勝てるベンチャー、スタートアップ企業の探し方のポイント

IRなど公開している情報量が豊富な大手企業への転職と比べ、情報収集が難しいのがベンチャー、スタートアップ企業への転職の壁の一つです。この記事では転職活動に際し、どのようにベンチャー、スタートアップ企業を探し、情報収集を進めていくのが望ましいのかについて、経営者の考え方など情報を発信する側の視点も交えて解説していきます。

こちらで挙げる探し方、情報収集のポイントを踏まえて転職活動に臨むことで、自分に合った優良なベンチャー、スタートアップ企業を探し出し、良いご縁に繋げていただければ幸いです。

目次

ベンチャー、スタートアップ企業とは

「ベンチャー」「スタートアップ」という言葉に具体的な定義はありません。創業の浅い企業のことを指す場合もあれば、IT・Web系のビジネスなどにより、まだ世の中にない新しい価値を生み出そうとする企業を指す場合などもあります。

こちらの記事では主にIPO(新規株式公開)やM&AによるEXIT(イグジット)を目指す企業のことをベンチャー、スタートアップ企業と定義してご紹介します。このような企業は多くの場合、ベンチャーキャピタルなどより出資を受け、赤字を掘りながら急成長を目指す、所謂、Jカーブと呼ばれる成長曲線を描きながら事業を推進される企業が多いです。

また、関西をはじめ地方では事業承継をきっかけに、事業変革をされ、ベンチャー企業へと変化を遂げることも珍しくありません。例えば関西では先代では繊維を扱う事業を展開していたものの、代替わりのタイミングで繊維とテクノロジーを絡めたIoT事業へと移行し、IPOを目指す企業などがあり、アトツギベンチャーと称するケースもあります。

このようなベンチャー、スタートアップ企業の企業情報、求人情報を探していくにはどのようなポイントを押さえておくべきかについて次の章にて解説します。

ベンチャー、スタートアップ企業の情報取集は難しい

ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動を試みた経験のある方の中には、大手企業と比べて企業情報、求人情報を探すこと、また企業概要までは分かったとしてもビジネスモデルや事業優位性など詳細な情報収集が難しいと思った方も多いのではないでしょうか。

言うまでもなく、大手企業や上場企業のように公開情報が豊富な訳ではなく、財務情報やビジネスモデルなど実態が掴みづらいのがベンチャー、スタートアップ企業です。特に設立から間もないベンチャーの場合、HPなどwebサイトに十分な予算をかけることが難しく、最低限の情報のみ記載されているような企業も少なくありません。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は、まだ世の中にない最新技術などを駆使したビジネスを展開されている企業も多いため、HPの情報だけではなかなかビジネスの特徴や全体像などを掴みづらいというのも、転職者が情報収集に苦労する一つです。

ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動において企業情報、求人情報を探す過程で、上記のように様々な問題に直面する場合が多く、自分に合ったベンチャー、スタートアップ企業を探し、出会うことは非常に難易度が高いです。このように情報収集が容易ではないという前提の上ではありますが、その上で以下のような探し方をご紹介します。

転職サイト、スカウトサイト、キュレーションサイト、SNSなどを活用した情報収集

求人サイト、SNSなどを活用したベンチャー、スタートアップ企業の求人情報の探し方について解説します。以前からユーザーの多いWantedly、Greenは今も健在ですが、最近では Twitter、LinkedIn、 YOUTRUSTなどのSNSで情報収集をするユーザーが一気に拡大している傾向にありますのでそのような点も踏まえて以下ご覧ください。

多くのベンチャー企業が採用広報のために活用するWantedly

ベンチャー、スタートアップ企業の求人情報の探し方、情報収集方法としては、まず「Wantedly」を活用されると良いでしょう。企業側の視点で見た際に、Wantedlyは比較的安価な料金で利用可能なビジネスSNSであり、多くのベンチャー、スタートアップ企業がWantedly上で情報を公開しています。そのため、転職活動の第一歩として利用するツールとしてはよいかと思います。

Wantedlyは企業概要などだけでなく、経営者の考え方、企業風土などの価値観に重きを置いた情報公開を推奨しています。具体的には経営者の創業の理由や、社員がこの会社で働く理由などを記載する「ストーリー」という項目があることが特徴の一つです。

ベンチャー企業の情報発信ツールとして欠かせないTwitter

次に情報収集に活用するとすればTwitterでしょう。Twitterは今や芸能人などだけでなく、政治家、ビジネスパーソン、インフルエンサーなど多くの職業・団体にとって欠かせない情報発信ツールとなりました。これはベンチャー、スタートアップ企業にとっても同様であり、多くのベンチャー、スタートアップ企業がTwitterを活用の上、ビジネスの拡大を目指しています。

ベンチャー、スタートアップ企業の場合にはTwitterを活用する目的は色々とありますが、大きく2つあると認識して頂いて良いかと思います。1つ目は「広報・PR」であり、例えば自社プロダクトの認知度向上のために「ユーザー数1万人突破」といった導入実績、メディア掲載情報などを発信し、更なるユーザー獲得などに繋げようとされています。このような導入実績の場合には経営者アカウント、あるいは広報、セールスポジションの方のアカウントなどで発信されることが多いです。

2つ目は「採用広報」です。こちらはWantedlyと同様にどんな社員が活躍しているか、人材に関する考え方などを経営者などが発信されるケース、あるいは社員自らがベンチャー、スタートアップ企業で働いて思うことなどを発信しながら自社の採用活動に繋げるケースなどがあります。例えばエンジニア出身の経営者の場合、プロダクトファーストでの組織運営の推進、営業出身の経営者の場合にはアグレッシブな体育会的社風で組織運営を運営しているなど、転職市場の中での自社ブランディングを意識した発信などが良く見られます。

転職活動の新たなスタンダードとなったスカウトサイト

この10年で主流な転職活動の一つとして、スカウトサイトを活用した転職活動になります。転職活動は2000年代前半に主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)」「エンミドルの転職」などが挙げられます。転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズにも上場を果たしています。

これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、特に現職が多忙な方にとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。このようなスカウトサイトを利用する際には、自分の希望する情報が集まりやすいようにベンチャー、スタートアップ企業を志向していることを記載して情報収集をすると良いでしょう。

IT・Web業界に強い転職サイト

転職活動は転職サイトからスカウトサイトに移行していると記載しましたが、そのような中でも多くのベンチャー、スタートアップ企業が今も中途採用に欠かせないのが株式会社アトラエの運営するIT・Web業界に強い求人サイト「Green」です。2010年代に設立したベンチャー、スタートアップ企業には、SaaSやAIなどの技術を活用した企業が多く、それらの企業では「Green」を利用する企業がまだまだ多いです。こちらでは企業情報と併せて、主にIT・Web系の求人(エンジニア、マーケター、デザイナー等)も多く公開されています。

注目企業の情報を集約したキュレーションサイト


その他にも「注目すべきベンチャー●選」、「優良ベンチャー●選」、あるいは経営者にフォーカスをあてた特集など、様々なテーマでベンチャー、スタートアップ企業の情報をまとめたキュレーションサイト(まとめサイト)も存在します。このようなキュレーションサイトは特集テーマに沿った大枠の情報を掴めるのが利点です。しかし、変化のスピードが速く、浮き沈みも激しい中、まとめサイトに記載の情報とリアルタイムでの事業が大きく乖離していることも珍しくありません。そのため、キュレーションサイトで企業を探す際には、いつの段階でまとめられた情報なのか確認することが大切です。

このように変化の多いベンチャー、スタートアップ企業の正しい実態把握のためには、求人サイトをはじめとした最新情報の記載が前提となるWebサイトなどを活用して情報収集をしてことが有効な手段の一つといえるでしょう。

LinkedIn、 YOUTRUSTなどのSNS


自社の認知度向上、採用広報などの観点でLinkedInYOUTRUSTの様なビジネスSNSで情報発信をされている経営者は多いです(人材ビジネス、IT・Web系のベンチャー経営者が比較的多い)。このようなビジネスSNSではTwitterと同様にベンチャー、スタートアップ企業の経営者やHRの方がプロダクトのリリースや資金調達など自社のビジネスで進展があった際の発信をされています他、経営者の方によっては会社経営や組織づくりで大切にしていることなどを発信している場合もあります。

尚、 LinkedInは認知もあるかと思いますが、YOUTRUSTは先にあげた他サービスと比べると後発であり、寧ろYOUTRUST自体も2017年に会社を設立したスタートアップの1社です。 YOUTRUSTに登録ユーザーの多くはIT・Web業界であり、比較的20~30代の登録者が多いことが特徴と言えるでしょう。また、転職や副業をある程度前提としたSNSであるのも他のSNSとの違いと言えるかと思います。

一般公開しているビジネスプランコンテストに足を運ぶ

ベンチャー、スタートアップ企業は自社をPRする場として、行政などが主導するビジネスプランコンテストなどに出場することも多いです。ビジネスプランコンテストは経営者が自社のビジネスモデルの特徴、どのような市場成長性のあるマーケットで戦っているか、将来どのような展望を考えているかなど、具体的な内容を発表し、審査員が評価します。そのため、Webサイトなどでは捉えきれなかったビジネスの将来性、あるいは経営者の人となり(論理的、情熱的、温和な性格など)も含めて理解を深めることができます。

ビジネスプランコンテストは一般公開しているものも多くありますが、コロナショック以降はYoutubeなどオンライン配信形式(LIVE配信のみ、あるいはYoutubeに残す場合など様々)をとるケースも増えました。そのため、仕事が忙しく、ベンチャー、スタートアップ企業を探すことになかなか時間を割けない方でも、このような場に参加しやすくなりました。

また、こういった場で沢山の経営者、ベンチャー企業を見てきた審査員から評価をされる企業は、将来が期待される優良株とも言えるでしょう。ベンチャー、スタートアップ企業の目利きに自信が持てない場合には、このような第三者評価を参考にした情報収集の上、転職活動に臨むのも良いでしょう。

ベンチャー事情に詳しいベンチャー支援機関

各分野で専門性をもってベンチャー支援を行うベンチャー支援機関、あるいは個人で活動するベンチャー支援家は、当然ながらベンチャー、スタートアップ企業の事情に詳しいです。ここで言うベンチャー支援機関・支援家は、例えば資金調達を目指すベンチャー企業へ投資を行うベンチャーキャピタル、IPO(新規株式公開)に向けた事業計画サポートなどを行うフリーランスCFO(Chief Financial Officer)などです。

特にベンチャーキャピタルの場合は、投資先のベンチャー、スタートアップ企業の社名を公開していることが多いのでコーポレートサイトより確認してみるのも良いでしょう(多くの場合、ポートフォリオという名称で投資先企業を一覧でご紹介している場合が多いです)。ベンチャーキャピタルが目利きをした上で、投資を受けているベンチャー、スタートアップ企業でもあり、今後の成長性に期待できる企業が多いことでしょう。

ただし、このような支援機関・支援家の方々には守秘義務があるため、特定の個社情報詳細をお話して貰うことは難しいでしょう。しかしながら、ベンチャー経営者と紆余曲折あるベンチャー経営を支えておられるため、成長の期待できる優良なベンチャーとそうでないベンチャーの見極め方、経営者の見るべきポイントなど、企業を知る上で重要な視点をもっています。

ベンチャー支援機関・支援家の方々と接点があった際は、普段どのような視点を大切にしているのか情報交換してみるのも良いでしょう。また、TwitterをはじめとしたSNSを通して、ベンチャーマーケット全体を俯瞰してみて思われる課題、支えたいと思う経営者の特徴などについて情報を発信している方もいます。

上記事項をご参考いただきながら、自分に合った優良なベンチャー、急成長が期待されるベンチャーの情報収集をしてみてください。また、企業の見極め方については、下記記事もご参考ください。

戦略的にPRを控えるベンチャー

ここまでベンチャー企業、あるいは経営者がどのような形で情報を発信しているかお話してきました。しかし、PRに積極的なベンチャー、スタートアップ企業ばかりではありません。認知度を上げることは企業の成長において重要なことではありますが、目立ちすぎることで「この市場は魅力的な市場だ」と、競合の参入を加速させてしまう可能性も高まります。こちらでは戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業について解説していきます。

ベンチャー、スタートアップ企業にとって大きな脅威となる大企業の参入

ベンチャー、スタートアップ企業の成長において大きな脅威の一つが、大企業の参入です。資本力のある大手企業が参入する中、資金力や人材など経営資源の足りないベンチャーが太刀打ちするのは至難の業といっても過言ではありません。

そのような脅威に注意を払っている経営者は、自社HP含めwebサイト上での発信を控えている他、ビジネスプランコンテストのような表舞台には極力姿を現さず、水面下で静かにシェア獲得を推し進めるような戦略をとっていることが多いです。そして、ある程度シェアを獲得できた段階、あるいは大型の資金調達などが実現され、一気に競合各社を引き離したいという瞬間に、ようやく大々的に露出していきます。

転職エージェントを活用した水面下での採用活動

上記のようなベンチャー、スタートアップ企業は、自社の採用活動に関しても慎重です。例えば公に情報を露出する求人サイトではなく、転職エージェントなどを活用し、競合他社に動きが見えないよう、水面下で採用活動を進めるような採用施策をとる企業も多いです(特にCxOクラス、ミドルマネージャークラスの求人募集に際し、転職エージェントを活用するケースが多いです)。

また、このような戦略的にPRを控える企業の場合以外においても、多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに転職活動を進めても損はないでしょう。

最後に

以上が自分に合った優良なベンチャー、スタートアップ企業への転職に向けた企業情報、求人情報の探し方、情報収集のポイントです。ベンチャー、スタートアップ企業の探し方、企業情報、求人情報含め詳細な情報収集には難しさを感じる瞬間もあるかはとは思いますが、まずはこちらで紹介しましたツールなどで情報収集にあたって頂き、自分が挑戦したいと思えるベンチャー、スタートアップ企業との出会いに繋げて頂ければ幸いです。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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