現在、会社員として活躍されている方の中には、将来、経営者としてのキャリアアップを視野に入れている方もいるかと思います。そのようなビジネスパーソンの選択肢の一つとして挙げられるのが「プロ経営者」へのキャリアといえるかと思います。今回は転職などを通じてプロ経営者へのキャリアアップを目指す際の注意点や、プロ経営者の切符を掴むために大切なポイントについて解説します。
プロ経営者とは
日本でプロ経営者といえば日本マクドナルドホールディングスやベネッセホールディングスなどで代表取締役を歴任された原田泳幸(はらだえいこう)氏、ローソンやサントリーホールディングスで代表取締役を歴任された新浪剛史(にいなみたけし)氏、ミスミで代表取締役を務めた三枝匡(さえぐさただし)氏、スターバックスコーヒージャパン、シミックなどで代表取締役を務められた好本一郎(よしもといちろう)氏などが挙げられるかと思います。
プロ経営者とは会社員から昇進を繰り返し、経営者になるようなケースとは異なり、複数の会社を経営者として渡り歩く人物を指します。多くの場合、ファンドなどが投資する企業にて経営層に就任し、M&Aなどのある一定役割を遂げられたタイミングで退任し、次のチャレンジへ臨むケースが多いです。
具体的には、プロ経営者は多くの場合、前述のファンド(主にM&AでのバイアウトをEXITとするプライベートエクイティファンド)から投資先企業の企業価値向上を担う目的として経営層に就任します。また、最近では経営経験の豊富な経営者がベンチャー、スタートアップ企業の役員などに就任し、IPOやその先の成長に向けて経営の一翼を担うというケースも出てきました。
この記事では上記のようなプライベートエクイティファンドが関わる中で経営層を担われるケース、あるいはバイアウトファンドの存在に関わらず経営者→経営者への転職をされた方をプロ経営者と定義し、記述いたします。
経営者へのキャリアアップを実現するための選択肢
プロ経営者を目指す上で、まずは経営者の立場に就くことが第一歩といえるでしょう。こちらでは会社員から経営者へのキャリアアップを視野に入れる場合、まずどのようなキャリアアップの選択肢があるのかについて解説していきます。
異動・昇進を重ねて経営者へのキャリアアップを目指す
一つ目に紹介するのは、今の勤務先で成果を上げ、昇進を重ねた上で経営層へのキャリアアップを目指すという選択です。事業承継など方針が明確になされている企業では、なかなか代表を目指すことは難しいかもしれませんが、代表の脇を固める役割で取締役などを務めて経営を支える存在は、言うまでもなく会社にとって非常に重要な存在です。また、上場企業のようなパブリックカンパニーの場合には、同僚としのぎを削りながら出世競争を勝ち抜いていくことで代表取締役、あるいは代表の傍らで経営を支える取締役などの役割を目指していくことは可能でしょう。
このような経営者へのキャリアアップの際に押さえておくべきポイントでの一つは、経営者の意思決定に間近な距離で触れられる環境に身を置くことが大切といえます。取締役などの立場以外にも、経営企画、社長室などのポジションであればそのような意思決定に触れられる機会は多いかと思います。異動希望などの手挙げ制度などがある企業に勤務されている方の場合にはそのような制度を活用して経営に近いポジションへのチャンスを狙っていくと良いでしょう。
プロ経営者に限らず、経営者の大きな仕事の一つは決断をすることです。事業への投資、撤退など今の意思決定が、この先数年後の会社や事業を形づくります。経営者がどのようなプロセスで意思決定をするのかに触れることは、経営者を目指す上で自身の糧となるでしょう。
転職を重ねて、経営層へのキャリアアップを目指す
現在の勤務先で昇進を重ねていきたいものの、上のポジションが詰まっているなどの場合、転職により、マネジメント層、ひいては経営層への挑戦機会のもてる企業に転職することも選択肢の一つです。特に日本でも転職によるキャリアアップが一般的となる中、転職を通じてキャリアアップを重ねていくケースが最も多いのではないでしょうか。
また、事業会社から事業会社への転職以外にも、事業会社からコンサルティングファームへ転職をした上で、あらためて事業会社の経営層に転職をするケースもあります。コンサルティングファームでは複数の顧客の経営課題解決に向けたコンサルティング業務を通じ、経営視座や引き出しを身に着けることができるので、早期に経営層を目指すのであればこのようなキャリアステップを踏むことも有効でしょう。
また、多くのプロ経営者のキャリアを見た際には、このようなキャリアステップで経営経験を身に着け、プロ経営者としての道に繋げている方が多いです。転職のタイミングは人それぞれではありますが、今の職場でやり切ってこれ以上に経営に近い立場での挑戦が見込めないタイミングなどで環境を変える決断をされることをお勧めします。
自身で起業し、会社を経営する
経営者になる上で一番、手っ取り早い方法は言うまでもなく、起業をし、自身で代表として会社を経営する立場に就くことでしょう。しかしながら、経営者になることそのものはあくまで手段であり、経営者としてどのような会社経営をしていくかが重要です。
前述のケースのように、ある程度これまでの沿革を踏まえた経営をしていくのと異なり、自身で会社方針、事業戦略などを打ち立て、また信頼を一から築いていくことは当然ながら簡単な道ではありません。起業をする場合にはそのような点も踏まえて決断されるのが良いでしょう。
尚、経営者へのキャリアパスは何通りもあり、以下にご紹介するキャリアパスに限る訳ではありません。ご自身のキャリア今ご自身が置かれている環境の中でできること、やるべきことをまずは向き合い、そこで成果を上げてから次のステップを歩んでいくことをお勧めします。
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プロ経営者の機会をつかむために
経営者のキャリアを掴んだ上で、プロ経営者を目指すためにどのようなことを意識することで、プロ経営者としての機会を手繰り寄せられるかについて解説します。プロ経営者への切符を掴む上で、是非ご参考ください。
経営に関与できる環境に身を置く
プロ経営者を目指す上で、シンプルですが一番重要なことといっても過言ではないかと思います。プロ経営者に限らず、経営を担える人材になれるか否かは、年齢などでは解決できないものであり、一番はやはり会社経営、あるいはそれに準ずる立場に早期に身を置くことでしょう。
しかしながら、大企業、中小企業などで50~60代を中心に経営層を構成する組織においては、なかなか早期に経営に関与できる環境に身を置くことは難しいでしょう。そのような中、年齢に関係なく、実力主義でポジションを獲得できるベンチャー、スタートアップ企業のCxO(CFO、CMO、CTOなど経営ポジションの総称)を狙うことは経営者への道へのショートカットの一つと言えるでしょう。
実際に多くのベンチャー、スタートアップ企業で、20代、30代から取締役CxOなどの立場で会社経営の一角を担う方は今では珍しくありません。将来的に経営者、プロ経営者を目指す方はこのような環境に身を置いてみることも選択肢の一つとして検討してみてください。
経営者とのネットワーク
経営者同士のネットワークは、プロ経営者を目指す上で、重要な要素の一つです。引退を見据えた経営者が後進として外部よりプロ経営者を迎え入れるケースがあります。このような経営者が次の経営者に襷を託す背景には、年齢的な問題をはじめ自身でこれ以上経営を続けるのではなく、後進に託すことで会社の成長に繋げていきたいという指針によります。
また、後進としての経営者だけではなく、新規事業や事業の分社化などに伴う新会社設立の際に経営者を必要とするケースもあります他、先に記載しました株式会社タイミーのように、経営経験が豊富な人材がいないスタートアップに経営の一角を担うというケースもこの数年で増えてきている傾向にあります。
いずれにしても社内に経営者として抜擢できる人材がいれば良いのですが、そのような経営者人材の育成がうまくできている会社ばかりではありません。そのようなケースに、外部より経験の豊富なプロ経営者を迎えます。プロ経営者を目指す方はそのような観点を意識しながら、人脈構築に臨まれると良いでしょう。
PEファンドとのネットワーク
後継者問題や経営難などの課題を抱える企業にPEファンドが出資し、経営再建や企業価値向上の為に、外部よりプロ経営者を迎え入れるケースがあります。このような機会を得るためにもファンドとのネットワークを築くことはプロ経営者を目指す上で重要なことの一つといえるでしょう。
このような場合、ファンドがどのようなEXIT(IPOまたはM&A )の方針を掲げているのかを理解した上で、EXITの後まで見据えたキャリア選択をするのが良いでしょう。IPOを果たして上場会社の経営者の立場上、次の挑戦はそう簡単にできないですが、M&Aの場合は必ずしもそうではありません。
M&Aが成立したタイミングで親会社から経営者が出向する、またはM&Aからロックアップの期間まで責任を持ってやり遂げたタイミングで経営者の立場を退任するなどのケースが多いです。プロ経営者として挑戦を続けていきたい場合、M&Aを見据えた企業を選択する方が次の機会に踏み出しやすいでしょう。
ヘッドハンティング会社とのネットワーク
経営者、PEファンドとのネットワーク機会がなかなかないような場合、エグゼクティブサーチ領域に長けたヘッドハンティング会社との繋がりをもっておくとよいでしょう。前述に記載した経営者、ファンドがそれぞれ有するネットワークの中で経営者候補となる方のアサインが難しい際に依頼するのがヘッドハンティング会社になります。
ヘッドハンティング会社はイメージの通り、企業より依頼を受けて対象となる方へのヘッドハンティングを行うのですが、経営者、経営幹部を務めておられます方(あるいは将来そのような立ち位置に就きたいと思われている方)と日々接点をとる活動もしています。
このようなヘッドハンティング会社にご相談を持ち掛けることには抵抗がある方もいるかもしれませんが、ヘッドハンティング会社の立場としてはそのようなご相談に好意的に応じて頂けるかと思いますので、気軽に問い合わせてみると良いでしょう。求人情報などだけでなく、プロ経営者を目指す上で自分に何が足りないように思うかなど、カジュアルに情報交換をされる中で何か新しい気づきもあるかもしれません。
ミドル、経営幹部人材の転職活動
将来的に経営者を目指すミドル層、あるいは経営企画や社長室など会社経営を支える経営幹部のような立場を担う方の多くは、恐らく今の勤務先でも多忙であり、なかなか転職活動に十分な時間を割けないという方も多いでしょう。このような多忙な経営幹部の方は現職でのパフォーマンスを落とすことなく、効率的に情報収集を行う必要があります。こちらではそのような経営幹部の方が、転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。
スカウトサイトを活用した転職活動
一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。これまで主流であった転職サイトなどからスカウトを待つ転職プラットフォームに移行しつつあります。具体的には「ビズリーチ」「リクルートダイレクトスカウト(旧キャリアカーバー)」「エンミドルの転職」などが挙げられます。このような転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大し、2021年には前述のビズリーチを運営するビジョナル株式会社が東証マザーズにも上場を果たしています。
これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙な経営幹部の方にとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。
ヘッドハンティング会社、転職エージェントを活用した転職活動
転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には、前述したヘッドハンティング会社、あるいは経営層、ミドルレイヤーに強い転職エージェントを活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。
転職エージェントは国内に数万社あり、職種や業界に特化した転職エージェント、あるいは前述した経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。
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※お話を聞いて頂くだけでもOKです。
最後に
今回の記事ではプロ経営者について解説をしました。経営者、プロ経営者を目指すためにどのようなキャリアプランがあるのかを理解しつつ、自身の今の立場でどのような選択をしていくことが最善か考えていくと良いでしょう。
また、プロ経営者への挑戦機会を掴むためには自身のキャリアを重ねていくことと併せ、経営者やファンド、ヘッドハンティング会社などとのネットワークづくりも意識されることが重要です。漠然とキャリアを積み重ねていく中で得られるポジションではないだけに、こちらの記事をご参考にして頂きながら戦略的にキャリアを構築し、プロ経営者への切符を掴むことに繋げて頂けると幸いです。