円満退職に向けて、退職交渉で準備すべきこと

転職活動で企業選びや面接などに時間をかけ、準備される方は多いですが、転職先の意向に沿いつつも最終的に円満退職を実現できるように退職交渉をうまく運べるかどうかは非常に重要です。特に会社の中でも責任ある重要なポジションに就いているビジネスパーソンの方には、退職交渉に入る際に「本当に転職してしまっていいのだろうか」「転職で今の会社が混乱してしまわないだろうか」と感じてしまう方が多いかと思います。

しかし、実際の転職市場では、思い立って転職して新たな環境に身を移すビジネスパーソンがたくさんいるのも事実です。また、昨今では退職交渉が難航することなどを見据えて退職代行会社の活用事例なども出てくるなど、退職交渉の進め方にも選択肢が増えてきました。

今回は転職活動の大詰めである退職交渉についておさえておくべきポイントについて以下ご紹介します。退職交渉を進める際に、退職の段取りを理解しておき、スムーズな転職ができるようにするようにしましょう。

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退職交渉を円満に終えられるように

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満足のいく転職を実現するためには退職交渉を円満に終わらせることが欠かせません。まずは退職交渉を円満に進める第一歩として、直属の上司に退職の意思を表明しましょう。

そこで退職の意志が堅いこと、そしていつまでに退職したいと考えているのか伝え、退職手続きを進めたいとお願いします。立場や関わっているプロジェクトなど現職の仕事内容によっては簡単には辞めづらい環境の場合もあるかとは思いますが、1~2週間程度直属の上司とやりとりをすることが多いです。多くの場合には退職の意向を伝えた際には、理由を問われ、そこから引き止めなどの打診を受けつつ、数回に渡って交渉を進めていく形になります。

その際、事前に周囲に相談することは我慢してください。こういった情報はすぐに広まりやすく、退職交渉より前に上司の耳に入ってしまうことで心情を損ね、思わぬ負荷がかかってしまう可能性があります。

また、上司に伝えるタイミングや伝え方も非常に重要です。事前に上司の予定を確認し、ゆっくりと話が出来る日程を確保しましょう。加えて、交渉時には入社する企業名は必ず伏せてください。現職と転職先に思わぬところで取引関係があったり、先々に再び転職をした場合のリファレンスチェックのリスク等、転職先を公表することは多くのリスクを伴います。真摯な対応は必要ですが、後ろめたさから必要以上の情報を伝えてしまうことは避けましょう。

会社を退職する前に考えるべきこと

将来的に経営幹部としての活躍を期待されて難易度の高いミッションを任されているような評価の高いビジネスパーソン方は、会社から今後の活躍を期待されているはずであり、今の職場で続けていくことも幸せなことかもしれません。しかしながら、今の会社でどうしても自分の目指すキャリアプランの実現が困難であり、退職して、他の会社に転職したいと考える人も少なくないでしょう。

しかしながら、評価の高いビジネスパーソンが転職するときには、組織への影響が大きいこともあり、退職の意向を伝える前に考えるべきことがありますのでご紹介します。例えばマネジメントポジションに就いている方の場合には、まず認識しておくべきは、転職市場においてマネジメントのポストはそう多くはないということです。マネジメントポジションは一般的に、外部よりマネジメントポジションの方を採用する前に、自社で組織の成長に貢献してきた、社内での信頼関係も構築できている人材を昇格させたいと考える経営者が多いのが一般的です。そのような社内での登用が難しい場合などに初めて外部より転職者を迎え入れるという形になります。

転職する形でマネジメントポジションに入社する場合、まだ社内での実績もなく、人間関係なども出来ていない中で部下のマネジメントを行い、成果に繋げなければなりません。業界を変える転職などの場合には、入社して部下より色んなことを吸収しながらキャッチアップをするシーンもあるでしょう。このように転職は難易度の高い転職となるケースが多く、実際の転職市場で「管理職候補」「マネージャー候補」という名称の求人が多いのはそのような事情も影響しているといえるでしょう。

だからこそ、まずは「今の職場が不満だから転職したい」という逃げの退職になっていないかを考えてください。転職するとしても、転職者ならではの厳しい壁がある中、そのような環境でも高い成果が出せると感じてもらえるようなスキルを備えているかが重要です。

ビジネスパーソンとして十分な自信が持てない場合には、すぐに転職するのではなく、圧倒的な実績を上げる、あるいは管理職に挑戦してマネジメント力を磨くなど転職市場での価値を高めることから始める方が良いこともあります。転職市場に評価される成果を今の職場で出してから、転職活動に臨む方が結果的にキャリアアップする最短の道筋になるかもしれません。

しかしながら評価の高いビジネスパーソンの転職においては転職先のこともありますが、現職をスムーズに退職できるかどうかという大きな壁に苦労をする方も多いです。次の項では転職活動の大詰めである退職に向けて気をつけることについて解説していきます。

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退職交渉は転職先が決まってから

「退職交渉をいつ始めるのか」これは転職者にとって大きな悩みの一つです。しかし、先に退職してしまうと先行きへの不安が高まり、いざ内定が出た際に焦ってしまい、冷静な意志決定ができないという理由から、転職先決定後に退職交渉を開始する方が多いです。

また今の勤務先で仕事をしながら選考を進める場合、当然「現職に残留する」という選択肢を持ちながらのぞむことになります。つまりは、「現職に残留する」というカードを持った上での選考になりますので、転職先企業との年収交渉などは先に退職してしまう場合よりも、比較的優位にお話がしやすくなるというメリットもあります。

一方で仕事が多忙すぎて退職しなければ転職活動の時間すら確保できないという場合は、止む無くではありますが、先に退職してしまうのも一つです。先に退職をする場合は「3ヶ月でやりきる」等、必ずスケジュールを決めてから走り出しましょう。当然ながら辞めてしまうことは金銭的なリスクも伴うため、ご家庭事情なども踏まえ、自分はどちらの方法を取るべきなのかしっかりと考えて判断してください。

優秀な人ほど引き止めにあう

いざ退職交渉が始まると優秀な人ほど引き止めにあい、難航するものです。転職引き止めの文句として多いのが「給与、役職を上げる」「後任が見つかるまで待ってほしい」「ここまで一緒にやってきたのだから最後まで一緒に頑張ろう」等、条件アップや心情に訴えるものなど様々ですし、お世話になった上司からこのような言葉を貰うと当然辞めづらいと感じる方が大半かと思います。

しかしながら、一度辞めると言った会社に残留を決めたとしても、その後責任の大きな仕事が割り当てられなくなるなど仕事の挑戦機会に制約が生まれるといったことが多いです。これは単純に嫌がらせをしたいということではなく、企業側としても「一度退職意向を示した社員は、またどこかで退職したいと言い出すかもしれない」という心理が働くということも影響します。このような場合以外にも、退職交渉後の残留は多くの場合に早々の後悔につながっているようです。

退職交渉時においては、お世話になった感謝は伝えつつも、退職する意思は固く、揺るぎないことを示すことが大切です。上司の反応によって、退職希望者の考えや態度が揺らいでしまうことが強い引き止めのきっかけになることも少なくありません。退職交渉は上司との退職相談ではなく、ゆるぎのない意志として伝えることが重要です。転職先に心配をさせないためにも、最後までやり抜く強い気持ちを持ちましょう。

その他、退職理由を聞かれた場合も、マイナスな理由は伝えないようにしましょう。不満を伝えると不満解消のための引き止め策が多数出てきて退職交渉が難航します。何を言われても「気持ちは変わらない。どうしても転職先の仕事がしたい」など同じ回答を繰り返すことで、交渉の余地がないことを伝えましょう。

退職交渉から退職までの目安

多くの会社の就業規則には「退職意思表明から1ヶ月程度」と記載されていることが多いですが、中には3ヶ月、半年と記載している企業もあります。退職願提出から実際に退社するまでの期間を、民法上では「雇用期間に定めの無い場合は、退職申し入れから2週間して退職」とされています。しかしながら、社会常識上も心情的にもお世話になった企業への感謝の意味も込めて、転職先への折り合いがつく限り、就業規則に従い、仕事の引継ぎをしながら円満退職を目指される方が多いです。

一方で、中途採用は新卒採用とは異なり固定の入社日がありません。また、求人理由も欠員補充や売上向上による増員等、急ぎの場合がほとんどです。そのため、採用を決定した企業は、一日でも早く転職者に入社して欲しいと思っていることが多いです。現職での役職、仕事内容などにもよるかとは思いますが、3ヶ月以上先の入社などには抵抗感を持たれる企業も少なくありません。

実際の退職交渉から転職先企業への入社においては、退職意思表明から1〜2ヵ月後程度先には次の会社に入社していることが多いです。転職先企業が提示した入社日は基本的に大きくずらせるものではないことを予め理解しておきましょう。企業によってはどうしても入社日の折り合いがつかない場合に、入社前に現職の副業として仕事を一部任せるというような事例も、副業解禁となった昨今で少しずつ増えてきました。勿論、現職の就業規則との兼ね合いなどもありますが、このような選択肢も手段の一つとして頭に置きながら転職先企業と相談していくと良いでしょう。

さらに提示された入社日にできる限り入社できるよう、退職についての承認権限を誰が持っているのか必ず確認してください。退職交渉当日に直属の上司に承認され、交渉は完了と考えていたら、承認権限は別の方にあり、長らく保留のままで退職希望日に退職できなかったという事例もあります。

また、交渉相手の役職によっては多忙でスケジュールが抑えられない場合等も考えられます。退職までのスムーズな流れを作るためには「退職が承認されるまでに何人と話す必要があるのか」「スケジュールの確保を含め、登場人物全員と話すためにはどの程度の期間必要なのか」事前に確認しておくことも大切です。

それでも退職を受理されない場合

ではどうしても退職届けを受け取ってもらえず、交渉が難航してしまった場合はどうすればよいのでしょうか。円満退職を目指し、いくらこちらが誠実にのぞんでも、企業側のスタンスによっては決裂するというケースもあり得ます。転職活動においてはこのような最悪の場合を想定した準備をしておくことも大切です。 

弁護士に相談する

弁護士の先生に依頼の上、法律で決まっている退職日の2週間前までに退職届を就業先に受け取ってもらえるように内容証明郵便を手配します。内容証明郵便を送付することで相手は退職届を受け取らざるを得ないだけでなく、退職意志を伝えていたという証拠を残すことができます。

または弁護士に退職に必要な事務的な手続きを依頼します。退職代行業者と異なり「弁護士法」による制限(法律を絡めた交渉等に関しては弁護士資格を有する人しか行うことができない)も無い為、退職交渉のもつれでトラブルなどが発生しそうな場合などは弁護士の先生を頼ることでそのようなリスクも含めた解決を期待できるかと思います。

退職代行会社を利用する

退職の意向を、退職代行業者が会社に伝え、退職に必要な事務的な手続きを行ってくれるというサービスです。 退職代行業者に依頼すれば、会社に直接退職を申し入れて話し合う煩わしさから解放され、辞めたいときにスムーズに辞められるということで注目されています。しかし、費用がかかるだけでなく、昨今はこのような事業者が増える中、いい加減な交渉を行う事業者も存在します。このような事業者に依頼してしまった場合、更に交渉が難航するリスクもあり得ます。

労働基準監督署に相談する

退職の承認権限がある上司も受理してくれなかった場合は、最終手段として労働基準監督署に相談してください。言うまでもなく、退職に関わらず多くの労働上のトラブル相談を受けている機関ですので、解決の糸口につながるアドバイスが貰える可能性が高いかと思います。

転職エージェントに相談する

転職エージェントを利用している場合は、退職交渉の開始前からプロのキャリアアドバイザーに相談しましょう。キャリアアドバイザーが実務を通じてみてきた退職時トラブルの事例などをもとに、最適な対処法を教えてくれるなど大きな助けになるでしょう。

また、退職交渉に限らず、転職エージェントは現在の市場感や企業の詳細、面接対策など入社に至るまでサポートをしてくれます。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。転職活動に悩み事がある人、不安がある人は転職エージェントを利用することで、それらを払拭することができるでしょう。

転職先からリファレンスチェックを要求されるケース

日本でも転職活動においてリファレンスチェックが導入される機会が増えてきています。「リファレンスチェック(Reference check)」とは、キャリア採用を行う企業が、応募者の職務経歴書等に書かれている内容に虚偽がないかどうか、会社の上司など第三者に、実積、スキル、人物像などについて確認する作業です。

アメリカ、ヨーロッパをはじめとする外資系企業では採用活動の中でリファレンスチェックの実施を導入しているケースは多く、寧ろ一般的と言えるでしょう。応募者も将来の転職時にはリファレンスチェックが行われることを想定し、現職の上司と良好な関係を築こうと努力するほどです。

これまで日本の転職活動においてもこのようなリファレンスチェックの機会は外資系企業に応募した場合が中心でしたが、近年では日系企業においてもリファレンスチェックを行うケースが増えてきました。企業側はリファレンスチェックの実施によって、経歴詐称の防止などをはじめとした採用リスクの最小化に取り組んでいく傾向がますます高まっていくと言えるでしょう。このようなケースに備え、以下記事についてもご参考ください。

退職受理後の過ごし方

退職交渉が順調に進み、退職を無事に受理されたとしても、その後の時間の過ごし方も重要です。退職が受理され、転職先に向けた準備などに時間を割きたい気持ちが高まり、現職での引き継ぎなどで丁寧さを欠いてしまうケースも少なくありません。

しかしながら、転職が当たり前になった現在においては、以前一緒に働いていた同僚が同じ職場に転職したり、また取引先の関係になるということも珍しくありません。最終出社日までこそ今まで以上に、仕事に丁寧に臨み、人間関係を大切に退職日を迎えられるようにしましょう。

また、現職で管理職などの責任ある立場に就いている方の場合、退職を受理されたとしてもそう簡単に退職に運べるとは限りません。会社の組織事情によっては半年以上要することもありますので、転職活動を開始する段階からそのような点も踏まえて現職での引き継ぎなどの下準備を進めておくと良いでしょう。

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最後に

退職交渉のポイントについて記載してきました。お世話になった皆さんに迷惑をかけてしまうという後ろめたさもあり、辞めづらく、気が重いことでもあります。しかし、退職交渉を長引かせてしまうことは最悪の場合、転職先への入社を見合わせざるをえない事態にもつながりかねません。スムーズな退職交渉を実現するためにも、揺るぎない意志と準備を大切に進めましょう。そのためにも今回の記事を参考にしてみてください。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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