ベンチャー、スタートアップ企業の成長を牽引するリードエンジニアの役割とは

リードエンジニアは、名前の通り、エンジニアチームのリーダーであり、プロダクトの開発には欠かせない重要な役職です。特に創業期のベンチャー、スタートアップ企業では、成長を牽引する役割ともいえ、各社で優れた転職人材を求めています。

そこで今回は、リードエンジニアがどのような役割なのか、転職するために必要なスキルにはどのようなものがあるか、そして、将来に向けてのキャリアパスについて解説します。

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リードエンジニアとは

リードエンジニアは、エンジニアのチームリーダーのことで、「テックリード」とも呼ばれます。エンジニアの一員としてプロダクトの開発を行いながら、エンジニアチームを技術的にも組織的にもまとめるポジションです。エンジニアとして転職などでキャリアアップする際の有力な選択肢のひとつと言えるでしょう。

ただ、リードエンジニアと言っても、ベンチャー、スタートアップ企業のリードエンジニアは、大手企業と相対的に比較して、より責任が大きく、そして広範囲な守備範囲が求められるポジションとなります。大手企業では、大規模な開発が多く、プロジェクトによっては何百人ものエンジニアが関わって、エンジニアチームが多数存在するのが一般的です。ということは、リードエンジニアも多数いて、それぞれの担当範囲でチームをまとめることが求められます。

一方で、ベンチャー、スタートアップ企業の場合は、大手企業と比較すると初期は小規模なプロダクトを開発するため、少人数でチーム数も少ない環境でリードエンジニアを務めます。必然的にリードエンジニアに限らず、1人のエンジニアが担当する範囲は大きく、責任もより大きくなります。

また、ベンチャー、スタートアップ企業は少ない人的リソースでプロダクトの開発に取り組まざるを得ないだけでなく、ローンチしたもののうまく機能していない、あるいは顧客の声を積極的に取り入れながらプロダクトのブラッシュアップをしていかなければなりません。このような中でリードエンジニアとして開発組織を牽引頂きつつも、自身もたくさんのコードを書かなければならず、エンジニアとしての業務負担も大きくなってしまいます。

このように、ベンチャー、スタートアップ企業のリードエンジニアは、責任も業務負担も大きい役割です。しかし、その分だけ、リードエンジニアがベンチャー、スタートアップ企業の成長を牽引する力を持った重要なポジションであることも理解してもらえるのではないでしょうか。ひいてはそれが、リードエンジニアとして、高いスキルを身につけられる環境であるとも言えるでしょう。

リードエンジニアの役割

では、リードエンジニアは、具体的にどのような役割が求められているのかを見ていきましょう。当然、事業フェーズによって求められる役割の比重は変わりますが、こちらではリードエンジニアとして担いうる役割を広くご紹介します。

スケジュール管理

リードエンジニアは、担当するチームの開発進捗状況に責任を持つ役職です。スケジュール通りにプロジェクトが進行しているかを確認するために、チームメンバーの作業の進捗状況を管理します。ベンチャー、スタートアップ企業のプロダクトはローンチ後に、トラブルや改善が一切無いということはまずありません。追加での機能実装を進めているにも関わらず、このような問題に手をとられることも多いです。開発を進める上で起こり得る問題などをある程度予見の上、スケジュールを編成、進捗管理を行うことが重要となるでしょう。

プロダクトの設計サポート

チームメンバーが作業を進めやすくするために、プログラミング言語・フレームワーク・ライブラリの選定などをあらかじめ行うことも、リードエンジニアの役割です。特にベンチャー、スタートアップ企業では経験豊富なエンジニアでチームを構成できるケースは稀です。そのような中、プロダクトの設計に関わらず、エンジニアのサポート、後方支援の体制づくりなどには日々配慮が必要となるでしょう。

チームメンバーの役割分担を決める

チームメンバーのスキルを把握し、リードエンジニアがメンバーそれぞれの役割分担を決定します。プロジェクトが進むと、それぞれが保有しているタスクに偏りが出てくることもあるため、進捗状況を見極めて、チーム内で最適な役割分担に調整することも重要です。ただし、組織によってはCTO(Chief Technology Officer)、あるいはVPoE(Vice President of Engineering)などを担う方がこのような役割分担をはじめ組織マネジメントの方針などを取り仕切るケースも多くあります。

コードレビュー

リードエンジニアは、チームメンバーが書いたコードをレビューし、クオリティーの高いプロダクトになるようにしなければなりません。当然、コードのレビューは、他のメンバーが書いたものを読み解く力が必要なので、それらを見極められる高いスキルが必要になります。

チームのマネジメント

リードエンジニアは、チームを組織的にもまとめなければなりません。事業サイドの方針を踏まえた計画立案・進行管理、また一方でメンバーからの相談を聞いて現場観点での運用改善、課題に対しての適切なアドバイス、メンバー間でトラブルが発生した場合の調整をしたりすることも、リードエンジニアの役割のひとつです。

チームのマネジメントを通じて、メンバーが快適に働ける環境を作ることも、よりよいプロダクトを予定通りに作り上げるために必要なことです。

進捗報告や情報交換

リードエンジニアは、チームの責任者として、進捗報告や他チームとの情報交換なども行います。特にエンジニア主導で開発を進める場合、顧客観点や事業観点が抜け落ちたプロダクトになってしまう、あるいは顧客や競合観点を意識したリリースまでのスケジュール運用ができなくなってしまうようなケースもあります。

ベンチャー、スタートアップ企業にとって事業サイドと連携の上、顧客や競合観点を踏まえた開発を進めていくことは言うまでもなく重要です。経営者が描く事業計画に沿った開発を進めていくこともリードエンジニアの大きな役割の一つといえるでしょう。

リードエンジニアと混同しやすい役割との違い

リードエンジニアは、自らが所属するチームの技術的・組織的リーダーです。これと混同しやすい役割として、ITアーキテクトとCTOとの違いを簡単に説明します。

ITアーキテクトは、システムの企画・立案に携わる存在です。システムの仕様や要件定義を検討・提案し、システム全体の方向性から運用方法・保守要件までを設計するのが役割で、エンジニアチームのメンバーではありません。

CTO(最高技術責任者)は、企業の幹部にあたり、経営にも関与するポジションです。企業が持つすべてのプロダクトについて、技術的な責任を持ちます。

このように、リードエンジニアは、ITアーキテクトやCTOとは異なる役職です。ただ、大規模な組織ではないベンチャー、スタートアップ企業の場合は、CTOがITアーキテクトやリードエンジニアを兼任しているケースもあります。もちろんこの場合は、一般的なリードエンジニアよりも、さらに高いスキルが求められることは言うまでもありません。

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リードエンジニアに必要なスキル

リードエンジニアとして転職するには、開発メンバークラスのエンジニアとしての転職よりとは異なるスキルが必要です。どのようなものがあるのでしょうか。

プログラミングの知識

リードエンジニアは、エンジニアチームのリーダーとして、コードを書く技術が高くなければなりません。しかし、「コードを書くエンジニア」としてだけではなく、設計等にも関わるため、プログラミングに関するより深い知識が求められています。

また、プロダクト特性などに応じて使用する言語をはじめとした開発環境をどのように構築していくのかという知見も、組織を牽引していくリードエンジニアの立場では重要になります。特にこれまで主流の言語だけでなく、新たな開発言語など現在のトレンドを常にキャッチアップしておくこともリードエンジニア、更にその上のポジションを目指す上で必要となってくるでしょう。

コードレビューができること

リードエンジニアは、担当するチームのコード全体に責任を持ちます。また、メンバーからの相談に対して適切なアドバイスをしなければなりません。そのためメンバーが書いたコードをレビューし、最適なプロダクトになるようにクオリティーを高められるだけのスキルが求められます。

マネジメント能力

リードエンジニアは、チームの組織的なリーダーでもあります。ただ「コードを書くスキルが高く、コードレビューもできる」というだけでは、不充分です。チームメンバーの相談やトラブル解決などを通して、よりよい開発環境を築き上げ、スケジュール通りにプロダクトを完成させることが求められます。そのため、マネジメント能力は不可欠なスキルのひとつだと言えます。

このようなスキルが求められるためリードエンジニアへの転職は、経験の浅いエンジニア、あるいは開発に関する造詣の浅いエンジニアではなかなか難しいでしょう。日頃から他のエンジニアが書いたコードを読む、新たな開発手法やトレンドをキャッチアップするなどのスキルを磨いておく努力も必要でしょう。

リードエンジニアからのキャリアパス

転職などでリードエンジニアになった後は、どのようなキャリアパスが考えられるのかについてお話しします。もちろん、ベンチャー、スタートアップ企業などを含む、比較的小さい組織でのリードエンジニアから、大手企業や大型プロダクトのリードエンジニアへと転職する方法もありますが、いずれは、より高いポジションへのキャリアパスを考えたいところです。そのキャリアパスでは、ITアーキテクトを経て、CTOを目指すことになります。

究極的には、CTOを経験した後で、CEOまで視野に入れることも不可能ではありません。実際に株式会社Chatwork(東証マザーズ)ではCTOであった山本正喜氏がCEOに就任し、現在の体制に至っています。また、2022年1月にネクストユニコーン企業として注目される株式会社SmartHRの代表の宮田昇始がCEOを退任し、CTOの芹澤雅人氏がCEOに就任される発表などもありました。

エンジニア・技術者として多くの方が目指すキャリアの一つであるCTOになるためには、リードエンジニアとしてのスキルはもちろんですが、プロダクトに関する広範囲なことを深く理解していなければなりません。だからこそ、まずはITアーキテクトを目指し、システムの企画・立案についての深い知識を身につけておく必要があります(ITアーキテクトのポジションは組織によっては設置しておらず、CTOがこの役割を担うケースも多いです)。

逆に、ITアーキテクトからリードエンジニアを経て、CTOになるケースもありますが、いずれにせよ、リードエンジニアとITアーキテクトの両面のスキルを手に入れることで、技術者としていつかは目指したいCTOへの道が開かれると言えるでしょう。

売り手市場だからこそ難しいエンジニアの転職活動

転職市場におけますエンジニアは言うまでもなく、他職種と極めても圧倒的な売り手市場が続いています。しかしながら、エンジニアの転職市場は今後も売り手市場は続くかと思いますものの、ノーコードの開発ツールが台頭する中、一部のエンジニアは転職活動に苦労する局面も出てくる可能性があります。

これまでエンジニア不足が深刻化する中、他の職種からキャリアチェンジし、プログラミングスクールを卒業したばかりの方でも比較的転職ができていました。しかし、ノーコードでの開発ツールが今後増えてくることで、経験の浅いエンジニアの方を雇用するよりもこのような開発ツール導入に投資を進めていく企業が増えていくことが想定されます。これはスキルの問題もそうですが、人材の流動化が他職種よりも高いエンジニアという職種の特性もある中、特定個人のエンジニアに依存し過ぎる開発環境をリスクと捉えることも相まってこのような流れが進むと想定されます。

そのような中、エンジニアとしてキャリアを重ねていく際には、自身が思うスキルが磨ける環境かどうかという観点は転職をする上で重要な項目の一つとして向き合われると良いでしょう。例えばCTOをはじめとした優秀なエンジニアに囲まれる刺激の多い環境に身を置くことも一つでしょうし、ある程度エンジニアとして経験を重ねてこられた方であれば、自身が主体となり開発環境の構築などから関与できる職場を選択することも一つでしょう。また、CEOがどのような事業展望を描いており、その中でエンジニアとしてどれだけの挑戦機会があるかということも自身のスキルを磨ける環境かどうか判断する一つの観点といえるかと思います。

しかしながら、どの会社がそのような環境にあるのかは、言うまでもなく外からだと判別が困難です。カジュアル面談の場などを活用して開発環境などについてフラットにお話を聞く、あるいはエンジニアの転職やキャリアに詳しい転職エージェントを活用し、どのような組織体制で開発を行っているかなどの情報を事前に確認の上、企業選びを進めていくと良いかと思います。

エンジニアが転職活動で活用すべき手法

エンジニアの方の多くが多忙の中、なかなか転職活動に十分な時間を割けないという方も多いでしょう。責任あるポジションを任せられているエンジニアの方は現職でのパフォーマンスを落とすことなく、効率的に情報収集を行う必要があります。こちらではエンジニアの転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。

スカウトサイトを活用した転職活動

一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト」「エンミドルの転職」などが挙げられます。特にこのダイレクトリクルーティングと呼ばれる市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズ(現東証グロース市場)にも上場を果たしています。

これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。自分の経歴・スキルに合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙なエンジニアの方にとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

転職エージェントを活用した転職活動

前述の様な転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。エンジニアとしての自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

転職エージェントは国内に数万社あり、エンジニアをはじめとする職種、IT業界などの業界に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。エンジニアの転職の場合、技術に関する知識などに理解のある転職エージェントをパートナーに転職活動の上では、とても心強いでしょう。

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最後に

リードエンジニアは、エンジニアチームを技術的にも組織的にもまとめる役割を果たします。ベンチャー、スタートアップ企業では、リードエンジニアに求められる責任範囲も大きく、企業の成長を牽引する重要なポジションでもあります。

そんなリードエンジニアへの転職は、高いスキルが求められるため、売り手市場でも決して簡単ではありません。しかし、CTOへのキャリアパスを考えると、必ず通るマイルストーンでもあります。エンジニアとしてのステップアップのために転職を考えているのであれば、自身のキャリアの棚卸しをして、リードエンジニアへの転職を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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