スタートアップの「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」の違いを解説!

スタートアップを調べる上で、「シード」や「レイター」などの言葉に触れる機会はあるものの、それらがどのような状態を指すのか正しく理解できていない方は少なくないのではないでしょうか。こちらの記事ではこれらの言葉の意味、併せてどのような事業運営の状態にあるのかなどについて解説していきますので、調べたいスタートアップの理解を深めることにお役立てください。

目次

スタートアップは4つのステージに分類される

スタートアップの成長ステージは創業より若い順で「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」と表すことが多いです。しかしながら、厳密にこれらは定義されている訳ではなく、場合によっては「シード」「アーリー」「レイター」と3分類にて用いられるケースもあれば、「ミドル」を「グロース」という表現をされるケースもあります。

このようにスタートアップの成長ステージは厳密な定義がある訳ではない前提を押さえて情報に触れていくことが大切でしょう。こちらの記事では比較的多く用いられる「シード」「アーリー」「ミドル」「レイター」の4ステージにて分類の上、解説をしていきます。 

シード

スタートアップのシード期とは、企業が事業を立ち上げる初期の段階を指します。シード期の主な特徴は、以下のようなものです。

シード期はスタートアップの成長の最初のステージであり、成功のための基盤を築く重要な時期です。資金調達と製品開発、市場の検証、チームの構築、投資家との関係構築など、その後に事業を大きくしていくための基盤となる部分に焦点を当てることが一般的です。

資金調達

取り組もうとする事業の種類にもよりますが、事業の初期段階に必要な資金を調達することが重要となる場合があります。この段階ではまだ必要な資金の額はさほど大きくない場合が多く、創業者や友人、家族、エンジェル投資家などからの個人的な投資や、シード投資家からの資金調達が一般的です。調達した資金は、事業立ち上げのための初期投資や市場調査、必要な人材を集めるための採用費や給与などに使われることとなります。

また、シード期ではシード期の資金調達だけではなく、将来の成長を見据えた投資家との関係を構築することも重要です。投資家との間に良好な関係を築くことで、追加の資金調達やアドバイス、ネットワークの提供などが期待できます。

MVPの開発

MVPとはMinimum Viable Product の略で、提供しようとするプロダクトの必要最小限の機能のみを持つものを指します。シード期では多くの場合、最小限の機能を持つ製品やサービス(MVP)の開発がまず行われます。シード期の企業はMVPを用いて、市場の需要や顧客の反応を確認し、その市場が本当に存在するのか、その市場により大きな投資をすることが誤りでないかの確認を行うこととなります。

マーケットの検証

シード期には、ターゲット市場や顧客のニーズをより深く理解するための市場調査や顧客インタビューが行われます。これにより、製品/サービスのマーケット適合性や競争状況を把握し、戦略やビジネスモデルを調整することが可能になります。たとえばweb広告を販売方法の中心に置くような事業の場合、まず少額の広告を打って反応を確認したり広告効果の改善に取り組むことで、その後に行うより大きな額の広告活動の効果を高めようとすることになります。

チームの構築

シード期では、創業者や初期メンバーを含むチームの構築が重要です。この時期に集まったメンバーがその後の事業拡大の中で中核的な役割を担うことが多くなりますので、事業内容や創業者のビジョン、価値観などに共感したメンバーを集める必要があるでしょう。

アーリー

スタートアップのアーリー期は、シード期の後に続く成長の早い段階を指します。以下にアーリー期の特徴と主な活動を説明します。アーリー期はスタートアップが急速に成長する時期であり、市場での立ち位置を確立するための重要な段階です。製品/サービスの成熟化、ユーザー獲得と成長戦略、チームの拡大と強化、追加の資金調達、メトリクスとデータ分析などに焦点を当てることが一般的です。

プロダクトの改善

アーリー期では、シード期に開発されたMVPを基にプロダクト改善を進めます。具体的にはユーザーのフィードバックや市場の需要に基づいて、機能や機能の追加・改善、UIUXの最適化などが行われる他、また、プロダクトが有形の場合には量産化や製造原価の合理化などにも並行して取り組んでいくこととなります。

ユーザー獲得と成長戦略

アーリー期では、ユーザーを獲得し成長するための戦略が重要です。これには、マーケティング、広告、パートナーシップ、口コミなどの手法を活用して、新たなユーザーを獲得し、顧客ベースを拡大する取り組みが不可欠です。また、一度獲得したユーザーがその後はチャーン(解約)せずユーザーで居続けてくれるような取り組みも必要となります。

チームの拡大と強化

アーリー期ではシード期のような経営と実務の混同状態から組織化に移行する必要がでてきます。具体的にはCxOクラスを中心とした経営チームの拡充を中心に、ミドルマネージャー、実務を遂行するメンバーなどの採用を進めていくことが多いです。さらには採用を進め、組織化を進めていく上で組織図や意思決定フローがなど成長に対応できるような体制を整える必要があります。

追加の資金調達

アーリー期では、さらなる成長のために追加の資金調達が行われることがあります。シード期よりも大きな額の資金調達が必要となるため、その資金はベンチャーキャピタルや投資昨機能を有する事業会社などより大きなロットの資金を提供できる投資家から調達することになります(このシリーズでの調達額は5,000万円~1億5,000万円が多いです)。調達した資金は、プロダクト開発、マーケティング、チームの拡大などに投資することが多いです。

メトリクスとデータ分析

アーリー期ではビジネスの成長に影響する要素を測るためのメトリクス(定量化、可視化)とデータ分析が重要です。指標の一例としてはリード獲得件数、リードからの商談化率、チャーンレート(解約率)などが挙げられますが、このような要素の中より何が自社の成長に貢献度が高いかを見極め、定量的なデータに基づいた意思決定を行うことで、戦略の機動的な修正や優先順位の決定が可能になります。

ミドル期


スタートアップのミドル期は、成長段階の中でアーリー期とレイター期の間の中間的な段階を指す場合が一般的です。以下に、一般的な成長段階におけるミドル期の特徴と活動を説明します。

ミドル期は、アーリー期のスタートアップの初期成長を乗り越え、さらなるスケールと持続可能な成長に向けての準備と推進を行う重要な段階であると言えます。

ビジネスモデルの最適化

ミドル期ではスタートアップが成長を加速させるための各種の取り組みが行われます。顧客獲得や売上の増加、市場シェアの拡大などが焦点となります。そのため、スタートアップは自社のビジネスモデルを洗練し、収益性を向上させるための改善を行います。具体的には収益モデルの見直しや価格戦略の最適化、コストの合理化、新たな収益源の開拓などが取り組まれることが一般的です。

拡大戦略と市場領域の拡大

ミドル期ではプロダクトがある程度形になっている中、一気に売上を上げていきたいフェーズです。そのため、既存事業の新拠点設立などエリア拡大を進める、あるいはSaaSプロダクト等のビジネスモデルではアップセル、クロスセルの実現に向けたオプション施策などにより売上を上げていくことが重要な成長戦略となります。

人材採用と組織最適化の推進

ミドル期では一気に事業規模が拡大する中、これまで以上に採用を推し進めていかなければならない他、それに伴う組織最適化も進めていかなくてはなりません。適切な役割や責任の配置などの要素も勿論、大切ではあるのですが、この成長ステージにまで進むと経営者とメンバーとの距離もある程度発生するため、経営と現場を繋ぐミドルマネージャーを中心にしたビジョン、ミッション、経営方針の落とし込みなどがこれまで以上に重要になってくるでしょう。

資金調達

ミドル期でもまた、追加の資金調達を行いますが、これまでシード期、アーリー期と資金調達の勝手が異なりますので知っておくと良いでしょう。具体的にはシード期、アーリー期はプロダクトがマーケットに受け入れらるれるか未知数である中、起業家が描いたビジネスモデルがマーケットに受け入れられるかどうかの検証も含め、ある程度の失敗も許容した前提での投資となることが多いです。

しかしながら、ミドル期にまで成長ステージが進んだ段階においては、これまでのシード期、アーリー期での検証結果を踏まえた上、どのような指標を伸ばすことが成長に繋がり、そのためにどれだけの資金が必要なのか具体的な事業計画をもって資金調達を行う形となります。十分な結果が出ていれば良いのですが、思い通りにいかないことの方が圧倒的に多い中、この成長ステージの資金調達に苦戦するスタートアップは多いです。

レイター

スタートアップのレイター期は、より成熟した段階を指します。以下にレイター期の特徴と主な活動を説明します。

レイター期は、スタートアップが成熟し、持続的な成長を追求する段階です。マーケットシェアの拡大、新たな市場への進出、事業のスケーリング、追加の資金調達、顧客エンゲージメントの向上が重要な活動となります。この段階では、スタートアップは市場での地位を確立し、持続可能なビジネスとして安定的な成長を実現することを目指すこととなります。

マーケットシェアの拡大

レイター期ではある程度プロダクトが形になっている段階でもあり、このプロダクトの導入を進め、より大きなマーケットシェアを獲得することが重要です。そのためには新拠点設立などのエリア拡大の他、プロダクト拡販を担って貰える代理店をはじめとした事業連携パートナーを増やしていくなどを推進していくことが多いです。

予実管理

IPOを控える段階でもあり、予算と実績を揃える予実管理の体制が構築できているか重要になるのもレイター期の特徴といえるでしょう。サブスクリプション型のマネタイズモデルのプロダクトであれば、比較的、予実管理は進めやすいですが、毎月の売上が読めないフローでのマネタイズモデルの場合にはそれらをいかに構造化し、予実を揃える体制を作れるかどうかがポイントとなります。

蓋然性のある事業構造

先に挙げた通り、レイター期では予実管理なども求められる中、いかにセールス体制を再現性の高いものに引き上げていくか、またそのような再現性を高めた上で、自動化の推進をはじめ効率化を追求していくことが重要となります。まだまだプロダクトをローンチして間もない、他の成長ステージと比較した際に、このような蓋然性を強く問われるのもレイター期の特徴といえるでしょう。

追加の資金調達

レイター期では成長を加速させるために追加の資金調達が行われることがあります。レイター期のラウンドはシリーズB、C、Dなどと呼ばれる資金調達ラウンドを実施することとなり、資金調達の金額は数億円~数十億円に上ります(ユニコーン企業であれば100億円を超える資金調達の可能性もあります)。

ユーザーのエンゲージメントと維持

レイター期では、顧客のエンゲージメントを高め、顧客の継続利用やロイヤリティを維持することが重要です。積極的な顧客サポート、製品やサービスの改善、追加機能やバリューアップの提供などが行われます。

最後に

ご紹介させて頂いた通り、スタートアップの成長ステージは上記4分類が一般的ですが、分類の仕方や呼び方は異なるケースもありますので、その前提の下、スタートアップの情報に触れることをお勧めします。それぞれの成長ステージの特徴を踏まえ、転職や副業、業務提携などを検討されてみるとよいでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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