ARPUとは?ARPPUやARPAとの違いについても解説!

今回は、SaaSなどサブスクリプション型のビジネスにおいてよく使われる経営指標のひとつ、ARPUについて解説いたします。最近のベンチャー企業、スタートアップ企業には月額定額制でマネタイズを行うサブスクリプション型のビジネスに取り組む企業が多くなっており、ARPUやそれに関連する経営指標が管理すべき重要なKPIとなっているケースも必然的に増えています。本記事ではARPUとはどういうもので、どのようなシーンで使われるものなのか等について知っていただければと思います。

目次

ARPUとは

ARPUとは、「Average Revenue Per User」の頭文字をとったマーケティング用語です。「アープ」もしくは「エーアールピーユー」と読みます。ARPUは日本語にすると「ユーザー1人あたり売上高」といったような意味で、あるサービスの月あたり売上高をそのサービスのユーザー数で割ることで計算される値です。ARPUは以下の式にて算出されます。

ARPUの算出方法 (計算式)

ARPU(円) = 売上高(円) ÷ ユーザー数(人)

ARPUが使われるのはたいていサブスクリプション型のビジネスですので、「月あたり売上高」はすなわち「月あたりのリカーリング収益(MRR = Monthly Recurring Revenue)」のことです。もともとARPUは携帯電話業界のような月額課金のビジネスで使われていて、SaaSなどサブスクリプション型のビジネスが様々な領域で増えていく中で、より一般的に使われるようになったものです。

サブスクリプション型のビジネスに取り組む企業はARPUを継続的に管理することで、ユーザー1人あたりいくらの収益が得られているかを把握することができ、ユーザーをどのくらい増やせば収益がいくら得られるかの見込みを立てたり、収益が予想を下回ったときにその原因を分析したりするのに役立てることができます。

ARPUがなぜ重要なのか

サブスクリプション型のビジネスに取り組むベンチャー企業やスタートアップ企業にとってARPUはとても重要なものなのですが、それがなぜなのかについて考えてみたいと思います。サブスクリプション型のビジネスにおける収益とは、次のように計算されます。

収益の算出方法(計算式)

収益(円) = ARPU(円)×ユーザー数(人)

収益をこのように分解すると、企業が収益を高めるには「ARPUを高める」か「ユーザー数を増やす」かのどちらかの方法しかないことがわかります。企業は当然ながらどちらにも取り組むべきなのですが、一般にマーケティングにおいては「いかに多くの新規ユーザーを獲得するか」が注目されやすいものです。特にサービス開始当初はとにかく新規ユーザーを早く増やすことに主眼が置かれることが多く、社内リソースも限られていることから、獲得した後のユーザー(既存ユーザー)への継続的なフォローは疎かになりがちです。その結果、新規ユーザーの獲得には継続的に取り組む一方で、既存ユーザーから得られる収益は徐々に減少してしまったり、解約が多くなってしまったりします。そうなるとせっかくコストをかけて新規ユーザーを獲得し続けても、リカーリング収益はなかなか積みあがらず、マーケティング費用ばかりが嵩む事業になってしまいます。

マーケティングの世界においては「1対5の法則」という言葉があり、新規ユーザーを獲得して売上を上げるために要するコストは、既存ユーザーから売上を上げるために要するコストの5倍かかるとも言われています。高いコストをかけて獲得した新規ユーザーをいかに離脱させず、ユーザーであり続けてもらうかは、サブスクリプション型のビジネスに取り組む企業の浮沈を決める要素となり得ます。

新規ユーザーの獲得にも取り組みながら、既存ユーザーへのフォローも手厚く行い、なるべく多くのアップセルやクロスセルを獲得したり購買頻度を高めさせたりといったことができれば、ARPUの高い状態を継続させることができ、リカーリング収益を効率よく積上げることができます。サブスクリプション型のビジネスに取り組む企業は、そのような姿を目指すべきでしょう。その取り組みがどの程度うまくいっているかをその企業自身が知るために、継続的にARPUを管理することがとても重要なものであることがわかると思います。

ARPUを改善するには

企業はARPUをなるべく下げないようにし、さらに高めていくことで、より多くのリカーリング収益を獲得することができ、経営基盤を強固なものにすることができます。より高いARPUを獲得するために企業が取り組むべきことについて、いくつかご紹介したいと思います。

アップセルやクロスセルを獲得する

アップセルやクロスセルとは、既存ユーザーから追加の売上を獲得することです。既に購入されている商品やサービスと比較して機能や価格面で上位のものを提案するのがアップセルで、関連する別の商品やサービスの追加提案をするのがクロスセルです。どちらも、既存ユーザーから得る売上高を更に高める効果が期待でき、ARPUの改善に寄与します。

アップセルやクロスセルを獲得するには、提供している商品やサービスで高い満足度を得ている必要があります。ユーザーは満足度の低い商品やサービスに対し、追加の支払をすることは通常ありません。アップセルやクロスセルによってARPUを高めるには、提供する商品やサービスの質を向上させたり、アフターフォローを充実させたりといったことが必要でしょう。

最近では既存ユーザーの満足度を高めるため、カスタマーサクセス部門を充実させる企業も増えています。そのような取り組みには費用がかかりますが、それによってARPUを高めることができれば、企業はより強固な経営基盤を獲得することができると言えます。

有料プランへの移行を促す

webサービスなど無料でも一定のサービスを提供するようなビジネスモデルの場合、無料プランを利用しているユーザーに対し有料プランへの移行を促すことでARPUを高めることができます。そのためには無料プランと有料プランで利用できる機能に差をつけるなど、ユーザーが有料プランに移行したくなるような仕組みが必要となります。

ただし、無料プランと有料プランの間に差をつけすぎると、無料プランのユーザーがそのサービスに対して悪い印象を持ってしまい利用してくれなくなってしまう恐れもあります。無料プランのユーザーに対してはサービスの利便性を伝え、そのうえで有料プランへ移行したいと感じさせるという、バランスの取れた設計を追求する必要があるでしょう。

購買頻度を高めさせる

サブスクリプション型のビジネスの中でも「利用課金モデル」と呼ばれるものの場合、購買頻度を高めさせることでARPUを向上させることができます。

利用課金モデルとは、利用する毎に課金するようなタイプのビジネスモデルのことです。たとえば有料でマンガを読める電子書籍アプリや有料でガチャを回すことのできるゲームアプリのようなものがこれに該当します。このようなビジネスモデルの場合、ユーザーに対して1ヶ月の間に課金される金額は一定ではなく、そのユーザーの利用頻度によって差が出ます。そのため、様々な取り組みによってユーザーの購買頻度を高めさせることで企業はARPUを高めることができます。

企業がARPUを高めるためには、取り組むビジネスの内容によって様々な方法が考えられます。収益向上に取り組む企業は、自社の売上がどのような構造になっているのか、何をすればARPUが向上するのかといったことをよく理解し、自社に適した方法でARPUの向上に取り組む必要があると言えるでしょう。

ARPPU、ARPAとは

SaaSなどサブスクリプション型のビジネスにおいては通常ARPUが使われますが、それに近い経営指標としてARPPUやARPAといったものが使われることもあります。取り組むビジネスの内容によってはARPUよりもARPPUやARPAを使った方が都合がよい場合があるからなのですが、それらの言葉についてもご紹介したいと思います。

ARPPUとは

ARPPUとは、「Average Revenue Per Paid User」の略で、「有料課金ユーザー1人あたり売上高」を意味する言葉です。次のように計算されます。

ARPPUの算出方法(計算式)

ARPPU(円) = 売上高(円) ÷ 有料課金ユーザー数(人)

無料プランのあるwebサービスや課金しなくても遊べるゲームアプリなど、ユーザーの中に無料ユーザーと有料ユーザーが存在するようなビジネスにおいて、無料ユーザーと有料ユーザーを区別せずにARPUを計算してしまうと、課題が十分に発見できないことがあります。そのようなビジネスの場合、管理すべき経営指標としてARPUではなくARPPUが使われることがあります。

ARPAとは

ARPAとは、「Average Revenue Per Account」の略で、「1アカウントあたり売上高」を意味する言葉です。次のように計算されます。

ARPAの算出方法(計算式)

ARPA(円) = 売上高(円) ÷ アカウント数(個)

一部のwebサービスや法人向けSaaSなどでは、ひとつのアカウントで複数のユーザーが利用できるようなサービス設計となっている場合があります。このようなビジネスにおいては、売上高をユーザーごとではなくアカウントごとに把握したほうが実態をつかみやすいなど、ARPUではなくARPAを利用する方が有益な場合があります。

ARPPUやARPAはそれぞれ、ARPUだけでは十分な情報が得られないという課題が生じた企業においてより有意義な経営管理を行うために考え出された経営指標です。どのような指標を用いるべきかは、ビジネスモデルやその数字を使う場面によって異なるものですので、企業は自社のビジネスモデルを分析し、どのような経営指標を用いれば必要な情報が得られるのかをよく考えておく必要があると言えます。

最後に

今回は「ARPUとは?ARPPUやARPAとの違いについても解説!」というテーマで、サブスクリプション型のビジネスにおいてよく使われるARPUについてご紹介させていただきました。

企業はARPUを常に管理しウォッチしておくことで、その値が急に下がった場合などにその異変をすぐに察知することができ、迅速な原因究明と対応が可能となります。ARPUは自社サービスに対するユーザーの満足度を端的に示すものであり、そうしたビジネスに取り組む企業にとって無視できないものであることが、今回のコラムからご理解いただけたのではないかと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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