女性管理職の現状は?目指すメリットや適性、「管理職になりたくない」の声の背景について

近年、多くの企業が取り組んできた「ダイバーシティ」や「ポジティブ・アクション」。しかし、その結果として突きつけられるのが日本企業の管理職に占める女性の割合の低さです。この記事では、女性管理職比率の現状や、女性が管理職を目指すメリット、管理職の適性などについて解説します。

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女性の社会進出の歴史

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1985年に男女雇用機会均等法、2015年に女性活躍推進法、それぞれの法律が成立してから今日に至るまで、働く女性の数は増え続けてきました。結婚・育児期間中の世代の女性が働いてない期間ができるM字カーブと呼ばれた現象も、育休・産休制度の充実により改善してきており、少しずつ女性が働きやすい社会へと変化してきていることが分かります。

今となっては女性管理職を増やす取り組みについての認知度は随分上がってきました。政府が最初に女性管理職についての数値目標を設定したのはなんと約20数年前、2003年小泉内閣の発信にまで遡ります。2003年当時の企業における女性管理職比率はわずか8.9%でした。「2020年までに社会のあらゆる分野で指導的地位に女性が占める割合が30%になるように」と目標が掲げられました。

女性管理職は依然として少ない

女性管理職比率は毎年徐々に増加していますが、それでも2020年に管理職における女性比率は13.3%と目標30%に対して大幅に未達で、諸外国に比べても遅れをとっている状況が続いています。そこで政府は2020年12月に再度「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となるよう目指して取組を進める」と目標を定め直し、経団連も類似の目標を立て、あらゆる企業が女性管理職の育成・採用について考えるようになってきました。

2022年に全国2万5723社に対して行った調査で、女性管理職の割合が30%を超えている企業は9.5%しかないという結果が出ています(帝国データバンクの女性登用に対する企業の意識調査 参照)。政府が掲げている「女性管理職の割合30%の達成」には程遠い状況です。増加傾向が見られてはいるものの、まだまだ女性の管理職比率は課題と言える状況でしょう。

「女性管理職になりたくない」の声が挙がる理由

女性管理職の割合が低い背景として、日本は社会的に男女の性別役割分担意識が根強く残っており、企業が昇進できないポジションやパートタイムで女性を採用してきたということも挙げられますが、そもそも働く女性側が「管理職になりたくない」と考えて、管理職になることを希望していない側面もあります。では女性たちはなぜ管理職になりたくないと考えるのでしょうか。その理由について解説していきます。

長時間労働への懸念

女性管理職になりたくない理由として多いのが「残業・長時間労働」への懸念です。管理職に昇進して帰りたくても帰ることができない、勤務時間が慢性的に長時間化する、といったことを危惧している人が多いようです。これは女性に限らず男性を含めた日本全体の長時間労働の実態が根本的な原因となっていると考えて取り組む必要のある課題です。

責任が重くなることへの不安

責任が重くなることへの不安も「女性が管理職になりたくない」の理由の一つです。管理職は、組織やチームを率いる存在であり、目標の達成のカギを握る役割でもあります。仮に、自分が管理職を担ってから売り上げが低下する、あるいは部下の生産性・パフォーマンスが下がるようなことがあれば、自身のマネジメント等に不備として責められるかもしれません。責任の大きい仕事をしたくない女性にとって、女性管理職への昇進は荷が重いと感じるのでしょう。

管理職になるメリットが少ない

管理職になるデメリット以上のメリットが提示されていないというのも女性が管理職を避ける要因となっています。管理職になることでそれまでより高い給料が得られるのが代表的なメリットと言えますが、全ての女性が必ずしも高い給料を望んでいるわけでもない側面があります。

自分には適性がないと考えている

「自分が部下を教育したり、チームを引っ張ったりすることなんてできない」「重要な役回りを私が担えるわけがない」など、自分には適性がないと考えていることで女性管理職を目指したくないと考える方も多いです。確かに、管理職は誰でもなれるわけではなく、後述するような一定の適性が存在します。しかし、自分の能力を過小評価している女性も多いことを踏まえると、「適性がない」といった自己評価が必ずしも正確であるとは限りません。

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女性が管理職を目指すメリット

もし女性管理職になったら、どのようなメリットを得られるのかは女性としては気になるところではないでしょうか。ここからは、女性管理職を目指すメリットについて詳しく解説していきます。

成長できる

女性管理職を目指すメリットは、スキルアップや成長につながることが挙げられます。管理職になると、関わる人が増えるうえに、部下の教育も担うことになるので、必然的に自分以外にも目を向けてアクションを起こさなければなりません。管理職としての業務を通しさまざまな経験を積むことで、自身のスキルアップや成長につながることは、管理職ならではでしょう。

裁量が増える

管理職になると非管理職の時より裁量が増えるケースが多いです。業務上の権限はもちろんですが、仕事の仕方や経費の使い方など、細かいことが自分の裁量で決めることができ、自由度が増えるのが管理職になる魅力の1つです。上記懸念されている残業時間についても、自分の裁量でコントロールすることが可能な職場も多いはずです。

収入アップが期待できる

女性管理職になることで、現在よりも収入が高くなることが期待できるでしょう。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査の概要」 によると、女性の平均年収は約253万円であり、男性が約337万です。しかし、役職別の平均年収で見ると、女性の場合は部長クラスが約497万円、課長クラスが約422万円、係長クラスが約334万円、と女性の平均年収と比べても高くなっています。管理職を目指すことは、収入アップを図るための選択肢の一つになるのではないでしょうか。

転職する際の強みになる

女性管理職として活躍した経験は、将来転職する際に有利になります。もともと管理職経験を持つ人材は性別を問わず転職市場では需要が高い傾向にあります。特に女性の場合、現在女性管理職が少ない企業が多いため需要が高く、引く手数多な状況です。また日本社会の文化として「管理職が部下よりも年齢が高いほうが組織としてバランスいい」と考えられることが多く、転職にあたって年齢を重ねていることが不利になりにくいというメリットもあります。管理職を目指すことは長くキャリアを築いていきたいと考えている女性の方には特におすすめです。

女性管理職が向いている人の特徴

管理職になりたいとは思うものの、自身に適性があるのかは気になるところではないでしょうか。ここからは、女性管理職に向いている方の特徴を解説します。自身の性格や仕事の進め方と照らし合わせながら参考にしてみてください。

実務能力が高い

女性に限ったことではありませんが、部下をマネジメントし、チームを率いる上で、一定の実績があり、仕事ができないと管理職には選ばれません。日本人は謙虚であることが美徳とされる文化があるため、自分の能力を過小評価しがちですが、実務能力の高い人は多いです。もし管理職への打診された場合は、実績・能力が評価されているということですから、適性があると考えて未経験でも管理職にチャレンジしてみる価値は十分にあると考えられるでしょう。

論理的に物事を考え、安定的なパフォーマンスを出せる

論理的に物事を考えたり伝えたりすることができるか否かは、管理職になるうえで重要なポイントです。特に女性は一般的に感情的・不安定になりやすい傾向があると見られがちなので、自分の感情や体調をうまくコントロールして、論理的かつ安定的に仕事を進めることのできる人は管理職に適性があるといえるでしょう。

チームワークができる

一般的に女性は男性ほど体力があるわけではないので、長時間労働や残業で成果を出す、あるいは一人で責任を抱えすぎてしまうマネジメントは長く続きません。適切にリソースやタスクを配分して、部下を育成し、チームで成果を発揮できる生産性の高い仕組みづくりが、特に女性管理職に求められることです

転職で女性管理職のキャリアアップを目指す

こちらでは転職で管理職へのキャリアアップを実現するポイントについて解説します。多くのビジネスパーソンが多忙である中、現職のパフォーマンスを落とさないよう、効率的に情報収集を行う必要があるでしょう。こちらではこのような方の転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。

スカウトサイトを活用した転職活動

一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト」「エンミドルの転職」などが挙げられます。このような転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズ(現東証グロース)にも上場を果たしています。

これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。このようなプラットフォームに「女性が活躍できる職場に身を移したい」「管理職として活躍の機会を目指している」等の希望条件の記載をしておくと、必然的にそのような情報が集まりやすくなるでしょう。

また、どのような企業がこれまでの経験を評価してくれるのかという観点も含め、自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙なビジネスパーソンにとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

転職エージェントを活用した転職活動

まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、管理職ポジションを専門とする転職エージェント、あるいは職種、業界に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。

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最後に

女性管理職に関する話題が増えてきている昨今ですが、いざデータを見てみるとまだまだ女性比率が低いのが実態です。企業側にも課題はありますが、管理職を敬遠する女性が多いことも、管理職の女性比率がなかなか上がらない要因の1つです。しかし今回ご紹介した通り、女性管理職としてのキャリアのメリットは意外にも多いものです。収入アップや転職で有利になるなど、人生100年時代と言われている今、いずれのメリットも見逃せないと言えるでしょう。管理職に興味のある女性の方、管理職として打診されている女性の方は、これを機に前向きに検討されてみてはいかがでしょうか。


この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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