SaaSビジネス成長の要となるカスタマーサクセスとは

この数年で「カスタマーサクセス」というセールス用語が一般的に使われるようになってきました。カスタマーサクセスはSaaSモデル(※)で事業を展開するなどのIT業界での導入が多く、言葉が広まる前から企業に合わせたスタイルで導入化が進められてきました。

本記事では、そんなカスタマーサクセスの概要やSaaS企業に導入されている理由、導入に必要なスキルを紹介していきます。SaaS企業のカスタマーサクセスがどのようなものかを知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

※SaaS(サーズ)は「Software as a Service」の略で、クラウド上のアプリケーションやサービスを、インターネットを通じて利用する形で提供されるビジネスモデルになります。スマホなど月額課金型で利用するサブスクリプション型のサービスの多くはSaaSに該当します。

目次

カスタマーサクセスとは

「カスタマーサクセス」とは「顧客の成功」と直訳できる通り、顧客のビジネス成功に向けた支援活動をしていく役割になります。セールスという活動は商品やサービスを販売することで終わりとなりがちで、購入後に顧客がどのような変化が起こったかまで十分にフォローできていないことは珍しくないかもしれません。

しかしながら、SaaSは定額課金方式で利用料を頂くサブスクリプションでのマネタイズモデルを導入している企業が多く、折角、何度も商談を重ねてサービスを導入を頂いても、早々に解約に至ってしまってはビジネスが成立しません。何より、サブスクリプションモデルは毎月継続的に利用を頂く中で、顧客の課題を深掘りし、課題解決に繋げられるようにプロダクトに追加機能を実装するなどブラッシュアップを進め、長期的な利用に繋げて頂くことにこそ良さがあります。

カスタマーサクセスはそのようなSaaSモデルならではの継続的な顧客との関係性を築き、顧客のビジネスを成功に向けて支援していく役割を担う存在になります。そのような顧客のビジネス成功に向けた提案の中で、アップセル、クロスセルを実現し、結果的に自社の収益力を高めていくことが理想と言えるでしょう。

カスタマーサクセス導入の背景

カスタマーサクセスの導入が進んだ背景には、SFAやMAツールなどを提供するセールスフォース・ドットコムで活用されてきた営業プロセスの一つである「THE MODEL」の考え方が広まったことにあります(2019年にMarketo社の代表である福田康隆氏が著書「THE MODEL」を出版されたことがそのきっかけの一つと言われています)。

この「THE MODEL」が広まったのはただ単にトレンドという訳ではなく、その背景には人材難である今のご時世も影響していると言えるでしょう。1人の営業担当者が新規開拓からサービス導入後の顧客フォローなどまで一挙に手掛ける従来のセールスモデルでは育成にも時間を要しますし、投資家などより急成長を要求されるベンチャー、スタートアップ企業では目指す成長スピードに追い付かないなどの問題も起こり得ます。

そのような背景もある中、セールスプロセスをインサイドセールスやカスタマーサクセスなどに細分化し、業務効率化を進める「THE MODEL」のセールス手法を導入することで、セールス活動の生産性、組織の専門性向上などを目指す企業が増えているという傾向にあります。

SaaSモデルを展開する企業ではその傾向が特に顕著にあります。具体的には近年のSaaS企業の多くにはSMB(中小企業)をターゲットにDX推進を支援するサービスなどを提供する企業が増えてきています。想像に難くない通り、北海道から九州まで全国のSMBへ網羅的に足を運びながらセールス活動を行うのは時間も労力もはかり知れません。そのような中、インサイドセールスやカスタマーサクセスなどの分業型営業プロセスの導入が進んだことも要因の一つと言えるかと思います。

カスタマーサクセスの特徴

こちらではSaaS企業でのカスタマーサクセスの仕事にどのような特徴があるのか解説していきます。勿論、プロダクトの特性やビジネスモデルにより、カスタマーサポートの色合いが強い、アップセル・クロスセルなどのセールス要素の色合いが強いなど、一言にカスタマーサクセスといっても企業によりミッションは異なります。

こちらでは一般的なカスタマーサクセスの特徴を解説しますが、自分が関与する、あるいは今後転職などで関わりたいと思っているプロダクトがどのような特性のものなのかを理解し、カスタマーサクセスの仕事に臨む際の参考にして頂けたらと思います。

非対面中心で生産性・効率性を重視した支援活動

特に急成長フェーズにあるSaaSだと一気に導入企業が数千~数万社規模に拡大することも珍しくありません。そのような膨大な導入顧客数に対して十分な支援活動を行うためにも、カスタマーサクセスチームを導入する多くのSaaS企業が、対面をせずに電話やウェブ商談ツールで支援活動を行っています。

カスタマーサクセスは基本的に直接顧客のもとに赴くことなく支援活動行うため、移動時間が削られる分、如何に生産性高く、導入顧客数が数千~数万規模になった場合でも無理なく支援できる体制を構築できるかといったことに重点を置いた組織運営をされるケースが多いです。

アップセル・クロスセルの提案

カスタマーサクセスの役割は導入顧客のサポートだけではなく、顧客にSaaSを利用して貰いつつ、コミュニケーションを重ねていき、顧客の抱える細かな課題まで捉えていくことが求められます。

例えばクラウド会計SaaSを利用頂いている顧客の場合、会計のお困り事は解決できたとしても、人事労務など会計以外の管理系業務で課題を抱えていることも珍しくありません。そのような場合、カスタマーサクセスはそのような周辺課題の解決に際し、上位プランへの切り替え提案、あるいは自社の有する別サービスをご提案の上、顧客の課題解決に向けて取り組んでいくのもカスタマーサクセスの仕事の特徴の一つと言えるでしょう(企業によっては提携先企業のサービスをご提案する場合もあります)。

尚、上記のようなケースにて自社の提案するSaaSの上位プランへの切り替えなどにて顧客単価を向上させることを「アップセル」、別のサービスを提案によって顧客単価を向上させることを「クロスセル」といいます。言うまでもなく、新規顧客の獲得には労力を要します中、カスタマーサクセスが既存顧客と関係を築き、このようなアップセル、クロスセルを容易に実現できる体制が実現できれば事業を一気に成長させることに繋がります。

プロダクトのブラッシュアップに欠かせない存在

カスタマーサクセスはSaaS組織の中でも最も重要な役割の一つです。SaaSに限らず、良いサービス、良いプロダクトに改善をしていくためには顧客の声は欠かせません。

カスタマーサクセスはSaaS導入後の顧客の率直な感想に触れられることができる唯一の役割であり、カスタマーサクセスが顧客から頂いた声をPdM(プロダクトマネージャー)、開発チームなどと連携する形で、追加機能の実装、ユーザビリティの改善などに反映させることがチャーンレート(解約率)の改善、競合優位性の構築に繋がるのです。

SaaS企業のカスタマーサクセスで求められるスキル

カスタマーサクセスは、いまや多くのSaaS企業で導入されています。カスタマーサクセスが機能することでチャーンレート(解約率)に歯止めがかかり、また継続的に顧客の成長に携われることなどが特徴的なカスタマーサクセスの仕事ではありますが、カスタマーサクセスで活躍していくためにどのようなスキルが必要かご紹介していきます。

ITリテラシー

カスタマーサクセスはWeb会議システム、顧客の声を集約するCRM(Customer Relationship Management)に関する業務の多くを、ITツールを活用しながら効率性高く仕事を進めていく必要があります。カスタマーサクセスで活用されているITツールはたくさんありますが、多くのSaaS企業で使われているツールには以下の3種類があります。

スクロールできます
ツール 内容
Web会議システム インターネットを経由して商談をするツールで、代表的なツールにZoom、Google Meetなどが挙げられます。カスタマーサクセスがオンラインでの商談をする際にこのようなツールを使用する機会は非常に多いです。
SFA/CRM/MA顧客情報や商談履歴を一元管理するツールであり、セールスフォース、HubSpotなどがどの代表格といえるでしょう。カスタマーサクセス以外にも、インサイドセールスなど営業活動に関わる全部門にて顧客データをスムーズに共有できるようになります。
チャットツールSlack、Chatworkなどに代表されるチャットツールもSaaS企業に限らず、IT・Webサービスを提供する企業の大部分で導入されています。社外とのコミュニケーションよりは、社内での情報流を良くすることを目的にこのようなチャットツールを導入するケースが多いです。

上記のITツールはSaaS企業でのカスタマーサクセスの活動でよく利用されるものの一つといえます。ただし、入社前からこれらすべてを使いこなせている必要はなく、基本的に入社後に覚えていけば問題ありません。それ以上に重要なことは日々このようなツールは機能アップデートをされたりする中で、積極的に新機能などを取り入れ、より良い商談を形づくっていくことになります。

非対面環境下での関係構築力

カスタマーサクセスに欠かせないスキルとして、Web会議システムなど非対面環境下での顧客との関係構築力があります。特に2020年の新型コロナウイルス問題があった中、web会議システムの導入が増えましたが、その中で雑談などが生まれにくいといった課題などを耳にしたこともあるかと思います。雑談を通じて人間関係を築く、あるいはそのような雑談の中で顧客の本音が伺える瞬間があるといったことも営業活動に関わる方の多くが経験されたことがあるかと思います。

また、web会議システムのそのような特性も相まってweb会議システムを用いた商談では、これまでの1時間の商談時間が30分程度で設定される機会も多くなりました。このような環境の下、顧客の本音を引き出すカスタマーサクセスの役割は特に難易度が高いといえるかもしれません。

社内連携力

カスタマーサクセスに求められるスキルとして周囲を巻き込み、社内連携を進めていくスキルは欠かせないでしょう。カスタマーサクセスが社内連携を求められるシーンとしては、例えば顧客から頂いたプロダクトの感想、要望などを開発チーム、PdM(プロダクトマネージャー)に正確に伝え、プロダクトに反映させていくシーンがあります。

それ以外にも顧客にサービス導入を頂いた際に、「思っていたサービス内容と違う」「期待値よりも低い」などといった声があった場合には、カスタマーサクセスより前のインサイドセールス、フィールドワークなどの段階で何かしら齟齬を生んでいる可能性があり、そのようなセールス活動の改善などのシーンも挙げられるでしょう。

SaaS系ベンチャー、スタートアップ企業と出会うために

SaaS系ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動を試みた経験のある方の中には、大手企業と比べて企業情報、求人情報を探すこと、また企業概要までは分かったとしてもビジネスモデルや事業優位性など詳細な情報収集が難しいと思った方も多いのではないでしょうか。

言うまでもなく、大手企業や上場企業のように公開情報が豊富な訳ではなく、財務情報やビジネスモデルなど実態が掴みづらいのがベンチャー、スタートアップ企業です。特に設立から間もないベンチャーの場合、HPなどwebサイトに十分な予算をかけることが難しく、最低限の情報のみ記載されているような企業も少なくありません。

また、SaaS系に限らず、ベンチャー、スタートアップ企業は、まだ世の中にない最新技術などを駆使したビジネスを展開されている企業も多いため、HPの情報だけではなかなかビジネスの特徴や全体像などを掴みづらいというのも、転職者が情報収集に苦労する一つです。

SaaS系ベンチャー、スタートアップ企業への転職活動において企業情報、求人情報を探す過程で、上記のように様々な問題に直面する場合が多く、自分に合ったベンチャー、スタートアップ企業を探し、出会うことは非常に難易度が高いです。このように情報収集が容易ではないという前提の上ではありますが、その上で以下のような探し方をご紹介します。

積極的にPRをするベンチャーと戦略的にPRを控えるベンチャー

こちらでは今後、成長性に期待のかかるSaaS系ベンチャー、スタートアップ企業との出会いをつくるために参考になる方法についてい解説いたします。特に積極的にPRをするベンチャー、戦略的にPRを控えるベンチャーがありますのでそのような観点について以下ご紹介します。

積極的にPRをするベンチャー

SaaS系ベンチャー、スタートアップ企業の求人情報の探し方、情報収集方法としては、まず「Wantedly」を活用されることをお勧めします。企業側の視点で見た際に、Wantedlyは比較的安価な料金で利用可能なビジネスSNSであり、多くのベンチャー、スタートアップ企業がWantedly上で情報を公開しています。そのため、転職活動の第一歩として利用するツールとしてはよいかと思います。

また、「注目すべきベンチャー●選」、「優良ベンチャー●選」、「 SaaS企業特集」あるいは経営者にフォーカスをあてた特集など、様々なテーマでベンチャー、スタートアップ企業の情報をまとめたキュレーションサイト(まとめサイト)も存在します。Web上での情報収集においては、このようなWebサイトを参考に情報収集をされると良いでしょう。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は自社をPRする場として、行政などが主導するビジネスプランコンテストなどに出場することが多いです。ビジネスプランコンテストは経営者が自社のビジネスモデルの特徴、どのような市場成長性のあるマーケットで戦っているか、将来どのような展望を考えているかなど、具体的な内容を発表し、審査員が評価します。

ビジネスプランコンテストは一般公開しているものも多くありますが、コロナショック以降はYoutubeなどオンライン配信形式(LIVE配信のみ、あるいはYoutubeに残す場合など様々)をとるケースも増えました。そのため、仕事が忙しく、ベンチャー、スタートアップ企業を探すことになかなか時間を割けない方でも、このような場に参加しやすくなりました。

戦略的にPRを控えるベンチャー

ここまでベンチャー企業、あるいは経営者がどのような形で情報を発信しているかお話してきました。しかし、PRに積極的なベンチャー、スタートアップ企業ばかりではありません。

認知度を上げることは企業の成長において重要なことではありますが、目立ちすぎることで「この市場は魅力的な市場だ」と、競合の参入を加速させてしまう可能性も高まります。こちらでは戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業について解説していきます。

ベンチャー、スタートアップ企業の成長において大きな脅威の一つが、大企業の参入です。資本力のある大手企業が参入する中、資金力や人材など経営資源の足りないベンチャーが太刀打ちするのは至難の業といっても過言ではありません。

そのような脅威に注意を払っている経営者は、自社HP含めwebサイト上での発信を控えている他、ビジネスプランコンテストのような表舞台には極力姿を現さず、水面下で静かにシェア獲得を推し進めるような戦略をとっていることが多いです。そして、ある程度シェアを獲得できた段階、あるいは大型の資金調達などが実現され、一気に競合各社を引き離したいという瞬間に、ようやく大々的に露出していきます。

転職エージェントを活用した水面下での採用活動

このような戦略的にPRを控えるベンチャー、スタートアップ企業は、自社の採用活動に関しても慎重です。例えば公に情報を露出する求人サイトではなく、転職エージェントなどを活用し、競合他社に動きが見えないよう、水面下で採用活動を進めるような採用施策をとる企業も多いです(特にCxOクラス、ミドルマネージャークラスの求人募集に際し、転職エージェントを活用するケースが多いです)。

また、このような戦略的にPRを控える企業の場合以外においても、多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、マネジメント層に特化した転職エージェント、SaaS企業に専門性を有する転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに転職活動を進めても損はないでしょう。

参考情報:ベンチャー、スタートアップ企業への転職に向けた転職エージェントの選び方

上記の通り、経営者の考え方、市場や競合環境により経営方針は様々であり、必ずしも露出が多いから優良ベンチャーという訳ではありません。事業フェーズがそれなりに進んでいるにも関わらず露出が少ない企業の場合には、その背景についても調べてみる、または面接において経営者に直接確認してみるのも良いでしょう。

最後に

今回はインサイドセールスの概要、多くのSaaS企業でインサイドセールス、カスタマーサクセスなどの分業体制導入されている理由、導入に必要なスキルについて紹介しました。そしてインサイドセールスは営業活動全体にインパクトを与えるやりがいや責任感の大きな仕事ですが、フィールドセールスとは違った難しさ、必要なスキルが異なってきます。

SaaS企業のインサイドセールスに挑戦したいと思う方は、インサイドセールスで活躍するために必要なスキルを踏まえ、転職活動での自己PRなどに繋げて頂ければと思います。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA。

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