育休中や育休復帰後に、仕事と育児と家事の両立で忙しい日々に追われているワーキングマザー(以下ワーママ)、今後のキャリアをどうしていくか悩み、転職を考えるワーママは多いのではないでしょうか。また、一般の転職者と転職理由も異なり、制約も多い中での転職活動は難しいこともたくさんあると思います。今回は、ワーママの転職活動の仕方や注意する点、また転職市場におけるワーママについて解説していきます。
キャリアに悩みを抱える女性は多い
新卒から着実なキャリアを重ねてきていても、結婚、配偶者の転勤、出産、育児などのライフイベントで思うようなキャリアを歩めなくなる女性は多いです。こういった様々なライフイベントのタイミングで、優先順位を柔軟に変えていかなければいけない状況におかれます。中には、自分のキャリアを諦めてしまう女性もいるのではないでしょうか。
女性管理職の6〜7割が子供を持たないというデータもあり、キャリア充実のためには出産・育児を犠牲にしなければならなかったという現状もあります。育児期におけるキャリア形成が一番難しいと思われます。
育児中のワーママは、仕事と育児と家事の3つの両立をしなければいけません。結婚、育児は男性・女性に関係なく訪れますが、日本ではまだまだ家事・育児の負担が女性に偏ってしまっている現状があります。多忙な日々をこなしていくことで、なかなか自身のキャリア形成を後回しにしてしまっている方も多いでしょう。
多忙な日々だと思いますが、一度自身のキャリアプランについて立ち止まって考えてみてください。例えば、今現在は子供がまだ小さく、育児にかける時間が長くなりキャリアにフォーカスしきれないかもしれません。しかし、子供が成長するにつれ親の手も離れていくため、短期的な視点ではなく、長期的な視点で働き方や理想のキャリアについて考えてみましょう。
働き方を考えていく上で、「育児との両立に理解のある環境」が不可欠であり、そのためには職場やパートナーなどの周りのサポートが重要となります。自分の理想のキャリアプランを叶えるためには、サポート体制を確保できるかどうかも視野に入れましょう。現職でそのようなワーママへの働き方がなかなか理解を得られない場合には、転職も選択肢として入ってくるかと思います。
ワーママを取り巻く環境
保育園に関わる問題や子供の体調不良で急なお休みをとらなければいけない、労働時間などあらゆる制約がかかる、男性の多い職場や理解の低い上司がいたりでなかなか理解を得られないなど、子育てをしながらだと働きづらさを感じる場面が多いと思います。
転職を考えたことがあるワーママが8割にも及び、子育て時間確保や、より自宅近くの職場で働きたい、業務量、勤務時間により、現職だと育児との両立が難しいと考えているワーママが多いのも実情としてあります。仕事と子育ての両立はできても昇進や昇格の機会が見込めない「マミートラック」という言葉もあるくらい、子育てをしながらキャリアアップを望むことが難しい環境があります。
時短勤務などの制度がない、制度があっても取得しにくい、復職後の配置転換や業務変更によってこれまで培ってきた経験やスキルを活かしづらいといったこともあるでしょう。また、時間制約があり充分に成果を発揮することができないといった悔しさもあると思います。
しかしながら、ワーママを取り巻く環境は、2010年の育児介護休業法の改正で、3歳までの短時間勤務制度が義務化され、出産後働き続ける女性がどんどん増えてきました。企業もそれに伴って在宅勤務を可能にさせるなど、様々な制度ができました。ワーママが増えるにつれ企業側の理解も増し、ワーママを取り巻く環境は大きく変化し続けています。そのため、ロールモデルの不在が問題としてある一方、女性の働き方の選択肢が広がってきています。
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知っておきたい「小1の壁」について
保育園の子どもを持つワーママが、今知っておかなければならないのが「小1の壁」と呼ばれる問題です。共働き世帯の多くが陥る問題であり、小学校入学前に対策を考えておかなければなりません。具体的に、小1の壁とは何なのかを解説していきます。
「小1の壁」とは共働き家庭における問題の一つ
小1の壁とは、子どもが小学校に入学したことをきっかけに、仕事と育児、家事の両立が難しくなることです。子どもを保育園に預けていたころとは異なり、子どもが小学校に通学するようになると、時間の問題に悩まされる傾向にあります。これまで仕事や育児、家事を両立できていたママでも、子どもの小学校入学を機に「時間が足りない」「手が回らない」などさまざまな問題に直面するケースが見られています。
主な原因は小学校の帰宅時間が早いこと
小1の壁に陥ってしまう主な原因として考えられることが、小学生になると帰宅時間が早くなることです。フルタイムで働いているワーママの場合、夕方や夜まで就業していることが多いのではないでしょうか。保育園であれば、20時や21時ごろまで預かってくれる施設も多く、無理なく両立しやすかったと思います。しかし、小学校の場合、1年生は15時ごろに帰宅が始まるので、ママのお仕事の終業時間よりも早く自宅に帰ってくることとなります。また、公的な学童を利用しても、閉所時間が18時~19時であることが多く、フルタイムで働くママとしては、就業後にバタバタしたり、そもそも閉所時間に間に合わないといったこともあるかもしれません。
そのうえ、子どもの宿題を見たり、時間割を見ながら一緒に翌日の準備をしたりしなければならないなど、タスクも増えがちです。その結果、時間が足りない、やることが多い、と仕事や育児、家事の両立に難しさを感じるようになります。
「小1の壁」を乗り越えるために知っておきたいサービス
ワーママが小1の壁を乗り越えるための方法として、外部のサービスを利用するといった選択肢があります。どのようなサービスが利用できるのか、困ったときのためにも参考にしてみてください。
民間の学童保育
ワーママが小1の壁を乗り越えるためのサービスとして、まず挙げられるのが民間の学童保育です。公的な学童保育とは異なり、閉所時間が遅めで20時頃まで預かってくれる施設もあるため、ママの終業時間と照らし合わせながら、無理なく預けられそうな場所を探してみましょう。
ただし、公的な学童保育は同じ学校から通う子どもたちが多く、施設まで集団で向かうのに対し、民間の学童保育は同じ学校から入所している子が他にもいるとは限りません。通所が1人になってしまう場合もあるので、子どもが無理なく通える場所を選ぶ必要があります。
ファミリーサポートセンター(子育て援助活動支援事業)
ファミリーサポートセンターとは、自治体が主体となって子育て世帯をサポートする活動です。会員制度で成り立っている点が特徴で、依頼をしたい親(依頼会員)と、援助を行いたい人(提供会員)に分けられます。提供会員は、子育てがひと段落した育児経験者であることが多く、地域ぐるみで支え合っていくシステムになっています。
放課後に子どもを見ることが難しい場合には、あらかじめ依頼会員として登録を済ませておくことで、提供会員に子どもを見ていてもらうことが可能となる簡易な仕組みであることも色々と負担の大きいワーママにはありがたいのがこの活動です。
また、子どもの保育中は、提供会員の自宅のほか、依頼会員の自宅で一緒に過ごすこともできます。単純に子どもを預かってもらうだけではなく「宿題を見てもらう」「子どもをお風呂に入れてもらう」「寝かしつけをしてもらう」など、提供会員の無理のない範囲でお願いできる点もワーママの方には魅力といえるでしょう。
習い事
子どもの帰宅時間に会わせて仕事を切り上げることが難しいワーママの方には、放課後に習い事をしてもらうといった選択肢もあります。仮に15時に子どもが帰宅した場合、15時30分から開始する習い事であれば、夕方頃まで習い事先で過ごせるでしょう。帰宅時間が17時や18時程度のママであれば、放課後に習い事をさせておくことで1人になる時間を極力減らすことが可能です。
また、テレワークの場合も、「子どもがいると集中できない」といった問題に陥ったときには、放課後に習い事先で過ごしてもらうといいでしょう。習い事でいろいろな経験をしたり、新しい知識が増えたりして子どもにもメリットがあるので、我が子の興味・関心を探りながら習い事探しをしてみてはいかがでしょうか。
家事代行サービス
小1の壁にありがちな「時間が足りない!」という問題を解消するための方法として、家事代行サービスの利用が挙げられます。家事代行サービスとは、依頼者に変わって家事を進めてくれるサービスのことです。料理や掃除、洗濯といった基本的な家事のほか、回覧板を回してもらう、食材・日用品の買い出し、なども対応してもらえます。活用方法は自由なので、「1週間分のおかずを作り置きしてもらう」「数日溜め込んだ洗濯物を干してもらう」といった依頼も問題ありません。金銭的に毎日依頼することが難しい場合には、1度に数日分の家事を依頼するのもいいでしょう。
また、家事代行業者によっては、シッターサービスも提供していることがあります。家事を済ませてもらいつつ、子どもの面倒を見てくれる代行業者もあるので、複数業者の情報をチェックしながら、希望のサービスを提供している家事代行サービスを探してみてはいかがでしょうか。
転職市場におけるワーママ
これまでは時間的な制約でフルタイムの方と比べると不利なシーンが多く、ワーママ歓迎の求人が少なかったですが、人手不足の昨今、働く意欲が高く実務経験豊富なワーママ人材を積極的に求める会社が増えてきています。
短時間勤務の正社員という新しい選択肢も増え、時短勤務・フレックスタイム制度・リモートワーク可能な求人でキャリアを積むことができるようになってきています。今後ワーママが増えることを見越して働きやすい環境を整えるためにも、ワーママのロールモデルとして採用されるケースもあります。
では、なぜ企業がワーママを求めるかと言うと、ワーママは育児を通じてマネジメントスキルを養っており、育児は確実にキャリアのプラスと捉えられているためです。そのため、育児期間をキャリアのブランクと否定的に捉えず、自身の成長の一環として前向きに捉えてください。
特に人手不足に悩まされることが多いIT・WEB業界は、ワーママを積極採用している企業が多いです。業務内容の特性上、多様な働き方が認められており、フレックス制度やテレワークの充実されているところも増えています。
ワーママの転職活動
一般の転職者に比べると仕事や育児で忙しく転職活動の時間を確保しにくいと思いますが、子供の年齢に応じてハードルの高さが変わってきます。3歳までは、産休・育休復帰後、思うように仕事と家庭の両立ができずに転職を考え始めるきっかけになるでしょう。ただ、子供から目が離せず、子供は体調を崩しやすいので、転職活動のハードルが高めです。
転職活動をスムーズに進めるためには、家族やベビーシッターなどの周りのサポートが不可欠になります。4・5歳になると子供の免疫力が安定してくるので、子育てに余裕が出やすく、転職をするには良いタイミングです。多くの場合、子供が保育園に通っている間に転職しているワーママが多いのも現状です。
小学校入学前後は、子供が自立して自分の時間も取れるようになってきますが、生活スタイルがこれまでとは大きく変わってきます。例えば、保育園よりも学校の方が通っている時間が短い、夏休みなどの長期休暇中に子供の預け先をどうするのかを考えなければいけないなどです。企業のサポートも小学校入学までとなっているところもあるため、この時期の転職活動においては無理なく働き続けられるかを慎重に考えなければいけません。
第二子・第三子を考えられている方は更にそのタイミングも考慮して転職がベストな時期を具体的にシミュレーションする必要が出てきます。こういった転職活動のハードルは様々なことがありますが、転職後、以前より仕事内容にやりがいを感じられるようになった、自身のキャリアアップになった、働き方を変えることで育児との両立が可能になったなど、転職してよかったと思う方が多いです。
ワーママ転職活動で考えておきたいこと
こちらではワーママが転職活動で重視すべき内容について3つの観点で解説していきます。転職活動に臨む際にはぜひ参考にしてください。
転職する目的を明確化する
ママになってから育児とのバランスを考えた条件面重視になってしまいがちですが、自身のキャリアを向上させたいという思いがある方も多いのではないでしょうか。だからこそ、転職する目的を忘れないことが一番大切になります。
子供の成長に寄り添いながらキャリアプランを形成していかなければいけませんが、仕事と家庭の両立は大変であるからこそ、条件だけでは続かず、自分がやりたいことを叶えるという目的をしっかりと明確にすることが必要です。
家庭との両立が可能な労働条件
次に条件面において、通勤時間、保育園など預け先から急なお迎え要請があった場合も対応できる距離なのかなど、遠い職場への転職には要注意です。職場が遠くなることで、家事や子育ての時間を確保することが難しくなってしまいます。また、ワーママが働きやすい制度・風土があるか、時短勤務・フレックス勤務制度や配属部署での利用実績なども確認すると良いでしょう。先輩ワーママが実際にどのように働き活躍されているか聞けると心強いですね。ただ、無理を押し付けないように気をつけましょう。
自己PR
自己PRにおいては「ママだからここまで」と自分から線を引かずに、どんな成果が出せるかをハッキリと伝えることが大切です。ワーママの転職においては家庭との両立が可能かどうかの就業環境に関する会話に終始してしまい、そもそも転職先でどのようなパフォーマンスを発揮できるかを十分にアピールできずに話を進めてしまうことも珍しくありませんので注意が必要です。
また、転職先でパフォーマンスを発揮できるようにするためにも家族ともサポート体制について相談する必要があります。会社の環境が整っていたとしても、周りのサポートがなければ、継続的に就業していくことが困難になってきてしまいます。例えば夫や自分が在宅勤務を活用して育児や家事を分担して、時間を増やすのも選択肢の一つでしょう。その他にもフルリモート勤務での企業も増えている中、自分たちのライフスタイルを踏まえてどのような企業が家庭を両立しつつ、パフォーマンスを出していくことができるかについて整理して臨んでいくことをお薦めします。
効率的に転職活動を進めるために
多くのワーママが仕事と家庭の両立にほとんどの時間を割かれてしまい、なかなか転職活動に十分な時間を割けないという方も多いでしょう。このような多忙なワーママは、限られた時間の中で効率的に情報収集を行う必要があります。こちらではこのような方の転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します
スカウトサイトを活用した転職活動
一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)」「エンミドルの転職」などが挙げられます。この転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズ(現東証グロース)にも上場を果たしています。
これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。このような転職プラットフォームに情報を登録する際には、まだまだ子育ての負担も大きい環境であることを敢えて記載しておくと良いでしょう。そのような情報を見て貰った上で、これまでの経験を評価してくれる、あるいはワーママへの理解がある企業の案件を受け取れるという点において、多忙なワーママにとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。
転職エージェントを活用した転職活動
転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。
転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。例えばリモート勤務が可能な求人情報を集めていきたい場合にはIT・Web業界に強い転職エージェントに登録すると効率的に情報収集などをしていきやすいでしょう。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。
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最後に
今回は、ワーママを取り巻く環境から、ワーママの転職活動について解説していきました。子供の成長とともにキャリアプランを立てることは難しく、転職活動においても様々なハードルがありますが、女性が活躍できる環境も少しずつ整ってきております。自分が今後何を大切にしていきたいかを明確にし、自身のキャリアを諦めずに考えていってほしいです。