスプランコンテストは経営者が自社のビジネスモデルの特徴、どのような市場成長性のあるマーケットで戦っているか、将来どのような展望を考えているかなど、具体的な内容を発表し、審査員が評価します。

ビジネスプランコンテストは一般公開しているものも多くありますが、コロナショック以降はYoutubeなどオンライン配信形式(LIVE配信のみ、あるいはYoutubeに残す場合など様々)をとるケースも増えました。そのため、仕事が忙しく、ベンチャー、スタートアップ企業を探すことになかなか時間を割けない方でも、このような場に参加しやすくなりました。

戦略的にPRを控えるベンチャー

ここまでベンチャー企業、あるいは経営者がどのような形で情報を発信しているかお話してきました。しかし、PRに積極的なベンチャー、スタートアップ企業ばかりではありません。認知度を上げることは企業の成長において重要なことではありますが、目立ちすぎることで「この市場は魅力的な市場だ」と、競合の参入を加速させてしまう可能性も高まります。こちらでは戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業について解説していきます。

ベンチャー、スタートアップ企業の成長において大きな脅威の一つが、大企業の参入です。資本力のある大手企業が参入する中、資金力や人材など経営資源の足りないベンチャーが太刀打ちするのは至難の業といっても過言ではありません。

そのような脅威に注意を払っている経営者は、自社HP含めwebサイト上での発信を控えている他、ビジネスプランコンテストのような表舞台には極力姿を現さず、水面下で静かにシェア獲得を推し進めるような戦略をとっていることが多いです。そして、ある程度シェアを獲得できた段階、あるいは大型の資金調達などが実現され、一気に競合各社を引き離したいという瞬間に、ようやく大々的に露出していきます。

転職エージェントを活用した水面下での採用活動

このような戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業は、自社の採用活動に関しても慎重です。例えば公に情報を露出する求人サイトではなく、転職エージェントなどを活用し、競合他社に動きが見えないよう、水面下で採用活動を進めるような採用施策をとる企業も多いです(特にCxOクラス、ミドルマネージャークラスの求人募集に際し、転職エージェントを活用するケースが多いです)。

また、このような戦略的にPRを控える企業の場合以外においても、多くの場合、転職活動は孤独です。まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

また、カジュアル面談に限らず、転職活動は普段のビジネスシーンと異なるお作法、コミュニケーションなどは発生します。例えば貰ったオファーが自身の希望に届かず、役職や年収などに関して交渉を行う場合、どのように進めていくのか慣れている方はそうそうおられないでしょう。そのような不測のシーンにおいて相談できる転職エージェントがいることで、安心して転職活動に臨めるという部分もでてくるかと思います。

転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに転職活動を進めても損はないでしょう。

上記の通り、経営者の考え方、市場や競合環境により経営方針は様々であり、必ずしも露出が多いから優良ベンチャーという訳ではありません。事業フェーズがそれなりに進んでいるにも関わらず露出が少ない企業の場合には、その背景についても調べてみる、または面接において経営者に直接確認してみるのも良いでしょう。

最後に

カジュアル面談は面接と比べると、比較的フランクな場でお互いをより深く知るためのものです。必要以上に堅苦しくすることはありませんし、緊張しすぎることもありません。

しかし、事前準備は欠かせません。選考の要素も多少はある簡易な面接という意識を持って、準備しておくことが大切です。自分のこれまでのキャリアの棚卸をし、会社の事業内容を事前に調べて、有意義な質疑応答ができるようにしておきたいものです。

個人でエントリーするのも良いのですが、このように情報収集の難しいベンチャー、スタートアップ企業への転職においては転職エージェントを活用することも、良い形で転職活動を進める手段の一つとしてご検討いただくとよいかと思います。先に記載しましたカジュアル面談の準備の他、ベンチャー、スタートアップ企業ならではの面接での注意点、アドバイスなどはきっと役立つかと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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