転職活動で押さえておくべき「勤務形態」について解説!

転職活動などで「勤務形態」という言葉に触れたことがある方は多いのではないでしょうか。「勤務形態」という言葉は似た言葉で「雇用形態」と混同されることも多く、違いがよく分からないと感じる方も少なくないでしょう。そこで本記事では勤務形態とは何なのか、代表的な勤務形態、雇用形態との違いなどについて解説していきます。

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勤務形態とは?

勤務形態は「働き方」を指し、具体的には働く時間や働く場所、働く頻度などを示す言葉になります。例えば柔軟な働き方がしやすい「フレックス制度」、近年普及が進んでいる「テレワーク」などが勤務形態の一種に該当します。ワークライフバランスを重視した働き方など労働環境の改善を目指し、転職活動にのぞむ方にとっては業務内容と同様に着目すべきポイントといえるのではないでしょうか。

勤務形態にはそれぞれメリット、デメリットがあり、それぞれの勤務形態を正しく理解できずに何となく転職してしまった場合、転職後にうまく馴染めないリスクもあります。労働環境に不満をもって転職を検討されている方は、勤務形態の種類やメリット、デメリットについて正しく理解したうえで、今後のどのような勤務形態で働いていきたいか検討すると良いでしょう。

代表的な勤務形態の種類とは?

勤務形態にはたくさんの種類がありますが、ここからは代表的な勤務形態について解説していきます。勤務形態の種類について正しく把握し、どのような働き方が自分の理想に近いのかを見ていきましょう。

固定労働時間制

固定労働時間制とは、1日8時間もしくは1週間に40時間の労働であり、なおかつ勤務時間が定型化している働き方を指します。一般的には「9時から18時」の時間帯が多いですが、職場によっては「11時から20時」といったような勤務時間が遅めのケースもあります。

固定労働時間制のメリットは、生活リズムが作りやすく、同じ固定時間制で働く人同士(他部署や家族・友人)のスケジュールが合わせやすいことです。デメリットとしては、通勤時の混雑、休暇時の混雑やレジャー費用の高騰、平日の限られた時間にしか空いていない行政機関や医療機関に行きにくいこと等があげられます。

固定労働時間制は、労働者を雇用する企業側も従業員の勤怠を把握しやすいので労務管理にかかるコストが少なくて済む勤務形態であり、日本では固定労働時間制の勤務形態を導入している企業がまだまだ多いです。

変形労働時間制

変形労働時間制は、1日8時間、週40時間以上の変則的なシフトで勤務できる勤務形態です。 繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、柔軟な労働時間設定が可能です。変形労働制は営業時間が固定時間制より長い場合や、繁閑の差の多い飲食業の店舗やサービス業に適した勤務形態です。

この雇用形態で働くメリットとしては混雑の少ない平日に休暇をとることができる、長時間まとめて働く代わりにまとまった休暇がとりやすい、業務中の待機時間が減る等が挙げられます。デメリットとしては会社の繁忙期に休暇がとりにくい、生活リズムが作りにくい、残業代を稼ぎにくい等が挙げられます。また、労務管理が複雑なので、管理職・労働者双方に就業規則の理解が求められます。尚、変形労働制には以下3つの種類が挙げられます。

変形労働時間制の種類
  • 1年単位の変形労働時間制
  • 1カ月単位の変形労働時間制
  • 1週間単位の変形労働時間制

全ての店舗・企業で変形労働時間制を導入できるわけではなく、「労使協定」の締結によって可能となる勤務形態です。また、いずれの場合も定められた期間の法定労働時間の総枠を超えないように、シフトを作成し労務管理する必要があります。

フレックスタイム制

フレックスタイム制は、1日の中で一定の時間を勤務すれば、始業時間や終業時間に制限がない勤務形態で、上記の変形労働制の一種です。例えば1日8時間勤務が定められていたとしたら、仮に13時始業であっても、21時まで仕事できることが確約されていれば問題ありません。

ただし、企業によっては社内のコミュニケーションを円滑にするためにコアタイムを設けていることもあります。その場合、コアタイムに設定されている時間帯は出勤が必須となりますので注意が必要です(コアタイム無しのフレックスタイム制度を「フルフレックス」といいます)。

フレックスタイム制は、就業時間を都度調整できるため、プライベートの予定も調整しやすく、自分が集中しやすい時間帯に仕事をすることもできます。フレックスタイム制の導入が多い仕事としては、クリエイティブ系やシステムエンジニア、Web制作関連などの職種が挙げられます。デメリットとしてはオンオフの区切りがつけにくい、生活リズムが崩れやすい、他部署・他社とのコミュニケーションがとりにくい等が挙げられます。

みなし労働時間制

みなし労働時間制は「裁量労働制」とも呼ばれる勤務形態であり、「労使協定もしくは労使委員会の決議で定めた時間を労働した時間とみなす」とした勤務形態であることが特徴です。みなし労働時間制で働くメリットとしては、仕事の進め方や時間配分について主体性を持って働くことができ、極端な例ですが事前に規定された「みなし労働時間」を必ずしも働かなくても問題ない点にあります。例えばみなし労働時間が1日8時間であっても、その分の仕事が終わっている場合は1日6時間しか働いていなくても、8時間分の給与が支給されます(このようなみなし労働時間制を導入している企業は、直行・直帰の働き方が多い製薬会社のMRなどによくみられます)。

みなし労働時間制で働くデメリットとしては事前に決められた労働時間が1日8時間であった場合、それ以上働いた場合の残業代が支給されないことにあります。ただし休日手当や深夜手当は支払われる必要がありますので、制度について理解を深め、サービス残業することが無いように勤務実績を申請するようにしましょう。尚、みなし労働時間制は、大きく以下の3つの種類に分けられます。

みなし労働時間制の種類
  • 事業場外みなし労働時間制:営業職などに事業所外で働く、労働時間管理がしにくい場合に適用
  • 専門業務型裁量労働制:記者やデザイン、研究職など特定の専門業務に従事する従業員に適用
  • 企画業務型裁量労働制:企画職に従事する従業員に適用

テレワーク(リモートワーク)

テレワーク(リモートワーク)は所属するオフィスに出勤しないで自宅等を就業場所とする勤務形態です。上記では主に時間軸での勤務形態の各種を挙げてきましたが、テレワークは場所軸の勤務形態となります。新型コロナウイルスの影響で導入する企業が増え、働き方のひとつとして今もっとも注目を集めている勤務形態といえるでしょう。尚、厚生労働省の「テレワークの労務管理等に関する実態調査(厚生労働省委託事業)」では、2020年において32.1%の人がテレワーク勤務(テレワークの一部導入を含む)をしていたと調査記録が発表されています。

テレワークで勤務するメリットとして、感染症予防、通勤時間・移動時間の削減によるライフワークバランス向上の他、職場の人間関係によるストレスの軽減等が挙げられ、新型コロナウィルスが収束したとされる現在でもテレワークを継続希望する人が多い状況です。

一方でテレワークのデメリットとしては、コミュニケーションにコストがかかるため、業務習得や人間関係構築が難しいこと、電気代等の諸経費がかかること等が挙げられます。生産性維持やマネジメントの困難さ等、数々の課題が顕在化したこともあり、今後、いわゆるフルリモートと呼ばれる一切出社の無い形態のテレワークの運用を進める会社はそこまで増加しないのではないかと見込まれます。

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勤務形態と雇用形態の違い

続いてよく混合されがちな「勤務形態」と「雇用形態」の違いについて解説していきます。勤務形態が働き方を指す言葉であるのに対し、雇用形態は会社と労働者間の雇用関係を指す言葉であり、言葉は類似しているものの根本的に異なる内容の言葉となるので注意しましょう。尚、雇用形態の代表的な種類については以下に記載しますので勤務形態と併せて参考にしてください。

正社員

契約期間を定めずに雇われている無期雇用の労働者を指します。昇給昇格の機会が多く、賞与・退職金・福利厚生などが他の雇用形態と比較して充実している他、解雇されにくい等、長く安定して働けるのがメリットです。その反面、異動・転勤・単身赴任・残業などに際し、本人の希望が通りにくく、他の雇用形態に比べて責任と負担が重い傾向にあります。

契約社員

一定期間の労働契約を締結している有期雇用の労働者を指します。業務内容や労働条件は契約で決められており、契約期間を更新することで業務を長期就業継続するケースもあります。転勤を伴う異動がない等、正社員に比べて責任や負担は軽い傾向がありますが、報酬や福利厚生などは正社員よりも制限のある設定をされていることが多いです。

パートタイマー

正社員に比べて短時間勤務をしている有期契約社員を指します。法的には契約社員とパートタイマーに区別はありませんが、一般的に月給制・フルタイム勤務者は契約社員、時給制・短時間勤務者はパートタイマーと呼ばれています。

パートタイマーは勤務時間の融通がきくため、学業・育児・介護などとの両立がしやすい一方で、専門性が低い業務が大半で、キャリアアップが困難であるケースが多く、報酬についても正社員や契約社員に比べて低く設定されていることが多いです。

勤務形態を変えるときのメリット

ライフスタイルの変化などによって自分に合った勤務形態の職場に転職できた場合、多くのメリットがあります。こちらでは従来の固定労働時間制から柔軟な勤務形態の職場環境に転じた場合のメリットについて解説していきます。

ワークライフバランスの実現

柔軟な勤務形態の職場環境に転職するメリットとして、まず挙げられるのが「多様な働き方の実現」です。固定労働時間制と比較した場合、フレックスタイム制やテレワークのように、自分の都合の良い時間帯・場所で勤務できるような勤務形態であれば、家庭やプライベートとの両立をはじめとしたワークライフバランスの実現もしやすいでしょう。

生産性の向上

柔軟な勤務形態の職場環境に転職することで、生産性の向上を狙える場合があります。変形労働時間制やみなし労働時間制では仕事の発生しない時間には勤務しない等、無駄を省きつつ、自分の休暇が増えるスタイルで働くことができるため、これまでよりも生産性を高めることが可能です。

ただし、未経験で新しい職種・業種などにチャレンジする場合などでテレワーク中心の勤務形態の職場に転職した場合、困った時に相談できる人がいないなどの問題により、逆に苦境に陥る可能性もあります。フレックスタイム制、テレワークなどが必ずしも良い訳ではなく、あくまで自分に合った勤務形態は何かを考えた上で転職活動にのぞむようにしましょう。

勤務形態を変える場合の注意点

ここまで固定労働時間制から勤務形態を変更するメリットについて解説をしてきましたが、必ずしも良いことばかりという訳ではありません。こちらでは固定労働時間制と異なる勤務形態を選ぶ場合にあらかじめ知っておくべき注意点について解説していきますので、以下注意点をふまえて、転職やキャリアチェンジに役立ててください。

自己管理について

現在は時間や就業場所について柔軟な勤務形態が増えていて、自由度の高い働き方ができるようになっています。しかし、今より自由度が高い勤務形態に変える際には、多くの自己管理が求められるようになります。例えば固定労働時間制で上長と同じオフィス働いていた方がテレワークのフレックスタイム制に変える場合、労働時間や就労環境、自分の健康を自己管理する必要性が発生します。

また、自分のペースで業務を進められるメリットの裏側として慣れない業務などの場合には逆に残業が増えてしまうこともあり得る他、同僚と勤務時間が異なる働き方になる場合には社内コミュニケーションをとる時間を意識的に設定するなどのコミュニケーションが必要となるでしょう。柔軟な勤務形態になるほど自分の都合の良い労働が実現するようにはなりますが、引き換えに自己責任となる部分が増えることは理解しておかなければなりません。

ギャップについて

勤務形態を変えるにあたり、注意したいのが「理想とのギャップ」です。今とは異なる働き方を選ぶことで、もっとプライベートを充実させることができると思いきや、想像以上に負担が増えてしまい、逆に心地よく仕事にのぞめなくなってしまうという事態は少なくありません。このような事態に陥ってしまうと、同僚や取引先に影響が生じてしいかねないため、事前に情報収集をしておくことが重要です。

例えばテレワーク導入や継続を期待する人が多い一方で、「新入社員や中途入社者がなかなか会社になじめない」「働きがいが感じられなくて早期離職する」という問題も発生しています。新しい勤務形態に変える場合にはメリットばかりに目を奪われず、実際にどのような変化、デメリットが想定されるのかを認識しておくようにしましょう。

キャリアプランについて

勤務形態を変えるために転職することを検討している場合、自身のキャリアの選択肢を狭めていないか注意する必要があります。例えば小さいお子様がいる方にとっては、保育園等の送迎に時間が合わせやすい「フレックスタイム制」や「テレワーク」は人気ですが、固定労働時間制を採用している企業は全体の27.4%のみで競争率が高くなりがちです。

またテレワーク可能な職種は限定されている上に、企業側が今後テレワーク導入・継続するかどうかに関しては流動的な状況のため、勤務形態だけを軸に転職を決めるのはリスクがあります。仕事内容や報酬、自分の描くキャリアプランが実現できそうか等、勤務形態以外の要素を複合的に見て判断するようにしましょう。

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最後に

勤務形態は時代とともに変化し、多様性のある社会に向けて増えています。そのとき自分が納得できると感じた働き方ができる仕事を選ぶことが重要です。だからこそ、まずはどのような勤務形態が存在するのかを理解し、自分が実現できる働き方は何なのかを考えることが大切でしょう。今の働き方に疑問を感じている方はぜひ今回ご紹介した内容を参考にして、納得できる勤務形態について模索してみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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