中小企業診断士は転職に有利!?国家資格「中小企業診断士」について解説!

キャリアアップや転職を目指すうえで、資格の取得を考えられている方は多くおられることと思います。目指される資格は職種などにより様々ありますが、今回はその中でも中小企業診断士についてご紹介します。

中小企業診断士は経営コンサルタントとして唯一の国家資格であり、その能力は様々なところで求められます。そのため将来のキャリアアップや転職を目指すうえで、中小企業診断士の資格を取得することは大変有益であると言えるでしょう。この記事でぜひ中小企業診断士について知っていただき、将来のキャリアアップや転職を考えられる際に参考にしていただければと思います。

目次

中小企業診断士とは

まず、そもそも中小企業診断士とはどのような資格なのかについてご紹介します。中小企業診断士の歴史をたどると、1948年に設立された中小企業庁が旗振り役となり、1952年に「中小企業診断員登録制度」が制定されたことがはじまりとされています。

中小企業診断士は中小企業の経営課題に対応するための診断や助言を行う専門家で、法律に定められた国家資格です。また中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断や経営に関する助言を受けるにあたり、その選定を容易にするために経済産業大臣が一定レベル以上の能力を持った者を登録する制度です。

つまり、中小企業診断士はいわば国が認めた経営コンサルタントであり、国として「中小企業者が経営の診断や経営に関する助言を得たい時は、この人たちに相談するのが適切です」と認めているようなものです。

次にご紹介するとおり中小企業診断士になるためには企業経営に関する幅広い知識を身につける必要があることからも、中小企業診断士資格の保有者が多くの企業にとって欲しい人材であることが想像できるかと思います。

中小企業診断士になるには

中小企業診断士になるには、試験に合格する必要があります。試験は第1次試験(マークシート方式、第2次試験(記述式+口述)があり、それらに合格した後3年以内に15日以上の実務補修または実務従事を経ることで中小企業診断士としての登録申請を行うことができるようになります。

試験科目は企業経営に必要な要素を幅広くカバーしたものとなっており、1次試験では「経済学・経済政策」「財務・会計」「企業経営理論」「運営理論」「経営法務」「経営情報システム」「中小企業経営・中小企業政策」の7科目が用意されています。

同様に2次試験では「組織(人事を含む)」「マーケティング・流通」「生産・技術」「財務・会計」となっています。中小企業診断士は様々な業種の企業に対し適切な経営診断や経営に関する助言を行う能力が求められますので、試験範囲としてもあらゆる業種の企業に対応できるように広範囲になっていることがわかります。

もちろん中小企業診断士の資格取得のための学習は時間のかかるものであり、一般的に800~1,000時間程の学習時間が必要と言われています。仕事と学習の両立は簡単ではありませんが、それだけにこの資格を取得することは高く評価されるものであり、キャリアアップや転職につながるものだと言えるでしょう。

もちろん資格を取得することはゴールではありません。中小企業診断士の資格を取得したあと経営コンサルタントとして社内外の様々な立場から実務経験を積むことで能力を高め、それによって自身を代えの効かない人材に高めることができ、キャリアアップや転職に繋がっていきます。

中小企業診断士は様々な職種への転職に役立つ!

試験の学習範囲からもわかるとおり、中小企業診断士はあらゆる職種に必要な知識を身につける必要があり、その能力を証明するものでもあります。そのため、中小企業診断士は様々な職種への転職に役立つものであり、コンサルタント、マーケティング、経理財務、経営企画、人事、生産管理、物流、店舗開発や店舗管理など、どのような職種でも役立つ能力であると言えるでしょう。

キャリアアップや転職を目指す方が中小企業診断士の資格を取得すれば、現職に在籍したままキャリアを高めたり、より良い環境に転職したりすることもできるでしょうし、新たな職種にチャレンジすることもできるはずです。企業においては特定の職種で長く経験を積むことで専門性を高めた人材も魅力的ですし、複数の職種を経験して守備範囲を高め経営全体を理解した人材もまた魅力的です。キャリアアップや転職を目指すに際してはどのように自身の価値を高めていきたいかをよく考える必要がありますが、中小企業診断士の資格やその学習によって身につけた知識は、どのような姿を目指すうえでも強力な武器となるでしょう。

ただし、中小企業診断士を取得したことのアピールは、ともすれば頭でっかちな印象に思われるリスクもあるので注意が必要です。これはMBA(経営学修士)などにも同様のことがいえるのですが、資格を取得したこと以上にその資格取得の際に学んだ知見をどのように実務でアウトプットするかが大切になります。例えば経営コンサルタントの仕事などにおいても中小企業診断士の有資格者だから顧客が依頼をしてくださる訳ではなく、あくまで大切なのは取り巻く環境などを含めた顧客理解の上での経営支援になります。中小企業診断士を有すること自体をアピールするのではなく、それによりどのようなことが実務でアウトプットできそうかという点について整理の上、転職活動にのぞむようにしましょう。

中小企業診断士取得者の転職先

中小企業診断士の資格を取得された方が転職を考える際、どのような選択肢があるのでしょうか。前述の通り、中小企業診断士は求められる知識の範囲がとても広いため、それが役立つ場もまた幅広くあります。転職先の選択肢は広がりますが、その中でいくつかの転職先についてご紹介します。

コンサルティング業界

中小企業診断士は経営コンサルタントとしての資格ですから、当然ながらコンサルティング業界での転職においてとても有利になります。コンサルティング業界といってもその内容は様々であり、経営戦略コンサル、組織・人事コンサル、財務コンサルなど多様なジャンルがありますし、その顧客層も大手から中小まで様々です。コンサルティング業界への転職を考える際には、自身がコンサルタントとして関わりたいのがどのような領域でどのような顧客層なのかをよく考えられるとよいでしょう。

士業事務所

中小企業診断士は、税理士事務所や社労士(社会保険労務士)事務所など、士業事務所へ転職する際にも有利です。税理士や社労士といった士業は、それぞれの領域から顧客企業の経営に近い立場にいて、経営に関する様々な相談を持ち掛けられる立場にあります。そのため税理士事務所や社労士事務所は中小企業診断士を採用したいと考えることが多く、転職の選択肢となり得るでしょう。

また、中小企業診断士の資格を取得した後、税理士事務所や社労士事務所に転職し、それらの資格取得を目指すという選択肢もあります。中小企業診断士に加えて税理士や社労士など他士業の資格を取得(いわゆるダブルライセンス)することができれば、企業経営に関するプロフェッショナルとして、更なるキャリアアップにつながることでしょう。

二つ目の資格取得は容易ではありませんが、中小企業診断士の学習を通じて仕事と学習を両立させる生活ができた方が、次の目標としてそうしたキャリアの高め方を目指すのも良い選択肢なのではないでしょうか。

一般企業

中小企業診断士は企業経営の専門家ですから、当然ながら一般企業への転職も有力な選択肢となります。一般企業の求人といってもその職種はもちろん多様ですが、財務や経営企画など経営の中核に近い部門のほか、営業やマーケティング部門、総務や人事などの間接部門など、様々な職種に中小企業診断士の活躍の場があります。企業にとっても守備範囲の広い人材は状況に応じて様々な部門で活躍が期待できますから、中小企業診断士はぜひ欲しい人材と考えるはずです。実務経験に加えて中小企業診断士の資格を保有していれば、一般企業への転職活動の際に強力な武器となるでしょう。

金融機関

中小企業診断士の資格は、金融機関への転職においても評価されます。銀行などの金融機関は融資判断を行う際には企業の状況を適切に評価する必要があり、中小企業診断士の知識や経営コンサルタントとしての能力はとても役立つものです。また融資を行った後も経営状況を適切にウォッチし、必要に応じて経営に関する助言を行うこともあり、そうした場面でも中小企業診断士としての能力が役立つことでしょう。

公的機関

中小企業診断士になると、中小企業の経営支援を行う各公的機関への転職も選択肢となります。公的機関とは、商工会議所や中小企業支援センター、中小企業基盤整備機構、地方経済産業局などです。それぞれ国や地域などそれぞれの立場から中小企業を支援する機関であり、民間とはまた違うやりがいを感じられることでしょう。公的機関はそもそもの数が多くありませんので転職先として一般企業ほど目立ちませんが、中小企業診断士の能力を活かして世の中に貢献できる場を探す際には、ぜひ考えてみていただきたい選択肢です。

中小企業診断士として独立する

中小企業診断士の資格を取得したあとのキャリアとして、独立も選択肢のひとつです。独立した中小企業診断士として企業と顧問契約を結び、社外の立場から企業経営に関わることができます。得られる報酬の額は業務内容や顧客企業の規模によって異なりますが、多くの顧客企業に関わることで経験を積むことで収入を高めていくことも期待できるでしょう。また結果を出すことで顧客企業から頼られることも多くなり、やりがいをもって仕事に取り組むこともできるでしょう。顧問契約を結んでいたコンサルタントが、その企業の成長の中で社外役員などの立場となり、より深く企業と関わるようになるというケースも少なくありません。

また、独立するメリットのひとつに働き方が自由となるということもあります。仕事をする時間や量を自分自身で決めることができますので、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能となります。一般企業や公的機関などに勤務するよりも不安定となる部分もありますが、魅力的な選択肢として考えてもよいでしょう。

また将来の独立を考える方が、まずは副業として仕事をすることもできます。副業としていくつかの企業に関わり、そこで経験や自信を身につけて独立に繋げていくというのもよいでしょう。副業として仕事をする中でさまざまな人脈も得られ、それが独立した後の仕事にも大いに活きるはずです。

最後に

今回は「中小企業診断士は転職に有利!」というテーマで、中小企業診断士とはどのようなもので、どのような転職が有り得るのかなどについてご紹介させていただきました。中小企業診断士はその守備範囲の広さから、様々な場面で活用が期待できるものです。学習はもちろん簡単ではありませんが、将来のキャリアアップや転職を目指すうえで、中小企業診断士の資格取得を目指すことを考えてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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