営業職が転職活動で理解しておくべきポイントを解説!

会社や事業の成長を第一線で支える営業職はどの企業でも欠かせない重要な役割です。しかしながら、同じ会社で長らく同じ商材の営業に携わっていると、「他の商材にも携わってみたい」「顧客にとってより付加価値の高い提案をしたい」という思いなどから転職を考える方も多いのではないでしょうか。

人材難がさけばれる中、営業職は売り手市場にあり、以前にも増して多くの求人がでており、業界をこえた転職などもしやすい時代と言えるでしょう。今回はこのような営業職の転職活動において理解しておくべき内容を解説していきます。

目次

営業職が転職で考えるべき3つの要素

営業と一言にいっても、業種やビジネスモデルにより営業活動の中身は異なり、またそれにより身につくスキル・経験も異なってきます。このような営業活動の違いと身に着くスキル・経験に関して営業手法、営業相手、取り扱う商材の3つの要素から解説していきます。

営業職が転職で考えるべき3つの要素

・営業方法
・営業対象
・取り扱い商材

今の会社での仕事内容と転職先候補となる企業の仕事内容を比較した際に、この3つの要素にて共通する部分が多ければ転職先候補となる企業において即戦力人材として評価されやすいでしょう。一方、この3つの要素で共通する部分が少ないようであれば営業職から営業職への転職といえども高い評価を獲得しづらい可能性がありますので注意が必要です。

営業方法

営業方法は大別すると「新規開拓営業」と「ルート営業」があります。それぞれの営業方法と身に着くスキル、転職市場の評価などについて解説していきます。

新規開拓営業

新規開拓営業は、ゼロから取引先を開拓していくので、契約に繋げる難易度が比較的高いです。商品力や会社の知名度がそこまで高くない場合にはアポイントすら取れないことも多く、そのような環境下でも粘り強く行動し続ける力、あるいは断られても挫けないストレス耐性などが必要になります。

ゼロから取引先をリストアップし、アプローチ方法などを考えながら取り組む新規開拓営業だからこそ、営業としての成長機会が多く、例えば初めて取引を成立させるまでに信頼関係を築いていくプロセスなどには大きなやりがいを持てるでしょう。新規開拓営業の経験があれば、転職市場において、市場価値も高くなります。新規開拓営業はイメージの通り、大変なことが多いですが、その分、新規開拓営業の経験豊富な方は、転職市場においても高く評価されやすいです。

ルート営業

ルート営業は、既に取引のある顧客に対して追加受注や契約の継続をミッションとした営業であり、長く関係性を深めていくことが求められるため、顧客とじっくり向き合うことができことが仕事の魅力と言えるでしょう。このようなルート営業では、長く深い信頼関係構築のためにも、共感力や聞く力、細やかな気配りが必要なスキルと言えます。しかしながら、ただの顧客の御用聞き営業になってしまうと、転職市場でなかなか評価されづらいので注意が必要です。

営業職として更なるキャリアアップを方はこのような転職市場での評価を打開すべく、もう一段踏み込んだ深耕営業にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。深耕営業は既存顧客への営業活動を行う中で、例えば顧客に対して外部の立場だからこそ見える潜在的な課題を提言の上、課題解決に向けた提案を行い、客単価を上げていくような営業手法になります。

このような踏み込んだ営業をしていく際には、顧客自身も把握しきれていない課題を抽出していくことが大切であり、ヒアリング力や顧客を取り巻く環境も含めた分析力などが必要となります。ルート営業の中でもこのような踏み込んだ営業で成果を上げてこられた場合には、コンサルティング要素の高い営業職への挑戦なども比較的しやすくなるでしょう。

営業対象

営業対象については「法人顧客」か「個人顧客」です。どちらを営業対象にした営業かにより、身に着くスキルや転職市場での評価も変わってきます。それぞれの営業方法と身に着くスキル、転職市場の評価などについて解説していきます。

法人営業

法人営業はITツール、求人広告、など商材によって様々ではありますが、大手企業、中小企業などの法人企業が対象であり、個人営業と比べると受注までの期間は長く、売上金額は大きくなることが多いです。法人営業の特徴としては目の前の担当者に商品や提案の魅力を理解頂いても受注に至らないことも多く、顧客の決裁フロー、どの程度の予算枠があるか等の顧客の内部体制まで把握しにいく必要があります。

また、数千万にも及ぶような大きな提案の場合には、事前に情報収集・リサーチを行い、顧客の社長や役員をはじめとした経営層にメリットを訴求していく提案力などが求められます。

個人営業

個人営業は例えば生命保険、不動産、インターネット回線、結婚式場などの営業が挙げられるでしょう。個人営業の特徴としては担当顧客の数が多く、また往々にして商談回数が少ないので、短期間で信頼関係を構築し、素早く柔軟な対応が出来ることが求められます。

個人対個人の信頼関係が重要な営業であり、自分自身のことも開示しながら顧客のプライベートな情報まで引き出し、最適なアドバイスを行っていくことなどが難しさであり、面白さと言えるでしょう。

取り扱う商材

扱う商材は大きく無形商材と有形商材の2つに分かれます。それぞれの商材で身に着くスキル、転職市場の評価などについて解説していきます。

無形商材

無形商材とはITツール、コンサルティングサービス、求人広告、人材紹介、保険など形のない商材のことをいいます。言葉の通り、食品や機械製品のように目に見える商材ではないので、課題を汲み取りつつ、商材の魅力や必要性を的確な提案をしていく論理的なコミュニケーションスキルが必要となります。

このように無形商材は有形商材と比較すると企画提案要素が高く、無形商材の営業経験豊富な方は、難易度が高い提案が求められる営業職だけでなく、コンサルティングファームなどより高い評価を受けることでしょう。

有形商材

有形商材は食品や機械製品、家具など実際に手に取れる形がある商材のことであり、このような有形商材を扱う企業を業種で分類した場合にはメーカー、販売代理店、商社に区分されます。実際に商品があるが故に購入後のイメージをもちやすいものの、モノが溢れる時代でもある中、他社商品ではなく、自社商品を購入することが顧客の課題解決にどのように繋がるのか等の具体的なメリットをしっかりと提案していく必要があります。そのため、他社商材も含めた商材に関する知識や顧客を取り巻く環境の変化などについてアップデートしていくことが大切といえるでしょう。

このような有形商材では多くの場合、無形商材と比べると利益率が低いため、数を多く売ることが求められる傾向にあり、スピード感や効率性を意識したと働き方が求められる他、顧客の声を商品企画や工場の担当者にフィードバックするなど社内関係者を巻き込みながら仕事を進めていくコミュニケーション力も重要であり、このようなスキルが無形商材の営業との違いといえるでしょう。

営業職の求人倍率

営業職の求人倍率は、1.98倍(2022年7月doda転職求人倍率レポートより。)と求人数が増加し、特に売り手市場の職種の一つと言えるでしょう。転職市場がそのような環境下にある中、営業経験が浅い方、あるいは営業未経験者の方の採用を積極的に行う企業が増えてきています。

大手企業、中堅企業などの場合には自社で育てようというスタンスの企業が多いので、未経験でも挑戦しやすいですが、営業未経験で転職を行う場合は、20代~30代前半くらいまでの方をイチから育てたいという意向の会社が多いです。尚、人材育成の余力がない中小企業、ベンチャー企業は、大手企業や中堅企業と比べると採用ハードルが高いことが多いという側面も理解しておくと良いでしょう。

売り手市場にある中での転職活動は、求人の選択肢が多いため、内定を獲得しやすい反面、安易に入社の決断をしてしまい、入社後に短期離職となってしまうリスクがあります。そのため、転職活動時には自分の転職の軸を明確に持ち、その上で慎重に決断していくことが大切です。

営業職で人気の高い求人

この数年でDX支援ツール、SaaSをはじめとしたIT・Web業界の営業求人の人気が高まってきています。特に新型コロナウイルスの影響でアナログな経営体制からテレワーク対応をはじめDX化を目指す企業が増える中、DX支援ツールをはじめとしたSaaSプロダクトを展開する各社の成長には著しいものがあります。転職市場ではそのような成長産業に身を移し、自身も成長したいという方が増えつつある傾向にあります。

このようなSaaSプロダクトを展開する企業の多くが従来の営業体制とは異なり、「THE MODEL」と呼ばれる分業型の営業組織(マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセス)で構成されます。このような「THE MODEL」の営業体制を導入する背景としてはマネタイズの違いにあります。

SaaSプロダクトを展開する企業は「売り切り型」ではなく、定額で継続的に利用して貰う「サブスクリプションモデル」でのマネタイズを導入しているケースが圧倒的に多いです。SaaSプロダクトを展開する企業はこのようなサブスクリプションモデルでを導入することで提供するプロダクト・サービスに満足頂き、長く使い続けて貰うことで、長期的に売上・利益を構築することを目指しています。このような成長戦略を描く中、長期的に顧客と良い関係を築けるよう「THE MODEL」の営業体制を導入しています。SaaSビジネス、「THE MODEL」の営業体制に関しては以下記事も参考にしてみてください。

転職市場で評価される営業スキル

転職市場で高い評価を得る営業職の方の特徴としては、課題解決力、定量的な実績、再現性の3つが挙げられます。こちらではこれら3点について解説していきます。

課題解決力

転職市場で評価される営業職に共通する営業スキルとして第一に挙げられるのが、「課題解決力」です。営業の仕事で大切なことは言うまでもなく、顧客の課題を解決していくことです。商品・サービスはあくまで課題解決のための手段であり、まずは顧客が抱える問題をまず把握し、提案する商品・サービスによりその課題解決に向けた提案ができているかどうかで転職市場での評価は大きく変わるでしょう。

巻き込み力

転職市場で評価される営業職に共通する営業スキルとして「巻き込み力」が挙げられます。これは従来の営業においても勿論、評価される営業スキルでもありますが、「THE MODEL」の営業体制を敷く組織においては更に高い評価を貰える可能性が高いでしょう。

「THE MODEL」の営業体制を敷く組織は、前述の通り、分業体制になります。自分の管掌範囲において高い成果を出すために取り組むことも大切ですが、事業成長を鑑みた際には、分業体制にある各組織が連動する形で顧客にとって最適な提案を行い、プロダクト導入後には満足度を高めていくことが大切です。

「THE MODEL」の営業体制はSaaSプロダクトを展開するIT・Web業界を中心に導入が進んでいますが、それ以外の業界でも導入を進めている会社も今では珍しくありません。そのような中、横断的に組織に働きかけができる巻き込み力のある営業職は多くの企業で評価されるでしょう。

再現性

転職市場で評価される営業職は、当然ながら、環境が変わっても高い成果をあげられる可能性が高い方です。例えば大手企業、有名企業の営業職であれば、新規開拓営業を行った際にも比較的アポイントは取りやすいでしょう。しかしながら、このような会社の看板に依存した営業をしていた方が、中小企業やベンチャー企業の営業職に転職した場合には、なかなか同じような実績は簡単にあげることは難しいです。

このような「再現性」をアピールするためには成果に繋げるために、どのような工夫、試行錯誤を行ってきたのかのプロセスについて言語化できている状態を目指しましょう。再現性の言語化に向けて準備すべきこととしては、自身の成功体験だけではなく、失敗体験も合わせて棚卸していくことが大切です。

営業職が転職活動で押さえておくべき手法

こちらでは営業職が転職に向けて押さえておくべき手法について解説します。多くのビジネスパーソンが多忙である中、現職のパフォーマンスを落とさないよう、効率的に情報収集を行う必要があるでしょう。こちらではこのような方の転職活動で推奨する2つの手法についてご紹介します。

スカウトサイトを活用した転職活動

一つ目はスカウトサイトを活用した転職活動になります。先に記載の通り、このような転職プラットフォーム市場はこの数年で急激に市場が拡大しており、今や転職活動のスタンダードをもいえるでしょう。これら転職プラットフォームに情報を登録しておくことで、経歴を見た転職エージェント、または企業より直接スカウトを貰うことが可能です。その際「無形商材を扱う営業をしたい」「個人向けの営業でキャリアアップを目指している」など自分の思い描くキャリアプランを記載しておくと、より自分に合った情報が集まりやすくなるでしょう。

そうでなくとも、どのような企業がこれまでの経験を評価してくれるのかという観点も含め、自分の経歴に合った求人情報をある程度網羅的に情報を集めることができるため、多忙なビジネスパーソンにとっては有効な転職手法の一つと言えるでしょう。

人材紹介会社(転職エージェント)を活用した転職活動

この様な転職プラットフォームサービスの台頭はあるものの、まずは自身の現状について相談したいという場合には人材紹介会社(転職エージェント)を活用していくこともよいでしょう。多くの場合、転職活動は孤独です。自身の経歴の棚卸、今後の自分のキャリアプランをどうしていくべきかなど腹を割って話ができる存在がいるかいないかは、自身の転職活動を良い形で進めていく上で重要です。

前述の通り、転職エージェントは国内に数万社あり、業界に特化した転職エージェント、あるいは経営層、マネジメント層に特化した転職エージェントなどそれぞれ特色があります。これまでの経験、自分が描きたいキャリアなどを踏まえ、自分に合った転職エージェントをパートナーに選びましょう。

最後に

営業と一言にいっても営業手法、営業対象、取り扱う商材が変わると身に着く経験やスキルが異なります。そのような中、営業職としてキャリアアップを図る上で、転職市場で評価される営業職とは何かを理解し、どのようなキャリアを目指していくか具体的に設定することが大切といえるでしょう。

この記事を書いた人

岩崎久剛

1984年兵庫県生。関西大学工学部を卒業後、受験支援事業を全国展開する大手教育事業会社にて総務人事など管理部門を経験し、2012年より人材業界に転身。大手総合人材会社にて求人広告、人材紹介など中途採用領域での法人営業を経験し、従業員数名規模のベンチャーから数10か国に展開するグローバル企業まで多様な業界、事業フェーズの企業の採用を支援。2016年よりハイキャリア領域の人材紹介事業立上げメンバーに参画し、関西ベンチャーを軸とした採用支援に従事。その後、ビズアクセル株式会社を起業。MBA(グロービス経営大学院)。

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