転職先を言わないほうが安全?退職時の職場の上司への伝え方

転職先が決まった上で退職をする旨を伝える際、または職場に退職の挨拶をした際「次はどこに転職するのか」と聞かれることがあります。その際に転職先を伝えるべきか、転職先を伝えることで何かリスクがあるのかと心配される方も少なくないかと思います。

このような場面に備え、退職の旨を伝える前にあらかじめどのように返答すべきかを理解しておくことで退職交渉も円滑に進められるでしょう。今回の記事では「転職先を職場に言わない」はそもそもアリなのか、転職先について聞かれたらどう対処すべきかなどについて解説します。

目次

「転職先を職場に言わない」はアリなのか

転職先が決まってから退職する場合、職場の人から転職先を聞かれることがあります。同僚から興味本位で聞かれることもあれば、上司や先輩社員から問いただすように聞かれることもあるでしょう。いずれのケースにしても転職先を職場に言わないことは全く問題ありません。

それでは、何故、上司や同僚から転職先を聞かれるのでしょうか。上司や同僚が転職先を聞く主な理由としては上司の場合には「競合他社への転職することによるノウハウなど情報流出等の懸念」「退職を引き止める理由探し」、同僚の場合には「(質問者側の)興味本位」などが多いです。転職先がどこか問われた際には、まずはどのような意図で尋ねられているのか考えるようにしましょう。

転職先を言わないメリット

転職先を問われた際に転職先を言わない選択をする場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。現在の職場に転職先について伝えるべきか否かで迷っている方は以下を参考にしてみてください。

退職交渉の難航リスク回避

上司をはじめ「現職をやめてほしくない」と思っている人から転職先を聞かれる場合、転職先を伝えたことで「転職先企業には良くない部分があるので転職はやめておいたほうがいい」「その仕事には将来性がない」等、引き止めのためにネガティブな情報がもたらされ、退職交渉が難航するリスクに繋がる可能性があります。

すべての場合が影響するとは言いませんが、転職先によっては退職交渉が難航する材料となりかねませんので上司との関係、これまでの同僚の退職交渉の傾向、転職先についてどのような印象を持たれそうかなどを踏まえて転職先の情報開示をするか否か判断するようにしましょう。

転職先に迷惑がかからない

転職先を言わないことで得られるメリットは、風評被害を受けにくくなることです。あなたの転職について好ましく思っていない人が偶然にも転職先の社員を知っており、転職先へ事実と異なる悪評を流す可能性もゼロとはいえません。このようなケースは多い訳ではありませんが、倫理観などに問題があるような職場で働いている場合、転職先を言うことで上記のようなリスクを孕む可能性はないとは言えないでしょう。

競合他社・同業界への転職がしやすい

転職先を言わないほうが、競合他社・同業界への転職がしやすいといったメリットもあります。競合他社への転職が社内に知られることで、情報漏洩対策の観点から関われる業務を極端に減らされる可能性などもあるでしょう。

また、企業によっては競合他社への転職の場合に、競合避止に関する契約書の締結を求めるといったこともあります。ただでさえ負担のかかる退職交渉において、さらにこのようなやり取りは回避して転職できるにこしたことはありません。勿論、業界によっては競合他社への転職に寛容なこともありますので、業界の慣習などを踏まえた上で転職先を伝えるかどうか判断すると良いかと思います。

転職先を言わないデメリット

ここまでの内容をご覧いただくと、転職先を言わないほうが良さそうと考える方は多いと思いますが転職先を言わないことによるデメリットも存在します。ここからは転職先を伝えないことによるデメリットについて解説します。

人との新たな繋がりが生まれにくい

転職先を社内に伝えることで、同僚から「その会社に知人がいるから紹介する」「友人がその会社で働いているから会ってみる?」など思わぬ繋がりを得られる場合があります。また、転職先の事情を知っている社員がいれば、転職前に社内の事情について把握できる場合があり、有益な情報収集を期待できることもあります。

退職後も関係を維持できるチャンスがある

転職先についてきちんと伝えておくことが、逆に現在の職場との信頼関係を深め、退職後も良好な関係を築くことに発展できるがあります。場合によっては転職先の扱うサービスや製品について「うちでも導入したいと思っていたから転職後に商談に来てくれない?」といった声がかかることもあるかもしれません。

このような話に発展した場合、転職直後にさっそく会社へ貢献できる好機に恵まれることがあるかもしれません。このような可能性も鑑みた際に、必ずしも「転職先を言わないこと」がメリットになるとは言い切れないことを覚えておきましょう。

転職先を言わない場合でもバレるケース

転職先を言わない場合でも現在の職場にバレてしまうケースは存在します。可能性としては以下が挙げられるでしょう。

SNSでの投稿

転職先を言わないにも関わらず、バレるケースとして比較的多いのがSNSの投稿です。同僚にSNSのアカウントを教えていなくても、名前で検索したら自分のアカウントが簡単に出てきてしまう場合は、簡単に投稿内容が知られてしまいます。

自身で「○○会社への転職が決まりました」といった投稿をすると、SNS経由で転職先の情報が知られてしまうでしょうし、また意図せずに同僚がSNSに投稿することで転職先がバレることもあります。転職先を知られたくない場合には、周囲の方にも事情を説明の上、SNSの投稿を控えて貰うように伝えておくようにしましょう。

知人同士の繋がり

転職先と現在の職場の業界が同じであったり、たまたま現在の職場の同僚と転職先の社員が知人であることで、転職先がバレてしまうことがあります。会話の中でたまたま自分の話題が挙がってしまい、転職先について知られるリスクなどは回避が難しいといえるでしょう。このような予期しないリスクまでは当然ながら回避が難しいので、当たり前にはなりますが、転職の際には現在の職場と円満退職で終えるように心がけてのぞむが大切です。

転職先について聞かれたらどう対処する?

もしも、職場から転職先について質問されたらどのように対処すればいいのでしょうか。ここからは、「転職先について言わないまま退職したい」と考えている方へ向けて具体的な伝え方や対処についてご紹介します。

回答を先送りする

転職先について質問されたものの、「まだ正式には確定していません」「また改めてご報告させていください」のようなニュアンスの言葉を選ぶことで、角を立てることなく転職先の情報を伝えずに対処できます。ただ「決まっていないのであれば何故辞めるのか」と退職を引き止められる可能性があるので、退職理由の答え方についても考えておく必要があります。

情報を部分的に伝える

「SaaSプロダクトを展開するスタートアップ企業で幅広く任せて頂く予定です」「広告代理店で戦略の立案や企画などを任される予定です」「次は地元の関西で働きたいと思っています」というように転職先を特定できない伝え方もおすすめです。このような回答であれば、質問者の知りたいニーズを満たしつつ、事を荒立てずにかわすことができるため、上記に挙げたようなリスクは回避できる可能性が高いです。

全員に同じ説明をする

同じ職場で複数名から今後についての質問をされた場合、職場の人間関係に配慮するならば、全員に同じように説明しておくことが無難です。例えば誰かには伝えているのに、他の人には伝えないということがあると、後で伝えられなかった人からの逆恨みを買ってしまうことに繋がりかねません。同じ職場の人同士で自分の退職に関する噂話が起こってしまうことは回避が難しいので、全員に同じように伝えておくのがおすすめです。

答えられないと伝える

上記のようにかわす対応をしても食い下がってくる人がいた場合「どうしても答えられない事情がありまして」と誠意をもって伝えるとよいでしょう。また競合への転職を懸念して質問をされているようであれば、競合かどうかのみ伝えることで相手の不安を軽減するとよいでしょう。

転職エージェントに相談する

転職エージェントを利用している場合、もし退職の際に何か困ったこと、迷うことがあればキャリアアドバイザーに相談しましょう。退職交渉も含めたサポート経験豊富なキャリアアドバイザーであれば、退職時トラブルの事例などをもとに、最適な対処法を教えてくれるなど大きな助けになるでしょう。

転職エージェントは求人紹介だけでなく、退職交渉や入社準備など入社に至るまでの工程を通じてサポートをしてくれます。せっかく内定を決めたのに誰かにネガティブな情報を聞いてしまい真偽が気になるような場合は積極的に転職エージェントに相談することでそれらを払拭することができるでしょう。

最後に

退職前に転職先が決まった方にとって、「次の会社について同僚へ話すべきか否か」は悩みやすい部分です。本記事でご紹介した通り、必ずしも転職先の会社の情報を伝える必要はありません。しかし、転職先を言わないメリット・デメリットがあるので、それぞれを把握したうえで検討することが大切です。円満な退職や安心して転職することを実現するためにも、納得できる選択肢は何なのかをきちんと考え、転職先について言わないほうが良いのか、言うべきかを検討してみてください。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

目次