革新的な技術の事業化を目指すディープテックベンチャーを解説!

大学発ベンチャーを中心に革新的な技術や研究を起点に社会に新たな価値の創造を目指すディープテックベンチャーが台頭しています。「ディープテック」と一言にいってもその分野は多岐に渡ります。また専門性を要する事業であるが故にその実態を捉えにくい、というのもディープテックベンチャーの特徴といえるでしょう。

このように今後、社会構造を大きく変える可能性を秘めたディープテックベンチャーについて解説をしていきます。ディープテックベンチャーに関わる方、ディープテックベンチャーへの転職を検討されている方は是非お役立てください。

目次

ディープテックベンチャーとは

ディープテックベンチャーとは

ディープテックとは「特定の自然科学分野での研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術であり、その事業化・社会実装を実現できれば、国や世界全体で解決すべき経済社会課題の解決など社会にインパクトを与えられるような潜在力のある技術」と、経済産業省により定義されています。ディープテックベンチャーとは、このようなディープテックとよばれる高度な技術を起点に事業化をすることにより、社会や産業に革新をもたらしていくことを目標とするベンチャー企業を指します。

ディープテックに分類される具体的な分野としては、AI(人工知能)、バイオテクノロジー、ナノテクノロジー、量子コンピューティング、宇宙技術などが挙げられます。このような分野は大学をはじめとした研究機関にて研究開発がなされるものの、それらの技術を事業として転用していく難易度が高い、併せて事業化に莫大な予算と時間が必要となることが課題とされることが多いです。

スタートアップ市場におけるディープテックベンチャー

2010年代以降、SaaSなどのIT・Web領域でのビジネスが台頭し、同領域におけるスタートアップが毎年のようにIPO(新規株式上場)を果たしてきました。しかしながら、このようなIT・Web領域のビジネスは日本国内の市場では良いものの、グローバル展開まで拡張させることは非常に難易度が高いです。

一方、例えば再生医療技術などは各国の規制問題はあるかとは思いますが、難病や重病に悩む多くの方を救える技術として世界中に広められる可能性があるのはイメージして頂きやすいかと思います。このようにディープテックベンチャーのビジネスはグローバルに閉じない可能性を秘めていることが多いことも特徴であり、ベンチャーキャピタルをはじめとした多くの投資家は、次の成長産業としてディープテック分野のスタートアップに注目をしています。

ディープテックの事業化事例

ここまでディープテックベンチャーとは何かについて解説をしていきました。ここからは代表的なディープテックベンチャーについて紹介をしていきますのでさらに理解を深めて頂けたらと思います。

京都フュージョニアリング株式会社

京都フュージョニアリング株式会社は京都大学出身の長尾昂氏が創業者として2019年10月に京都大学発ベンチャーとして設立。カーボンニュートラルな発電が可能となる核融合の主要装置やコンポーネントを開発する日本では稀有な事業を展開し、2022年7月には世界初の核融合発電試験プラント建設プロジェクトも始動されています。

また、2023年にはシリーズCでの資金調達を実行し、累計調達額が105億円とディープテックベンチャーの中では圧倒的な存在感を放っています。同社のビジネスは日本国内に閉じず、世界中の核融合に関わるプロジェクトに主要な装置、コンポーネントを供給するものであり、グローバルでの活躍が期待されるディープテックベンチャーとしてますます注目を浴びる存在になるでしょう。

ノイルイミューン・バイオテック株式会社

ノイルイミューン・バイオテック株式会社は現在も山口大学大学院で免疫学講座教授を務める玉田耕治氏が代表取締役を務めるディープテックベンチャーです。従来は治療が難しかった固形がんに有効なCAR-T細胞療法を開発の上、展開。

現在では国内外の制約会社5社(Adaptimmune、Autolus、武田薬品工業、中外製薬、第一三共)とライセンスに関する契約も締結されています。2023年には東証グロース市場にIPO(新規株式上場)し、今後もさらなる躍進が期待されています。

リージョナルフィッシュ株式会社

リージョナルフィッシュ株式会社は2019年に設立されたディープテックベンチャーです。ゲノム編集技術で水産物を品種改良し、可食部を増量したマダイなどを販売されており、世界初となるゲノム編集により品種改良された水産物の届出が国に受理された企業としても注目を集めました。

代表の梅川忠典氏はデロイトトーマツコンサルティング、産業革新機構などを経て、同社を起業。ディープテックベンチャーの経営者は研究機関出身の方などが多い中、コンサルティングファーム出身者ならではの切り口の経営スタイルもまた他のディープテックベンチャーとの違いといえるでしょう。

Heartseed(ハートシード)株式会社

Heartseed(ハートシード)株式会社は2015年に設立したディープテックベンチャーであり、また、慶応義塾大学の有する研究開発技術を起点にした大学発ベンチャーでもあります(代表の福田恵一氏は慶應義塾大学医学部再生医学教室の教授に就任し、2010年から同大学の循環器内科の教授を務める)。

同社は日本が強みとするiPS細胞由来の再生心筋により、心不全患者の治療を目指されており、デンマークに本社を置くノボノルディスクとの提携でグローバル展開も狙われています。

株式会社Synspective

株式会社Synspectiveは独自の小型レーダー衛星を開発し、打ち上げた衛星から得られる地表観測データを解析するレーダー衛星領域のディープテックベンチャーです。これまで複数機の打ち上げの上、民間企業、政府などへサービス提供実績を有しているまでに事業フェーズは推移しています。

ディープテックベンチャーへの転職に向けて

こちらではディープテックベンチャーへの転職に向けてのポイントについて解説します。多くのビジネスパーソンが多忙である中、現職のパフォーマンスを落とさないよう、効率的に情報収集を行う必要があるでしょう。こちらではこのような方の転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。

スカウトサイトを活用した転職活動

一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト」「エンミドルの転職」などが挙げられます。このような転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズ(現東証グロース)にも上場を果たしています。

これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。このようなプラットフォームに「ディープテック領域の企業に挑戦したい」「大学発ベンチャーを希望」等の希望条件の記載をしておくと、必然的にそのような情報が集まりやすくなるでしょう。

また、どのような企業がこれまでの経験を評価してくれるのかという観点も含め、自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙なビジネスパーソンにとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

転職エージェントを活用した転職活動

前述の様な転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、ディープテックベンチャーをはじめとしたベンチャー業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。

最後に

今回はこれからさらに注目度が高まるであろうディープテックベンチャーについて解説しました。事業化事例でご紹介しました通り、再生医療、レーダー衛星などいずれにしてもグローバルでの躍進、社会構造の変革など大きな可能性を秘めることがディープテックベンチャーの特徴といえるでしょう。ぜひ本記事をご参考の上、ディープテックベンチャーに関わる見識を深めて頂ければと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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